古魔族、放漫のトラオムの羽ばたき   作:リッチ

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夢を見せる魔法

 

 

 

 吾輩は魔族である。名は放漫のトラオムを自称している。

 

 クールでスタイリッシュな魔法使いでありたいと常に思い続けているが、実際にそうあり続けるのは難しい。

 

 俺はゼーリエちゃんみたいな戦場の魔法使いではないからなあ。

 

 どちらかと言えば研究者タイプ。戦闘だと一瞬の判断力で戦うタイプではなく、入念な準備で予め勝っておいてから後に戦うタイプである。

 

 だが、苦手を苦手のままで放置しておくのは良いことではない。

 

 いや、苦手とは克服されるためにあるのだ。

 

 しかし自分の分身相手の実戦経験ばかりではどうしても異なった思想の戦術を学べない。

 

 でも、俺とリスクなくやり合ってくれる実力派魔法使いはゼーリエちゃんくらいである。

 

 

 

 ……何とかしないといけない。そんな思いで色々と考えていたのだが……。

 

 

 

 

 

 例によってロマン志向な魔法開発方針に影響されて、娯楽性の高い物が完成してしまった。

 

 でも良いんだ。ちゃんと目的は達成できるし。

 

 

 いわゆる仮想現実シミュレータを目指した結果、出来上がったのは『夢を見せる魔法』だった。

 

 

 ドリームランドは実在した。というか作った。

 

 

 夢と言う名の時間の流れの遅い仮想現実で、過去の大魔族を再現してバトルと研究してます。

 

 バトルが三、研究が七、そんな割合ですね。……己のサガが憎い。

 

 

 まあ、これで俺の戦術も更に洗練されているのは間違いない。

 

 せっかくだから巡業団の面々もこれで鍛えてやろう。

 

 

 

 

 

「と言う訳で、皆さんにはこれから殺し合いをしてもらいます」

 

「「「どういう訳で!!!???」」」

 

 

 バトルロワイアルの会場として選んだのは夢の中に再現した『凶星の爪痕』の周辺。

 

 ここで愛しい我が子たちに全力で殺し合いをしてもらうことにした。

 

 いや、ちゃんとこの後に説明はしたよ。夢で死んでも現実には影響が出ないこととかね。ただし、俺が許可しない限りは死んでも目覚められないと思っていただこう。

 

 

 

 最初こそみんな戸惑っていたけど、本格的実戦訓練と言う趣旨を理解してからは乗り気になってくれた。

 

 流石はゼーレの後継者たちだ。ノリがいい。

 

 記念すべき最初のゲームの最後の生き残りには豪華賞品があると言ってやったら更に乗り気になった。チョロいぜ。

 

 それでは、位置について────はい、よーいスタート。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結論から申し上げますと、それぞれの戦力に差がありすぎるバトルロワイアルはちょっと問題があるということが分かった。

 

 強者が弱者を蹂躙し、弱者は連合を組んで立ち向かう構図くらいは想像していたが、現実はもっと極端な物になったのだ。

 

 

 

 勝ち残ったのはナルメアだ。数多の兄弟姉妹の屍を築いて勝利者となった。ああ、魔人はちゃんと死体残るよ。

 

 しかしナルメアよ。真っ赤に染まった姿で褒めて褒めてとはしゃいでいるのは狂気的に見えるからやめようか。

 

 

 ……序盤から割とレイドバトルみたいな感じになっちゃったな。

 

 しかもレイドボスの方が勝っちゃったよ。

 

 でも連合側もいけないんですよ。どいつもこいつも裏切りを警戒して連携が中途半端になるからナルメアに無双されたんだ。

 

 

 

 ナルメア……お主こそ、真の三國無双よ。

 

 豪華賞品は俺が手作りしたトンカツだよ。さあ、腹一杯食え。

 

 

 

 ちなみに今回の大戦犯はきょうぞうちゃんです。

 

 何が「意外と……姉上も甘いようで」だよ。テメーのせいで戦線崩壊したわ。

 

 裏切りのタイミングはもっと考えましょう。

 

