古魔族、放漫のトラオムの羽ばたき   作:リッチ

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応援の魔法

 混沌を極める戦場。人間も魔族も区別なく、次々と倒れ行く修羅場。

 

 数々の戦場で赫々たる戦果を挙げた武人も、統一帝国でも最高峰の宮廷魔法使いも。

 

 無数の人間を喰らった大魔族も、千年近くを生きた魔王軍の将軍たちも。

 

 だれもが容赦の無い削り合いの最中に倒れ伏していく。

 

 

 ────そして、まさにこの瞬間にも、一つの戦いに決着が付こうとしていた。

 

 

「やれやれ……実際油断ならぬ強敵でした。……よく頑張りましたね。お嬢さん」

 

 

『星杖剣』のヴィザは息を整え、負った手傷の具合を確かめながら、残心をゆっくりと解く。

 

 周辺の要塞はもう原形を残していない。無数の瓦礫の山の中から、火の手が上がっている。

 

 魔剣『オルガノン』が何度も振るわれた結果だ。

 

 動くものはヴィザの眼前の存在を除いて、もう誰も居なかった。

 

 かつてはここに練兵場があり、技量を高め合う多くの戦士たちで賑わっていたことなど伺い知れないだろう。

 

 毎朝整列して『愛のうた』を歌って皆を和ませていたゴーレムたちも、もう居なくなった。

 

 

「……」

 

 

 大魔法使いフランメの侍従たる糸目の指揮官級ゴーレムは、まだ稼働していた。

 

 だが、既にその四肢は無く、美しい黒翼も片方が半ばから断たれていた。

 

 戦闘続行はほとんど不可能。実質的に決着はついた。

 

 

「悪くは無かったですよ。ただ、少々相性が良くなかったですな」

 

 

『星杖剣』の言うとおりであると、指揮官級ゴーレムも認識していた。

 

 そもそも彼女たちゴーレムの適正な戦闘距離は遠距離で、戦場での役割は砲撃役だった。

 

 人間の熟練の魔法使いに匹敵する実力を持ち、数が集まるほど連携で力を増すのだから接近戦でも上澄みなのだが、得意では無かった。

 

 対する『星杖剣』は接近戦では最上位の実力を誇り、その魔法武器の凶悪な性能で中距離でも広範囲に一撃必殺の斬撃を放つことができた。

 

 他所へ行かせない事へ固執し、半端に囲んでしまったのが失敗だったかもしれない。

 尤も、だったらどうすれば良かったのかといえば、逃げるしかなかったのだが。それは、命令を受けたゴーレムの身では難しいことだったし、この場の人間たちを見捨てることにも等しかった。

 

 遠くから轟音が響くと共に、地鳴りがした。

 

 

「ふむ。ミカ様が暴れ始めたようですな。勢いで隕石を叩きこまれてはかないません。一旦、仲間を集めて引きましょうか」

 

「……」

 

 

 糸目のゴーレムは己の非力を呪った。役目を果たせぬ不甲斐なさと、仲間の仇を討てぬ無念さで狂いそうだった。

 

 だが、どんなに悔しくてもこの結果は覆せない。

 

 切り札の対魔族殲滅形態『ゼンメツ・アクション・モード』でも、僅かな手傷を与えるのが精一杯だった。

 

 もはや万事休す。糸目のゴーレムは、人間でも無いのに自分の意識が走馬燈の如く回り始めたのを認識し────

 

 

 

 

 

 □□□

 

 

 

 

 

「……あれ? ここ、どこっすか?」

 

 

 ふと、知らない場所で目を覚ました。

 

 周囲は薄暗い。見れば、どこまでも透き通った湖の真ん中にある不思議な舞台のような何かに立っていた。

 

 そう、彼女は立っていたのだ。

 

 

「うわ、傷一つない! 何で!? 幻術っすか!? いや、私たちゴーレムは精神系には極めて高い耐性を持つはずっす。……私は……そう、『星杖剣』に敗北して……」

 

 

「──まだ、勝負はついてないんじゃないかな?」

 

「うっひゃあ!?」

 

 

 混乱していた彼女の背後から、世にも美しい声が響いた。

 

