人形ノ詩 鴉ノ詩   作:白黒モンブラン

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chapter 00-27

時刻は昼過ぎ。

機体の整備を、破壊したACの修理を頼む為に自分はフィオナが紹介したキサラギ社へと訪れていた。

運搬に関してはわざわざキサラギ社の職員が専用車両で来てくれたおかげで、想定よりも早くキサラギに到着する事が出来た。

今は破壊したACが専用のガレージへの運搬作業が行われている隣でキサラギ社の研究主任と顔を合わせていた。

 

「よく来てくれました、独立傭兵レイヴン!フィオナさんからお話はお伺いしております!」

 

「ああ。早速で悪いが頼めるか?何か聞きたい事があれば聞いてくれ。此方の分かる範囲であれば答える」

 

「はい!」

 

意気揚々と運び込まれたACへと飛んでいく研究主任。

ラフな格好の上から白衣といった風貌は如何にも研究員らしい恰好した彼女だが、驚く事に歳は二十歳だと言う。

その若さにして研究主任を務めるとは…いわゆる天才というやつなのだろう。

研究主任に加え、多くの研究員や技術者があの赤いACやRe:LOADER4の周りで集まっていく。

何処か新しい玩具を前にして目を輝かせている子供にしか見えないのは何故だろうか。

 

「兵器名が書いてあるわね…えっ、パルスブレード!?レーザーじゃなくパルス波を使っているの!?」

 

「こっちのはパルスシールドだな…作ってるのはタキガワ・ハーモニクスって所か」

 

「この機体、別企業の腕を使っているのか。…惹かれるな」

 

「あー…話に聞いてた通り、コアが駄目になってんなぁ。装甲素材、どうするよ」

 

「正規軍に送った試作品で余った装甲素材を使ってみる?確か相性が良い筈だけど」

 

「確かに良いんだが…エネルギーの伝達効率が落ちるのがなぁ」

 

「あー…」

 

何処からか聞こえてくる研究員たちの声。

そんな光景を離れた位置で眺めつつも、時が過ぎ去るのを待つことにする。

機体整備にどれ程の時間がかかるのか分からない。

軽く見積もって数時間はかかるだろうと思った時、つい先ほどの研究主任が駆け寄って来た。

 

「レイヴンさん、少しよろしいですか?」

 

「何か聞きたい事が出来たか?」

 

「ええ!貴方が倒した赤いACの機体構成で少し気になる事が」

 

「分かった。聞こう」

 

背を預けていた壁から離れ、研究員たちのいる赤いACの元へと向かう。

今更だが、あの赤いACを改めてみると元の持ち主と思われる奴はランク圏外だが実力はあったんだろう。

あのエルカノ製の腕を使っている辺りそれなりの稼ぎがあったと見る。

エルカノ製が開発したAC『EL-TA-10 FIRMEZA』フレーム一式もそうだが、あの企業が作るACパーツの値段は総じて高い。

コアパーツの値段がBWASが開発したAC『BASHO』フレーム一式の値段に相当するのだから、その高級っぷりが良く分かる事であろう。

 

「この機体のブースターなんですが、今回初めて見るものなのですがどういったものか分かります?」

 

「これは…あぁ、シュナイダー製のブースターか」

 

FLUEGEL/21Z。

シュナイダーが開発した高機動戦闘向けのブースター。

アーキバスの要望を受けているからかバランスの良い性能をしており、よく利用していた。

こいつと同じくシュナイダー製のALULA/21E、ファーロン製のBST-G2/P04はよく使っていたものだ。

 

「シュナイダーが作ったブースターだ。型番はFLUEGEL/21Z。バランスの良い性能していてな、自分も良く利用していた」

 

「ほう。バランスの良い性能となると、多くの傭兵達に扱われていたのでしょうか?」

 

「いや、シュナイダーはアーキバスの系列企業だ。こいつを買うだけの信用をアーキバスから得るよりもファーロンのBST-G2/P04を買った方が良いだろうな。ファーロンは製品が売れるのであればそれでいいというスタンスを維持していたからな」

 

しかしシュナイダー製のブースターを利用していたとは。

このACの本来の持ち主は本当にランク圏外の独立傭兵か?

頭部と足はベイラム製のBD-011 MELANDERだが、コアがBD-012 MELANDER C3。そこだけ診れば、ベイラムよりの独立傭兵と捉える事が出来るが腕はエルカノ、ブースターはシュナイダーのものを使っている。

そうなると企業問わず、金払いの良い依頼だけを受けていたのだろうが…そこまでの実績と信用があるのであれば、ランク入りしていてもおかしくない筈だが。

 

「…む?」

 

赤いACの持ち主が何者だろうかと考えられていると羽織っていたジャケットの懐に入れていた携帯端末が揺れてている事に気付いた。

傍にいた研究主任に離れる事を告げてからその場を離れてから携帯端末の画面を見ると相手はフィオナからだった。

何かあったのだろうかと思い、端末を応答へと切り替える。

 

『レイヴン、聞こえるかしら』

 

「ああ、聞こえている。何かあったか」

 

『ちょっとね。この画像を見てもらえる?』

 

フィオナにそう言われ、向こうから送られた画像に見つめる。

そこに映るはガラクタや用途の分からない機材が山の様に積み上がったジャンクヤード。

それだけならば大して気にする様子などないのだが、フィオナがわざわざ連絡してくるだけのものが画像には映っていた。

ジャンクの山の奥にひっそりと佇む巨人。巨人と聞けばACを思わせるだろうが、そこに居たのはACとはまた違う存在であり、何より覚えがあった。

 

「よりよってHC機体か」

 

惑星封鎖機構が保有する兵器の一つ、HC機体。

HCはHEAVY CAVALRY、つまり重騎兵を意味しており接近戦に性能を置いた機体だ。

常にパルスシールドを張り続け、シールドバッシュまでやってくる機体。

バートラム旧宇宙港で相手した時、常に盾を張り続けながらシールドバッシュやらレーザーブレードによる突進戦法に苛立ったのでパルスシールドを持つ腕は破壊して、無防備な状態を晒している所をパイルバンカーでコクピットを貫いたのを良く覚えている。

 

『その言葉が出るって事はこの機体を知っているのね』

 

「ああ。画像見る限り、動いている様子はなさそうだが」

 

『ええ。けどこのHC機体はACを大きく上回る性能をしてるってラスティさんから聞いたわ。それが鉄血、或いは違法組織の手に渡る前にこの機体を破壊してほしいの。念の為にラスティさんも向かわせたから、現地で合流後、共同して事に当たって』

 

「分かった。キサラギには依頼が来たと伝えて機体の整備を急がせる。ラスティにはすぐ向かうと伝えてくれ」

 

『了解よ』

 

それを最後に通信が途切れ、端末をジャケットの懐に収める。

しかしHC機体か。それだけならまだ何とかなるかも知れないが、もしそこにLCの高機動型まで居たら厄介だ。

HCが接近戦型ならアレは射撃戦型だ。連携と取られたら厄介なことこの上ない。

 

「急がないとな…」

 

嫌な予感がしてならない。

胸の内のざわめきを感じながら機体整備をしてくれている社員の元へと駆け出す。

この際だ。ブースターの交換もしてくれるか頼んでみるとしよう。

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