 今はリスポーン先の敗北者(白ひげ)ルームで、背後から顔面ぶち抜かれたアムと取っ組み合いのケンカをしている。

 

 ……やっぱりバトルロワイアルはこれっきりにしよう。結構な友情破壊ゲームだわ、これ。

 

 

 

 代わりに彼らにも普通に過去の大魔族や魔王軍の軍勢とやり合ってもらった。

 

 これはやはり良い訓練になったようだ。

 

 ミクさんやアンジェラたちゴーレム抜きでどこまでやれるか見たかったというところもあったが、充分以上に戦えていた。

 

 敵戦力に対してかなり少ない犠牲で切り抜けたからな。

 

 大魔族が玉砕覚悟で挑んでくるとか有り得ないので、魔人だけでここまで戦えるなら大丈夫だろう。

 

 

 

 だが、魔人たちにとっては魔族相手の実戦で身内が死んだというのがショックだったらしい。

 

 犠牲無し勝利を目指して再挑戦したいと言ってきた。

 

 その意気やヨシ。では、毎回同じだと対策が簡単なのでちょっとずつ戦力は変えてやろう。

 

 実は過去のデータからの再現以外にも色々と出せる。

 

 研究や実戦訓練してたのは俺の夢の世界だが、不特定多数の夢の世界に潜り込むこともできるからな。情報収集がまた楽になったぜ。

 

 

 

 ……よし、コッソリと中身入りの『赤魔公』とその一派を投入。簡単に勝てると思うなよ? 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 勇者ヒンメルの死より30年後。

 

 知性体全ての夢を繋げたもう一つの世界、『幻夢郷』。普通の人間は一人もいない夢の世界。

 

 ──天地の間にあるすべてのものを欲するのは人間の業というもの。

 

 いずれは身内の居場所が現実に無くなることを危惧した魔神が作った避難所でもある。

 

 

 その月面にある月光宮殿にて。

 

 

 ここでは精神だけでなく肉体ごと夢の世界に連れてこられた元魔王軍の面々が住んでいる。

 

 覚醒の世界で活動するのは色々と問題があるため、元魔王軍の記憶持ちは『幻夢郷』に本拠地を与えられていた。

 

 もちろん監視役のトラオムの分身も大勢いるのだが、実質的な自治権すら与えられている。

 

 つまり、夢の世界とは言え、まとめ役であるソリテールは惑星の支配者でもあるのだ。配下のほとんどはゴーレムであるが、勢力は全盛期の魔王軍を超えていた。

 

 

 月光宮殿はソリテールがねだって作って貰った宮殿だ。

 

 夢の世界の創造主にとっては現実ではできない派手で大規模な魔法が使える機会でもあったので、願いは簡単に聞き届けられた。

 

 なお、当初は城の兵士や召使いとして無数のムーンビーストっぽいのが配置されていたが、城主の「キモイ」の一声で全てゴーレムの可愛いモブシリーズに置き換えられた模様。

 

 

 

 

 

 巨大な顔の無い魔神像(ソリテールが後から設置)に見下ろされている訓練場で、とある元七崩賢が鍛え直されているというか、可愛がりを受けていた。

 

 その実力を見込んで覚醒の世界で任務を与えたのにあまりにも無様を晒したので、魔神からちゃんと魔力以外も鍛えるようにと言われたせいだ。

 

 例の搭乗型ゴーレムはちゃんと外してもらえてはいる。逆に言えば、装備抜きで訓練させられている。

 

 

 再訓練の監督はソリテールに任されたが、そのせいで訓練は更に厳しい物になっていた。

 

 ソリテール自身が腹筋を崩壊させられて不覚を取らされた原因でもあるので、八つ当たりも含む。

 

 

「ヤッダーバァアァァァァアアアアア!?!?!?」

 

「はい。私の勝ち。何で負けたのか明日までに考えておけ!」

 

 

 夢の世界に精神だけで遊びに来ているイルルのラッシュで『アウラ・再び改善』が吹き飛ぶ! 

