お祖母ちゃん、VRMMOで余生を謳歌する!   作:LUCIOLE

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第19話 『滅殺天使』

 

 暫く抱きしめられていたクウがゆっくり目を開けると、其処には2人を暖かく見守る僕とオズさんが居た。

 

 抱きしめられている姿を見られていた事に気が付いたクウは、ハルさんに甘えていたのが恥ずかしかったのか顔を真っ赤にして僕を殴った。

 

 「おばあちゃ~ん」

 

 「はいはい」

 

 結局ハルさんがクウを宥め、動き出したのは5分程経ってからだった。

 

 「ごめんね。大丈夫?」

 

 消え入りそうな声だが、自分から話しかけてくれてホッとする。

 

 「大丈夫。プレイヤーからの攻撃は痛くないから」

 

 そう、痛くはない。ただ感触があるので自然と擦ってしまうだけだ。

 

 クウはまだ、俯いて顔は見てくれないけど兎に角前に進む事にした。

 

 「キラークラブはキラー・アモアクラブの上位互換のモンスターで、少し速く、攻撃力も上がってるけど、何より問題なのは硬さなんだ」

 

 「硬いって言ってもオズさんや私の武器はFクラスだから大丈夫じゃないの?」

 

 ハルさんとオズさんは会話で雰囲気を戻そうとする僕の意図を読んで、話を盛り上げてくれる。

 

 「キラークラブの様な甲殻を持ったモンスターは切断耐性を持ってるんだよ」

 

 「何それ?」

 

 まだ照れは有る様だがやっとクウも話しに入って来た。

 

 「モンスターの体、皮膚には様々な耐性、所謂個性が有るのですよ」

 

 「炎に強いとか、水に弱いとか」

 

 「それは、分かるわ。火が水に弱いってやつね」

 

 「そう、それ。で、『NLF』には武器の種類にも耐性が有るんだよ」

 

 「硬い甲殻や鎧を持つモンスターは剣や槍の様な刃物に強いし、軟らかいゴムの様な皮膚を持つモンスターはハンマーやメイスの様な打撃に強いみたいにね」

 

 「なるほどね」

 

 クウは真剣に話を聞いてくれて、普段通りに会話出来てる。

 

 「なので、今回ハルさんとオズの武器は効き難いけど、クウのメイスは相性が良いんだよ」

 

 「つまり、私が頑張れば良いのね」

 

 ぐっと手を握って、やる気を出してくれている。

 

 「ああ、だから今回はハルさんとオズが前衛でヘイトを稼いで、キラークラブの後ろからクウが攻撃って云うフォーメーションで行こうと思う」

 

 3人は作戦を理解して、頷いてくれた。

 

 「僕は何時も通り、2人の後ろからサポート。今回クウの回復は当てに出来ないので、被弾には気を付けて、回復薬は早めに使っていこう」

 

 「分かったわ」

 

 作戦も決まり、砂浜に現れた岩礁地帯を越えていく。

 

 ハルさんは流石の身の熟しだし、クウも軽々と歩いているが重いオズさんと僕は遅れがちだった。

 

 これはリアル経験値の差だな。

 

 そして、岩礁地帯を進んで15分。岩礁の隙間、他から見えない様になっている場所に広い砂浜が有って、そこにボスエリアを示すモノリスが有った。

 

 その前に、6人組のパーティが立っている。

 

 「あれ、他に人が居るよ」

 

 「ああ、彼らもボス戦をしに来たんだろう」

 

 僕達も砂浜に下りて6人パーティの後ろに並んで順番を待つ。

 

 暫くして、何も無い空間から5人の冒険者が現れた。

 

 前のパーティの男が、出てきた連中に声を掛けている。

 

 「お疲れ、どうでした中ボス?」

 

 「ああモーションもAIも大した事無いんだけど硬くてな。思ったより時間掛かっちまったよ」

 

 「やっぱり、鈍器が有効なんだな」

 

 僕も情報は欲しいので、軽く挨拶して会話に加わる。

 

 「だな。倒せなくは無いけど、ただ硬いだけって感じになって面倒だったよ」

 

 「うちはハンマー使いが居るし、掲示板通りなら、問題ないな」

 

 そう言って前のパーティは1人の戦士を指差した。

 

 「確かにな。俺達も鈍器系の武器を用意しとけば良かったよ。まぁ、勝ったから良いけど。じゃあ、俺達は先に行くよ」

 

 「ああ、ありがとうな」

 

 「うん、ありがとう」

 

 僕らは挨拶して別れ、前のパーティが入って直ぐに別のパーティが出てきたので、また挨拶して軽く話を聞いた。

 

 「さて、ボス部屋も空いた様だし、行くよ」

 

