古魔族、放漫のトラオムの羽ばたき   作:リッチ

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強固な盾の魔法

 吾輩は魔族である。正直、この生まれを恨まなかったかといえばウソになる。

 

 名はトラオム。人間離れした容姿の古い魔族だが、『完全な変身の魔法』があるので真の姿を知る部外者はもうほとんどいない。

 

 外出する時はエルフになっている。皮肉気な微笑がカッコイイ緑髪のエルフだよ。

 

 核爆弾でも死なないどころか、()()()でもある程度はやって行ける自信があります。

 

 

 

 エルフの隠れ里から出ることを選択した孫たちは自立したとみなして庇護対象ではなくしているのだが、実は彼らが社会にある程度馴染むまでは緑髪のエルフの姿で支援しているんだよね。

 

 勘の良い奴は俺がどういう関係性にあるエルフなのかまでは気が付いているだろう。

 

 そりゃまあ、兄弟姉妹で昔話でもすれば全員に共通する友人として、毒と引き寄せの魔法が付いた魔弓を使う緑髪のエルフが出て来るわけだからな。

 

 エルフ娘もゼーリエちゃんも、俺の存在そのものが色々と厄ネタの塊なので黙っているようだが、いつかは探求心の強い家族が辿り着くかもな。

 

 ちょっとネタバレするのが楽しみだ。……真実に発狂するようなのは家の一族にはおらんやろ。

 

 

 まあ、最近は主に夢の世界で活動している。簡単には見つけられないだろうが。

 

 こっちだとリアルほど自重しなくていいから楽しいです。

 

 大陸の環境を激変させてしまうような大規模魔法でも遠慮なしに使えるからな!

 

 

 

 まあ、子供たち……特にエルフの二人は「リアルでも自重して」って言ってくるんだけどね?

 

 コッコロはともかく……あのアホ娘に言われるのは納得がいきませんよ……。

 

 ……俺、実は魔法だけでなく、子育てにもちょっと自信あったんですよ……まあ、誰かさんのせいでその自信も木っ端微塵に消し飛んだんだけどね……。

 

 

 

 いや、あの変態については覚醒する前からマジで大切に育ててたんですよ?

 

 俺がアイツの立場だったら、お辞儀様みたいなグレ方してもおかしくないと思ったからな。

 

 我ながらお人好しだと思う。まあ、どっかの漫画の弱き者みたいに勝手に遺伝子で生物兵器を作られまくるよりはマシやろ。

 

 そう思って他の子供たちと同じように惜しみなく愛情を注いだんだが……。

 

 

 それで大切に育てた娘が、よりにもよって変態を超えた変態に覚醒するとか刺激的でファンタスティックだろ(白目)

 

 

 破天荒ってレベルじゃねぇぞ……。アレに最低限の倫理観のようなものを備えさせられたの奇跡じゃね?

 

 

 あと、アイツは最近はゼーリエちゃんが新しく取った人間の弟子とも仲良くやっているらしい。

 

 その流れでゼーリエちゃんとも仲直りして欲しいけど…………こればっかりはゼーリエちゃんの方が折れるべきだからなあ。

 

 

 ああ。それと狂三ちゃん経由で巡業団にエルフ娘の所業が伝わった結果、アムがミクさん経由で鬼のようにアイツを勘当するように言ってきてるのも辛い。

 

 どうしてウチは家庭問題が絶えないんや……もうマジ無理。……いま『魔法を作る魔法』発動した……魔法作ろ……。

 

 

 

 

 

 さて、今日も今日とて魔法を作る。

 

 俺は魔法使いだからね。魔法を作ってなんぼだ。『魔法を作る魔法』はいつでもフル回転です。

 

 本日のお題は防御魔法。

 

 うん、魔法戦においては基礎中の基礎であり、使えない魔法使いは戦場に出てくんなとまで言われる魔法だね。魔族は正気を疑うことに習得してない奴も多いけど。アホかな?

