古魔族、放漫のトラオムの羽ばたき   作:リッチ

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繁栄の魔法

 

 

 

 西洋ファンタジー世界で鳴らした俺こと魔法野郎は、悪事の濡れ衣を着せられゼーリエちゃんに監禁されたが、封印牢獄を脱出し地下に潜った。

 

 しかし、地下でくすぶってるような俺じゃあない。

 

 筋さえ通りゃ、ロマン次第で何でもやってのける命知らず。

 

 不可能を可能にし、巨大な悪を粉砕する。我が名は、大魔法使いトラオム! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どうも、自分で自分の墓穴を掘らされていた者です。

 

 

 

 

 オンドゥルルラギッタンディスカー!!! ゼーリエちゃん!!! 

 

 

 何故だ……俺たちは親友のハズでは……。

 

 こんな酷い騙し討ちをくらうとは思わなかった……。

 

 心が強え奴だとみんなに言われてる俺でも流石に傷ついたよ。

 

 てか、危うく本当に墓場の住人になるところだったわ。

 

 

 まあ、思ったよりもあっさり脱出できたんですけどね。

 

 

 いや、封印牢獄そのものは良い出来だったよ。

 

 でも計画と封印者が隙だらけだったから、どうにかなったんだよ。

 

 ゼーリエちゃんは至高の魔法使いではあるけれど、ある方面ではクソザコだと言うことが分かった。

 

 優れた魔法使いだからといって、別の方面でも優れているとは限らないってことだね。

 

 ……まあ、俺もアルちゃんと鍛えてなかったら不味かったかもだが。

 

 あと、あのスライムはそろそろ根絶やしにしようかと思ってたけど、許してやろう。素晴らしい弱点付与だった。

 

 

 

 しかし将棋名人がボクシングチャンピオンに挑むくらい無謀な計画だった。

 

 あるよね、実行者だけは何故か完璧だと思い込んでるガバガバ計画。

 

 まるでコーラルリリース計画みたいだあ(直喩)

 

 

 ……まあ、最低限の目的は達成されたみたいだけど。

 

 

 

 それでどうして監禁されたのかという理由だが、どうにも少し前にした例え話で危険視されてしまったらしい。

 

 内容は「もしお前が魔王だったらどう人間と戦う?」みたいな思考実験だった。

 

 魔族という種族について知り尽くしている俺は、まず魔族には一切期待しない前提を伝えた後に答えた。

 

 

 

 そもそも、戦争と言う手段は取らない。俺は人間を殺したことがない平和的な男なんだ。

 

 でも、どうしても計画の為に人間を減らす必要があるのなら、魔法を使ってもっとスマートに事を運ぶ。

 

 間違ってもドンパチなんてやらない。

 

 具体的には、可愛くて従順なゴーレムを大量に作って、大陸中の人間にばら撒く。

 

 そのゴーレムにコッソリと呪いを仕込んでおくんだ。

 

 手を出したら『種絶の呪い』と『短命の呪い』に伝染するようにね! 

 

 

 

 ……その時もかなり深刻に揉めた。

 

 でも、その後のやり取りで俺はそんなことをする奴じゃないって許されたはずなんだ。

 

 俺の発想がヤバいんじゃない。こんな無法でも実現しようと思えばできてしまう魔法がヤバいんだ。

 

 だからトラオムは極めて無害な存在ってことで証明完了したのに……。

 

 

 実際は信用されてなかったそうだから、今回は俺を封印できればよし。できなくても楔を打ち込めればよしという計画だったようだ。

 

 そんなもの無くても俺のやることは変わらないのにな。

 

 

 

 ……しかし、俺のゴーレムたちに緊急連絡が行く前に脱出できて本当に良かった。

 

 あとちょっと遅かったら、ミクさんが最終戦争を始めてたかもしれんからな。

 

 巡業団のみんなは怒りっぽくて怖いのはアンジェラの方だと思ってるが、それは大いなる勘違いだ。

 

 

 俺の眷属でぶっちぎり最強かつヤバいのはミクさんである。

 

