古魔族、放漫のトラオムの羽ばたき   作:リッチ

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穴を掘る魔法

 

 

 

 吾輩は魔族である。名を放漫のトラオム。

 

 巡業団の戦力がおおむね満足できるレベルだったので少し安心しています。

 

 ミクとアンジェラ抜きだとちょっと不安だけど。

 

 あれなら相手が人間であれ、魔族であれ、かなりの大戦力を送り込まれなければ大丈夫だろう。

 

 魔族の魔法は効いてさえしまえば一撃でお終いの凶悪な物もあるから油断できないけど。

 

 それは巡業団も同じことだし、むしろ魔族よりバリエーション豊かだよ。

 

 

 ……ゼーリエちゃんに突撃されても、多分俺が介入するまでは持つだろう。

 

 裏切りはマジで考えたくない可能性だが、一応は備えないとな。

 

 

 とにかく今回の収穫には満足している。

 

 忌々しいあの変態大魔族も消せたし、アルちゃんたちも労わないとな。

 

 

 

 

 

 それで現在は炭鉱夫っぽいことをやっている。

 

 いや、流石に現場でツルハシ振るってるわけじゃ無いけどね。

 

 分身でさえせいぜい現場監督だよ。働くのは簡易ゴーレムの仕事だ。

 

 簡易ゴーレムには感情は実装していないが、それでも極めて高度な思考力を持った高性能ゴーレムである。

 

 色々とプロテクトは掛けてるが、必要ないかもしれん。高度過ぎて人間がコピーできるようになるのはどれほど先やら。

 

 

 何で穴掘りしてるかと言うと、魔道具を作るための材料集めの為だ。

 

 無から作るのでは難易度が違い過ぎるし、この世界にはミスリルっぽいのとか色々とファンタジー素材があふれてるからな。

 

 もう随分と長生きしてるが、未だに採集してると未知の鉱物が見つかることさえあるからな。

 

 植物系も凄いが、鉱物も様々な性質を持った研究し甲斐のある物が溢れてやがるぜ。

 

 

 ただ、この先の時代で人間や魔族が資源争奪戦をすると、俺が使う分が残るかちょっと不安だ。

 

 いや、絶対にそんなに消費し切れないと確信してるけど。

 

 ファンタジー世界の開拓をやり尽くすのはちょっと現実的じゃ無い。

 

 俺でも無理だろう。……何かね、地中や海中にはちょっと俺でも近づきたくないようなモノが時々あるんだよね。

 

 海中の方なんかヤバいぞ~。

 

 海の底から巨大な何かがグワッと出てくる想像をしたことがある人、絶対にファンタジー海水浴には行ってはいけません。

 

 安全なプールとかだけで我慢しましょう。俺は潜水の魔法とかもちろん作ったけど、深海探検とかはまだ当分は先でいいかな(震え声)

 

 

 ただ、取り尽くされる心配は無いと分かっていてもやはり自分が新素材の第一発見者になりたい。

 

 それと、物資はとにかく潤沢に持って置きたい性質なんだ。

 

 この現象は何て言ったっけ? エリクサー症候群とは似て非なる……思い出せん。

 

 

「マスターよウ、またデッカイワームの群生地があるみたいだゼ」

 

「マスター、あの、社長を見ませんでしたか?」

 

「マスター! 約束通り、私の為にお城作ってくれるのよね! 地底のお城って言うのもロマンがあってよさそうじゃない! 徹底的にゴージャスにしてよね!」

 

 

 便利屋のみんなも良く働いてくれている。

 

 

 ああ。レ級よ、ワーム駆除には戦闘ゴーレム部隊を適当に当てといてくれ。

 

 零余子よ、アルちゃんはちょっと謎の悪寒が酷くて休養中だよ。

 

 エリちゃん……よく分かってるじゃないか。外観は多分カオスになるけど、内装はマジで豪華絢爛という言葉がこれ以上ない程の城を作ってやろうぜ! 

