人を殺す魔法の恐ろしさ   作:ソフトピーチ味

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ちなみにこの語り手については職業以外一切の設定をしていないので、爺さんでも婆さんでも、おっさんでもおばさんでも、若いイケメンでも綺麗なオネーサンでも、ショタJJIでもロリBBAでも、好きな容姿で想像してお楽しみください。


序論:マハトと「万物を黄金に変える魔法(ディーアゴルゼ)

 

 人の魔法と魔族の魔法は違いすぎる。

 

 この認識は魔法使いの道を選んだ者ならば、誰もが有しているものだ。魔族の魔法は人間がおいそれと扱うことなどできないし、人の魔法に魔族は見向きもしない。

 

 より正確に言うのであれば、魔族同士であろうとも、魔法を共有し合う、教え合うという行為はしないとされている。魔族の魔法はその個体それぞれ固有のものであり、「他の魔族の魔法」を学ぼうとする発想が、魔族には乏しい。

 

 とはいえ、何事にも例外がある。魔族の中にあっても他の魔族の魔法を扱う個体もいるかもしれない。寡聞にして私はそうした魔族の存在を聞いたことはないが、可能性がゼロというわけではないだろう。

 

 斯く言う私自身とて、魔法使いの中では変わり者と周囲からは評されている。魔法を極めるのではなく、魔族と戦うわけでもなく、または魔道書を記す訳もなく、こうして「魔法論」とでも言うような思索に耽ることを好む者は、やはり魔法使いの中であっても少数なのだろう。

 

 そんな変わり者でも、幸いにして気質に即した仕事を得ることができた。魔法学校の教師というこの職業は、趣味と実益を両立させられる。純粋な魔法使いとしての力量では教え子にも抜かれてしまう私だが、教えるということはそれなりに得意だ。

 

 恥ずかしい話だが、この間魔法学校を主席で卒業したあの子…… かのレルネン一級魔法使いの孫娘にあたるエーレなどは、入学したときから私など相手にならないほどの実践魔法を扱えていた。だが魔法というのは想像…… すなわちイメージの世界なのだ。書物を読み、見聞を深めることでそのイメージの補強や、新しい発想などを見つけることができる。だから座学もとても大事なのだ。

 

 そんな座学偏重の私が興味を持っているのは、やはり魔族の魔法についてだ。私たち人類にとって、ある種魔法は「便利な道具」という認識が強いと思う。魔法使いの中には魔法を扱うこと自体を誇りとし、特別なものであるという思いを強く持っている者もいるが、やはり今の世では少数派だろう。

 

 なにしろ、そうした考え方は魔族に近いものなのだ。魔族こそは誰よりも「魔法を特別」と思い、己の魔法に絶対の誇りを持っている。彼らは基本的に生涯をただ一つの魔法を極めることに使うという。

 

 人はそんなことをしない。私たちにとって魔法は便利なものだ。だから使える魔法は多い方が出来ることが増えるし、ある程度使えるようになればそれでいい。とことん、それこそ人生をかけて追求するようなことにはならない。

 

 あるいは、その人物にとって生涯をかけてなし得たい事柄があり、それを叶えるために魔法を極める必要がある場合などはあるかもしれない。だがその場合でもやはり魔法はその目的を叶えるための道具で、手段の一つだ。より効率的な別な方法があれば、そちらに乗り換えるのが人というもの。

 

 そう、手段なのだ。魔族の魔法と人類の魔法の決定的な違いとは、それが「目的」なのか「手段」なのかということだ。

 

 魔族は魔法を極めるために生きる。人類は人生を豊かにするために魔法を使う。魔族にとって人生(魔族の生涯を人生というのも妙な気もするが)とは即ち魔法であり、何よりも優先すべきことだが、人にとっては人生を幸福にすることが優先すべきことで、魔法のために人生を捧げる者は異端だろう。

 

 もしかしたら、魔族と人類の認識の断絶の原因はそこにこそあるかもしれない。魔族にとって生涯とは、自分の魔法を完成させるためにあるものだ。そこに彩はいらない。だが人類はその逆だ、私たちは人生を彩で満たすために魔法を使う。故に彼らと私たちでは「幸福」という概念自体が違うのだろう。彼らの生涯には骨子として魔法が存在し、私たちは幸福を骨子としている。だから私たちと魔族では、言葉を交わすことが出来てもそれは没交渉に終わるのだ。

 

 捕食者と非捕食者という立場の違いもあるだろう。魔族が「言葉を真似る魔物」であった時はよりその立場の違いが顕著だっただろうが、今私が生きる時代の魔族についてであれば、少なくとも私はその認識のほうが的を射ていると思う。