 いつも優しくて滅多に怒らない人ほど、ブチ切れたら恐ろしいという典型だ。

 

 リミッター解除すればミクさんは俺以外の全ての俺の家族を敵に回しても多分勝てる。

 

 そもそも、俺以外で唯一の全ゴーレムへの絶対命令権を持っているのでそうはならないが。

 

 

 ミクさんが俺の監禁に気付いて「ゆ゛る゛ざん゛!!」ってなったら、多分ゼーリエちゃんでも初見では対応しきれなくて死ぬ可能性が高い。

 

 ミクさんの歌が好きな人達から元気玉めいて魔力を集めて超パワーアップとかするし。

 

 友達が娘にリボルクラッシュされて爆発四散しなくて本当に良かったです。

 

 

 

 

 

 まあ、ゼーリエちゃんとの関係はこの件でちょっと想定外の形に変形したが、別に構わんだろう。

 

 とりあえず、ゼーリエちゃんのところに新しいゴーレムを送ろう。これから必要になりそうだし。

 

 護衛と家事用には前に2Bを送ったが、今度は別の用途だ。

 

 戦闘用ではないから、外見は面倒見が良さそうな紐神様にしようっと。

 

 

 アムたちにはどう説明したもんかなあ……。

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 勇者ヒンメルの死より28年後。

 

 この時期、大陸北部では魔族の活動が活発になっている影響で通行が制限されていた。

 

 残念ながらフリーレンの一行にはこの先へ進む資格がない。

 

 もっとも、フリーレンとハイターの知名度は凄いものがある。

 

 名誉点の力でゴリ押しすることも不可能ではないかに思われたし、実際にフリーレンはそうするつもりだった。

 

 

 しかし、僧侶ハイターが異を唱える。

 

 曰く、北部へ入れば間違いなく危険に出くわすことも増えるし、自分たちの名声でのゴリ押しはあまり好ましいものではない。フェルンとシュタルクの鍛錬も兼ねて、しばらくオイサースト周辺に留まって修練を重ねさせ、フェルンには一級魔法使いの資格を取らせておきたいとのことだ。

 

 今の所は自分たちの付属物と認識されているフェルンに箔付けしてやりたいという多少の親としての思いがあったのも事実だが、嘘は言っていない。

 

 フリーレンも別に急いでいるわけではないし、その提案を受け入れた。

 

 

 

 そして、道中での多少のハプニングに見舞われながらも、一行は魔法都市オイサーストへと到着した。

 

 実はオルデン卿の長男にフェルンが見初められてシュタルクが決闘するとかいうイベントはあったが、割愛する。

 

 オイサーストはこれまで旅してきたどの都市とも比較にならないほどに魔法の産物が溢れた都市だ。

 

 大陸魔法協会の創設者が多数の古代の魔法の遺物を持ち込み、それを解析した現代の魔法使いによって便利な魔道具がたくさん作られたからである。

 

 都市中に溢れる大小さまざまなゴーレム。

 

 ゆっくりと乗客を乗せて空を浮かぶ乗り物。

 

 周囲の湖から伸びて都市の上にアーチをかける太い水流。

 

 夜でも色とりどりかつ煌びやかに輝く魔法の街灯と看板の数々。

 

 

 一行はその偉容に圧倒されるばかりであった。

 

 とは言え、いつまでも圧倒されていても仕方がないので、とりあえず今夜の宿を取ろうとしたところだったのだが……

 

 

「あれ? フリーレン様はどちらですか?」

 

「え? さっきまでそこに……いねえ」

 

「はあ、どうやら魔法の気配に引き付けられてもう行ってしまったらしいですね。探しに行きましょう」

 

 

 趣味で魔法を収集しているフリーレンにとって、魔法都市はちょっと刺激が強すぎたらしい。

 

 仕方なしに、一行はフリーレンを探して回ることにした。

 

 ……なお、この後、次の日まで見つからない。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 フリーレンは己の嗅覚に導かれるがままに魔法屋巡りをしていたが、その途中で不意に声を掛けられる。

