人形ノ詩 鴉ノ詩   作:白黒モンブラン

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──AC&AC──


chapter 00-19

 

『全く使えねぇ馬鹿どもが!ここを守るくれぇ出来ねぇのか!ああ!?』

 

赤に染められたACに乗る男の怒号が響き渡る。

自分がいない時にグリフィンによる襲撃を受けた事に加え、部下は使い物にならない事に腹を立てている様子だが、グローザ達にとってはACの登場は全くの想定外と言えた。

 

『AC!?何で敵の親玉がACなんて持ってんのさ!?』

 

『ラスティさんやヴォルタさん、そしてレイヴンさん以外のACを見るとは思いませんでしたね…』

 

通信越しからスコーピオンの焦る声と三人以外のACが現れた事に対して驚きを隠せないX95の声がグローザとネゲヴの耳に届く。

二人もまた似たような感情を抱いているが、スコーピオンの様に取り乱す事はない。

だが状況が一気に最悪になったのは間違いではなく、浮かべる表情は険しかった。

 

「M82A1、そこから離れて!ACに射撃を気付かれたら狙われる!」

 

『了解、移動します…!』

 

咄嗟の判断でグローザはM82A1に狙撃地点からの移動を命じた。

給水塔に立つスナイパーは排除されており、彼女がいる地点から今現れたACに対して攻撃を仕掛ける事は出来るだろう。だが、それは余りにも分が悪い賭けでしかない。

遠方から狙われていると感づかれてしまえばACが保有するスキャンで補足され、反撃される。

手にしている装備も人形が持つ銃とは比較にならない程に大型なのだ。人形など一発で木端微塵に破壊できるだろう。

そんな事は起こしてはならない。故にそう命じたのだ。

 

『レイヴン、あの赤い機体に見覚えは?』

 

どうする…!?とグローザが電脳をフル稼働してこの状況を抜け出す策を練ろうとした矢先、工場群の裏側から突撃していった621の声が通信越しから聞こえた。

如何やらACが現れた事は彼女も認識しているらしく、冷静に赤色のACに見覚えがあるかをレイヴンに尋ねていた。

 

『無い。アリーナには登録されていない独立傭兵だろう』

 

『その根拠は?』

 

『アリーナにランク入りしている奴等とは一度戦っている上に覚えている。その中にあの機体は存在していない』

 

『成る程。……倒せますか?』

 

『想定外だが…仕事だからな』

 

想定外だが仕事はする。

その台詞と共にレイヴンが乗るRe:LOADER4が建物の上に降り立った。

赤いAC…『シェルレイズ』に乗る男は自身を見下ろすACに気付き、機体の頭部をそちらへと向けた。

 

『へぇ…こいつ以外のロボットを見るとは、今日は運がいい。見た所、見覚えのないパーツばっかり…こりゃ傷付けず奪わねぇとなぁ』

 

先ほどまでの怒りは何処へ消えたのか。現れたRe:LOADER4に男は機嫌を良くする。

例えACが出てきたとしても自身の勝ちを信じているのか、余裕をかましていた。

一方でレイヴンは先ほどの男の発言に疑問を抱いていた。

 

(ロボット…?ACを知らないのか?)

 

赤いACに乗っている男は何らかの形でこの世界に流れ着いた奴だと彼は思っていた。

それであれば今乗っている機動兵器がACであると認識している筈。

だが男ははっきりとACの事をロボットだと言った。

ACに乗っていながら、ACを知らない。

そんな事あるのかと首を傾げるもレイヴンは操縦桿を握り直し、押し込む。

Re:LOADER4の胴体の背部が変形し、収束したエネルギーがブースターから凄まじいまでの青い光が噴き出しアサルトブーストによる突進を敢行。

 

『はっ!やる気ってか?!おもしれぇ!!』

 

向かってくるRe:LOADER4に対し男は獰猛な笑みを浮かべながら機体のブースターを点火。

シェルレインを横へと滑走させながら向かってくる相手を近づけまいと右手に装備したマシンガンで連射し、左肩部に搭載したパルスシールド(SI-24: SU-Q5)を展開。

弾幕を張り、その中に交える様に右肩部に搭載した四連装ミサイルを放って相手と一定の距離を保つ様な戦法を取った。

堅実と言えば堅実。悪く言えば消極的な戦闘スタイル。その戦い方にレイヴンは既視感を覚えた。

この様な戦い方をする奴を知っている。機体構成や装備している武器が違えどその戦法は似ている。

 