 驚きのあまり飛び跳ね、恐る恐る背後へと振り返る。

 

 そこには優しく微笑む、緑の大きなツインテールをした、土くれの歌姫が一人。

 

 そう、この世界で最も有名で、最も強力で、最も愛されているゴーレムが脈絡なくそこに居た。

 

 

 糸目のゴーレムはさらに混乱して叫んだ。

 

 

「アイエエエエエ! ミクさん!? ミクさんナンデ!? いや、ホントになんでっすか!?」

 

「どーも! ハツネ・ミクです! 私は偶然ここへ来て、貴女を応援します! マスターは無関係!」

 

「いやいやいや! 意味わかんないっすよ!」

 

「ああ、ここはね。夢の世界だよ。その私のプライベート空間。それと、本当は私がゴーレムの誰かを贔屓しちゃうのはダメなんだけど。でも、今回は敵が魔族だし。だいじょーぶ!」

 

「えぇ……」

 

 

 歌姫は底抜けに明るく、それでいて押しが強い。

 かつて主人に付き添って何度か巡業団の興行を見に行った時に戻ったかのようだった。

 糸目のゴーレムは、そんな場合では無いのに釣られて少し郷愁に囚われ和んだ。

 

 しかし、何時までも現実逃避していられない。

 

 

「あの、察するに、私はまだ完全に壊れていないってことっすか?」

 

「もちろんそうだよ」

 

「いや、でも……マジでスクラップ寸前で、もう文字通り手も足も出ないっすよ」

 

「……みんなはそう思ってないみたいだよ?」

 

「え?」

 

 

 不思議なことにその時初めて、周囲に多くの人影があることに気が付いた。

 それは彼女と歌姫より背が幾分か低く、ほとんど同じ容姿で、同じ黒い服を着ていた。

 ──それは、間違いなく彼女が率いていた配下のゴーレムたちだった。

 

 

「みんな……」

 

 

 何と言っていいか分からず、思わず息を飲む彼女の前で、メカクレの黒い仲間たちは複数の旗を振っていた。勇壮な帝国魔導師団の旗。つまり、彼女たちの旗だった。

 

 一人生き残っている指揮官への恨み言一つなく、彼女たちはいつも通り控えめだが元気に、そして誇らしげに旗を振っていた。

 

 

「そうっすね……まだ、負けていないっすよね」

 

「いい子たちだね。この子たちは女神様の所へは行けないけれど、ちゃんと私が面倒を見るよ」

 

 

 歌姫は嬉しそうにそう言うと、彼女たちに近寄って二人ほどを撫でまわす。

 撫でられた個体は憧れのアイドルと握手したかのように、のぼせ上ってしまう。

 

 糸目の指揮官がそれを眩しそうに見つめていると、一人が歩み出て、ある物を差し出した。

 

 

「あ……私の腕章……」

 

 

 現実では戦闘中に腕ごと飛んで行ってしまった腕章だった。

 それは主人からの贈り物であり、傷つく度に彼女たちが縫い繕ってくれた物。

 身分を示す紋章の裏に、「じゃすてぃす」という文字が縫い込まれていた。

 

 

 ……彼女は、再び決意した。

 

 

「……私を『応援』してくれるって本当っすか?」

 

「うん。精一杯『歌う』から、聞いてくれる?」

 

 

 たかが歌での応援が何になるのかと思う者も居るだろう。

 だが、人々の精神が魔法の源泉なのだとしたら、誰よりもそれを揺り動かしてきたこの歌姫の声は、この世界で最高の魔法の一つであった。

 

 

「じゃあ、お願いするっす。やられっぱなしで終わるのは、性に合わないっすからね!」

 

 

 歌姫はツインテールを激しく揺らして頷き、この日一番の笑みを浮かべた。

 

 

「──その言葉が聞きたかった! さあ、ミュージックスタート!」

 

 

 瞬間、薄暗いステージが一気にライトアップ! 青空には幾重にも虹がかかり、無数の花びらが舞う! ベース音が大音量で響き渡り、メカクレゴーレムたちがリズムに合わせて旗を振る! 