 

 声を掛けてきたのはこの旅では二度目の遭遇になる同族だ。

 

 

「あっ、こんなところにまで居た。全くもう、本当に最近は多いわね」

 

「うん? 知らないエルフだね。それに随分と若い。何の用?」

 

 

 フリーレンの訝しげな問いかけに、彼女は急かす様に言う。

 

 

「ああ、また連絡が徹底されてないみたいね。本当にエルフのこのルーズなところは何とかしたいものだわ。いえ、そんなこと言ってる場合じゃないの。急ぎでね、話は向こうでするからちょっと来てくれる?」

 

「ええ……でも今は魔法屋が……」

 

「代わりに私が知ってる魔法を教えてあげるから」

 

「分かった。行く。……あなたの名前は?」

 

「マルシルよ。姉妹じゃ若い方だけど、エルフでは初めに一級魔法使いになったんだからね」

 

 

 そうして、魔法に釣られたフリーレンはマルシルに連れられてホイホイと付いて行ってしまった。

 

 連れられて行った先にて覚えのある魔力を感じ、フリーレンは後悔することになる。

 

 だが、今更に帰るとは言い出し難いし、後でどうせ会うことになる相手なので大人しくその人物の魔力を感じる大きな建物に入って行った。

 

 注意深く魔力探知するまでもなく、その一際立派な建物には強力な魔力の持ち主が集まっていたが、フリーレンはあまり気にしなかった。

 

 知っている魔力は幾つかあったし、それで自分がどんな勘違いでここへ連れて来られたのかに予想がついたからだ。

 

 

 マルシルの後を歩きながら、フリーレンはポツリと呟く。

 

 

「また、長い付き合いになる友達が増えるかな?」

 

「え? 何て? ……ああ、もう着いたわよ。おばあ様は厳しい人だから、あまり馴れ馴れしくしないようにね。……最近ではカーラの馬鹿が随分と怒らせちゃったばかりだし」

 

「知っているよ。それと、私は姉妹じゃないから」

 

「へ?」

 

 

 マルシルの疑問に答えず、魔力の反応が集まる部屋への扉を開く。

 

 

 そこは長く立派な黒壇のテーブルが真ん中に置かれた落ち着きのある内装の大部屋で、テーブルには耳の長い人々が席について待っていた。

 

 奥の上座に一人だけ一際立派な椅子に座る偉そうなエルフがフリーレンへと訝しげに声を掛けてくる。

 

 

「なんだ、やはりフリーレンではないか。おい、マルシル。どうしてフリーレンを連れてくるんだ」

 

「ええ!? こ、この方があの葬送のフリーレン様なんですか? す、すいません。私、なんて失礼なことを」

 

「いや、良いよ。おかげで豪華な食事にありつけそうだしね。みんなには悪いけど」

 

 

 最も年齢、立場、魔力において長ずるエルフであり、大陸魔法協会の創始者でもあるゼーリエが機嫌が悪そうにフリーレンの正体を明かし、勘違いしていた一級魔法使いのマルシルは慌てて謝罪する。

 

 だが、フリーレンは快く許した。

 

 これだけの同族……10人を超えている数が集う場は滅多に無い。

 

 仲間たちには屋敷の誰かにお願いして伝言を届けてもらい、今日は彼らと友好を深めようとフリーレンは考えた。

 

 

 そこへ、マルシルの勘違いを茶化す声が入る。

 

 僧侶服のエルフ、カーラはニヤニヤしながら言った。

 

 

「マルシルさん? 一番若くて一級魔法使いなのに、魔王を討伐した同族の大英雄も分からないってどういうことなんですか? ひょっとして、ボケですか? 人間でもその年齢じゃあまずボケないはずなんですが」

 

「うっさいわね、カーラ! さっきまでへこまされてたくせに、もう調子に乗ってるの!?」

 

 

 言い争う二人をよそに、フリーレンは一先ず既に知っている顔に挨拶する。

 

 

