通りすがりの『先生』   作:muryoku

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推奨BGM Unwelcome School

追記 誤字多くてほんとゴメン。今度から見直ししっかりします。


魔王、降臨

「モ、モ、イ~~~!」

「いふぁーい!ごふぇんごふぇんごふぇんってばあああああ!」

 

 士の側頭部に謎の物体が直撃してから約30分後。

 気絶から復帰した士はゲーム開発部に所属する少女、もといトラブルメーカーである才羽モモイの両頬を思いっきり抓っていた。

 

 何を隠そう、士が彼女たちゲーム開発部の依頼を受ける気が無かった理由の大部分を占めているのが、このモモイという生徒の存在だ。

 

 一週間程前のある日。ノアと共に取り組んだ書類仕事に一息が付き、お昼時になった頃。士はバイクを走らせ、昼食を食べる為にミレニアムへと訪れていた。

 

 特段理由などは無い。ただトリニティとミレニアムどちらに行くかと考えた時、距離が近かった方を選んだだけだ。

 

 ゲヘナが選択肢に入ってすらいない理由は、風紀委員会委員長である空崎ヒナに呼び出されそちらに向かった際、美食研究会という部活動が巻き起こした事件が関係しているのだが……これはまた今度の機会に語るとしよう。

 

 あんな食専門のテロリスト集団がいると知ってしまった以上、ゲヘナ敷地内で安心して食事をすることなどできる訳も無く。

 

 そんな訳もありミレニアムの飲食店で腹ごしらえを終え、シャーレ宛ての領収書を店員にしっかりと書いてもらい満足した気分で士が店を出た時の事。

 

『あーもーまた負けたぁ!何でこんなにゲームバランスがおかしいの!このぉ!』

『だぁっ!』

 

 士の頭にここキヴォトスで流通している謎のハード、ゲームガールズアドバンスSPが直撃。そうして士は意識を失い、その後駆けつけてきたミドリとモモイによって彼女たちの部室に運び込まれた――そう、今と全く同じように。

 

 二度も頭部にゲーム機をぶつけられて、怒らない人間は居ないだろう。今もモモイに行われ続けている士の体罰は、至極まっとうな理由で行われているのだ。

 

「物をむやみに投げるなって前に言ったよな、お前!」

「はふぃ!すいまふぇんでふぃたぁ!」

 

 伸びてはいけない所まで伸びてしまっているモモイとそれでも手を全く離さない士を横目に、才羽ミドリは先ほど士の頭部を狙撃した物体――プライステーションの安否を、一人チェックしていた。

 

「ふぅ、何とか壊れたところは無さそう。よかったよかった」

「ミフォリィ!助けふぇ!無くなっひゃう!わふぁふぃのほっふぇなくなっひゃう!せんふぇいをとめふぇ!」

 

 頬を抓られているせいでまともな発音ができていないモモイが、ミドリに助けを求める。

 

「……はぁ、仕方ないな。先生、そこまでにしてあげてください。そろそろお姉ちゃんの頬が限界そうなので」

 

 人差し指と親指の力を緩めると、ゴムが弾けた時の様な乾いた音がした後にモモイの頬が元の形を取り戻した。

 

「うー。ちょっとは手加減してよ……」

「元はと言えば、お姉ちゃんがゲーム機を投げるのがいけないんでしょ」

「でも、ミドリは先生を心配してる私と違って『プラステは無事!?』が第一声だったじゃん」

「……いやそれはだって、私たちゲーム開発部の財産リスト一号だし……」

 

 二人の会話を聞いて、先程ミドリが吐いた物よりも大きいため息が士の口から漏れる。

 妹であるミドリは姉のモモイの暴走を止めるブレーキ的存在なのだと、初対面の時は思っていたのだが――その認識にヒビが入った瞬間であった。

 

 意識が覚めてまだ数分。士はやはり来ない方が良かったと口には出さないものの、胸中は深い後悔に包まれていた。

 

「で?なんだってお前らはわざわざ俺を呼びつけたんだ」

 

 このままこの二人に会話の主導権を握らせてしまえば、ロクに話が進まないのは明白。そう判断した士は、自分から用件を尋ねる事にした。

 

 その問いを待っていたと言わんばかりにモモイが士の言葉に反応し、眼を輝かせる。

 

 これだけ余裕があるならば、もう少し抓っていてもよかったな。などと士が考えていることは露知らず、モモイが意気揚々と語りを始めた。

 

「よくぞ聞いてくれた先生!では、さっそく今から共に廃墟に行こうぞ!」

 

 ――廃墟。建物や人家が荒れ果て、無人の場所となってしまった跡地。言葉通りに受け取るならば、士に想像できるのはそのような場所しかない。そんな所とゲーム開発部の危機に、一体何の関連性があるというのだろうか。

 