 

 魔法のために生きるか、そうではないか。より単純に魔族と人類を分けるならば、この分け方が相応しいのではなかろうか。

 

 とはいえこれは一般論だ。どこにでも特例はあるもので、だがそうした者たちは、どういうわけか別格のものであることが多い。不思議なものだ。

 

 

 

 最近私はこの趣味である魔法考察の筆が乗っている。というのも、ついこの間、かの七崩賢最後の一人であり、最強の存在であった黄金郷のマハトが、ついに倒されたからである。人類の一員として、現存の魔族最強の存在が討たれたことへの高揚ではない。その討伐の過程において、マハトの「万物を黄金に変える魔法(ディーアゴルゼ)」が解析、解除されたことに、私は高揚を感じている。

 

 というのも、どうやらマハトの「万物を黄金に変える魔法(ディーアゴルゼ)」は、我々人類にとっては呪いの最上級の代物であっただけに、その術式構造などは予想だに出来ないものであったが、その一端が明かされたからだ。

 

 呪いとは、人類の魔法では解析も解除も出来ない魔族、または魔物の魔法を纏めて称するものであるが、レルネン氏から聞いた話によると、かの魔王討伐の魔法使いであるエルフのフリーレン氏が、あのマハトの「呪い」を「呪い」ではなくしたらしい。私には想像の中ですら不可能な芸当だ、さすがエルフの魔法使いは凄まじい。いつの日か彼女もかのゼーリエに比肩する大魔法使いへと至るのだろうか。

 

 とはいえ、これで人類が「万物を黄金に変える魔法(ディーアゴルゼ)」を使えるようになったかといえば、むろんそんな訳ではない。出来るのはあくまでその解除であり、マハトが死んだ今、この魔法を再現できる者はおそらく現れないだろう。

 

 話が逸れてしまったが、マハトの「万物を黄金に変える魔法」は解析され、黄金都市となっていたヴァイゼは、数十年ぶりに元の姿に戻った。

 

 通常の人類であれば、素直にその事を喜ぶであろうが、あいにく私は変わり者だ。

 

 私がなによりも興味深く思ったのは、「万物を黄金に変える魔法」が、術者が死んだ後もその影響が残り続けるタイプの魔法であったことだ。呪いの中でもそうしたものはあったと聞くが、やはり大抵のものは術者が死ねば解除されるのがほとんどであったと記憶している。

 

 例えば、これもまた七崩賢の一人で、少し前に討伐された断頭台のアウラの「服従させる魔法(アゼリューゼ)」も、術者が死ねば解除される代物だった。だが、マハトのそれは死後も残り続ける。これもレルネン氏から聞いた話だが、マハト討伐だけならば、大魔法使いゼーリエが成し得れた(それも単独で)らしい。

 

 だが「万物を黄金に変える魔法(ディーアゴルゼ)」を解析する前にマハトを倒してしまえば、黄金化された者たちは二度と戻らない、というレルネン氏たちの嘆願にゼーリエが応じた結果、マハトは長い間ヴァイゼごと封印されていたとのこと。

 

 個人的にはかのゼーリエは、もっと傍若無人で弟子の言うことなど眼中に無いような冷厳な人物象を持っていたのだが、意外と弟子に甘いところもあるようだ。まあこれは余談である。

 

 マハトによって黄金に変えられた者たち、その中でも生きたまま黄金に変えられた者たちは、今後ヴァイゼの民のように戻ることが出来るだろう。現状でそれが可能なのはフリーレン氏だけということであるものの、幸いにして彼女はエルフ、黄金にされた者たちを戻す時間は余るほどある。

 

 だからこそ、面白いのだ。「マハトの黄金」には、実のところ黄金としての価値はなかった。どうしてもその煌びやかな輝きに、誘蛾灯に群れる虫のように引き寄せられ、自身もまた黄金になってしまう者たちもいたにはいたが、例え彼らが無事「マハトの黄金」を持ち帰られたとしても、加工できない黄金には大した値打ちもつかなかっただろう。まさに骨折り損となる。

 

 だが、マハトが討たれた今になって、「マハトの黄金」はその稀少性により価値が生まれることになるだろう。まさに一点ものだ。黄金化されたのが人物ならば、解除するのが当然となるが、態々無機物にまでそれをする必要はあるまい。面白いことに、マハトが存命の時は価値がなかった黄金が、死後になってからは生前の何十倍の価値が生まれそうなのだ。

 

 なにしろ「マハトの黄金」は、もう2度と作られることはない金属となったのだから。

 

 

 

 

 

 




本編キャラどころかオリキャラすら喋らないという。
マハトの黄金は今が狙い目や。
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