──独立傭兵かよ──

 

──野良犬の世話をしろってのか。レッドガンも舐められたもんだぜ──

 

G4ヴォルタと同じく、ガリア多重ダムで出会ったレッドガンの五番手。

レイヴンと同じく第四世代の強化人間。

初めて会った時から横柄な態度と対抗心を見せ、何処かチンピラを彷彿とさせるような人物。

 

──待ってたぜ…野良犬──

 

──邪魔なんだよ、てめえは!!!──

 

ウォッチポイントデルタ。

その深度2で彼はいた。まるでレイヴン(621)が来るのを知っていたかのように。

 

──認めねぇ…認めねぇぞ…──

 

──次こそは…てめえを…──

 

爆発炎上する首を掲げる者(ヘッドブリンガー)

パイロットである彼…G5イグアスからは決して対抗心が消える事無く、最期を迎えた。

そんな彼が取っていた戦法が所謂『引き撃ち』。

今相対しているAC『シェルレイズ』に乗る男も奇しくも彼と同じ戦法を取っていた。

 

『く、くそっ…何だよ、その動き…?!』

 

マシンガンによる弾幕形成、ミサイルによる追撃を仕掛けるも男の表情に焦りが生まれる。

狙いを定めてミサイルを撃ったとしてもブースターを一瞬だけ吹かしているのか容易く回避され、代わりにマシンガンを連射しても小さくジャンプするような軌道にFCSが上手く機能せず、当たらない。

だというのに向こうは無茶苦茶な機動を交えながらライフルやらミサイルを的確に当ててくる。

そんな動きをしていたら当然その影響は搭乗者にも及ぶにも関わらず、相手は一切止まらない。

本当に人間が操縦しているのかと思えるほどに、何よりじわじわと追い詰められている。

その感覚が男の中で拭えずにいた。

 

(…やはりパルスシールドが厄介か。近づくにしても、左手に持っているショットガンが使われる)

 

対するレイヴンは飛んでくる攻撃を卓越した操縦技術で回避しながら今の状況を分析していた。

この工場群を駆けまわる様にして中距離での撃ち合いを展開しているも、それをずるずると引っ張っている状況。

アサルトライフルと三連双対ミサイルでの攻撃を繰り出すが、相手は常時パルスシールドを展開しており、思った以上のダメージを与える事が出来ていない。

ある程度のACS負荷は与えられているが、それでも中々状況を覆す事が出来ずにいる。

 

(状況を変える)

 

Re:LOADER4の左肩部に装備された武装が動き出す。

台形状の二基の筒が前へとスライドし砲口が展開される。

動きが僅かに止まった事にシェルレイズの男は一体何を?と眉をひそめる。

次の瞬間、警告音が鳴り響いたのも束の間、凄まじい衝撃が襲った。

 

「があっ!?」

 

その衝撃に機体は動きは止まり、男の体が大きく揺さぶられる。

AC『シェルレイズ』がACS負荷限界により一時的に制御不能に陥り、危険を知らせるアラーム音がけたたましく鳴り響く。

 

「何が起きて……ぐあっ!!!」

 

再び襲い掛かった衝撃。

吹き飛ばされる様な感覚が男を襲い、シェルレイズは建物に激突する。

二度襲った衝撃。何が起きたのか分からず男は混乱していた。

その一方で既に戦闘を終えて、ACの戦闘を少し離れた位置から見ていたグローザたちは知っていた。

 

「ねぇ…レイヴンが何か撃った後、相手のACの動きが止まってなかった?」

 

「ACS負荷限界ね、ヴォルタから聞いたことがあるわ。…しかし何を撃ったのかしら。ミサイルの火の様なものは見えたけど着弾時に爆発はしていない」

 

スコーピオンの問いに頷きながらグローザはレイヴンが最初に撃ったのかを疑問の声を上げる。

撃ったのは分かる、ただ何が撃ち出されたのかまでは分からなかった。

弾速が恐ろしく速いのか何が飛んでいったのか、人形の目ですら捉えられなかったのだ。

ただX95とM82A1は奇跡的にRe:LOADER4の左肩部の武装から放たれたものを捉えていた。

 

「筒の様なものが撃ち出されたような…その中から何かが飛び出すのは見えましたが」

 

「恐らく杭かと。あの装備の正体は飛翔する高弾速の杭を射出するものかと思います」

 