「お姉ちゃん、最初から説明した方がいいんじゃない?先生が困惑してるよ」

「それもそうだね!」

 

 ミドリにそう言われ、大仰な身振り手振りを使いモモイが士に事の始まりを話し始めた。

 

「ご存じのように、私たちゲーム開発部は今までずっと平和に、16ビットのゲームとかを作ってたんだけど……ある日、急に生徒会からの襲撃を受けたの!一昨日には生徒会四天王の一人であるユウカから、最後通牒を突きつけられて――」

「最後通牒?」

 

 物騒なキーワードに、モモイへと向けられている士の表情が怪訝な物になる。生徒会がそこまで干渉してくるという事は、余程の事をしてしまったのだろうか。

 廃墟だの襲撃だの生徒会四天王だの最後通牒だの、モモイの話は詳細な意味を理解しにくい単語が多すぎる。

 

「――そこから先は、私が説明しましょう」

 

 士が頭の中で疑問を浮かべていると、部室の扉の開く音と共に声が聞こえてきた。部室に居る皆の視線がそちらに向く。天から差し込む太陽の光を浴び、そこに立っていたのは――。

 

「早瀬か」

 

 見慣れた女子生徒、早瀬ユウカであった。

 

「出たな!生徒会四天王の一人、【冷酷な算術使い】の異名を持つ生徒会の会計、ユウカ!」

「人をモンスターか何かみたいに言わないでくれる?失礼ね」

 

 モモイの言い草に対し軽く息を吐き、視線を士の方に向ける。

 

「……先生とは色々と話したい事もありますが、それは後にするとして……モモイ」

 

 だがそれも一瞬の事で。すぐにユウカは士から視線を逸らし、モモイの方へと向けなおす。

 

 いつものように『しっかり自分の仕事をしてください』や『早くシャーレに戻りますよ』などと言われるのかと思っていたのだが、何故だかそういう言動は一切ない。

 

 普通過ぎるユウカの様子。それに対し何か、重大な見落としをしている様な引っ掛かりを覚えていると――スーツのポケットに仕舞っている連絡用のスマホが、通知音を鳴らした。

 

 送り主の所に表示されている名は、生塩ノア。

 

 当番になる日以外でノアが連絡を送ってくるのは珍しい。というよりも、初めての事だった。急ぎの用事でもあるのだろうか。そう思いながらモモトークを開く。

 

『先生、逃げてください』

 

 淡々と、しかして切実な思いが伝わってくる。そんな一文が、士の目に飛び込んできた。

 

『今日のユウカちゃんは、正気じゃないです』

 

 モモイと言い争いをしているユウカの方を慌てて見る。そこそこの声量で互いに喋っているはず、だというのに。士には話の内容がまるで聞こえてこない。

 

『絶対に、彼女とは会わないように――』

 

 そこで、気が付いた。

 

 彼女が、早瀬ユウカが。誰にも見えないように隠している――どす黒く禍々しい、怒りのオーラに。

 

「さて――先生、こんな所で何をしてたんですか?」

 

 部室の中がたったその一つの声で凍りつく。

 

 演劇で舞台の照明が暗転する時の如く、崖から足を滑らせ落ちる者の如く。一瞬にして世界は彼女の放つ暗闇の気配に包まれた。

 つい先程とは余りにも違うユウカの雰囲気に、モモイは喉を掴まれたような声を漏らし、ミドリは警笛を鳴らす本能から体を震わせ、部屋の隅に置いてあるロッカーがひとりでに揺れ始めた。

 

「私、先生の代わりに本日の業務、全て終えてきたんですよ?感謝の言葉はどうしたんですか?」

「あ、ああ。それはもちろん、とても感謝してるぞ、ありがとうな。早瀬」

 

 昔とある人物にやっていたようにひとまずは軽くあしらい、その後の説教を不機嫌そうに聞いてそれにまたユウカが怒り――というパターンが常だったのだが。

 

 今回は、どうもそうは行かないらしい。

 

 動揺と緊張ゆえだろう。士の声は若干のどもりを見せていた。

 

「そうですよね、普通はお礼を言いますよね。七囚人と仲良くご飯を食べている暇がありましたら、私への感謝が先ですよね」

 

 冷や汗が額を伝う。

 

 全て、バレていた。

 

 彼女の瞳に光はもうない。士へと絶対零度の射殺す視線が放たれているだけだ。

 

「この大量の領収書、何です?おでん天道詰め合わせセット4500クレジット。料亭カイトウ高級和風定食15000クレジット。洋食屋BOARDエースランクランチ30000クレジット。二眼レフカメラの整備代200000クレジット……」

 

 上着のポケットから領収書の束を取り出し、士がシャーレへと丸投げした負債を読み上げる度、ユウカの背後に異形が形成されていく。

 その姿は、まるで阿修羅のようであったと。一連のやり取りをロッカー内部からこっそりと見ていたゲーム開発部部長、花岡ユズは後に語る事になる。

 