 

 だからこそ強固で即応性の高い防御魔法は人間の魔法使いたちにも常に研究されているんだ。

 

 ……あと、魔装服とかの影響で大陸の魔法の火力がどんどん上がってきているからね。

 

 鉄火場に身を置くアルちゃんのためにも、防御魔法のマメな更新は必須なのだ。

 

 

 ミクさんから魔王の情報を聞いたらしいエリザベートたちから、「大体の因果を辿ったらマスターに行きつくじゃないの!!!」と文句を付けられたが……

 

 

 ……すまんな、本当にすまん。筋で言えば俺が魔王を地獄へ送らねばならんのだろう。俺が昔、あの子を育ててしまったのだから……

 

 

 それでも、やっぱり俺にはダヌアちゃんを殺すのは無理です……。アルちゃんには白状したけど、一応は前世含めて初恋だったんです……。

 

 なので、悪いと思ってはいるがこれからも君たちに魔王軍の内偵と切り崩しをやって欲しいのだ。

 

 

 

 

 ともあれ、実際に新しい防御魔法を作ってみたから試してみてくれ。

 

 

「ちょっと待って! まだ心の準備が出来てないから! というか大丈夫なの!? 今アルルーナたちが撃とうとしてきてるのって、アレよね!?」

 

 

 うーん。相変わらずアルちゃんは可愛いなあ。メンタルゲージが回復していくのを感じる。

 

 だからこそ、君の護りは万全にしておきたいのだ。

 

 最近はゴリラみたいなパワーの女魔族にベアハッグで絞殺されそうになったみたいだしね。

 

 魔王よ……魔族だから仕方ないけど、もっとまともな部下揃えてくれ。

 

 あの危険なメンヘラピンクゴリラはどこから拾って来たんだろう……。

 

 ちょっと風変わりな魔族だが、妙に気になるんだよな……少し調べてみるか?

 

 

 

 あと、アルちゃん。何がアレなのかは知らんが、俺はアルルーナのあの攻撃を『相手を眷属に変える寄生種マシンガンの魔法』と呼んでいるよ。

 

 

「やめて! やめさせて! 洒落になんないわよ!? あれって普通の魔法じゃなくて呪いの類でしょ! 防御魔法ごと侵食するタイプの!」

 

 

 大丈夫大丈夫。俺はともかく俺の魔法は信じられるだろ? 

 

 指輪の護りと『適応する魔法』の光輪があるから、万が一のことも無いよ。

 

 さあ、うちー↓かたー↑はじめー↓

 

 

「「「「アルちゃん、すきすき…………一つになりましょう?」」」」

 

 

「イヤァーー!?」

 

 

 重機関銃めいた連射がアルちゃんを襲う! まあ、射出される種は赤子の頭部くらいあるんだけどね。普通に物理威力も凄いから大型のドラゴンでも一瞬で血煙になるよ。

 

 

 ……魔法の追加効果のコンセプトを考えると、この威力は要らなかったんじゃねえかな……。

 

 

 まあ、魔物の魔法なんて無駄なく洗練されていることの方が珍しいし、『貪食の樹海』だとこれくらいの火力は必要なんだろうな。

 

 

 

 とはいえ、そんな超威力魔法も全てがアルちゃんに届くことは無い!

 

 展開された大盾の形状の半透明の魔法の盾が全てを防いだからだ。

 

 うん、我ながら良い出来だ。アルちゃんは白目剥いてるけど、可愛いから問題無し。

 

 

 

 『強固な盾の魔法』は実は物理的な防御魔法ではない。いわば概念障壁とでも呼ぶべき魔法だ。

 

 盾を出した方面からに限るが、それがどんな攻撃であろうとも使用者を害するモノであるならば問答無用で防いでくれる。攻撃の威力は関係無い。

 

 当然ながら無形の呪いの類であっても防げる。それでいて魔力消費もリーズナブル(当社比)

 

 ちょっと習得に難があるのが玉に瑕だが、アルちゃんには夢を通じて使用感を電波の如く送信することで習得してもらった。

 

 これで『消えない黒炎の魔法』すら防ぐことができるようになった訳だ。

 

 本来ならあれ、相手の防御魔法とか物理的な障壁も全て燃やすまで止まらないからね。

 

 

 

 ……魔族が主な脅威だが、最近は契約中にアルちゃんにアンブッシュを掛けようとする不埒者も絶えなかったので、これで安心である。

 

 まあ、表向きは魔王軍の大幹部だから仕方ないんだけど……なんか結構な割合で人魔共存を目論む人たちが仕掛けて来るんだよね。なんで?