 

 

「「「「ミク! ミク! カワイイ! ミク! ミク! カワイイ!」」」」

 

 

 同時にドレスアップして華やかな姫騎士の姿になった歌姫は、(ツルギ)を持って天を指した! 

 

 

「備えて! ペイバックタイムだよ! ──『TESTAMENT』!!」

 

 

 コンサートの始まりを告げる、初めての音と共に、視界が白く染まって行く。

 

 最後に、仲間たちが歌姫と合わせて思い切りジャンプするのが見えた。

 

 

「「「「カワイイヤッター!!!」」」」

 

 

 

 

 

 □□□

 

 

 

 

 

「──なんとっ!?」

 

 

 尋常ならざる魔力の胎動と、凄まじく強大な存在の気配を感じて、『星杖剣』は弾かれたように即座にその場から飛んだ! 

 

 総毛だつ異様な迫力に飲まれまいと魔剣を抜き放ち、最高レベルの警戒態勢へ。

 長年の戦闘経験が為せる状況判断である。

 そして油断なく『変貌』しつつある敵対者を確認する。

 

 

「馬鹿な……再起動だと……! 有り得るのか、そんなゴーレムが……!」

 

 

 僅かな間に、死に体だったはずの指揮官級ゴーレムの姿は一変していた。

 

 糸目は大きく開かれ、獰猛な獣を彷彿とさせる四白眼に。

 口元は大きく裂け、歯も獣の如きギザ歯に。

 黒翼はより大きく、しかしその羽はほとんど失われ、堕天使の如き刺々しい有様に。

 

 そして無くなっていたはずの四肢を再生させ、ゆらり、と立ち上がり、不気味に猫背で構えを取る。

 

 

「……きひひ」

 

 

 俯いたままで『引き寄せの魔法』を発動し、どこからともなく腕章が飛んできて、その腕にはまる。

 

 圧倒的な不吉さを感じながらも、『星杖剣』はあくまで冷静に尋ねた。

 

 

「……お嬢さん。何者ですかな?」

 

 

 新生した指揮官級ゴーレムは顔を勢いよく上げ、先程とは別人の様な声色と口調で、自己紹介した。

 

 

「帝国宮廷魔導士団所属。大魔法使いフランメ様付き護衛筆頭、兼、帝国魔法人形師団、団長ゴーレム────それ以上をキサマに名乗る気は無いィィ! きひひひひひひいっ~~! 破壊だ! 破壊してやるぅぅ!!!!」

 

「ぬう!」

 

 

 杖が跳ね上がるように突き付けられ、散弾発射! 同時に『星杖剣』も魔剣を抜き放つ! 

 

 魔弾と斬撃が交差する! 

 魔弾は先程までとは別物の威力で『星杖剣』に突き刺さり、軽くはない傷を負わせる。

 神速の斬撃はゴーレムへと食い込み──断ち切られない! 分厚い砦を裁断した刃はゴーレムの骨格を断てず、そして彼女は止まらない! 

 

 

「ぐっ……これは手強い!」

 

「ぎゃぉう! ……ぬぅはははははははは!」

 

 

 強引に前へと出る! 『星杖剣』は間髪入れずに返す刀で迎撃! だが、それすらも受けつつ前へ! 拳を振り上げ、矢の如き己の速度に乗せて、殴り抜ける! 

 

 

「がはっ! ……っなるほど、面白くなってきましたね!」

 

「ふっふっふっふっふ……死ねぇ!!」 

 

 

 傷を負いつつも笑みを深める両者は、一歩も引かず再び勢いをつけてぶつかり合った! 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

「甘いわ! こんな案山子めいたカラテでこの私に敵うと思うてか!」

 

「グワーッ!」

 

 

 カーラの奇襲は完璧なはずだった。だが、エルフの大英雄は人類屈指の猛者でもある! 

 

 紙一重で娘の拳を躱すと、容赦なきカウンターを叩き込み吹き飛ばした! 

 

 だが、奇襲は一撃では終わらない! 二の矢、三の矢が迫る! 

