ナイトはベータ/ガンマ/ゼータ/ィータを
解呪しています
(さて、デルタが「ピクニックに行く」ってシャドウに報告していたから、そろそろ深淵の森に向かう頃だな。シャドウがこっそりついていくのは知っているから、それについていく感じで行くか。)
(七陰達が霧の龍と接触した。準備しとくか。)
「こりゃ、意外な展開になってきた。みんな驚いてる。無理もないか。」
(俺は霧の龍の事を知っていたから意外でも何でもないんだけどな。)
「何を話してるのか、この距離だと聞こえないな…」
「まぁ、近づくわけにもいかないしね。様子をうかがうしかない。」
「そうだね。」
(アレクサンドリアの事を話しているのだろうけど。)
(七陰全員が一通り攻撃したから、そろそろなはず。)
「格上、それも人間相手とは比べ物にならない、か。」
「そこらのモンスターよりもよっぽど強い相手だ。まあ、仮にもドラゴンだし、そのくらいじゃなくっちゃね。」
「さて、となると、あとはいつ出ていくか、だ。」
「アルファ達が決死の覚悟みたいな感じになったくらいがちょうど良いんじゃない?」
「そうだな…」
(この間は、十中八九、頭の中でシミュレーションしているな。)
(もう限界ってところか)
「それじゃあ、始めるとしようか!」
「そうだな。」
「そう、強いのだ。お前たちとて、強い。それこそ、並みの生命では比較にならないほどに。」
「だが、世界には、上には上がいる、ということよ!」
「そう、その通りだ。」
「この声は!」
「だが、それは、この昏(くら)き森の陰で無為なる歴史を刻む、哀れな龍においても、同じことが言える。」
「何者じゃ!」
「我が名はシャドウ。」
「そして、我が名はナイト。」
「「陰に潜み、陰を狩る者。」」
「長き生に飽き、戯れに興じる哀れな姿よ、我らが断つ。」
(シャドウが勝てるのは知っているけど、俺は怪我しないで乗り越えられるだろうか。)
「シャドウ!ナイト!私たちを助けるために、ここまで来てくれたというの!?」
「わかったわ!霧に注意しながら、七陰は龍の退路を…」
「手を出すな。これは、我らの戦いだ。」
「ナイト様、かしこまりました!」
「あぁ~っ!ナイト様ぁ~!素敵です~!この雄姿、余すところなく書き残さなくては~!!」
(ベータを解呪したのが俺だってのと、読み聞かせの奴も俺がやったせいなのか、本来『シャドウ様戦記』なのが俺に変わっている気がするのは気のせいだろうか。)
「あなた、この緊急時によくメモれるわね?」
「まぁ、私だって、シャドウ様が来てくれて、今すぐにでも歌いだしたいくらいに嬉しいですけど!」
「ボスー!やっちまえーです!殺せーです!」
「これまでにない、かつてない強敵…ナイトは、また奇跡を見せてくれるかな?」
(まぁ、俺は我らがシャドウ様以外興味ないし、どうでも良いか。)
龍が多数の白い謎の誘導弾を放ってくる。
(遠距離攻撃は、俺の得意分野だ!)
ナイトはスライムをその白い玉に向けて放ち、爆発が起きた。
「「「シャドウ様!」」」「「「「ナイト様!」」」」
その爆発で見えなくなった視界が戻ると、シャドウは霧の龍の後頭部につかまっていた。
「自らの生命に飽き、悠久の生命にも飽き、時の流れを惰眠のように貪る。」
「古き龍よ、貴様は何を望んでいる?」
「お前らは、ただの人間ではない?」
「ただの人間だとも!
「だが、貴様の想像をはるかに超える人間だ。」
(俺もスライムを束ねて、魔力をとことん込めて、放って援護する)
腹からスライムが突き刺さり、頭にシャドウの剣が刺さる。
七陰たちから称賛があがる。
「強者ゆえの増長、傲慢。お前はそれを、いつぶりに思い出した?」
「その絶対的な享楽(きょうらく)を、真正面から打ち砕かれる感覚は、初めてのようだがな。」
「ク、ク、ク.お前たちならば、わしを殺せるというのか!?」
「この恐れ、嬉しいぞ!」
「かつて、古の盟約は打ち捨てられた。だが、世界がまた連れてきてくれた!」
「ああ、お前たちならば、あるいは、だがっ!!無駄な動きがまだ多い!」
(俺はスライム操っているだけだから、原作通り、シャドウの話だよな?)
「いいえ、無駄な動きじゃない、あれは!」
「⁉」
「シャドウの動きを、無駄な動きと思うか。貴様は平和ボケをしているのではないか?」
「我が剣は常に、王道を貫く!未知の敵に対し、自らの動きを欺くような真似はしない。」
「ば、ばかな!?今の動きが、強者の持つおごりから生じる、隙ではなかったというのか?」
「シャドウは『強者』である前に、陰の『実力者』だ。」
(さて、スライムを一点集中させているからこそやりやすい、あの技を使うか。)
シャドウの剣によって霧の龍が斬られ、龍の腹に刺さっているスライムからさらにとげが現れ、内部をさらに突き刺し、それを引き抜くことによって大打撃を与えた。
「やった!」
「いえ、まだ!」
霧の龍が呻く。
「まだ、生きている!?」
「定命(じょうみょう)の者には、理解の及ばない状況であろう、な。」
(霧の龍が死なないのは知っていたけど、めっちゃ出血するじゃん。)
「龍という存在に、ありきたりな死は、許されない。そのように、世界に呪われている。」
「ゆえに、龍に対する真の勝利は、命を奪える力を持つことで、初めて得られる。」
「その力に通じる者へ、いつか賜れる死を条件に従うこと。それこそが、我が古の盟約。」
龍がシャドウとナイトに向けて、龍の吐息を放った。
「ほう、この魔力、面白い。」
「我が力、常にそなたらと共にあろう!いつか、わが命を絶てる者よ、そなたらは何を望む!?」
「殺しきれなかったという事は、つまり、まだ修行が足りない。ということか。」
「そんな単純な話ではないのじゃが!?」
「こちらにはこちらの準備がある。ナイト、あとは任せる。」
「了解。」
(確か、クレアが帰ってくるんだったな。)
「は、は、はっ、シャドウにナイト、か!何もかもが規格外の男達じゃ。」
「そなたらは、それに従う盟友なのだな。この森を抜けて、古都アレクサンドリアに何の用があるのだ?」
「我ら、シャドウガーデンに相応しい、新たな拠点を探している。」
「陰に潜み、陰を狩るための力を蓄える場所として、だ。」
「新拠点、か。」
「それがさらに世界の心理に近づくきっかけとなる、か。」
「ならば、古都アレクサンドリアの地を、我が力と合わせ、シャドウガーデンのものとするがよい!」
「おぉ!」
「これより、古都はそなたらの拠点となり、我が霧は、そなたらを世界から隠すベールとなるであろう!」
そして、霧が晴れ、古都アレクサンドリアが姿を現した。