 

 いや、なぜに共存を望みながら暴力??? ……魔王軍と変わらんやんけ!?

 

 クソデカ疑問符が俺を襲ったが、ちゃんとこれまで通りに殺さないように対処している。

 

 

 それで頭の中を夢から覗いてみたら、ちょっと思考回路が壊れてる感じの人のこともある。

 

 いや、別に人魔の共存の為にあなたとアルちゃんが結ばれる必要性はありませんよね?

 

 やはりアルちゃんからは人を引き付ける不思議なオーラめいた何かが出ているらしい。

 

 

 というか、仲良くなる過程をすっ飛ばして初手で監禁しようとするアホ多すぎ!

 

 監禁から始まる恋愛があるわけないだろいい加減にしろ!! 付いてる頭は飾りか?

 

 巡業団の方にもこういう行き過ぎたファンは定期的に湧いてるみたいだけどさあ。

 

 なぜ、表向き人類の敵対者であるアルちゃんの方に湧くの? 実はチョロいのバレてる?

 

 まあ、ボケ共は全員軽度の記憶喪失とハゲるだけで勘弁してやったが。アルちゃんが止めなかったら去勢くらいはしたぞ。

 

 

 

 アルちゃんは仮にも古魔族。半端な封印結界とか拘束系の魔道具が通用するわけがない。

 

 贔屓抜きの大魔法使いとしての評価だが、人間でアルちゃんを倒せそうな奴を俺は知らん。

 

 エルフでも……ゼーリエちゃん以外では仕留め切れないだろうな。俺がクソギミック山盛りにしてるせいだが。

 

 俺が履かせた下駄抜きでも、エルフ娘ですら本気のアルちゃんにはまだまだ敵うまい。

 

 そんな彼女と肩を並べられる怪物が複数いるんだから、人間と魔族の戦力差は大きい。

 

 そこはあのゼーリエちゃんの新しい弟子に期待させてもらうかな?

 

 

 

 しかし、アルちゃんには常に護衛のゴーレム三人衆もセットでいるし、一つの指輪もあるから大丈夫なのは分かっているのだが……こうも絡まれると不愉快なのは変わらないので、もっと抜本的な解決策を考えんとな……。

 

 

 

 

 

 あ、『強固な盾の魔法』ですが、呪いといっても『全てをずんだ餅に変える矢の魔法』は無理です。防げません。本当に無理です。ずんだは運命とか因果律に干渉しているみたいですから。どうしてこんな魔法が作れてしまったのか一番困惑しているのが俺なんだよね……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふむ、()()()()()

 

 

 他ならぬ自分の領地。大陸北部の城塞都市、ヴァイゼを己の居城のテラスから見下ろしながら、領主グリュックは呟いた。

 

 ぼんやりと何を考える訳でも無く都市を眺めていたのだが、ようやく胸の中に抱く不思議な感情の正体を突き止めたのだ。

 

 そうすると、どうして自分がそんな感情を抱いていたのかにも連鎖的に気が付く。

 

 

「これは……まだ、魔王が討伐されたばかりの頃のヴァイゼかな?」

 

 

 領主の記憶に残る街並みはもっと発展していたはず。

 

 だが、彼の目の前に広がっているのはまだ彼が若かったころの光景だった。

 

 となれば、自分を包む奇妙な懐かしさと合わせて、この状況にも察しが付く。

 

 

「となると…………これは夢か。……また随分と懐かしい夢だ……」

 

 

 領主はかつての苦労の数々と成し遂げてきた事績……そのためにやってきた悪行の数々を思い出し、苦笑する。

 

 そうして彼は懐から煙草を取り出して火を灯す。

 

 笑ってしまうことに、煙草は晩年の彼の好みの銘柄だった。夢だからこその都合の良い矛盾だ。

 

 

 煙を燻らせながら領主は振り返りもせずに背後へと問うた。

 

 

 なんとなく、確かめるまでもなく其処に居る気がしたのだ。

 

 

「……それで、これは現実なのかな?」

 

 

