サブタイ変えました
転生にも種類はある。無双、のびのびライフ、悪役ムーブ、神様プレイ、救世主etc……今回は神様プレイとなった男がいた。神とはいっても創造神などという崇高なものでもないが。
しかし、男の次の命はどうやら些か過酷なものであった。
「あぁ……なんということだ…!伊邪那美…!!」
「え…ぇ……大丈夫…です……私は……それよりも…」
「何を言うか!今にもこと切れそうなお前より生まれた子を大事にしろなど私には出来ぬ!」
「それでも……私達の…子でしょう…?」
「今はお前の……お前のことが大事なのだ!子のことは今はどうでもいい!!」
天地開闢から幾年月が暮れ、視点は神代七代の最後の五組十柱「伊邪那岐」「伊邪那岐」。二柱の神から生まれた海、木々、山々、川、風などの神を産み落とした。
そして、火の神を産んだ。
しかしそれは間違いだったのか、伊邪那美は火を纏った神を宿し、大きな火傷を負うこととなった。
そしてその神こそ、男の次の命である「火之迦具土神」その一柱であった。
(これは………どうすればいいんだ?)
しかし、置いていかれたこの男にはいまいち状況が理解が出来なかった
そうこうしている内にも伊邪那岐はどうにかしようとする。
そしてまた年月が経つ。
「おぉ……伊邪那美……なぜ…なぜこんなことに……」
伊邪那美は死んだ。手の打ちようもなく、苦しみながらその命を落とした。
その際に多くの子を産み落としたが、伊邪那岐にとってはそんな事はどうでも良く、いつまでもただただ伊邪那美の亡骸を抱き締め、涙を流した。そしてまた、新たな神を産んだ。
「許さぬ、許してはならぬ…伊邪那美を亡き者としてあの存在は…!」
そして、ついに伊邪那岐は怒った。なぜ伊邪那美が死ななければならないと。そしてその矛先は、原因の火之迦具土神に向けられる。
コレは生きてはいけないと、忌み子だと、不幸の源だと。
そして愛剣である「アメノムラクモ」を持ち、迦具土の元へ向かう
一方迦具土は何も無い部屋でぽつんと1人何かないかと考えていた。
「ふーむ……やることが無いなー……というより、何も無いぞ…それに兄様方が全く反応してくれない…俺そんな悪いことをしたか?」
何もしていないが、体質のせいで悪いことが起きているのだ。
「にしても、火と雷……ね。ある意味光を生み出しているってことなのか…?理系でもないしよく分かんないや…いや文系でもないけど…」
前世のみすぼらしい人生に肩を落としながらも、火を手遊びのように扱う。暇という他ないためなんとか自分の行える事を一通りこなせるようにしていた。
「……現代まで何時までかるんだろうか…娯楽は欲しいわな…」
この男の最期はただの運の悪い交通事故によるものであった。
転生したは良いが、頼んだ訳でも無く、この中で強くなってもそこまで意味もない状況。無双する為の悪もいなければ、のびのびするほどの知識スキルもそうない、悪役になるにも周囲からは無視されているので本当に何も無い。ただただ火と雷を操れる、それだけである。
「迦具土よ!!!私の元に現れよ!!!」
「んんぇ……?」
突如として発せられた怒号に、情けない声を出す迦具土。
その怒号が自分に向けられたものと理解すると、なんかやだな……という顔をしてとぼとぼと父親の元に向かう。
伊邪那岐は迦具土のその姿を見るや否やアメノオハバリを引き抜く。
「貴様の存在が全て悪いのだ!!ここでその命……断ち切ろう!!」
「は、はい…?!」
「その情けない面は私をどこまでもいらつかせる!!!」
頭に血を登らせ過ぎなのか、それとも完全なる憎悪の権化として認識しているのか、迦具土の姿を見るだけで怒りがふつふつと煮えたぎり、ギリギリと愛剣に力が篭っていく。
それとは裏腹に、何故そこまで自分に対して絶大な殺意と威圧をするのかを理解しきれていない迦具土はただただ肩をすぼめてビクビクしている。
「なぜこんなののために伊邪那美が死ななければならない!!」
「え……………亡くなられた……?」
やっと理解したこの男。放っておかれたのだから仕方がない。何も話されてないし、本人も見ていないのだから尚更である。
「こんな!こんな奴が!!伊邪那美の代わりになど!!」
今すぐにでも振り切れる。伊邪那岐は振り切ろうとする。
しかし、伊邪那岐は伊邪那美の最期の一言によってそれは出来ずにいた。
最期、伊邪那美は伊邪那岐にこう言った。
『私が死んでも……あの子に手は出さないで……あの子は悪くありません……あの子は……ただ私達の願いのままに生まれただけ……だから……お願いします…』
しかし、伊邪那岐にはどうやっても許されざる者。怒りに震えたその腕はついに動きだし
迦具土に縦一文の傷を与えた。
「ーッ!!?…ぁあグッ!!???」
神速で裂けた傷から少量の皮膚と大量の血が溢れ出る
「………ふん……これで済ませてやる。寛大だと思え」
そう言い終わるや否や、身体を翻しその場から去る。
その間にも大量の血が流れ続ける。
「ぅうぁぁ…!!?し、止血…!!止血しないと…!?」
しかし、先程まで上手く扱えていた火は上手く使うことが出来ない。
「いたい……!痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!!」
前世で味わったことの無い痛みが襲い続ける。
「くそっ痛い!!ブサけんな……!!」
ふらつき、血痕を残しながらも何処かに歩いていく。意識が途切れながら訳も分からずに進んでいく先は死の匂い。黄泉の国への入口であった。
「あぁ……私の子……やはりこうなってしまったのですね…」
伊邪那美は門の前で倒れている迦具土を、出血が止まりおそらく消えることのない傷跡を優しく癒しながらその場で抱き締める。
「私のせいなのです。貴方を産みたいと…そう思ってしまった私のせい……だから、恨むなら私を…そうして欲しかった…」
醜女と雷神達もそろそろと伊邪那美の身を案じて門から出てくる。
「伊邪那美様…その幼子は」
「迦具土……私の末っ子です」
「……傷はある程度塞がっておりますね。しかしこれは…」
「夫の…伊邪那岐仕業でしょう」
「やはり……このまま連れて?」
「いえ…この子は死んでいません。まだこの子にはこの先の現世を見る権利があります。時期を見て現世の方に帰します…他の我が子も……面倒を見てくれると良いのですが…」
恐らくは無視なのだろうと、そう思った伊邪那美は己を責めた。
(私が火よりも強い身体であれば……私が生きていれば…この子にこんな孤独や苦労を与えなくて済んだのです…)
伊邪那美はとても子思いであった。
その後、迦具土は現世に返され、程々の扱いを受けながらも成長していった。
余談ではあるが、残された迦具土の血痕から新たな神が産まれており、ほとぼりが冷めた後になんか数増えてると思ったらしい。