人形ノ詩 鴉ノ詩   作:白黒モンブラン

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──愉快な遠足の始まりだ!(襲撃作戦)──


chapter 00-18

かつてこの工場群は、多くの労働者が行き交い24時間フル生産体制を敷いてた。

様々な企業は傘下に入り、派遣された労働者が派遣先の社員とぶつかったり、上層部が現場の意見が反映しないい、責任追及から逃れようと問題の報告義務を怠るといった管理職が存在していた等といった問題を抱えながらもこの工場は回っていた。

しかしある日を境に退職者が続出。人手不足は致命的な問題へと発展し労働力不足と現場の衝突は絶えずじまい生産も儘ならず最終的には閉鎖される事となった。

誰も寄り付かなくなった工場群は廃れ、何時しかならず者達が巣食う場所と化した。

そして今は違法回収団体の拠点として運用されており、錆びと工場油で滴る廃れた工場群は武装した男たちと改造された兵器によって防衛されている状態にあった。

 

「あ~…だりぃ…。何で俺らがこんな雑用しなきゃいけねぇんだ。下っ端どもに任せりゃいいじゃねぇか」

 

「その下っ端どもが整備に駆り出されてんだよ。納品が近いから済まさねぇといけねぇんだとよ」

 

「クソが…後で整備の連中を半殺しにしてやる」

 

武装した男二人が夜警に当たっているのか、建物の灯りに照らせながら歩いていた。

片方は夜警に駆り出された事に癪に障ったのか相当苛立っている様子だった。

 

「そういや、ボスはどうしたんだよ」

 

苛立ちは収まる様子もなく、男は懐から煙草を取り出し火を点けた。

慣れ親しんだ味に少しは落ち着いたのか、紫煙を吐きながら隣を歩く男にそう尋ねた。

 

「女の所だとよ。夕方辺りに"アレ"に乗って行っちまった」

 

「アレに?あんなデケェので街まで行ったと言うのかよ」

 

「流石に街のど真ん中に降りたりはしねぇんだと。街から少し外れた場所に待機させてるらしい」

 

「そりゃそうだ。あんなのをど真ん中に置く馬鹿はいねぇよ」

 

工場の正面入り口近くまで差し掛かったのか。

二人の視界には只の残骸から改造を経て立派な有人機体と化した四脚兵器が映る。

鉄血のマンティコアをベースに改造を施したものであり、胴体の形状が大きく変更されており、有人機体として生み出された経緯がある。

武装は重機関砲にロケット砲といったベーシックなタイプの他、戦車の砲塔部を転用し装備させた120mm砲を装備したモデル、装甲を強化し脚部に追加の盾を装備した重装型など存在。

多種多様な改造が施された兵器が五機ほど鎮座していた。

 

「こんな廃材のブリキよりボスが乗ってるのが良いぜ」

 

「そういや、アレって何処で見つけたんだろうな?あんまし見ねぇ形してるが」

 

「誰も寄り付かねぇジャンクヤードで見つけたってよ。今じゃ調子に乗って益々クソうぜぇが」

 

一本吸い切るとその吸殻を地面に捨てると男はもう一本取り出し煙草に火を点ける。

何度目かとなる紫煙を夜空へと向かって吐いた時、彼はん?と訝しむ様な声を上げた。

 

「どうした?」

 

もう一人の男がそう声をかけると煙草を吸っていた男は顎を使ってそこに映るものを指した。

それに釣られて男は視線をそちらへと向ける。

確かにそこには妙なものが映っていた。

 

「ありゃあ、光か…?」

 

今日一日ずっと晴れていたのか、夜空には沢山の星が浮かんでいる。

その中で一際輝く青色の光が一つ。星ではない…それどころかその光は炎の様に揺らめき、そして鋭い。

例えるなら、戦闘機のエンジンから噴き出す炎のような…そんな印象を抱かせる。

やがて光は段々と大きくなっていく。まるでこちらへと近づいてきている様に。

流石におかしいと判断したのか煙草を吸っていた男は銃に手を掛け、もう一人は通信機へと手を伸ばした。

 

「聞こえるか、何かがこっちに──」

 

「不味い、離れろッ!!!!!」

 

遮るような大声。

次の瞬間、独特な軌道を描いた六つの物体が飛来。

改造兵器に目掛けて突進し爆ぜると周囲にその爆炎と爆風を広げ、二人の男は爆発に巻き込まれてしまう。

一人は頭の打ちどころが悪かったのか即死。もう一人は辛うじて息があったが激痛により体が動かせずにいた。

 

「な…何が…起きて…」

 

燃え盛る炎、昇り行く黒煙。

周囲がオレンジ色の光に照らされながら、男は状況の把握に努めようとする。

何が起きた?ただそれだけの事を知ろうとした矢先、低く重たい音が響いた。

何かが落ちてきたようなそんな音。ぼやける視界の中、男は頭を動かしてその方向へと向く。

 

