「どんな感じだ?」
「嘘つきがいますね」
「やっぱりそうなるか、一筋縄ではいかねえな」
机上にはさっきの4人の来場者アンケート。下部のフリースペースに、それぞれの供述をまとめておきました。
4人の話を聞き終わる頃にはジムリーダーも手が空いたので、責任者の彼に話をしにきたのです。ナックルスタジアムはどこも砂のにおいがするけれど、特にホーム側の控え室はいつも砂っぽくて、シャワーはまだらしい彼の肌にも砂がはりついていました。先にシャワーを勧めたほうが良かったかしら。でも、彼はいまさら砂など気にせず、私の持ってきた紙を見ています。
「誰がどの順番で入ったのかもわからねえな」
「普通に考えれば、一番最初に入った人の仕業になりますからね。誰も『自分のあとに2人入った』とは言わない。でも一番最初のマクロコスモスの人は、そもそもユニフォームが余ってたことを知らないし」
だいたい、動機もあやふやです。自称キバナファンはOLさんと作業員さんですが、ファンの犯行とは限りません。
そもそもあのユニフォームは、レプリカといえば聞こえはいいものの、特注サイズのロット余りで、いくらでもあるのです。それこそ配るほど。だから試合ごとに1着ずつ出してるし、裏を返せば、売りに出しても足がつきません。だけど、それなりには希少なので、高値もつくでしょう。あんなザルなら、悪い気を起こしかねません。ジムリーダーが手放さないスマホロトムでちょっと調べましたが、ううん、いいお値段。レストランのディナーくらいはいけそう。
私が紙に視線を戻してもそのままスマホを見ていた彼は、通知音の少し後にこちらを見ました。私も視線をあげます。
「トレーナーたちから報告がきたぞ。倉庫にユニフォームはないし、4人ともユニフォームも、不審なもの……ここに書いていないポケモンとか、使えそうな道具も持っていないそうだ。
嘘つきが何人いるかは知らないが、アイツらの話は信じてやってほしい」
「ええ、もちろん。……そう、ユニフォームはやっぱり消えてるんですね。うん……」
ならば、あの4人の中にユニフォームを倉庫から持ち出した人がいるのでしょう。ユニフォームが入場中に倉庫に持ち込まれたのは、スタッフの証言によるたしかな事実。ユニフォームが倉庫にあるのを知った人が、あの倉庫から出られなくなったのも、時系列からしてたしかな事実。だけど、ユニフォームがなくなっているのも、リョウタくんが確認してくれた事実。
かげふみにより鍵のない密室と化した倉庫から、ユニフォームが盗まれた事件。しかし、持ち出し方の見当はついています。それ自体は誰にでもできます。誰にでもできるけれど、それをわざわざ隠そうとして、不自然な人がいる。
「1人ゴネてる人がいるんだろ? なら高値でもないし、厳重注意でとっとと帰してくれても……」
考え込む私に、ジムリーダーが言います。ことなかれ主義ではありませんが、ことを荒立てる人でもありませんでした。しかし。
「いいえ、……目星はつきました」
「おお、では逃してくれるなよ。だが、信頼していいのか?」
間違った人を犯人と名指しすれば、それはお互いにとって大変な不名誉です。彼はそこを心配してくれました。しかし、少しでもダメだと思うくらいなら、最初から彼には言いません。なので。
「ええ、探偵業ならお手のものでしてよ。なぜならここだけの話、キーリングキーパーには代々、かの名探偵が使った体術が伝わっていてね……」
「……マジ?」
「フフ」
ここまでの情報で、一応犯人が推理できるはずです。あまり精密なものでもないですが、明らかに不自然な点があるはずです。原作知識も必要ですが、よかったら考えてみてください。