 返答は待たれていたかのように直ぐだった。

 

 

 

「おかしなことを聞かれますね。夢だと言った後に、現実なのか、とは」

 

 

 悪友の言葉はいつも通り平坦で、しかし彼には分かる程度に少しだけ調子が良かった。

 

 そして、彼だからこそ一声で気が付いた事もあった。

 

 

「ふむ……君らしくないな、友よ」

 

「というと?」

 

「今のは、すっとぼけただろう? 意味が分かっているのに分からない振りをした。それも大した目的もなく。……言葉を操り人を騙すのが魔族だが、目的の無い言葉遊びに価値や楽しみを見出すのは魔族らしくない」

 

「なるほど。では、その矛盾も私が夢の一部だからと思われますか?」

 

「普通に考えればな。……だが、それでは面白くない。せっかく君が夢枕に立ってくれたのだ。もう少し探ってみよう」

 

 

 領主は皮肉気に笑って煙を吸い込むと、先に逝ったはずの共犯者に向き直った。

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

「トラオム。ヴァイゼの夢の周囲に『強固な盾の魔法』を展開しました。長く維持する必要は無いのですし、結界より強力ですから良いでしょう?」

 

「おう、問題無い。これで()()が終わるまで『悪夢』どもは近寄れないだろう。……しかし、流石だなあ、カフェちゃん。それ、習得は俺の魔法の中でもかなり難しい方なんだが」

 

 

 夢のヴァイゼの門前にて、魔族のような容姿の二人が話し合う。

 

 真っ黒なコートの女性と、いかにもな魔法使い装束の顔の無い男だ。

 

 平和な街の門前にこんなのが居たら速攻で兵士が飛んできそうなものだが、領主の夢を基礎に作り上げられた夢の世界のヴァイゼ故にそれはない。

 

 まあ、仮にこれが現実空間であったとしても、この二人を同時に相手にできる戦力など何処にも居ないのだが。

 

 

 

「短い間でしたが、私が一番弟子ですからね。……ところで、同行しなくて良かったのですか?」

 

「冗談はよせ。これで付いて行ってたらそれこそ頭魔族だろ。無粋の極みだぞ」

 

 

 

 どちらも約三千年もの時のほとんどを魔法の研鑽に費やした、怪物を超えた怪物である。

 

 もっとも、その成果として、あるいは代償として、魔族と呼ばれるための条件は失っていたが。

 

 

 並んで城塞都市ヴァイゼの立派な門を眺めつつ、二人は既に結論の出た問答をする。

 

 

「ねぇ、トラオム。人間と魔族の共存……やはり不可能なのでしょうか?」

 

「魔法の前では不可能な事など無いよ。まあ、俺の魔族の定義だと、不可能という結論になるんだが」

 

 

 それが、少なくない時間を共存の為の研究に注ぎ込み、結局は諦めた男の結論だった。

 

 彼はカフェ以外の研究の為に育てた全員を()()しており、共存を諦めたその後にずいぶんと経ってから友人たちと巡り合い、魔人族を生み出すに到ったのだ。

 

 ちなみにカフェが前世にシュラハトに届けさせた手紙の内容は、『自分が大陸制覇したら魔法を教えて欲しい。代わりに敗死したら魂を売る契約を結びたい』という申し出だった。

 

 どっちでも良いのが見抜かれることも承知の上での都合の良い申し出だったが、何故か喜んで契約は結ばれた。

 

 

 

 いつかのように横にピッタリ付きながらも猫のようなジト目になってカフェは言う。

 

 

「思いっきり矛盾してますよ。言わんとすることは分かりますが」

 

「『人間と共存可能な魔族は魔族ではない』というのが、大昔に迷走しまくった俺の結論だ」

 

「その迷走に私も巻き込まれたんですよね……いや、恨んではいませんが」

 

「そして君は更に大陸中の人と魔族をこの挑戦に巻き込んだわけだ。……死にたくなってきた」

 

「私もです……」

 

 

 男はガックリと杖に体重を乗せて俯き、カフェも彼にもたれ掛るように落ち込む。

 

 カフェのやったことの迷惑さはこの大陸では右に出るものが居ないレベルである。

 