 

 

「我が一族の風評被害の元凶! 今日こそ更生させてやるわ!」

 

「やっぱり小細工が通じる相手じゃない! 全力攻撃だ!」

 

「ウオオオ! 今日と言う日の為にアレンジした『人間を殺す魔法(ゾルトラーク)』を受けろ!」

 

 

 無数の攻撃魔法が容赦なく全方位から撃ち込まれる! 

 こんなもん普通の人間がくらったら実際死ぬ! ネギトロを通り越して灰になる! 

 だが、一族の者なら誰もが知っている通り、この母親は尋常ではない! 

 

 

「ぬるい、ぬるい、ぬるすぎるわ!」

 

 

 全方位に防御魔法を展開。三十人からの全力砲撃を完全に防ぐ! 

 

 そして包囲する子供たちを見やってサムズアップしてみせる余裕すら見せる。

 

 流石に動揺が広まるが、攻撃の手は収まらない。

 

 

「嘘だろ! 全く堪えてねぇぞ!」

 

「行動阻害系はどうせ効かない! 合体魔法で吹き飛ばすんだ!」

 

「知ってた。……用意してた魔剣もってこい! 魔剣!」

 

 

 まるで大魔族でも相手にする準備をしていたかのような重装備。

 一体この襲撃にどれほど注ぎ込むつもりだろうか? ともかく、その程度には恨まれている! 

 集められた武装が、余すことなく実の母親へぶち込まれようとする! 

 

 

「小童どもめ! 今一度、その身に刻み込んであげるわ! なぜ、フリーレンたちではなく、この私がエルフ最強の英雄と呼ばれているのかを!」

 

 

 彼女はその全てを己の魔法とカラテで軽々と跳ね返した! 

 

 

「守りがお留守になってるわよ!」 「グワーッ!」

 

 

 全方位への防御魔法を維持しながら、複数思考で全方位へ反撃砲撃! 

 凄まじいことに狙いを付けずに放ったのではなく、精密なコントロールで各自へ攻撃が向かう。

 後遺症を残さない程度の手加減も完璧だ。

 

 

「魔法使いだからって動けない奴は生き残れない!」 「グワーッ!」

 

 

 吹き飛んだ者たちと代わって、油断なく物理的障壁を構築していた者たちが攻撃に出ようとするが、跳躍してきた母によって壁を無視されて殴り倒されて行く! 

 

 

「キナ臭いことになってる地域もあるんだから、これくらい凌げるようになりなさい!」

 

「「「アバババーッ!!!」」」

 

 

 宙へ飛ぶと、両手から桃色の閃光を放ちながら横一回転! 

 物理的、魔法的、両方の防御を透過して、まとめて効果を及ぼし無力化する! 

 虎の子だった魔剣ストームルーラーは発動できず! 

 

 しかし、倒れ伏し痙攣する兄弟たちを踏み越えて、最初に殴り飛ばされたカーラが復帰。

 

 再び拳を握り締めて殴りつける! 

 

 

「ドグサレッガー!」

 

「あんたそれでか弱い乙女は無理があるわよ! てか、その僧侶服は相変わらず飾りなんかい!」

 

「グワーッ!」

 

 

 再び殴り飛ばされる────かに見えた! 

 

 

「もらったァ──!」

 

「!?」

 

 

 カーラは拳に押し出されながらも左足を母の首に掛けた! さらにもう右足が膝蹴りの体勢を取っている! そして、両足が凄まじい勢いで閉じられた! まるで虎の顎の如く! 

 

 重い打撃音が響き渡り、カーラは勝利を確信する。

 

 

「っしゃあ! このままキメて、その腕へし折って……」

 

 

 

 だが、相手はこの大陸でも最上位の大戦士でもある。

 その頑丈さは隕石の直撃を貰っても大した怪我は負わないほどだ。

 

 

「……やるじゃない」

 

「ウェエエエエー!? 何で堪えてないんですか!? このオバケめ!!」

 

「あんたのフィジカルなら、鍛えればこのくらい平気になるわよ?」

 

「ウソついてんじゃアバババーッ!?」

 

 

 結局、カーラも桃色の光線を食らって無力化されてしまう。

 

 母親への下剋上とエルフのイメージ改善を目論んだ決死隊は、無惨にも壊滅した(百二十年ぶり七回目)。

 

