うどんげ、とにかくポンポンペイン   作:mazuton

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 起きるとそこは、和室だった。

 正邪は自分が五体満足であることにほっとする。そこから、現在自分が何処にいるかを確かめ始める。

 

「あぁ、起きたのね」

 

 そこに居たのは、和服を着た黒髪の女と、てゐであった。黒髪の女は浮世離れした美しさで、えらく美人で羨ましいことで、と即座に僻む正邪であった。

 

「あなた、うどんげに殺されかけたんですって?」

「何がおかしい」

 

 女はクスクスと笑っていた。人が死にかけた話を聞いて笑うなど、常識がないのかここの住人は、と怒りをあらわにする正邪。

穴に落とされた立場であるてゐにとっては、正邪の言うことは正当であるが何とも言えない気持ちになった。

 

「こちら、ここ永遠亭のお姫様」

「蓬莱山輝夜よ。よろしく」

 

 さらっと自己紹介をすませて、正邪はあのあとどうなったかを尋ねる。

 

「どうしたもこうしたも必死に止めたよ。死にかけたんだから。感謝してよ命の恩人だよ、私」

 

 正邪が聞きたいのはそこでは無かった。現在自分が生きている以上、彼女は自分を殺せなかった。しかし、どうやって。

 

「私が身代わりになってあげたのよ〜」

「そう、この姫さんがたまたま近くで喧嘩、じゃなくて用事があったんだけどね。そこで騒ぎを聞きつけてやってきたのさ」

「あ〜、痛かったわ。何回死んだか分かんない」

「でも、怪我も何もないってことはお強いんですね」

 

強いものに媚びるモードに入った正邪であったが、それを否定する輝夜。

 

「いや、対人戦闘ではあの子、博麗の巫女にも劣らないから。私だけではとてもとても」

「なんだ、やっぱりあのお姉さんの方が強いんかい」

「現金な子ね、嫌いじゃないけど。私は強くないけど戦いを長引かせることは得意でね。あの子の癇癪が収まるまで構ってあげたの」

 

そこで、足音と襖が開く音が聞こえる。正邪が振り返ると、そこにはうどんげがいた。

 

「あ、あぁ」

「ごめんなさい。ついカッとなって」

 

気絶前の様子を思い出して言葉が出てこない正邪に対して、淡白な謝罪をするうどんげ。

 

「まったく、駄目ようどんげ。あなたは凶器なの。触れるものを傷つけてしまんだと意識を持たないと」

「申し訳ありません。てゐを傷つけられたと思ってつい」

「その割に、無事だった私も殺されかけた気がするんだけど」

「ヒヒ、それは。ちょっと気が高ぶっちゃって」

「うどんげ、その笑い声やめて。似合わない」

「すいません、姫様」

 

しゅんとするうどんげ。その場の雰囲気に呑まれて何も話せていなかった正邪であったが、ここで我に返る。

 

「お姉さん、私はお姉さんのためを思ってそこのうさ公をちょっとわからせたかっただけなんだ」

「うさ公って……」

「ともかく、恩を仇で返された気分だね、これは」

 

 勝手に着せたありがた迷惑な恩に対しては正当な対価な気がするが、正邪はそう思わないらしい。うどんげが、話を聞いている最中に手の内で何かをジャラジャラさせていたので、ビクっとしてしまう正邪であったが、何とか自分の要求を伝える。

 

「私は、この幻想郷をひっくり返そうとしてる。その力になってくれ」

 

 うどんげは、渋い顔をする。まったく、何で昨日の自分はあんなことをしたんだと後悔した。姫様の方を見ても、面白そうという顔をしている。嫌だと言ってもどうせ避けられないなら意味無いので、考えることを放棄して、正邪のために置いてあった手付かずの冷めたお茶をすすった。

 

 ひとまず、正邪を帰すために永遠亭から竹林を通って人里の方に進む。どこに住んでいるかは答えないし、出会ったところに戻ることにした。

 歩いていると、紅白の色が現れた。

 

 博麗の巫女がやってきて話しかけられる。

 それは、標的とされる妖怪にとって死刑宣告に等しい。容赦のない暴力が襲い掛かるのだ。彼女が動いているときには、彼女の周りにいるだけで被害を被る。妖怪にとっての厄災であり、幻想郷に住む人間にとって最後の防波堤である。

 

「あんた、正邪とかいうやつ、匿ってるんだって?だしなさいよ」

 

うどんげは、彼女に標的にされていた。

 

「あ、あの、私は。知らなくて。あの、そういうつもりじゃなくって」

 

