転生したら神様になった男の日記   作:じゃがありこ

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プロローグ終わり。

感想、評価ありがとうございます。

ひとまず、あとちょっと書きます。


第3話

〇月×日

酒吞童子と戦闘をして目を覚ました時には、俺は拘束され鬼どもの根城に連れてかれていた。酒吞童子の方が先に目を覚ましたようだ。傷も俺の方が深く、エネルギーを使って回復しようとしたのだが体が透けてきたため、断念した。おそらくだが、エネルギーを使いすぎると俺は消えてしまうらしい。壊すのはエネルギーを大して使わないが、直すのはエネルギーを大量に必要とするらしい。

 

〇月×日

酒呑童子は俺を殺す気はないようで、軽い手当をしつつ独房に俺を閉じ込めたまま放置している。時折、酒をもって俺と話に来るが非常に鬱陶しい。よく絡みにくる茨城童子もうざい。

 

〇月×日

酒呑童子曰く、俺と自分は似ているそうだ。奔放な快楽主義者であり、行動基準は「楽しいかどうか」である。

たとえどんなに無意味で矛盾していて不効率でも、楽しければそれでいい。生きるも死ぬも命懸けで楽しみ、笑って「楽しかった」と辞世の句を残せる人生を望んでいると。

 

そんなはずはない。俺は毒にも薬にもならない当たり障りのないただの人間だったはずなのだ。

 

転生しようとそれは変わらないはずだ。そう思っていたのに、振り返ると自分らしからぬ行動が多い。人殺しも罪悪感などなく、誰かを愛おしいと感じられない。暇つぶしにやった神話作成や銃の製図なんかもあまりにも普段の行いとかけ離れている。

 

怖くなった。背筋が凍った。俺という人間が別の存在に変わっている気がする。酒呑が哂って言った。

 

『人に拘るから苦しむんやない?神は人にはなれないんよ?』

 

俺は黙るしかなかった。

 

〇月×日

傷が治った。そして、酒呑という鬼のことも理解できた。彼女は、誰よりも強欲だが同時に誰よりも潔い。彼女にとって、華踊る酒盛りも、血飛沫の舞う戦場も、己が「愉しい」と感じればその流れに身を任せて酔いしれる宴なのだ。まさに伊達と酔狂に生きる怪物。また気が多くイケメン好きで、強欲なコレクターでもあり、気に入ったものや興味を惹かれるものにはとりあえず手を出す質。

コレクションの基準は見た目の雅さ、希少さが重要で俺を手元に置いているのは、神が希少だからだろう。

 

〇月×日

酒呑童子は何も言わず俺を外に出し、解放した。追手の鬼も存在せず、ただ一言「絶対にあんたはんはうちの元に帰ってくるやろな。どこまで行ってもあんたはんは神や」そう言って帰っていった。

 

 

 

 

 

「――――何だこれは?」

 

集落が燃えていた。木造の建物が次々と黒にそれとともにその形すら失い崩れ落ちていく。緑豊かだった木々や田んぼは、今や巨大な炎と化し、紫音を照らている。

 

火の粉が舞散る広場の隅で、立ち尽くしている紫音は今の状況を飲み込めていなかった。現実感がない。

 

光だけで瞳を焼きそうな炎の中を真っ直ぐに見据えている。瞬きひとつせず呆然と失われていくものを見つめている。そうしている間にも炎が凄まじい勢いで勢力圏を広げていく。

 

悲鳴が聞こえる。血の匂いが充満し、山の方からは惨殺の音が聞こえる。

 

まだ生存者がいると思い、紫音は集落の方へ走り出す。炎の中をかき分け、生存者を探すが見つからない。そこにいたのは鎧を着た武者たちだ。

 

一目見ただけで妖の類だとわかる。

 

「■■■■■■ッ」

 

鎧武者が人ならざる言葉を叫んでいるが、ひどく耳障りで紫音は即座に刀を抜いた。

 

紫音はノータームで鎧武者を切り裂き、集落を駆けまわる。炎に包まれる集落に紅色の一閃が響き渡る。

 

立ち塞がろうとした武者は例外なく、惨殺された。

 

生存者がいないことを確認し、山を駆け上がったが、神社に着くころにはすべてが終わっていた。

 