 

 夢なのでイルルも主人の力で簡単に人型になれる。そしてそのスペックがおかしい。明らかに贔屓されまくっている。強化されたはずのアウラが一方的にボコボコだった。

 

 

 

 夢の世界にも更なる夢の深層に潜るための装置『インセプション』があり、それで精神だけを『夢の夢』に送って死のリスクなく鍛えることはできる。

 

 だが、夢の世界の支配者ソリテールの「多少のリスクがあった方が良い」という一声でアウラは生身で普通に訓練を受けさせられているのだ。

 

 

 なお、リスクと言うが、生体ゴーレム化した元魔族たちはそう簡単には死なないと言うか死ねない。

 

 某魔軍司令と似たような仕組みだが、より不死身に近い。完全に肉体を消滅させられても魔神が健在である限りは魂が魔法で紐付けられた新しいゴーレム素体へ移り、より強化されて復活される。

 

 まあ、流石に魂を奪われたりずんだ餅にされたりしたら助からない。だからこそ、アウラの魔族時代の魔法は禁呪指定されている。あと、ずんだ餅にされたら天国にも地獄にも行けない。

 

 

 

 隙を見て頭部だけになって髪の毛で歩行して逃げ出そうとするアウラだったが、いきなり「ガオン!」という音と共に大魔王ソリテールの手元へと一瞬にして引き寄せられ捕まってしまう。

 

 

「何処へ行こうというのかしら、アウラ? 訓練はまだ始まったばかりよ。すぐに修理して次の相手と戦ってもらうわ」

 

「もう十回は大破させられたじゃない!? お願いだからまずは基礎鍛錬からやらせなさいよ!」

 

「ダメよ。それじゃあ私が面白くないじゃない」

 

 

 ちなみにイルルの前の相手は南の勇者の再現体だったし、その前は魔王だ。更にその前は大魔法使いゼーリエ(本物)だった。

 

 

「やっぱり八つ当たりじゃない!? 貴女だってあんな欠陥ゴーレム寄こした癖に、根に持ちすぎでしょ!」

 

「それはどうでもいいのよ。在庫処分だったし。でも、私にまで無様を晒させたのは簡単には許せないわ」

 

「ふ、ふざけるなー! アンタ最強の鎧だって言ったじゃない! よくも騙したわね、このサイコ女! そんなんだからみんなに「ぶっちぎりでヤベー女」って陰口叩かれてるのよ! それにあれはどう考えてもフリーレンが悪いでしょ! なんでこの私が……!」

 

 

 生首アウラは必死に抵抗するが、ニコニコ微笑むソリテールにがっしり確保されてしまっている。

 

 ソリテールは笑顔だが、仲間内で布教しようとしていた主人を模した黒仮面を禁止されたことも重なって実は機嫌が悪い。

 

 そして言ってはいけないことを言ってしまったので、更に訓練の激しさは増すだろう。

 

 

「祝福されし完成したこの私に随分と酷いことを言うのね……まあ、それだけ元気ならまだまだ行けるってことよね」

 

「あっ、いや! ちょっと待って! もう無理! ホントに無理だからァー!」

 

「とりあえず、次は再現体の勇者一行と再戦してもらうわ。もちろん七崩賢時代の魔法は使っちゃ駄目よ」

 

「…………この鬼! 悪魔! 魔族! 自分で魔神の左腕って自称してんの寒いのよ! カフェさんより弱くてアルほど気に入られてもない癖に!」

 

「…………いい度胸じゃないの」

 

 

 アウラの精一杯の反撃にソリテールの笑顔が固まる。その言葉は彼女にシスの暗黒卿の如き無慈悲さを与えてしまったのだ。

 

 ……そして抵抗むなしくアウラは再生されて訓練場へと再び放り込まれてしまう。

 

 ショッギョ・ムッジョ! 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 月光宮殿の別の場所にある小さな喫茶店にて、夢の世界の主と喫茶店の店主が魔導モニターで訓練風景を眺めていた。

 