「あ、れは…」

 

居たのは灰色に彩られた鋼鉄の巨人。

隻眼の頭部が炎に包まれた残骸や動けなくなっている男を見下ろしていた。

やがて周囲が騒動に気付き始めたのか、銃声が聞こえ始めていた。

それを合図に灰色の巨人が動き出し、頭部が変形。

隻眼を保護するためのバイザーが下ろされ、内蔵されたセンサーが発光。

そしてそのまま地面を蹴って飛翔すると男の視界の前から消える。

 

「ボ、スとおな、じ…ろ、ぼっ…と……?」

 

視界が暗闇に包まれようとしている。

男は霞んだ声で静かにそう呟くと、そのまま息絶えた。

 

 

 

工場群を占拠する違法回収団体に泣いて詫びる程の損害を与える為の襲撃作戦(愉快な遠足)

手始めにレイヴンが駆るRe:LOADER4に装備された三連双対ミサイルによる奇襲は起動前の改造兵器を破壊し、それと同時にグローザ率いる第一部隊が突撃。

襲撃に反応して建物から飛び出してきた構成員との壮絶な銃撃戦を広げていた。

 

「不味いわ…どんどん集まってきている」

 

レイヴンによって破壊され、鎮火した改造兵器を盾にしつつ弾倉を交換していたグローザはそうと呟いた。仲介機器と必要とせず、領域内の仲間を通信が行えるツェナープロコトルを介しているのか彼女の呟きは少し離れた位置に居たネゲヴに届いていた。

彼女もまた建物の壁を利用して弾幕を展開。

その火力と圧倒的な弾幕射撃は相手に攻撃させる隙を与えず、現に敵も遮蔽物から身を出す事が出来ない状況だった。

 

「ハッ…それがどうしたというの?前にも似たような事があったじゃない」

 

「楽しそうね、ネゲヴ」

 

「そう見えるのなら外れよ。少なくとも私は楽しんでいないわ」

 

相手が鉄血なら楽しんでいたかもとネゲヴは思う。

命令とは言え、人殺しなんぞ良い感情を抱ける筈がない。

殺しは殺し。どんな理由があれと、変わらない事実なのだ。

 

「それにしても…」

 

上空で弾丸やミサイル、爆発はしないが凄まじい弾速を誇る杭の様なミサイルが飛び交う。

地上で凄まじい銃撃戦を繰り広げられている中、AC『Re:LOADER4』がまるで鳥の様に夜空を飛翔し、違法回収団体が作り上げた改造兵器へと一つ、また一つ破壊していく光景が彼女の目に映る。

 

「探査用のフレームとは思えないわね、ホント」

 

どういう機動をしているのか、Re:LOADER4の動きは凄まじい。

ブースターを吹かしながら地面を滑っていれば、一瞬だけ吹かして改造兵器の攻撃を回避。

胴体の背中部分の一部が展開したと思えば凄まじい速度で突撃し、動き出した改造兵器のコクピット目掛けて強烈な蹴りを叩きこむ。

ACと言う人型機動兵器が見せる戦いは人形であるネゲヴにとっては衝撃だった。

地を駆け、空を飛翔し、標的を定め、そして消す。

地を駆け標的の喉元を食いちぎるような姿は猟犬の如く、上空から狙い襲い掛かる姿は鴉の如く。

工場群を駆け抜けるRe:LOADER4にその二つを思わせ、恐怖さえも感じさせる。

敵ではなく味方であった事に感謝しつつ彼女は頭を切り替え攻撃を再開。

改造兵器はレイヴンが相手し、構成員は工場群の裏側から621が突撃し攻撃を仕掛けてた事により、その数は減っている。

 

──このまま行けば制圧できる──

 

誰しもがそう思ってしまった時、それは最悪のタイミングで起きた。

 

『ちっ…役立たず共が…。易々とグリフィンに攻め込まれやがって』

 

突如として割り込んできた通信と何かが飛来する音。

その色は赤く、形状は違うも鋼鉄の巨人では間違いなく、彼女達もそれが何なのかは一瞬で理解した。

それはスナイパーの排除に動いていたM82A1ですら遠くから見ても分かる程だった。

 

『人が留守の内にやってくれるじゃねぇか。覚悟出来たんだろうなぁ…!』

 

あろう事か違法回収団体を統べるボスが、赤色に染められたACに乗ってこの工場群にへと戻って来たのだ。




愉快な遠足はまだまだ続くよ!

そして違法回収団体の親玉がACに乗って登場。
どこで拾って来たのやらか。
次回はAC戦かなぁ…ではノシ
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