境内の中には血の海が広がっている。集落から逃げ出した人間はここに来たのだろうが、鎧武者に追いつかれ殺されていた。

 

境内に佇んでいる武者たちは、紫音の方を向く。

 

「死ね」

 

紫音は最低限のエネルギーで一つの球体が手元に出現し、それを放り投げる。瞬間、それは弾け地面や砂塵が風に流され激しい大爆発が引き起こされる。風の爆発の衝撃で大地が削れ、地震の如く地が揺れる。

 

気が付けば鎧武者たちは、跡形もなく消失していた。紫音は、疲労で揺れる視界を押さえながら、その場に座り込む。

 

集落の人間に愛着はあったはずだ。

 

「………」

 

何十年も彼らを眺め、助けてきたのだから。彼らの信仰心が目当てだたとはいえ、利害を超えたそういった気持ちを、人として当たり前の心を抱けていると思っていた。

 

だが、紫音の心は凍りついたままだった。恐ろしいほど無表情に惨劇を観察していた。お気に入りの玩具が壊れてしまった、衝撃としてはその程度のものだった。

 

妖怪に腹を立てることはあるけど憎むことはない。集落の人間を惜しむことはあれど、涙を流しはしない。

 

人間の精神性からかけ離れていく。紫音は、自分で自分があまりにも不気味で悍ましく、気がつけば刀を自分の腕に突き刺していた。

 

何度も何度も、刀で自身を斬りつける。痛みだけが彼の正気を保っていた。

 

『人に拘るから苦しむんやない?神は人にはなれないんよ?』

 

酒呑童子の言葉が記憶を滑る。

 

腕から流れた血液は人間の頃と変わらない色をしていた。

 

 

 

 

 

〇月×日

村があやかしに襲われ、全滅した日から2年半。俺は神としてではなく人として、世間に紛れ都で暮らしていた。

最近は妖や鬼の被害が、日に日に増しているらしく、安倍晴明率いる手練れの陰陽師たちが、走り回っていた。

 

〇月×日

薬屋兼和菓子屋を営んで生活し始めて数ヶ月、最近よく胡散臭い顔をする安倍晴明が訪ねてくる。

イケメンがニコニコしていると非常に、胡散臭いと思わされる。

どうやらこの男は俺がただの人間ではないと確信している。仕切りに探りを入れてくる。

しかし俺は自分を神だとカミングアウトするつもりはなく、無視し続けている。

 

〇月×日

俺、ロリコンかもしれねえ。

 

 

 

 

 

夜寝静まった深夜に、外を散歩していると一人の少女を見つけた。この辺では見ない顔であり、おそらく一時的に都に滞在しているのだろう。

 

少女の外見は12歳ぐらいだろうか。不思議と目を引かれる少女だった。

 

「………何をしているんだ?」

 

紫音は宿屋の屋根の縁に腰かける少女に声を掛けた。足をぶらぶらさせながら感情の読めない目つきで彼方を眺めている。

 

「んー、星空が感動的だから(あはれなれば)?」

 

「何で疑問形?」

 

「半分冗談。本当は有名な陰陽師に刺激的な出会いがあるって言われたからだね」

 

にっと太陽のように笑みを浮かべる少女が、紫音には尊く見えた。気が付けばなぎこは地面に飛び降りていた。運動神経はいいらしい。

 

「あたしはなぎこ。君は?」

 

「………名無しの神様」

 

紫音の返答になぎこはキョトンとして、小首をかしげた後目を細めて悪戯っぽく笑った。

 

「じゃあ、神様はさ。何か悩み事があるんじゃない?そんな顔してる」

 

確信を孕んだ声色に、紫音は気がつけば自分の心の内を少女に吐露していた。

 

「………神様をやってるとさ 自分が自分でもわからなくなるんだ。ふとした時に怖くなる、自分が別の何かに変わっていっているのではないかって」

 

不意に暖かな体温を感じた。頭を撫でられる。そう気が付いたのは、少女の柔らかな身体の感触が布越しに伝わってくるのと同時だった。

 

「あたしには泣き虫の迷子に見えるけど?」

 

「………」

 

「あたし、しばらく都にいるからさ。何か相談があれば、訪ねてきなよ」

 

それが紫音と後に清少納言と名乗る少女の出会いだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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