ニードルミサイル(EL-PW-01 TRUENO)。それが先ほどレイヴンが使用した装備。

名称は分からなくとも、彼女達はあれが杭の様なミサイルを撃ち出す装備だと認識する。

 

「動きが止まった所を蹴り飛ばす。人の形をしてるのだから、それが出来ても当然か」

 

「そうですね…ああいった動きも戦法の一つなのでしょう」

 

ACS負荷限界により制御不能となったシェルレイズに向かってブーストキックをお見舞いするRe:LOADER4が見えていたのか、納得した様に呟くネゲヴ。

彼女の台詞が聞こえていたのか、X95は静かに頷きながら答えていた。

そこにグローザたちと同じように戦闘を終えたのか、621が姿を見せる。

 

「こちらは終わりましたが…向こうはどうです?」

 

「見ての通りってやつだね。蹴りを入れられて建物に激突したっぽいけど…ほら、まだ動いてる」

 

スコーピオンが指差す方向へ向く621。

彼女の言う通り、崩れた建物からゆっくりと起き上がるACの姿がある。

それを静かに見つめるRe:LOADER4の姿もそこにあった。

赤いACは相当のダメージを負っているのか各所から火花を散らしており、621は確信する。

この戦いはもう終わる、と。

 

『何だよ……何なんだよ、お前は?!』

 

傷付けず奪ってやると豪語していた姿は何処へ消えたのか。

男はそう叫ぶも声は震えていた。

同じ物に乗っているというのに、何故こうも違う。

そんな感情を無視する様にRe:LOADER4が一歩歩み寄る。

 

『ひっ…』

 

下ろされたバイザーに内蔵されたセンサーが発光する。

まるで死を告げる様に。

このままでは本当に死ぬ。ここに来て感じた死の予兆。

生きていたい。死にたくない。

生への渇望と死への回避が男の胸中を支配する。

その証拠に身体は小刻みに震え、脂汗が流れていた。

そしてRe:LOADER4がもう一歩踏み出した瞬間、男の心は崩壊した。

 

『く、来るなぁ!!!!!!』

 

叫びと同時にトリガーを引く。

マシンガン(DF-MG-02 CHANG-CHEN)ショットガン(SG-026 HALDEMAN)、そして四連装ミサイル(BML-G1/P20MLT-04)をこれでもと言わんばかりに乱射する。

しかし恐怖に支配された体ではまともに狙いを定める事すらできず、放った攻撃も明後日の方向へと飛んでいくのみでRe:LOADER4には掠りもしない。

それでも男は撃つのを止めない。迫りくる死を退ける事が出来るのであれば、それでいい。

ただ生きたいという感情が、今の彼を動かす。

だがここは戦場。互いに敵として出てきたのであれば、どちらかが死ぬまで戦うのが必然。

故にレイヴンは無慈悲だった。

 

「…!」

 

フットペダルを踏みつつ左腕に装備したパルスブレードを最大出力で展開。

ブースターを吹かし一気に踏み込み、Re:LOADER4の左腕を振り上げる。

対するシェルレイズはそれを防ごうとしてパルスシールドを展開しようとするも、踏み込むのが早かったのかレイヴンはRe:LOADER4の右手に装備されたアサルトライフルの銃身をパルスシールドのアームの間に滑り込ませ押さえ付ける事で展開を妨害。

これで自身を守るのは装甲しかない。超至近距離まで迫られ成す術が無くなったシェルレイズ。

振り上げられたパルスブレードは止まることなく、パルスの濁流で形成された巨大な刀身は装甲を切り裂き、エメラルドグリーンの刀身はコクピットに座る男を跡形も残すことなく蒸発させた。




ちょうと長くなりましたが、AC戦終了です。
次回ももう少しばかり違法回収団体戦の後処理っぽいの描こうかなと。

今回登場したAC『シェルレイズ』ですが、ドルフロ及びアーマードコア6に登場しないオリジナルでございます。何卒ご理解のほどよろしくお願いいたします。
またシェルレイズの機体構成を押絵として貼り付けておきますので、こんな感じなのだと思ってくれると幸いです。


【挿絵表示】


また今後描くであろうサイレントライン編…今作では初となるコラボを考えています。
とは言え、これはあくまでも予定でしかなく、作品の展開或いは私の気分によってコラボの話が無しになる事もあります。
つまりは『余り期待しないでください』という事です。

では次回ノシ
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