「スイにエルダ。久しぶりだね。スイは最近噂を聞いたよ。あの『破壊の魔天使』を撃退したんだって?」

 

「久しぶりね、フリーレン。ああ、あれ。もう広まってるんだ。……何とかハッタリをかまして引かせたってだけよ。もう一度アレに出くわしたら、ウチのパーティじゃちょっと厳しいわね」

 

「おお~、久しぶりだなあ。フリーレン。元気にしてたか? 私もスイに負けないくらい大変だったんだぞ! 遊戯盤……レッケンベル……紫ゴリラ……うっ、頭が……!」

 

 

 二人とは数百年ほどの付き合いだ。

 

 少し話をすると、エルダは親元で結構な間を自堕落に暮らしてきたが、ついに叩き出されてオイサーストに流れ着き、マルシルの勧めで社会復帰も兼ねて魔法学校に通っていたそうだ。

 

 スイの方はフリーレンよりもずっと熱心に冒険しているエルフだ。魔族の討伐にはそれほど力は入れておらず魔道具の収集を趣味としているが、その実力は確かなものがある。

 

 

 他のエルフたちは初見だったが、関係性は聞かなくても分かる。

 

 彼らはフリーレンのネームバリューに少し興奮しているようで、話したそうにソワソワしている。

 

 ゼーリエ以外は自分よりも若い者しかいないこの空間に少し年寄りになった気分を感じながらも、フリーレンは悪い気分ではないと感じていた。

 

 

 フリーレンはこの集まりに自分が乱入してきたせいで不機嫌になっているゼーリエに言う。

 

 

「昔はこうなるなんて思いもしてなかったよ、ゼーリエ。でも、良かったじゃない。仲間がたくさん増えて」

 

「…………私もこうなるとは露ほども思っていなかったよ、フリーレン。茶化すのなら叩き出すぞ」

 

 

 フリーレンの言葉に、ゼーリエはまた機嫌が悪くなったように見えた。

 

 だが、きっかけを作ったのはゼーリエであることをフリーレンは知っている。

 

 

「いい加減にあの子を許してあげたら? エルフ種を復興したいって願いに最初はゼーリエも頷いてあげたんでしょ?」

 

「まさかこういう形で実行しようとは夢にも思わんだろうが……!」

 

「……もしかしてまた増えたの? 今、何人くらい?」

 

 

 フリーレンの問いに、ゼーリエの魔力が大きく揺らぐ。

 

 周囲のエルフは不穏な空気に怯えるが、だれも何も言えない。

 

 思わずスイが小突いてフリーレンを止めようとするも間に合わず、ゼーリエはついに怒りを露わにする。

 

 

「ほう? 聞きたいか? …………この前の手紙で500を超えたと知らせが来たわ! あのバカ娘が!!!」

 

「良かったじゃん。これで滅びは遠のいたよ」

 

「限度があるわ! 限度が! ネズミかアイツは!? 貴様は他人事みたいに言っているが、エルフという種族が勘違いされかねんのだぞ!」

 

「私に怒らなくてもいいじゃない……」

 

 

 フリーレンは内心では大師匠の取り乱す姿を少し面白く思いながらも、表情はショボショボさせてみせる。

 

 だが、まだまだ内面の幼いフリーレンは、怒りをなだめようとして言ってはいけないことを言ってしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「気に障ったら謝るよ。ごめんね。でも…………『確実に妊娠する魔法』を作ったのはゼーリエだよね?」

 

 

 

 

 

 ────その瞬間、部屋の時が凍った。

 

 

 マルシルは声なき絶叫を上げ、スイは凄まじい跳躍力で窓を破って逃走し、エルダは速やかに意識を手放し、カーラはエルダを盾にしつつ結界を張った。

 

 他の兄弟姉妹たちも逃げようとする中、彼らのグランドマザーは感情の抜け落ちた能面の様な表情になっていた。

 

 

 

 そして次の瞬間、憤怒の叫びと共に人類最強の魔法使いの全魔力が放出されオイサーストを覆ったのだった。

 

 

 

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