人形ノ詩 鴉ノ詩   作:白黒モンブラン

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chapter 00-16

フィオナ・A・レイナド。

通信越しから聞こえた声の主はそう名乗った。

基地を統べる指揮官が何故と思ったが、代表として出てきたのであれば十分に納得がいく。

 

「交渉に応じる、だったな?」

 

『ええ。それなりの金額は払うわ。けどその前に一つ教えて』

 

「何だ」

 

『…本当に信じていいのね?』

 

その声はどこか棘があるものだった。

警戒と言うよりかは、どこか嫌悪している様に思えた。

聞かない方がいいのだろう。個人の過去を詮索する程、野暮ではない。

 

「ああ。信じてくれても構わない。が…言葉だけでは納得がいかないと見るが」

 

『正直言えばね。端末がない事には何処まで真実かどうかすら分からないから』

 

「…それだけか?」

 

『…』

 

相手からの信用を勝ち取るには実績が必要だ。

言葉など幾らでも誤魔化せる。それ故に信用ならない。

若い指揮官なのは分かる。が、若いだけで基地の指揮官にはなれない。

だからこそ問わなくてはならない。

 

『…貴方が本当に信用に足る傭兵か確かめる為に、一つ依頼させて。交渉での代金とは別に報酬は払うし、そこでACの部品やらを見つけたら貴方のものにしてくれても構わない』

 

「…内容を聞かせてもらおうか」

 

『分かった。…その前に画面の共有は出来るかしら。そちらが使っているのと此方が使っている端末が違うから分からないのだけど』

 

そう言われると今使っている端末は基本的な機能しか備えていない。

加えてブリーフィングをするにはこの画面は小さすぎる。

であれば…

 

「今から端末をACに繋ぐ。そちらは画面の共有の準備をしておいてくれ」

 

『分かった』

 

通信を繋いだまま、外に置いてあるRe:LOADER4へと向かう。

621も気になるのか、此方が呼ぶ事もなく後をついてきていた。

片膝を着いた機体をよじ登り、コクピットへと飛び込む。

そこに621までもが飛び込んできて、ただでさえ狭いコクピット内が更に狭くなるが文句を言わない。

ACのコンソールパネルと端末をケーブルでつなぎ、画面をモニターに映し出す様に設定すると完了した事を向こうに伝える。

 

「繋いだ。共有してくれ」

 

『了解よ』

 

数秒も経たぬ内にモニター全体がミッションブリーフィング画面へと切り替わる。

そこにはグリフィンのマークが描かれた相手ユーザー、そして作戦領域となる場所が映っていた。

 

『改めて。…独立傭兵レイヴン。貴方に受けてもらいたい依頼があります。依頼内容はS09地区西部、旧工場群を拠点にしている違法回収団体排除及び違法改造された鉄血兵器の撃滅です』

 

「回収団体というのは?」

 

『グリフィンから業務委託を受け、破壊されたダミーや人形、また鉄血製の兵器の残骸と言ったものを回収する専門業者です。回収された後は指定の業者、またグリフィンに収めるという形になっています。ただ回収業務は業務委託を受けた際のみとされ、許可なく回収する事は違法とされています』

 

「ではその違法回収団体は、何を目的としてその様な行為に及んでいる?」

 

『解体して使えそうなパーツがあれば売りさばくと言った事が主な目的です。裏の世界では高く買い取ってくれる業者も存在しますので。また鉄血のマンティコアとは言った兵器系は自ら改造を施し、それらを過激派団体に売る、戦力強化の為に保有するといった事もあります』

 

「そんな連中を何故グリフィンは野放しにしていたのかと言いたいが……大方サイレントラインの為に戦力を温存しておきたいのが理由だろう」

 

『その通りです。サイレントライン攻略を控えている今、各基地も余計な損害を出したくないと考えています。故にそういった小さい事には対処しない動きが出ています』

 

分からない話ではない。

だが、そういった小さい問題ごとは早い内にその芽を摘んでおくことに越したことはない。

それが余計な火種になるという事は良くある話なのだから。

誰が戦力を温存しておきたいが故に対処しない。

そこに独立傭兵が現れ、信用を勝ち取る為の舞台が必要になった。

フィオナからすればこの依頼は面倒ごとの処理といった意味合いを含めている。

今の彼女にとってはこの状況はまさしく好都合だ。

 

『違法回収団体の現存戦力の大半は武装した人間で攻勢されていますが、その三割が改造された鉄血兵器群で構成されています。貴方にはその三割を破壊してほしいのです』

 

「残りは?」

 

『こちらから部隊を派遣します。彼女らを共同して作戦に当たってください』

 

全部丸投げするつもりはないという事か。

大方監視も兼ねているのだろう。こちらはただの野良犬(フリーランスの傭兵)なのだ。

フィオナの考えも間違いではない。

 

『作戦内容は以上です。また作戦開始時刻は今夜。合流地点は送っておいたので確認を忘れない様に。……これは貴方が此方の信用を勝ち取る為の試金石でもあるわ。それを承知した上で作戦に従事して。健闘を祈っています』

 

通信が途切れ、モニターが暗闇に包まれる。

コンソールパネルに繋いだ端末を回収し、それを羽織ったジャケットの内ポケットに放り込みつつ621へと声をかける。

 

「準備をしておけ、621。信用と実績を掴み取る絶好の機会だ」

 

「分かっていますよ。すぐさま準備します」

 

「頼む」

 

漸くと言うべきか、傭兵らしい仕事が舞い込んできた。

加えて信用と実績を得るとなれば外せない仕事。

まるであの時…初めてルビコンに訪れた間もない頃の様だ。

そんな気がしなくもない…そういった感情を抱きながら、準備を始める事にした。




回収団体云々関してはこちらのオリジナルでございます。

さて次回は違法回収団体とドンパチです。

では次回ノシ
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