人形ノ詩 鴉ノ詩   作:白黒モンブラン

14 / 78
──戦友──


chapter 00-12

赤みを帯びた黒い斬撃が鋭く奔る。

抜き放たれたソレは瞬く間に『敵』を葬り、その頭が宙を舞う。

断たれた部分から噴き出す鮮血の雨が地を赤く染め、光弾が飛び交い、その中を彼女…戦術人形621は駆け抜ける。

桁外れた跳躍から一気に間合いを詰め、すれ違いざまに大太刀を一閃。

そのまま体を回転させ下半身を失った敵の上半身を蹴り飛ばし、迫るブルートを仰け反らせると同時に突進。

 

「…ッ!」

 

僅かな跳躍。しかして描くは緩やかな弧。

振るうは大太刀。奔るは斬撃。訪れるは(機能停止)

舞い上がる上半身。膝から崩れる下半身。

斬り捨てた敵の下半身から噴き出した鮮血が彼女の頬を濡らす。

 

(これで83…)

 

刀身に付着した人工血液を振り落とし、大太刀を構える621。

無数に転がる残骸。そんな中で彼女が見つめる先に立つは僅かとなった敵軍のみ。

戦いが始まってから30分。前哨基地に向かわせまいと足止めしていた彼女は圧倒的な戦闘力で鉄血人形部隊の九割を壊滅させていた。

残るはせいぜい数体。これだけ追い詰められては撤退するのが正しいだろう。

だが下級モデルたる人形らに退くという思考は無い。あるのは目の前に立つものを破壊するのみ。

それは組織を裏切ったハイエンドモデルも例外ではなかった。

機械的な動きで手にした武器を放ちながら迫る。

そして戦術人形621からすれば迫るその姿は痛々しく思えた。

 

「哀れな…」

 

幾ら暴走している身とは言え、多少の思考があればこの場から退く事が出来たであろう。

そんな事も許されない、ましてやその様な自我すら持つ事が出来ない。

只々哀れでしかなかった。

 

「ですが、ここで消えてもらいます」

 

自由の為に組織を捨てた身。幾ら相手が哀れであろうと死ぬつもりはない。

腰を落としながら身体を横に、構えた大太刀は自身の顔の横。しかしてその切っ先は敵へと差し向ける。

そして621は突進した。

間合いを詰め、超高速接近から放たれる刺突。

周囲すら吹き飛ばしかねない一撃。が、その一撃は標的となった下級モデル(リッパ―)を穿ち破壊。

発生した剣風により周囲の敵が怯み、その隙を突くように621は体を回転させ大太刀を薙ぎ払う。

重々しく、されど鋭い一撃。故にその一撃は敵の体を容易く両断し、直後に静寂を招いた。

その中でまるで時間を止められたかの様に動かなくった下級モデルらに背を向けながら構えを解く621。

軽く息を吐きながら腰を提げた鞘を手に取り、流れる様に大太刀の刀身へ鞘へと納刀。

鯉口と柄がかち合う音を響かせた時、それに合わせる様にして止まっていた敵の上半身がずれ落ちる。

断面から噴き出す血が雨へと成り果てながらも大地を赤く染め、降り注ぐ雨の中で621は前哨基地の方へと向く。

 

「急がなくては…」

 

元より前哨基地の撤退が目的。

グリフィンが戦いに気付いて前哨基地にやってくる前に退かなくてはならない。

 

(間に合って下さいよ…!)

 

気付かれたとしてもすぐそこまでは来ていない筈だ。

そんな事を願いながら、621は前哨基地へと向かって駆け出した。

 

 

 

 

 

621が鉄血人形部隊を壊滅させた直後、前哨基地での戦いは既に収束していた。

四方八方に転がるマンティコアとニーマムの残骸。

一方は撃ち抜かれ、一方は両断され、一方は蹴り飛ばされ破壊。

様々な終わりを迎え、炎と共に黒煙を立ち上らせながらも積み上がった残骸の上で独立傭兵レイヴン(C4-621)が駆るAC『Re:LOADER4』は立っていた。

頭部のカメラを介して映る景色。その景色をコクピット内でジッと見つめるレイヴン。

後は621が返ってくるのを待つのみ。そう思われた矢先でレーダーのアラーム音が鳴り響いた。

 

(増援……いや、この反応は)

 

覚えのある反応。

MTの大群でもなければ、技研の玩具でもない。であれば何なのか?

それはレイヴンが口にする前に現れる。

 

「…!」

 

機体後方から響く着地音。

速度があったのかその足からは地を削るようにして聞こえる金属音が響く。

機体をゆっくりと反転させようとした時、通信越しにその声は届く。

 

『…やはり君だったか』

 

「…ッ!?」

 

忘れる筈の無い声。

その声にレイヴンは動揺する。

主人や友人と同様にもう聞ける筈の無いと思っていた声。

だが確かにその声は紛れもなく彼のものだった。

何故居るのか。そんな事はどうでもいい。

レイヴンはゆっくりと乗機を反転させ、そこに立つ一機のACを見た。

 

「…!」

 

壁越えや旧宇宙港襲撃で見たシュナイダー製の『NACHTREIHER』フレーム一式ではなく、そこに居たのはレイヴンがザイレムで見た見覚えのない機体(スティールヘイズ・オルトゥス)

描かれた狼のエンブレム。何より自身の事を"戦友"と呼んでくれる人物。

 

『戦友』

 

「…ラスティ」

 

背景(覚悟)を見つけ、意思を継ぐために狼よりも高く羽ばたいた鴉。

夜明けを切り開こうとして、鴉よりも高く飛ぼうとして届かなかった狼。

互いに助け合い、そして戦友として認めた仲。

その果てに殺し合った鴉と狼。

殺した者(C4-621)殺された者(ラスティ)

ルビコンすら存在しないその世界で今、二人が邂逅を果たす。




漸くと言うべきか、戦友と邂逅です。
さてここからどうすっかなぁ…













「あれは…AC!?何故こんなところに…って、もう一機…!?」

「ありゃ人形か…?よく見れば鉄血っぽいみてぇだが」

「タンク脚にガチガチの重装…!ガチタンじゃないですかぁ!!!」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。