 

 

 概ね、採掘は安心安全をモットーに、順調に進んでいると言えよう。

 

『穴を掘る魔法』、『地盤を固める魔法』、『地中を透かして見る魔法』の三種の神器があるからこそだ。

 

 MODを入れまくったマインクラフトには及ばんかもしれんがな。

 

 それでも非現実的なペースでそこら中を掘りまくっているぜ。

 

 

 ……せっかくだから、光るキノコや鉱石で幻想的に光源を確保しとこう。

 

 あと、放棄した場所にも意味ありげな建築物やお宝を仕込む。

 

 今はどの程度を掘り進むかは分からんが、後世にちょっとした冒険ができる程度には整えておこう。

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 勇者ヒンメルの死より20年後。

 

『地下世界』の入り口の一つ。大陸北部13番風穴より少し潜った所にて。

 

 

 大陸中央部の地下諸国を冒険する三人組のパーティがあった。

 

 彼らはまだ若いながらも有望な冒険者であり、魔物退治などで確かな名声を得つつも、荷物運びなどのちょっとした人助けも行いながら旅をしていた。

 

 そんな冒険スタイルは地下世界にあっても変わらない。

 

 現在、彼らは急ぎの手紙を届ける依頼を受けて、シュヴェア山脈の地下を縦断するルートを大陸中央部に向けて出発したところだった。

 

 

 13番風穴で地上に一番近い町ベルポイで一泊したが、これからシュヴェア山脈地帯を抜けるまでは町らしい町は無い。

 

 地下世界を進めば山脈越えよりはずっと早く向こう側につくとはいえ、山脈越えとは別の理由で難易度が高い。

 

 地下世界はとにかく入り組んでいるし、特有の厄介な魔物も多く、光るキノコやコケに鉱石があるとはいえ、ずっと太陽が見られないのだ。大戦時には人間側も魔族側も地下世界を使って相手の裏をかこうとしたが、両者ともに無数の遭難者を出した事でも知られている。

 

 噂では魔王城近くへ一気に行けるルートもあるそうだが、魔王を倒した勇者パーティでさえ、不確定要素が多すぎる地下世界は避けていたほどだ。

 

 

 一行の戦士はキノコの光に照らされるねじれた薄暗い道を進みながら、仲間たちに話しかける。

 

 

「やっぱり地下世界の冒険はワクワクするよなあ。地下世界の食い物も見た目はアレだけどよ、慣れれば結構いけるもんだしな」

 

 

 リーダーである戦士の男の言葉に答えるのは、斥候にして魔法使いでもある女性と、僧侶である男だ。

 

 

「なーに言ってんのよ。最初の内は薄気味悪いって震えてたくせに。それに、これから最短でも三日は太陽が見られないなんてたまらないわ。迷えば下手すれば二度と日の目は拝めないしね」

 

「まーな。こうも薄暗いと奇襲に警戒するにも限界があるしなあ。地底の町のお姉ちゃんは色白で綺麗だけど、酒の方は俺の口には合わねえし」

 

 

 二人の言葉にリーダーはめげずに共感を得ようと主張する。

 

 

「でもよ、光の道から外れりゃあ、まだまだ発見されてないお宝が残された未知の空間がわんさかあるって聞くぜ。今は急ぎの依頼があるからダメだけどよ、いつかは探してみないか?」

 

 

 名声と冒険を求める冒険者らしいリーダーの言葉に僧侶は溜息を吐いたが、女性は少し心惹かれた様だった。

 

 

「おいおい。暗闇を魔法と松明の灯りだけで探検とか勘弁してくれ。どんな魔物が居るかもわからないんだぞ? 魔王軍の残党も少なくない数が地下世界を隠れ家にしてるって噂だしな」

 

「うーん、でも、古代の遺跡を発見できれば間違いなく歴史には名を残せるのよね。遺跡には良い魔道具がたくさんあるって言うし。ひょっとしたら、停止した古代ゴーレムとかも手に入るかもしれないわ」

 

「まーたスイの魔道具欲しい病が始まったよ。リーダーのせいだぞー」

 

 

 僧侶はぼやくが、パーティ内の意志が二対一になった以上、いつかはやることになるだろう。

 

 実際、地下世界で得られるお宝は良い物が多い。

 

 黄色くて丸い『安全第一』と書かれた安っぽいヘルメットだって、並みの兜よりもよっぽど高性能なのだ。

 

