カミキヒカルになりました。(本編完結)   作:だめねこ

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第54話

 目の前で眉毛を八の字にして唸っているアイが居る。

 アイの手には、たった一枚のトランプが握られている。

 対して俺は、ジョーカーとキングの2枚のトランプを所持している。

 キングを引かれたら、俺の負け。ジョーカーを引かせたら、次は俺のターン……。

「……アイさん? 別段おしゃべりは禁止じゃありませんから、楽しくやりましょう?」

「……楽しく? 私、これで10回連続で負けてるのに? ……何でヒカル君の嘘が分からないんだろう?」

「それは勿論、私が嘘をついて無いからですよ?」

「じゃあ、ジョーカーどっちなの?」

「ええ、右ですよ」

「それは……どっちから見て右なの?」

「私から見て、右ですね」

 俺がそう言うと、アイは吸い込まれるように右のジョーカーを取ってしまう。

「あ~またジョーカーだぁぁぁぁぁ何で!? 何でこれジョーカーなの? 意味が分からない! 今ヒカル君、絶対に嘘ついたのに~~!!!!」

「……10回だろうと、20回だろうと、何度だって言いますけど……私は嘘なんてついてませんからね?」

「そんなの嘘だよ!!!?」

「いえいえ、こういうゲームは(はな)っから相手が嘘を言うものと思いこんでしまうので……それならば最初から、本当の事を言えば良いんですよ。そうすれば、相手が勝手に邪推してくれますので……今のアイさんみたいにね?」

「うぅ~じゃあ、ヒカル君の番だよ……」

「ええ、では……」

 額をトントン指で叩き……決めた。

「左ですね」

 すっと取ると、それはキングだった。

「……ねぇ、ヒカル君? おしゃべりは禁止じゃないって言ってる割には……ヒカル君が取るときは、全く喋らないのは何でかな?」

「それはそうですよ。『嘘つきは常に嘘をつく! それだけは信じても良い』……ってジャック・スパロウが言ってましたからね。嘘つき(アイドル)のアイさんと喋っても、騙されるだけですからね」

「ぐぬぬぬ、じゃ、じゃあ!? さっきから額を指でトントンしているのは、なぁぜなぁぜ?」

「ああ、これは勘を働かせる為にやっているだけですよ?」

「え!? か、勘? 直勘ってこと!?」

「そうですよ。ま、今回は的中率100パーセント何て、出来が良すぎますが……こんなのはただの偶然ですのでお気になさらずに……」

「そうだ! じゃあ、ヒカル君? 次は嘘をついてね。そうすれば私が勝てる……!」

「……まぁ、良いですよ」

 手を後ろに回してトランプを適当にシャッフル……って言っても、2枚だけだから適当で良いや。どうせ、確率は半分なんだから……。

「じゃあ……こっちがジョーカーです」

 俺は、左のキングをアイに分かるように差し出した。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

♡♡♡

 

 ……もぉぉぉ!? さっきから、ヒカル君の嘘が全く分からない!

 私だって! アイドル以前からずぅぅっと嘘を吐き続けて、むしろベテランなのに……。

 前回のだって、結果的にはヒカル君は嘘をついていなかった。

 なのに……私には、ヒカル君の言葉が嘘に聞こえた。

 何かしらのからくりがあるはずなのに……理解が出来ない。

 でも、今はヒカル君は嘘をついてるはずだから……じゃあ差し出されて無い方がジョーカーって事? そんな安直な事するかな……? 私だったら、このタイミングで差し出してる方をキングにして……引かれたくない方をジョーカーにする。

 つまり……今差し出されている方がジョーカーで、差し出されて無いのがキングだ!!!!

 私は吸い込まれるように、引きづらい方のトランプを取った。

 それを見たとき……私に電流が走った。

「な、なんでこれがジョーカーなの?」

「……何でって、アイさんが噓をついてって言ったから……ちゃんとついた結果ですが?」

「だ、だって!? そんな安直な嘘なんか、本来だったら分かるのに……!?」

「じゃあ、答え合わせをしましょうか? 何故、アイさんが私の嘘を見抜けなかったのか……それは大したことではありませんが、例えばこのジョーカーですが……」

 ヒカル君はそう言うと……ジョーカーのトランプを指差す。

「誰がどう見てもこれはジョーカーですが、自身の認識を変えれば良いんですよ。今回ならキングを取らせないゲームではなく……相手にジョーカーを取らせるゲームなんですよ。そうなれば、話は簡単です。ジョーカーをジョーカーと思わなければ、それはジョーカーでは無いです。無論、キングも同じ理屈です。そうなれば……アイさんは嘘を嘘と見抜けなくなるので、勝手に考えて自滅するだけでしたからね」

 ……なんか納得出来ないけれど、理解は出来た。

「早い話が、嘘を嘘と思わなければ……それはまた一つの真実ってことです」

 ……その理屈は、全く分からないなぁ~。

 

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