人形ノ詩 鴉ノ詩   作:白黒モンブラン

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chapter 00-15

一夜明けた昼下がり。

第二セーフハウスは省電力モードで稼働しており、621は使えるものがないか基地内を探索している。

対して自分はACのコクピットでラスティからの連絡を待っていた。

答えは直ぐに出すとは言っていたが、余り期待はしてない。

それもそうだろう。ラスティとは面識があるとは言え、グリフィンからすれば自分はどこぞの傭兵でしかない。

加えてサイレントラインの情報を知っている独立傭兵が交渉を吹っ掛けてきたとなれば怪しむのが当然だろう。

早くても一日。遅くても二、三日ぐらい。気長に待つべきだろうが…余り悠長に待っていられないのも事実だ。

最悪の場合…

 

「グリフィンよりも先にサイレントラインに攻撃を仕掛けるというのもあるが」

 

はっきりと言って現実的ではない。

武器も戦力も、何もかも不足している此方がサイレントラインに攻撃を仕掛けようなどただの自殺行為だ。

もう少し条件内容を厳しくするべきだったと今更ながらに思う。

…過ぎた事を考えても仕方ない。連絡が来るのを待つとしよう。

ACを待機モードへと移行させつつ、自分が持っている通信端末に連絡が飛ぶように設定して、コクピットの外へと出る。

 

「さて…どうしたものか」

 

向こうからの連絡がない限り、此方は動けない。

武器を買い揃えるにしたって、資金がない。

幸い『Re:LOADER4』は良い状態を保ってはいるが、それもいつまで続くかさえ分からない。

ニードルミサイルを見つけたように、運よくACパーツか、整備道具が発見出来たらいいのだが…そうそう見つかる筈もないだろう。

 

「随分と考えに耽っていますね、レイヴン」

 

コンテナの上に腰かけ、考えに耽っていた所に探索を終えた621がやってくる。

 

「そういう状況である事はお前も分かっていると思うが。…それでそっちはどうだ」

 

「生活する分には問題ないかと。それと見てほしいのが一つ」

 

「む?」

 

どうやらこの第二セーフハウスもとい省電力モードで稼働している基地にも何かあったようだ。

願わくばACパーツだと良いのだが、そんな事が叶う筈もない。

期待する事もなく、コンテナから降り立ち621の後に続いた。

 

 

第二セーフハウスに存在する地下格納庫の一つ。

元々は四脚のMTもどき…マンティコアを整備する為に作られた場所らしい。

本来であれば起動していないマンティコアがある筈なのだが、どうやら別の物が転がっていた。

 

「これってACですよね?」

 

「…」

 

「レイヴン…?」

 

エルカノ製の軽量タンクをベースにしたAC。

バズーカにグレネード、12連装垂直ミサイル、RaD製のクラスターミサイル。

ミサイルによる弾幕は敵を近づけず、そして支援に適していた。

 

「何故…どうして…」

 

ACのパーツでも、武器パーツでも良かった。

AC一機丸々など最初から期待などしていなかった。

けど、そこにあったのは確かにACで、その構成には見覚えがあり過ぎた。

 

──RaDのチャティ・スティックだ──

 

RaDのシステムエンジニア。

 

──要件はそれだけだ。じゃあな──

 

恩人が作ったAIで…

 

──待ちわびたぞ、ビジター──

 

どこか人間味溢れる存在であった。

 

──…ボス…ビジ…ター…

 

何より、この手で守れなかった恩人の一人。

 

「AC『サーカス』…」

 

彼にとってもう一つの肉体であり、彼を象徴するAC。

企業との戦いでV.Ⅰによって倒れてしまったACがそこに鎮座していた。

 

「621、この機体から何かしらの反応はあったか?」

 

「いえ、特に反応はありませんでした。私が見つけた時と変わらぬままです」

 

「…そうか」

 

ラスティやヴォルタの様に"彼"もと思ったが…如何やら居ないらしい。

少し残念に思う気持ちとこんな世界に来なくて良かったと思う感情が入り混じる。

だが、彼のACが此処にあると言うのであれば…使わせて貰いたい。

許可もなく使うなど許されないだろう。それでもサイレントライン攻略の為には戦力がいる。

特に支援に特化した機体であれば、特に。

 

「…何故ここにあるのか。何故この世界に機体だけ流れ着いたのかは分からない。だが…」

 

ゆっくりと歩みだし、機体に手を触れる。

元より鉄の塊。温かさなどなく、寧ろ冷たい。

それでもこの機体に乗っていた持ち主に伝えなくてはならない。

 

「…チャティ、ほんの僅かの間だが力を貸してくれ」

 

お前の機体を勝手に使った罪は、事が終えた時に受ける。

それまでは、力を借りたい。

この場に居ない持ち主へと思いを伝える。

当然答えは返ってこない。

それでもそうすべきだと、そうしなくてはならないと思う自分がいた。

 

「…大丈夫ですか」

 

「…ああ。大丈夫だ」

 

心配そうにこちらを見つめてくる621。

彼女に言葉に対して問題ないと伝えた矢先、羽織ったジャケットのポケットに収めた通信端末が震えている事に気付いた。

急いで取り出して画面を見れば、連絡してきたのはあのラスティからだった。

画面を操作し応答へと切り替えると、彼の声が響いた。

 

『やぁ、レイヴン。君の良き戦友、ラスティだ。昨日は世話になったな、美味しいフィーカをありがとう』

 

「早いな。もう少し掛かると思っていたが」

 

『君が私を指名してくれたのだ。待たせる気などないよ。…それでだ、私が世話になっているグリフィンの指揮官と話し合った所、是非とも交渉に応じたいという返答が出た』

 

「…意外だな。独立傭兵(野良犬)の交渉に応じるとは」

 

『それほどまでに君がもたらしてくれた情報は有益という事さ』

 

「情報をもたらしたのは俺ではない、621だ。礼ならアイツに言え」

 

『それでもそうだな。次に会う事があれば言わせてもらうよ。…今から彼女に変わる、少し待ってくれ』

 

端末のマイク越しから物音が聞こえる。

この感じからして、ラスティの傍に"彼女"がいるのだろう。

 

『初めまして、独立傭兵レイヴン。私はS09地区前線基地 第9支部の指揮官、フィオナ・A・レイナドと言います』

 

声からして若い。

だが若いからといって侮る理由にはならない。

さて…グリフィンに所属する女指揮官、どう切り出してくるものか。




なんやかんやしながらも頑張るレイヴン。
さて…この先、どうなるか。

では次回ノシ
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