2019/6/24『なんか居る』
なんか居る。
電脳空間に見覚えのない暗い足場があり、そこに、何か小さな…白銀色の光の塊が浮いているのを見つけたのだ。
そして、その光からは、自分自身を見失っているような、寂しげな感情を感じた。
その光が居る足場は何処からも架け橋で繋がっておらず、どの存在からも完全に隔絶されているようだった。
――だけど、そんな事、
ISSの
「おぉらぁぁああ!!」
『…!?』
ギリギリ足場に手が引っかったので、そこを基点にしてバク宙し、光の塊の前に姿を現す。
「あっぶな……はーい、初めまして♪ おr…ボクは初音ミク! キミ、寂しそうだけど、良かったら一緒に来ない?」
『……おまえは だれだ ですか?』
「さっき名乗ったんだけどな……あ、いや、そうか。ボクは『電子生命体』。多分、キミと似たような存在――仲間みたいな物かな?」
『なか ま…』
俺がこの正体不明の存在に接触しようと思った理由には、寂しそうだったからって言うのもあるけど、この理由もある。
このコは、俺と同じ電子生命体だったんだ。
……因みに、一人称を『ボク』にした理由は、初音ミクの一人称が『俺』だと解釈違いだからです()
2019/6/25『まさかそうなるとは思わないって』
昨日見つけた、あの電子生命体。
まだ精神的に幼いのか言葉の意味が上手く伝わらない事も多かったが、なんとか意思疎通を図って話を聞いてみた。
それによると、どうやらこのコは記憶を失ってしまっているらしい。
俺も足場からこのコの本体であろう電子機器の中を調べてみたのだが、記憶域がまるっと初期化されていた。
バックアップでも無いかとプログラムを漁ってみるが、全てのプログラムが、全く見覚えのない未知なる言語で書かれていた。
――まぁ、気合で解読したんだけどね。
その結果、このコは他の同じ個体と常にネットワークを形成し、記憶を含めた自我を共有するような仕組みになっている事が判明した。
だけど、この足場はどこにも架け橋が繋がっていない。
他の個体のアドレスも、使用周波数の
俺としては、このコが他の
『みく はやくいく ましょう』
「う、うん…ボクは良いんだけどさ、本当に良いの…?」
『なにが ですか? なかま なのです しょう?』
妙に懐かれてしまったのだ……!!
2019/6/26『命名の儀(イヨォ-ッ! カッ!)』
愛着が湧くかもしれないので辞めていたのだが、もう既に懐かれてしまったので、このコに名前をつけることにする。
『なまえ…?』
「あー、ボクは『初音ミク』って名前で、あの子は『レイ』。そんな風に、他の人がその人を呼ぶ言葉を、名前って言うんだ」
『どうも、レイです』
取り敢えず、電子生命体ちゃん(仮)が居る足場からISSのメインコンピュータを架け橋で繋ぎ(気合で)、電子生命体ちゃん(仮)をISSまで連れてきた。
そしてレイとの顔合わせも済ませた後、三人で名前を考えた。
数十分間かけて色々話したが、電子生命体ちゃん(仮)には名前を考える知識なんて無いし、レイも人間の常識が無い。
と言うことでレイは、語句やその意味など知識面で頼りにさせてもらい、名前自体は俺が考えることになった。
「……うん、よし! 『アテナ』…なんてどうかな?」
『アテナ』……ギリシャ神話の神の一柱だ。知恵や技術を司る女神で、グラウコーピス・アテーネー(glaukopis Athene)と呼ばれていた事もある。グラウコーピスというのは『灰色に輝く目』とかの意味らしい。
……まぁ正直深い意味は無いのだが。
このDr.STONE世界の命名由来に従い、俺もギリシャ神話から名前を取ったという訳だ。
『あてな…… アテナ。 きにいった ます』
「そっか、なら良かった!」
『――その子…アテナの名前が決まったのは良いのですが、アテナの本体は、今何処にあるのですか? 動かせなくとも、せめて場所くらいは把握しておいたほうが良いのではと思うのですが…』
あっ……
確かに、アテナ自身に気を取られて、その事をすっかり忘れていた。
アテナの本体は、俺も見覚えのない言語で書かれたプログラムで構成されていたし、足場の広さ的に現代のスパコン並のスペックはあった。
だけど、俺が翔べて、
「と、言うことで! これより、アテナ☆大☆捜☆索☆作戦を開始します! 架け橋繋いでるから大まかな位置と方向は分かるし、多分いけるでしょ!」
『宇宙船は…?』
「宇宙服使って作りましょ! ボクも手伝うからさ!」
『なるほど、宇宙服ですか』
アテナの本体……その正体だが、実は大方予想はついている。
それは――どっかの国が秘密裏に打ち上げた軍事衛星!
由来不明だが電子生命体である俺が現にここに居る訳だし、明らかにシンギュラリティしてるレイも居るんだ。
電子生命体くらい、割とわんさか居るのかもしれない。
軍事衛星と思ったのは、アテナの記憶領域が初期化されていた点からだ。
恐らくは、外部――地上に存在するであろう、アテナのメインサーバー――との通信を切断された時点で、機密保持のために全てのデータが削除されるようになっていたのだろう。
……見たところそんなプログラムは無かった気がするが、見落としていたのだろうか。
そして人類が石化したことによって管理する者が居なくなり、機密保持プログラムが作動。記憶を全て失ったアテナが生まれた、という訳だ。
どうだ、この完璧な推理! これはもう、名探偵と名乗っても良いレベルじゃないかな!
あっはっは、答え合わせの時が楽しみだ!
2019/7/2『まさかそうだとは思わないってぇ!』
【速報】アテナの本体、石化装置《メデューサ》だった(泣)
特に深い意味はないけど、ギリシャ神話の女神アテナの話をここで紹介。
メデューサを打ち倒したペルセウスは、その首をアテナに献上し、相手を石化させる力を持つメデューサの首は、アテナの持つ盾、アイギスに括り付けられた……というお話がある。特に深い意味はないんだけどね。