 いつもは店主が魔人になってから勧められ、大いにハマって研究し続けているオリジナルコーヒーを出しているのだが、今はバイトのリーニエが店主の動きをコピーして代わりにコーヒーを淹れている。

 

 リーニエは店主の正体を知って大層緊張していたが、最近は慣れてきたようだ。

 

 落ち着いた雰囲気の店内には心地よいクラシック音楽が流れているのだが、今日はアウラの訓練風景が中継されているせいで雰囲気が台無しだった。

 

 誘われなければほとんど現実に戻らない店主のカフェがジト目で画面を見ながら言う。

 

 

「……ソリテールってやっぱり問題児ですよね。魔族時代には気になりませんでしたが、アレがまとめ役で本当に良いんですか?」

 

「変わり者は魔族でなくなっても変わり者だったな。まあ、彼女は面白いからあれで良いよ。魔法使いは性格悪い方が優秀な傾向があるし。しかし、アウラも賑やかだし、思ったより早く馴染んでくれたなあ。マハトも早く慣れてくれれば良いんだが」

 

「マハトはまあ、大分真面になったから大丈夫でしょうよ。でも、ソリテールがトップなのはちょっとどうかと思うんですがね……優秀な魔法使いに甘いの、本当に直した方が良いですよ」

 

 

 魔神正典の存在を知らない二人だが、カフェは違和感を感じているようだった。なお、バイトのリーニエは既に教徒になっている模様。

 

 楽観的な主人──トラオムは軽妙な手振りで「大丈夫、大丈夫」と言っているが。

 

 

「ソリテールに対して厳しいなあ。何かあったのか? ダヌアちゃん」

 

「……今はカフェです。貴方が名付けたんだから気を付けてください」

 

 

 カフェは機嫌の良さそうなトラオムを睨むが、糠に釘だ。

 

 この主人はこの前にようやく長年の心配事が解決したので本当に調子が良さそうだった。

 

 

 

 ヴァイゼ郊外にて、恥の多い人生を送っている両親は娘に言葉と魔法でボコボコにされた。

 

 なお、娘の方は自分の生き方に何の疑問も恥も抱いていないので無敵だ。

 

 だが、その娘がトラオムというよりはアルの味方だったおかげで、ゼーリエにアルの存在を認めさせられた。

 

 

 

 ……その直後にトラオムがいい機会だからと、ゼーリエとの関係を普通の友人のものに見直そうと言った所、ゼーリエは卒倒し、娘からトラオムはサイヤ人の王子の如く岩盤に叩きつけられた模様。

 

 

 娘曰く、「今更この無駄に強い恋愛クソ雑魚エルフを捨てたら世界が滅ぶわよ」とのこと。

 

 トラオムは改めてエルフという種族の激重特性にビビらされたが、ゼーリエは尊敬すべき魔法使いで、かつてのゼーレの仲間たちが和解させてくれた相手でもあるが故に今後も関係は続けることになった。

 

 

 その後に娘は「今後はアルを認めさせた上で釣った魚たちにちゃんと餌をやりなさい」と提案。

 

 トラオムは「流石にアルちゃんに悪い」と抵抗したが、アルが説得され受け入れてしまったので逃げ道が塞がれる。

 

 それでも巡業団のアムたち家族だけは絶対にNGという条件で、最終的にはトラオムも提案を受け入れた。

 

 

 トラオムとしては、人間の王侯貴族じゃあるまいし、既にアルがいるんだからもう自分の様な魔法狂いの怪物の愛人になりたいような物好きは現れまいと楽観視しているようだ。

 

 

 

 ……パートナーのアルは「それはどうかしらね」と、呆れ気味だった。

 

 最終的な裁量権はアルに預けられたのだが、アルは自分がこれから更に難しい立場に置かれる覚悟の準備をしている。

 

 

 

 トラオムは浮かれて呼び名を間違えたことをカフェに詫びる。

 

 

「おっと、すまんな。どうしても俺にとっては昔のイメージが強くてな……それで?」

 

「はあ、……ソリテールね、前の任務で余計な物を拾ってきてたんですよ。……これです」

 