 完全なコミュ障を発動し、目も合わせられずにもごもごするうどんげ。うどんげは正邪を匿ってなどいないし後ろにいる。正邪は首を横にブンブン振って自分でないと主張している。うどんげはむしろ、てゐを害した正邪を葬り去りたいなと今でも少し思っている。

 しかし、それを輝夜が許さないので出来ない。それを身近でもない人に説明する能力がうどんげにはない。普段であれば無口キャラで通せばいいが、相手は博麗の巫女。言葉で説明しなければ容赦ない被害を受けることになる。

 

「もういいわ。永遠亭にいるのかしら。ひとまずあんたをぶっ飛ばしてから調べることにする」

 

 早速、理不尽が襲い掛かる。うどんげは、いつもの癖で手の中でライフル弾をくるくる回す。

 気づくと、目の前に紅白の色が目の前に広がったかと思えば、うどんげは、巫女のもつお祓い棒により殴られ吹き飛ばされた。竹をいくつもなぎ倒しながら飛んでいく。

 

「ずいぶんあっさりね。もっとてこずると思ったけど」

 

 そういって、博麗の巫女が永遠亭に向けて移動しようとしたが、直観で顔を後ろに下げて避ける動作をする。頭のあった場所に弾が通り過ぎ、風で髪が靡く。

 

 うどんげは、頭から血を流しながら、うわ言をつぶやきながら近づいていく。

 

「きひ、キヒヒ」

「なにこいつ。気持ち悪いわね」

 

 痛すぎて、ついつい輝夜から止められている笑い声が、つい出てしまう。頭がぐらぐらする。うどんげは、基本的に本気を出さない。というか出せない。油断するとすぐにやりすぎてしまうし、自分だけの責任になるならともかく、師匠である永琳や輝夜が悪いということになってしまうからだ。以前の月の異変のときも、永遠亭はある意味加害者側というか、異変を起こす側であった。うどんげとしては、仕事はこなすし身内のために全力は尽くすが、そのために人を害することにどこか抵抗があった。

 しかし、身内に理不尽な被害が被りそうなとき。これはうどんげの琴線に触れる状況であった。質が悪いのは、論理的に正しいかではなく、うどんげがそう思えるかが大事であること。身内を守る。その大義名分をもてたとうどんげが認識したとき、力を使うと決めていた。

 すん、とおとなしくなったと思ったところ、うつ向いていたうどんげが正面を向き、その瞳が赤く輝く。博麗の巫女はとっさに避けようとするも、気づくと彼女は地面に倒れていた。

 

「!」

 

 慌てて立ち上がろうとするも、頭が痛い。何かに殴られたような痛み。うどんげは先ほどの位置から動いていなかった。

 

「あんた、自分の痛みでも私に分けたわけ?」

 

 うどんげは答えない。博麗の巫女は自分の頭に触れるも、とくに外傷は見られない。どうやら、傷自体を相手に受け渡すわけではないようだ。それなら強すぎる。実際、うどんげの頭からはいまだに血が流れている。

 

(目を合わせるのはまずい。)

 

 博麗の巫女は、うどんげの正面に入らず、彼女の目が視界に入らないように攻撃することを考える。いや、むしろ視界など不要だ。

 

「あんたの目を見てたら惑わされる。それなら、目をつぶっていた方がましね」

 

 そういって、博麗の巫女は自ら視界を閉ざす。彼女くらいの実力者であれば、目をつぶったところでほかの感覚で賄える。なんてことはなく当然不利になる。しかし、目を開けていると不可避の攻撃をされる可能性がある以上仕方ない。自分は目をつぶっても余裕だというブラフも含めて、さきほどの攻撃にも使用した亜空間、相手の近くにまで瞬間移動できる技を使用する。見えなくとも、うどんげがいる位置はわかる。先ほどの攻撃では足りなかったとみえるため、今度こそ、容赦のない蹴りを打ち込む。

 博麗の巫女の蹴りは、うどんげには届かなかった。

 

「な、なんで」

 

 うどんげは先ほど同様、赤い瞳を開きながら博麗の巫女を視界に入れている。普段の自信なさげな彼女らしくない、ハッキリとした声で告げる。

 

「あなたがどうしようと関係ない。私があなたを視界に入れた。それで終わり」

「なによそれ。反則じゃない」

 

 うどんげの瞳を見てしまったら狂気に染まってしまう。そうミスリードされているものが多いが、彼女の能力の本質は狂気による現実世界に対する関与。

 つまり、うどんげが相手を見るだけで、能力は発動でき、相手を自身の狂気に呑み込むことができる。初見殺しにもほどがあるその能力により、博麗の巫女はその場に倒れ伏した。

 

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