人形ノ詩 鴉ノ詩   作:白黒モンブラン

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──事後処理と…──


chapter 00-21

フィオナから待機するように言われて早数時間。

ACのコクピットで仮眠を取っていると空に太陽が昇り始めていた。

思った以上に待機時間が長かったと思ってながら体を伸ばすとレーダーがこちらへと向かってくる物に反応した。

敵かと思い、向かってくるものの識別信号を確認すると識別信号は味方だと示している。

加えてその内一つはキャノンヘッドの名を表示していた。つまりは…

 

「迎えが来たか」

 

昇り始める太陽を背に数機の大型ヘリと地上を走る一機のAC、キャノンヘッド。

それはフィオナから迎えが漸く来た事を示していた。

 

『よぉ、G13。くたばってねぇよな』

 

「お前の目から見てくたばっている様に見えるか?そう見えるなら訓練に視力検査を追加しておくといい」

 

『ミシガンみてぇなこと言いやがって。で、生きてんだろうな?』

 

「ああ。…ちゃんと追加しろよ?」

 

『うるせぇ』

 

あの時は喋る事すら儘ならない身。故に彼と会話した事などほぼゼロに近い。

だと言うのにこんな下らない会話が出来ている事に正直驚きを覚える。

そんな間柄ではないと言うのにな。

 

『フィオナから聞いてるぜ?ACやったんだってな』

 

「その事だが…ACに乗っていた奴はACを知らない感じだった」

 

『はぁ?てめぇ寝ぼけてんのか?』

 

言いたい事は分かる。

ラスティもヴォルタも俺も愛機と共にこの世界に流れ着ている。

ACという存在を知っている上でこっちに来てしまっているのだ。

だが敵ACのパイロットはACという単語を一言も発さなかった。寧ろロボットだと言っていたのだ。

まるであの世界にしか存在しえない兵器がこの世界に流れ着いている様な現象。

思い出せばAC『サーカス』もそうだ。AIではあるがパイロットであるチャティはいなかったが、彼のACだけはここに流れ着いていた。

そう思うとあの男は偶然にもあのACを何処かで発見し、自身の所有物にしたのではないか。

誰かに提供されたという考えも出来なくはないが少なくとも今の所、その可能性は低いと見ていい。

 

「…ACだけがこの世界に流れ着いてしまった。そう考える事は出来る」

 

『つまり…ルビコンにあった兵器諸々が全部こっちに来ちまってるって言いたいのか』

 

「断言は出来ん。だがもしそうであるなら…」

 

ただの偶然とは思えない。

ルビコンに存在していた兵器が何故か流れ着いてしまっている。

ACならまだ良い。破壊は容易い。

だがそれが封鎖機構の兵器、技研のC兵器だったらどうだ?

封鎖機構の兵器はACよりも高い性能を有しており、C兵器は到底この世界に存在してはいけない。

流石にC兵器は考え過ぎかと思ってしまうが、絶対はないだろう。

技研都市で見たC兵器はアイビスの火に焼かれて半世紀以上経過していながらも稼働し続けていた。

アイスワームとかが現れたらどうする。あんな化け物を倒す手段などこの世界には無い。

 

「ヴォルタ、この話は頭の片隅に置いておいた方が良い。この先、そういった事が起きるかも知れん」

 

『はいはい、分かった分かった』

 

余り本気にはしていない感じか。

まぁ無理もない。自分が言った事が既に起きているのであれば、今頃グリフィンと鉄血の抗争どころではなくなっている筈だ。

だがもしそうなのであれば、何らかの手を打たなくてはならないだろう。

 

『着いたぞ。ぶっ壊したACを荷台に乗せるからお前も手伝え、G13』

 

「ああ、分かった。…む?」

 

荷台に乗せるとさっき言わなかったか?