 

 カフェは溜息を吐く黒壇のテーブルの上に小さな黒い瓶を置く。

 

 それを見てトラオムは思わず固まった。

 

 カフェはジト目のまま続ける。

 

 

「昔にフリーレンに持って行かれた物です。……忘れていたかったのに……ソリテールときたら「時間が止まっている間に取り返しておいたわよ」って言ってきて……」

 

「……そうか、それは辛かったな。中身は処分したのか?」

 

「もちろん処分しましたよ。でも、ソリテールの顔はちょっとしばらく見たくないです。昔はあんなによくしてあげたのに……」

 

 

 悲し気に言うカフェの前の机にリーニエがコーヒーを持って来る。トラオムの方にも同じようにだ。

 

 元魔族組の間では暗黙の了解で例のスライムの話題は禁じられている。だが、ソリテールは割と自爆覚悟で過去を掘り返す方だ。

 

 コーヒーの良い香りで少し癒されているカフェを見ながらトラオムは言う。

 

 

「いっそ、カフェがまとめ役をやるか? ソリテールより強いし」

 

「嫌ですよ。今更そんな罰ゲーム。と言うか、魔族じゃないんだから強い奴がトップとかやめてください」

 

「やっぱり? もうみんな魔族じゃないけどダメ?」

 

「あー、思い出させないでください。また頭痛くなってきました。魔王軍とか本当に正気じゃなかったですよ」

 

 

 コーヒーの湯気を見やりながら二人はしばらく魔族と魔王軍について愚痴をこぼす。

 

 愚痴が止まらないカフェに、トラオムはついでにずっと気になっていたことを尋ねる。

 

 

「私、すっごく苦労したんですよ。どいつもこいつも集団行動の概念すら希薄なんですから」

 

「だよね。やっぱりそうだよねー。…………俺が味方になってやらなかったこと、恨んでる?」

 

「別に……英断だったと思いますよ。それに、今こうしていられることには感謝しています」

 

「そうか……そうなのか……ありがとう。ちょっと気が楽になったよ」

 

 

 トラオムはホッと胸をなでおろす。たとえそれが嘘なのだとしても、彼は少し救われた。ずっと気になっていたことなのだ。

 

 ……遥か昔に魔族には見切りをつけて久しいが、それでもトラオム自身は魔族だ。種族の裏切り者となったことに本当に後悔がなかった訳ではない。

 

 それに人間のことは好きだったが、それ以上に恐れていた。だからこそ、今でも鍛錬は欠かしていないし、こうやって逃げ場を執拗に作り続けているのだ。

 

 

 安心しているトラオムに、カフェは少しいたずら心が湧いてきて一言付け加える。

 

 

「……ああ、でも、一つくらいは文句を言わせてもらいましょうか」

 

「えっ、なに? 怖いんだけど……」

 

「……もっと早く見つけて欲しかったです。魔王軍ができる前に」

 

「……それは本当にすまんかった」

 

 

 テーブルに額をつけるほどに深々と頭を下げるトラオムに、カフェは「もういいですよ」と声を掛ける。

 

 そもそもカフェは文句を付けられる立場でもないのだ。いつでも魔王軍を潰せたはずのトラオムがそうしなかった理由は、そういうことだろうし。

 

 だから結局、『もっと早く』の前に付けようと思った『アルより先に』は言えなかった。

 

 

 その後も最も古い知り合い同士である二人は、コーヒーの香りを楽しみながら語り合った。

 

 内容は、次はどんな夢とロマンに溢れた魔法を作るか。

 

 無邪気に楽しそうに語るトラオムを、カフェは「本当に変わらないなあ」と思いながら眩しそうに見つめていたのだった。

 

 

 







第一部完です。
お読みいただきありがとうございます。
勢いだけでここまで書いてきました。またネタが浮かんだら続きます。
とりあえず、アニメ見ながら原作が進むのを待ちたいと思います。
過去で顔見せした大魔族たちの活躍楽しみだなあ。あと、現代でグラオザーム本当に死んでるんだろうか?
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