探偵行為は野蛮な甘露   作:上枝あかり

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証言

証言1

「お名前は?」

「デラミンです」

「なりわいは?」

「マクロコスモス・エネルギー……。これ、なんですか?」

「ご来場者アンケートです。まず、これに沿ってお聞きしますね。

 お住まいは?」

「ナックルシティです」

「ここまでの交通手段は?」

「ロトム自転車で通勤してます」

「今日連れているポケモンをお答えください」

「ソーナンスとギギアル」

「マクロコスモスの方は、はがねタイプを連れてると勝手に思ってましたわ」

「ローズ社長がそうだし、よく手伝ってくれますからね。

 でも、誰もがそうじゃないし、昔からの相棒だから」

「すてきな信頼関係ですね。好きなポケモントレーナーは?」

「現役だと、やっぱりダンデですね」

「いま注目してるポケモントレーナーは?」

「ネズかな。ノーダイマックスが気になって」

「はい、ありがとうございます。

 では、なぜあの倉庫に入りましたか?」

「仕事帰りに、仮眠して帰ろうと思って……」

「マクロコスモスは地下に仮眠室を持っていますよね」

「ソーナンスを枕にして寝るのが好きで、あの子を出すとみんな部屋から出られなくなるから、人の来ないところで寝ようと思って……。

 あそこ、穴場だったんです。試合のある日は鍵が開いてるし、なのに人も来ないし」

「……今後はやめてくださいね。

 では、倉庫に入ったのは何時頃?」

「終業後すぐだったから、17時過ぎに」

「ということは、まだ試合開始前ですね?」

「はい、入場中に」

「入ってから気づいたことは?」

「悪いんだけどホントにないです。すぐに寝ちゃって、次にはあなたに起こされました」

「物音を聞いたりも?」

「わかんないです。耳栓してたから。なんにも聞こえなくて」

「はい、ありがとうございます。別室で身体検査を受けてください」

 


 

証言2

「お名前は?」

「クラー」

「なりわいは?」

「OL」

「お住まいは」

「シュートシティ」

「ここまでの交通手段は?」

「列車で来たけど?」

「今日連れているポケモンをお答えください」

「連れてない。ねえ、私忙しいんだけど」

「奇遇ですね、私もです。好きなポケモントレーナーは?」

「キバナ。ねえ、一方的に犯人扱いしてこんなふうに拉致して、誰が責任とってくれんの?」

「そもそも倉庫に入られたんですから、不法侵入で通報してもよかったんですよ。

 今注目してるポケモントレーナーは?」

「はいはい、キバナって言ってんでしょ」

「はい、応援ありがとうございます。

 では、なぜあの倉庫に入りましたか?」

「……迷ったの。そう私は迷って入っただけ! それで出られなかったのに犯罪者扱いよ。謝って!!」

「はあ。いつ迷われました?」

「試合終了後! トイレに行こうとしたら迷ったの! 謝れっつってんでしょ!!」

「申し訳ありません、トイレの表示増やしときますね。部屋に入って気づかれたことは?」

「なんにもない! 私が入ったのが一番最後。部屋から出られないから部屋の隅でうずくまってたの!

 ユニフォームだって見てないわ。もっと上の人間出しなさいよ。あんたじゃ話にならない」

「私より上だともうローズ委員長ですよ」

「ハ? キバナは?」

「私のほうが(地位だけならやや)えらいです。

 質問は以上です。お疲れさまです。別室で身体検査を受けてください」

 


 

証言3

「お名前は?」

「エラキス」

「なりわいは?」

「エンジンでパティシエ……見習いだけど」

「お住まいは」

「だからエンジンシティ」

「ここまでの交通手段は?」

「列車で」

「今日連れているポケモンをお答えください」

「今日は連れてない」

「好きなポケモントレーナーは?」

「ダンデ」

「今注目してるポケモントレーナーは?」

「オニオン……ほら 新任の。これってひょっとして来場者アンケ?」

「そうです。答えてもらってましたかね。

 本題に入りましょうか。なぜあの倉庫に入りましたか?」

「……ごめんなさい。

 キバナのサインユニが余ってるって聞いたから、写真だけでも撮ってキバナ好きな友達に見せてやろうと思って。

 でも、あたしが入ったときにはもうユニフォームはなかったんだ。探したけど見つからないから出ようとしたら出られなくて、隠れてた」

「……誠実な答えありがとうございます。

 では、倉庫に入ったのは何時頃?」

「えー……わかんない。

 試合が終わって、ちょっと人の波が落ち着くまで待って、それからかな?」

「まあ、そうなりますよね。では入った後気づいたことは?」

「隠れてたから誰かわかんないけど、あたしの後で一人入ってきたよ。あんたの前に」

「ありがとうございます。身体検査はお済み?

 でしたら控室に戻ってください」

 


 

証言4

「お名前は?」

「フィルクです」

「なりわいは?」

「第二鉱山の作業員です」

「お住まいは?」

「バウタウン!」

「ここまでの交通手段は?」

「列車……が止まっちゃってたから、タクシーで。タクシーも混んでて大変だった……」

「あら、止まってたんですか」

「はぁい。なんかポケモンが塞いでるとかで、昼過ぎから止まってたみたいですよ」

「大変でしたね。今日連れているポケモンをお答えください」

「ゾウドウ! 今日も一緒にはたらいて……かわいいんですよ~」

「いいですね。好きなポケモントレーナーは?」

「当然キバナさん!

 あっ、でももちろん、ルリナちゃんも好き!」

「今注目してるポケモントレーナーは?」

「注目だったらぁ……やっぱりキバナさんかな。

 チャンピオンに勝つの応援してるんです」

「後で伝えておきますね。では、なぜあの倉庫に入りましたか?」

「その……キバナさんのサイン入りユニフォームが余ってるって聞こえちゃって

 ……ちょっと見たらドアが開いてて……それで……ごめんなさい!」

「こちらも大事にはしたくありませんが、反省を求めます。

 では、倉庫に入ったのは何時頃?」

「えーっと、お名前わからないんですけど、あなたのくるほんの少し前……入って、ちょっと見渡して、

 ユニフォームがないってわかったから、すぐ出ようとしたのに、出られなかったから、助けを呼んだんです」

「入ってから気づいたことは?」

「ユニフォームはないなあって」

「ありがとうございます。……別室でしばらくお待ち下さい」

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