 一回死んでツケを払った上に五十年かけて復調したが、精神的にはかなり不安定なままだ。

 

 

 

 とはいえ、『人間と魔族の共存』の夢を見た者は二人だけではなく、昔から挑戦者の絶えないテーマである。

 

 

 ……成功した者は一人として居ない、血塗られたテーマだが。

 

 

 

 カフェは顔の無い魔族を見やりながら考える。

 

 この人の魔族の定義によれば、この人は生まれつき魔族ではなかったということになる。

 

 ……同時に、自分が作ったあの魔族もそうなってしまうが……あれは自分が誘導したとはいえ、そもそも『破壊の魔天使』は人間との共存は望まなかった。何が違ったのだろう?

 

 

 もし質問していたら、こう答えられただろう。――自分には()()()()()()()があっただけだ、と。

 

 

 

 寄りかかったカフェが顔を覗き込みながら話しかけると、男は遠くの過去を見つめながら言った。

 

 

「不思議な関係ですよね、あの二人。片方の暴力による支配なく、よくこれほど長く、上手く続いたものだと思います。……マハトに成果はなかったようですが」

 

「正直、これほど犠牲が少ないケースは稀だぞ。マハトほどの大魔族が関わったにしてはだがな。……悲劇に終わったのは他の先駆者たちと変わらんが」

 

「魔族の協力者が得られるケース自体が稀ですけどね。……そういえば、トラオムが昔に私に試した時も、感情の芽生えを期待するのは諦めて、途中から共存によって利益を得る教育になりましたよね」

 

「色々と考えたが、それしか両者が種族として変わらずに一緒にやっていく方法は無いと思ったからな。……まあ、そんなの俺がなりたい関係じゃねえって、途中で気が付いちゃったから止めたんだが。あのご領主様の半生は調べたが、彼はよく徹底したものだよ」

 

 

 カフェは顔の無い魔法使いが心底から感嘆しているのを感じる。

 

 彼がそういう人間の強い意志を眩しく思っていることを最近になってアルから聞いていた。

 

 この人は昔から顔が無いのに感情が豊かだな、と彼女は思っていたが……ふと、あることに気が付いて尋ねた。

 

 

「あの……元々はどうして私を選んで人間らしい感情を芽生えさせようと思ったんですか?」

 

「…………さて、街を観光して、もう少し時間を潰すかな。まだまだ積もる話もあるだろう」

 

 

 あまりにも露骨に話を逸らされる。聞いて欲しくないということだろう。

 

 

 だが、カフェはとある「まさか」という予感を覚えた。

 

 それと同時に何故か脳裏に、前世の側近だった人形師ゴーレムがしたり顔で「今です……!」と言っている姿が浮かんだ。

 

 

 なお、その側近はカフェの魔人化後にシレっと合流してきたのだが、当然許されなかった。

 

 魔神の手によって面白おかしく改造されたあげく、センスの無さをミクさんとアンジェラにボロクソに扱き下ろされて泣かされまくった模様。

 

 創造主が()()()()()()()()()()()()()()()、あえて遠回りをさせたと思っているカフェとしては、いい気味であった。

 

 ……その遠回りこそが最短の道だったのかもしれないが、犠牲にしたものが大きすぎる。

 

 ちなみに今は夢の世界の月で、無害そうなお茶汲み人形(無害とは言っていない)をやっている。

 

 

 

 カフェは歩き出した男に後ろから縋りつきつつ、歩くのを妨害して話しかける。

 

 

「ねえ、トラオム。……当初は私とどういう関係になりたかったんですか?」

 

「あーあーあー。聞こえない。つーか、もう忘れたわ。ほら、行くぞ」

 

「聞こえてるじゃないですか。……ひょっとして、だから直接止めに来なかったんですか?」

 

「…………」

 

「別に今からでも遅くないと思いますよー? アルちゃんにも許可は貰いましたからー!」

 

 

 何故か無言の全力疾走に移って疾風の如く逃げる相手を、カフェは笑顔で追いかけ回した。

 




1.5部はここまで。
2部はアニメや原作が進んでネタが浮かんだらまた。
記録の魔法(人物設定)をちょっと更新しました。2025/2/12
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