 ゴーレムとなれば、作業用でも熟練の騎士並の実力を持ち、家事もそれなりにできる。実力者でも荷物持ちに連れて行くのに充分な性能だと言う。

 

 戦闘用ゴーレムとなれば、大陸魔法協会を代表にあらゆる組織が大枚をはたいて求めるほどだ。

 

 三人も一度だけ地底の町で権力者が連れていたゴーレムを見たことがある。

 

 

「いつかは自分で見つけてみたいよな!」

 

「そうね。巡業団のゴーレムにこそ及ばないけど、それでも現代では再現不可能な高性能ゴーレムを魔力を注ぐだけで手に入れられるんだもの。夢のある話だわ」

 

「あの前に見たのはちっこかったけど、古代のゴーレムなら見た目じゃ性能は分からないからなあ。絶対に敵にはしたくないぜ。稼働しているのに出くわしませんよーに」

 

 

 ちなみに三人が前に見たゴーレムとは、地下世界で一番よく見つかっている種類のゴーレムである万能作業用量産型ゴーレム『ズンダモン』のことである。

 

 型番が十万を超える物が見つかっているので、まだまだ見つかる可能性が高いのだ。

 

 割と細かい作業もできるし、緊急時には敵にしがみつき「さよならなのだ」と言って自爆してくれる。

 

 地下世界のあちらこちらで停止しており、一攫千金を求める腕利きたちが探し回っている。

 

 ……なお、知られていないことではあるが、世界で一番地下世界の廃棄ゴーレムを収集しているのは魔王軍の残党であるソリテールという大魔族である。

 

 

 

 冒険者一行はしばらく歓談しながらもルートを外れないように慎重に進んでいたが、突然、一行の斥候である女性が手を挙げて合図を出す。

 

 その瞬間、一行は息を潜める。危険があることを知らせる合図だからだ。

 

 それぞれは仲間の技能については強い信頼を置いていた。その判断を疑うことは無い。

 

 

「……正面から、二足歩行の十数人ほどの集団ね」

 

「……人間か?」

 

 

 リーダーの問いに女性は首を細かく横に振る。エルフ特有の耳がフルフル揺れる。

 

 

「いいえ、まともな靴を履いてないわね。それに、少しだけど異臭がするわ」

 

「じゃあ、亜人系の魔物か。魔族でないならまだマシだな」

 

「飛んでたりねちょねちょしてる魔物でないのもマシな要素だよ。どうして地底の魔物はああも……」

 

「そのくらいにしときなさい。接敵するわよ。先制攻撃でいいわね?」

 

 

 女性はぼやく僧侶を窘めるとリーダーに攻撃許可を求める。

 

 その顔には好戦的な笑みが浮かんでいた。

 

 リーダーは自分も同じような笑みを浮かべると、頷く。

 

 

「ちょうどいい運動になるぜ。いっちょやってやるか。弓で先制と援護頼むぜ、スイ」

 

「ええ、任せて頂戴。前衛はいつも通りに任せるわよ」

 

「おう、それじゃあ突撃準備だぜ、相棒」

 

 

 やる気満々の二人に、相棒と呼ばれた僧侶も腹を決める。

 

 

「やれやれ、師匠からもらった一張羅がまた汚れちまうな。さっさとすませようか」

 

「へへっ、やる気になったな」

 

 

 僧侶はかつて勇者パーティの僧侶が着ていた上級の魔装服の襟を正す。

 

 リーダーの戦士は、魔族の将軍を討ち取って勝ち取った魔剣、『はかぶさの剣』を肩に担ぐ。

 

 そして、エルフの女性が待ち伏せとともに魔弓より爆発する矢を放ち、戦いが始まった。

 

 

 攻撃を受けた亜人型の魔物の一団から「グラウンドウォーカー!」という敵の正体を知らせる声がする。

 

 言葉を話すなら一筋縄では行かない相手だ。

 

 だが、若いながらも実力派のこのパーティにとっては臆する理由にはならない。

 

 戦士と僧侶は並んで勢いよく飛び出した。

 

 

「遅れんじゃねえぞ、アゴヒゲ!!」

 

「お前こそ勢い余ってこけんなよ、ゴリラ!!」

 

 

 

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