 そう、エルフの大英雄からしたら味方や身内から裏切りを食らうなど、チャメシ・インシデントなのだ。

 

 長らく隠遁していたゼーリエとは違い、ずっと人間社会と密接にあったのだから、ガチで命を狙われた回数はもっとある。その度に暗殺組織を壊滅させる程度には反撃している。

 それでも人間に絶望せず、また己を曲げず、逆に世界に自分への適応を押し付けているからこその大英雄なのかもしれない。

 

 

「しっかし、今回は随分と若いメンバーばかりね。本気で勝つ気有ったの? もっと上の兄弟姉妹を連れてきなさいよ。まあ、上のはほとんど諦めてるけど。……こういうのを期待しているとママのこと言えないけど、もっと気合の入った挑戦者は現れないものかしらね?」

 

 

 豊かな胸を持ち上げるようにして腕を組むと、大きくため息を吐いて倒れ伏す子供たちを見下ろす。

 

 あまりにも無理な注文である。

 実際、大魔法使いゼーリエに近い魔法使いであり、『角折り』ナルメアに条件次第で勝ちうる戦士なのだから、英雄クラスであっても上澄みでなければ勝負にもならないだろう。

 

 

 

 

 だが、今日と言う日は、そんな願いが叶ってしまう日でもあった。

 

 

 

 

 突如として、至近距離に魔力反応が出現。

 

()()はずっと戦闘を観察し、それが終了するのを待っていたのだ。

 

 覚えのある魔力に思わず硬直するエルフの大英雄に背後から決断的に歩み寄り、声を掛ける。

 

 その人物には似つかわしくない、背筋が凍るほど冷たい声を。

 

 

 

「────どうも。お久しぶりでございますね。…………わたくしの大事な大事な義妹よ」

 

「アイエエエエ!? コッコロ義姉さん!? コッコロ義姉さんナンデ!?!?」

 

 

 先程までのふてぶてしさが一瞬で消し飛ぶ! ブチ切れモードの姉に怯える女の子に早変わり! 

 

 両親にも全く怯まないこのエルフの大英雄だが、頭が上がらない人物が二名ほど存在する。

 

 その片割れがこの義姉。『天翼の慈母』コッコロである。その胸は平坦であった。

 

 

「ね、義姉さん。なんでそんなに怒っているの……?」

 

「ほう、しらばっくれますか」

 

 

 童女に還ったかのように怯えながら顔色を窺い尋ねる。

 

 だが、コッコロからはいつもの聖母のような微笑みは失われ、能面の様な表情に絶対零度の視線があった。言うまでもなく、氷の視線が貫いているのは義妹だ。

 

 義妹は何が逆鱗に触れたのかと恐れ戦く。

 

 

「私の種族復興活動に関しては義姉さんも認めてくれてたじゃない!」

 

「それではありません。思う所が無い訳では無いですし、無関係ではないですが」

 

「この子たちを叩きのめしたのは指導よ! ちゃんと手加減もしてるわ!」

 

「それでもありません。実際、随分と優しくしましたね。貴女なりの家族への愛情を感じました」

 

「それじゃあ何で!?」

 

 

 

 

 

 

 

「義妹よ…………ゼル君から、貴女の良くない話を聞いたのです。……それは口にするのもおぞましい淫堕邪教についての話……」

 

「あっ……(スゥー」

 

 

 義妹の思考の中で無数の言い訳が交錯する。

 

 だが、そんなものではもはや怒れるコッコロには何の意味も成さないように見えた。

 

 

 冷たく見つめられながら、無限にも似た一瞬で、彼女は覚悟を決めた。

 

 

 表情を凍り付かせたコッコロと対照的に、「ふっ」、と微笑み、ゆっくりと腰を落とす。

 

 

 

「義姉さん……私もね、この性癖を直したいとは思っているの。……でも、その方法は二つしかないわ。死ぬか……」

 

「……」

 

 

 

 義妹に応じる様に、コッコロもゆっくりと腰を落とす。

 

 

 

「……()()()までやり続けるか」

 

 

 

 姉妹は静かに……しかし明確な揺るがぬ戦意を持って、カラテを構え合った。

 

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