 このままでは、マズい。

 

 ギギギと。錆び付いた機械の様な鈍い動きで、士はいつの間にか足元に引っ付いていたモモイとミドリの方を向く。前に立つ絶対的恐怖の象徴を直視せぬようにと顔を彼のズボンに埋め、携帯のバイブレーションの如く二人揃って震えていた。

 

 ユウカが、一歩を士に向けて踏み出す。

 

 瞬間、士は二人の首元を掴み持ち上げ――一目散に部室内から逃げだした。

 

「うわぁ!?」

「え、え、あ。ちょっとー!?」

 

 靴を履いている余裕などはない。かかとの部分を思いっきり踏みドアを勢いよく開け、急いでバイクの元へと駆け寄る。

 

「な、何で私たちまでー!?」

「元はと言えば、お前らのせいでこんなとこに早瀬が来たんだろ!責任は取ってもらうからな!」

「酷い言いがかり!?私たちほとんど関係ないじゃん!」

「いいからさっさと乗れ!」

 

 モモイとミドリを乱雑に乗せ即座に自身も乗り込み、エンジンをかける。いつもなら絶対にしないような無茶苦茶な急発進を行い、すぐさまメーターが最高時速を指す。あまりのスピードに後ろで二人が悲鳴を上げているが、今はそんな事を気にしている余裕はない。すぐさま離脱しなくては。その一心でハンドルを握り続ける。

 

「アロナ、ノアに今すぐメッセージだ。早瀬を何とかして落ち着けてくれってな!」

 

 電子音が鳴る。それは士の叫びがノアに送られたことを示していた。

 既にゲーム開発部からはかなりの距離遠ざかっている。これでひとまずは大丈夫だろう。

 

 その安堵は、慢心へと姿を変えた。

 

「ヒエエ!せ、先生先生!ま、魔王!魔王が居るぅ!」

「なっ!?」

 

 ぴったりと士の背中に張り付いているモモイから聞こえた悲鳴。あり得ない。あり得てはいけない光景が、バイクミラーに映りこんでいた。

 

「な、何で!?どうして足でバイクに追いつけるの!?」

「待てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 ミドリが驚愕の声を上げた直後、深淵から響くような怒号が背後よりこちらに送られてくる。メーターに表示されている速度は時速120km。現実には信じられない事であるが、つまり今のユウカはこれに勝るスピードを出しているという訳で。

 

 その事実に士が戦慄していると、不意に何かが弾ける様な音が聞こえてきて――彼の右頬付近を、一つの鉄の塊が通り抜けた。

 

「うわわわわわわわ!先生!ユウカが撃ってきてるよー!!」

 

 モモイの声と同時にユウカの持つサブマシンガンから放たれた弾丸がバイクの車体に当たり、金属と金属がこすれ合う音が聞こえてくる。

 

「うおっ!あ、あいつ。お構いなしにバカスカ撃ちやがって!」

「先生!前、前しっかり見てぇ!」

 

 身を極限まで屈め、右に左に車道に居る車と飛んでくる銃弾を華麗に避けながら、キヴォトスの道路を爆走するマシンディケイダーとユウカ。

 

 少しずつ、けれど確実に距離を縮めてくるミラーの中の魔王と視線がかち合う。確固たる殺意。彼女の眼は、それで満ち溢れていた。

 

 このままでは掴まるか、士が被弾してGAMEOVER。彼らのパーティーは全滅の未来へと進むだろう。

 

「こうなったら、安全無視だ。飛ばすぞ、しっかり掴まっとけ!」

 

 ハンドル部分に取り付けられた、一つの赤いボタンを押し込む。

 マフラーから鳴り響く音は今まで以上に暴力的な物へと変貌し、エンジンが高速で稼働し始める。メーターの表示最高速度が300へと切り替わり、マフラーから炎が噴き出す。バイクの馬力が、一瞬にして何倍にも跳ね上がった。

 

 安全性に配慮し普段は使用しないようにしているマシンディケイダーの最大火力を解放し、士たちは地平線の向こうへと消えていく。

 

 流石にこの速度には追い付けないのだろう。こうして門矢士一行は、命からがら魔王早瀬ユウカの襲撃から逃げ延びる事ができたのだった。




ここまで士が焦るとか、ボス戦かな?

マシンディケイダ―のボタンの設定はオリジナルです。普通のバイクと切り替えできるらしいので、こういう形で実装してみました。

Unwelcome Schoolでも中和できないレベルのキレ方してるユウカさんこわ。結婚してくれ。

というわけで、完全ギャグパートでした。

次回、またしてもギャグ、かも。多分ギャグ。

お楽しみにしていただけると幸いです。

















OPEN YOUR EYES FOR THE NEXT FAIZ.

全体的な文章が

  • そこまで気にならない
  • 描写が下手
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