 ボスエリアを示す縦横が30cm、高さが1m程の黒曜石の様な岩には8つの印が有り、内7つが赤く光ってる。この光りが今対戦中の印で、緑に光ってるのが空きと云う訳だ。

 こうしている間にも、もう1組後ろに並んでいる。

 

 「なになに、『冒険者よこの岩に触れ、試練を乗り越えよ。其処に新たな道が示される』だって」

 

 クウが何の警戒もせずに岩に触れたが、ボスは出てこない。

 

 色々言いたい事は有るが、それは後回し。迂闊なクウを軽く小突いて、準備が万端か確認してから全員で岩に手を置いた。

 

 「うふふ、ここのボスは初めてだから楽しみね」

 

 「ですな」

 

 「さぁ、中ボス戦だ!」

 

 ボス戦のフィールドに入ったクウは、キラークラブを見て叫んだ!

 

 「クラブ(蟹)じゃ無くて、ハーミット(ヤドカリ)じゃない!?」と。

 

 

 

 そして本サービス開始から1ヶ月半が過ぎた。

 

 第一異界の中ボス戦から、僕達は順調にコマを進めて第三異界に到達した頃、攻略組みが遂に第四異界の第四階層に到達したというニュースが流れた。

 

 その間に第一回イベントが有り、僕達は其々新たなスキルを得ていた。お蔭で第三階層に辿り着くのが1週間遅れたが、皆色々有って楽しんだらしい。

 

 パーティの中で一番最初にクリアしたのは、ハルさんで、一番遅かったのは僕だった。

 

 (別に急いだ訳じゃないけど、クウにマウントを取られたのが少しだけ悔しかったり・・・)

 

 そんな事より、既に第四異界、第四階層に既に辿り着いた攻略組みが足踏みを強いられていたのだ。

 

 7つの異界で出来ているこの世界の丁度半分の第四異界には何か有ると言われて来たが、そもそも中ボスのエリアが何処にも無かったのだ。

 第四異界はこれまでの異界と違いマップを真っ二つに分断する壁が有った。其処に巨大な門が有るがその門は未だ開放されていないのだ。

 

 考察組も奔走しているが、今の所通過したという情報も無い。

 

 「まぁ、マイペースで来ている僕達には関係無いけどね」

 

 僕達は揃ってログイン出来る時間はどうしても少ないのだ。

 

 「まだ、3階に来たばかりですものね」

 

 お祖母ちゃんは自由に時間が使える様で、そうでもないのだ。だから最近は僕達とは別に一人で遊んでいる。

 

 1人で大丈夫かと心配だが、最近は随分と慣れたみたいで一人ゆっくり楽しんでいるそうだ。

 

 まぁ、そもそも普段病院からあまり出ないお婆ちゃんが唯一自由に動ける世界を、奪う事なんて僕には出来ない。

 

 「そうそう」

 

 「ですね~」

 

 僕達は、本物の様な世界を満喫しながら一つずつクリアしてきた。

 

 第一異界はスタンダードなマップで草原や川、海に山と有る意味普通のマップが続いていたが、第二異界は森がメインの世界だった。

 この異界から始まった突発クエストは食べ物の調達や料理の素材集めが多かった。また中ボスは飢える一匹狼のワーウルフだったし、ボスは何でも飲み込む巨大蛇の魔物だった。

 

 そして。今着いた第三異界は古城や遺跡が多く、情報では人を助ける突発クエストが多いらしい。

 

 森に迷った王子を助け出したり、捕まった獣人の女の子を助けたり、囚われのお姫様を塔から助け出し、令息を攫った悪い魔法使いを倒したりと、何かに付け美男美女が関わってくるらしい。

 

 それに敵に人が出て来るのが最大の特徴かもしれない。

 

 「そろそろ僕達も新しい仲間が必要かもね」

 

 僕達はこれまで4人パーティでやってきたが、もともと6人パーティが基本のゲームなので、そろそろきつくなって来たのだ。

 

 「2階のボス戦、大変だったものね」

 

 「確かに、第二異界のボスの攻略には時間が掛かりましたからな」  

 

 「ですね。せめて回復役がもう一人」

 

 出来れば、前衛も一人欲しい。

 

 「回復役なら私が居るじゃない!」

 

 神官となったクウが腰に手を当て文句を言うが、そのクウが両手にメイスを持って突っ込むから問題なんじゃないか!

 

 「クウは前に出たがるだろう。だから回復も出来る後衛が欲しいんだよ。僕1人だけじゃ大変だしクウも戦いながらの回復は大変だろ?」

 

 「うっ!?」

 

 直ぐに前に出たがる神官。後で知ったが初めてのイベントで付いたあだ名が『撲滅司祭』『滅殺天使』だ。で、本来後衛で補助や回復を担当する筈のクウが前に出るので、僕が割を食っているのだった。

 

 パーティ全員を回復するアイテムは割高なんだよ。

 




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