そう思い、Re:LOADER4のコクピットから外へと飛び出すと、数機のヘリから降り立ち死体を回収するグリフィンの職員たちとヴォルタの駆るAC『キャノンヘッド』が赤いACの傍に鎮座する姿があった。

正面から見ればあの時見た時と変わらないのだが、どういう訳かそのタンク脚の後方に巨大なトレーラーが引っ付いている。

これがヴォルタが先ほど言っていた荷台なんだろうが、荷台にしては大きすぎる。

ただの荷台というよりかは、簡易ハンガーの様な感じだ。

ACを運搬するのであれば大変便利だろうが、こんなものをグリフィンが持っていたのが驚きだ。

 

「キサラギ製だ、そいつは。ACを運搬するやつが必要になるのをどっかで聞きつけてわざわざ送り付けてきたんだよ」

 

野太い野趣のある声。

身体をその声の主の方へと向けると屈強な巨漢の男がそこにいた。

姿を見るのは初めてだと言うのにそこに立つ人物が誰なのか、何故だか分かってしまう。

 

「ヴォルタか」

 

「そういうテメェがG13か。それともレイヴンって呼べばいいのか?」

 

「どちらでも。呼びやすい方で呼べばいい」

 

「そうかよ。しっかしお前、喋れたのかよ。ガリア多重ダムの時は一言も喋らなかったのはなんでだ?」

 

「…喋れるような体はしていなかったからな。元々在庫処理されるのを待つ身だったんでな」

 

今でも思い出す。

何らかの理由で強化人間の手術を受けたものの、第七世代の強化人間が誕生。

それにより第七世代よりも以前の強化人間は旧世代と化し無価値な存在となった。

それは第四世代である自分も例外ではなく、買い手も現れる事などなくずっと死んだように生きていた。

 

──621…──

 

在庫処理されるのも待つだけ日々。

だがそんな時に、彼は現れた。

 

──お前に意味を与えてやる──

 

生きる意味も全てにおける意味をすら持たない自分に彼は…ウォルターはそう言った。

 

──仕事の時間だ──

 

それが始まり。燃え残った全てに火を点ける旅の始まりだった。

 

「…てことは今話せてるのは再手術したのか」

 

「ああ。稼いだ金でな」

 

再手術を受け、取り戻したものは何だったのだろうか。

正直な所、今でも分からない。

何かを取り戻したのだろうが、その何かが分からない。

 

「…それで?昔話をしに来た訳ではないのだろう?」

 

「たりめぇだ。死体回収がもうじき終わるからAC積むのを手伝え」

 

ヴォルタの言う通り、グリフィンの職員が死体を死体袋に包みヘリに積み込んでいる様だった。

しかしわざわざグリフィンが敵対した奴の死体を回収するとは。

放っておけばいいものを何故にそんな事するのだろうか。

 

「フィオナの意向だ。回収して火葬すんだとよ」

 

その様子を見ていた事に気付いたのか、ヴォルタが回収作業の意味を教えてきた。

 

「…何の為に」

 

「さぁな。聞いた所じゃ、殺しちまった奴の死体を野ざらしにしちまえば腐敗臭やらで周辺環境に良くねぇとかだと」

 

「…」

 

それを聞いて違うと感じた。

そんな理由でわざわざ死体回収などしない筈だ。

であれば何を理由に回収しているのか、それは分からない。

本人じゃないのだ、分かるはずもないのだから。

 

 

 

大して時間をかける事もなく大破したACをトレーラーに乗せ終え、ついでにグローザ達と621、乗っていたバイクも乗せた後にこちらもRe:LOADER4に乗り込み移動を開始した。

向かう先はS09地区前線基地 第9支部。一旦大破したACを持っていく形になっている。

ブースターの推進力で機体を走らせている最中、ふと通信が入る。

 

『うわわっ!…ちょっとヴォルタ~、安全運転を心掛けてよぉ。思いっきり揺れたんだけど』

 

『うるせぇぞ、ガキんちょ(スコーピオン)。俺は運送業者じゃないんでな。安全運転なんぞ知った事じゃねぇ』

 

そこまで荒々しい操縦をしている様には見えないが、トレーラーに乗っているスコーピオンからすればそれなりに揺れたのだろう。

そうなれば621は大丈夫だろうか。余計な心配かも知れないが、少し聞いてみるとしよう。

 

「621、お前は大丈夫か?」

 

『ええ、特に問題ないですよ。少し揺れた程度で大した問題には』

 

此方を気遣い、大丈夫だと手を振ってくる621の姿がモニターに映る。

あの様子だと問題はないと見るべきだろう。

操縦に集中しようと思った時、再び通信が入る。

 

『これ位の優しさは見せてほしいものね、ヴォルタ。彼を見習いなさいな』

 

『おめぇもかよ、グローザ。じゃあ何だ、さっきみたいに心配すりゃいいのか?』

 

『それはそれで貴方らしくないから嫌ね』

 

『どっちなんだよ、テメェ!』

 

そんな会話につい笑みが零れる。

こちらも一つ言ってやろうかと思うも、そんな気にはなれず。時々聞こえる他愛のない会話に耳を澄ませながら機体を走らせていく。

時々遠くに見えるゴーストタウンらしき街を通り過ぎ、何もない平地を駆け抜け、そろそろ基地の近くまで差し掛かった時、これで何度目かとなる通信が入る。

 

『そろそろ基地に到着するが…G13、一つ伝えておくがある』

 

「何だ?」

 

『お前がぶっ壊したACをキサラギに持っていくという話だが、明日持っていく事になっている』

 

「今日中は無理か。そればかりは仕方ないか」

 

分かってはいた事だ。

しかしそれなら今日一日はどうするべきか。

 

『この後はどうせフィオナから報酬貰うだけだ。金も稼いだばかりで懐も暖かいだろ?んなら、一杯付き合えよ』

 

「つまり…飲みに付き合えと?」

 

『そう言うこった。それに色々聞きてぇ事もあるしな』

 

「…」

 

確かにヴォルタは俺に色々聞かなくてはならない事が腐る程あるだろう。

であればこの誘いを断る訳にはいかない。

その誘いに受ける事を答えようと口を開く。その時、基地の方から通信が割り込んできた。

 

『であれば私も参加させてもらおうか。戦友と酒を交わすの楽しみにしていたんだ』

 

『いきなり割り込んできたにしちゃ随分と内容が分かってんじゃねぇか、V.Ⅳ。盗み聞きしてたろ?』

 

『偶然さ。話しかけようとしていたら、そんな話をしているのが聞こえてね』

 

本当だろうかとつい疑いたくもなるも、敢えて問わない。

尋ねた所ではぐらかされるのが見えているからな。

 

『ったく…しゃあねぇな。言っとくが店は俺が選ぶからな。お前が選んだ店じゃ楽しく飲めねぇ』

 

『それは酷いな。あそこは行きつけのバーなんだがね』

 

『お上品過ぎるんだよ、あそこは。俺には合わねぇ』

 

二人の会話を察するに、何度か飲みには行っているんだろう。

生前では所属していた場所は違えど、互いにルビコンには居た身。

ここに流れ着き、共に戦うとなったとなれば飲みに行くのだって不思議ではない。

 

「二人で飲む事になった時は行きつけのバーを紹介してくれ、ラスティ」

 

『!…ああ、勿論だとも』

 

とは言えラスティ行きつけのバーも気になる所。

その時は彼に紹介してもらおうか。

さて…基地にもそろそろ到着する。確実にフィオナも出来るであろう。

交渉の件もある。準備だけは進めておくとしよう。




何やかんやしながらも、飲み会に誘われるレイヴン。
まぁこういう事あっても良いよね。向こうじゃアレだったんだ、そういう事もあっても良いだろうさ。

んでもって、前半部分は不穏な何かを感じ取るレイヴン。
C兵器は不味いよなぁー。

さて、次回は飲み会かな…?

では次回ノシ
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