人形ノ詩 鴉ノ詩   作:白黒モンブラン

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chapter 00-28

雲行きの怪しい空を灰色のACが飛翔する。

背部のブースターから激しく噴き出す青い炎を推力に機体は数キロ先にあるジャンクヤードへと向かっていた。

 

「山と言うより…タワーだな」

 

コクピットの中で機体をジャンクヤードへと進ませていたレイヴンは遠くに見える巨大なジャンクの山に対してそんな事を口にした。

彼の言ったように、遠くに見えるソレは山を通り越してタワーの様に積み上がっていた。

何をどうすればあんな風にまで積み上がるのか、誰が管理しているのかなど疑問は尽きない。

が、それよりも心配になる事が一つあった。

 

「破壊の影響で倒壊しないと良いが」

 

あれだけ積み上がったのだ。ちょっとした拍子で倒壊する事もあり得なくない。

ジャンクの雨が大量に降り注いでしまえば、ACだってひとたまりもないのは分かり切った事である。

だからこそHCを破壊した際にジャンクタワーの倒壊が起きないか、心配していた。

 

「そろそろだな」

 

HCが発見されたジャンクヤード近くまで来たレイヴンはブースターを小刻みに吹かしながらRe:LOADER4を地上へと向かって降下させた。

今にも崩れてしまいそうなジャンクタワーに刺激を与えない様にして、機体はゆっくりと着地。

そしてレイヴンは周囲を見渡して先に来ているであろうラスティの機体を探し始めた。

 

『戦友、こっちだ』

 

「!」

 

通信越しから聞こえた声。

そしてレイヴンの視線の先には、先にジャンクヤードに来ていたラスティの機体、スティールヘイズ・オルトゥスの姿があった。

Re:LOADER4をスティールヘイズ・オルトゥスの傍まで寄せるレイヴン。

 

『先導する。くれぐれもジャンクのタワーに当たらないよう気を付けてくれ』

 

「ああ、分かった」

 

ブースターを吹かして先行くスティールヘイズ・オルトゥスの後ろをRe:LOADER4が追う。

まるで迷路のようなジャンクヤードを縫う様に二機はHC機体がいる場所へと向かっていく。

その場に響き渡るはブースターから噴き出す炎の音と機体の僅かな駆動音。

それ以外は聞こえるものない。そしてレイヴンとラスティの間にも会話はなかった。

このまま会話一つなく目的地に辿り着くのだろうと思われた時、ふとラスティが口を開く。

 

『また君とこうして機体を並べられるとはな。二度目の人生、何があるか分からないものだ』

 

「…最後に機体を並べたのは、いつだったか」

 

『バートラム旧宇宙港だったはずだ。とは言え、あの時はこの機体ではなかったがね』

 

「そう言えばそうだったな…」

 

選んだ道が意思ではなく、友人の願いであれば両者の機体が並ぶことがあったのだ。

だが訪れなかった。意思を継ぐこと選んだのだから。

違った道の先で起きたであろうその事実をレイヴンもラスティも知る由もない。

 

「…再び機体を並べる事も、再び共闘する事もなかった。そうさせたのは俺だったな」

 

『…』

 

「ラスティ、何故お前は俺を戦友と呼ぶ?お前を殺し、そしてお前の故郷とも言える星を焼いた。俺を罵る権利も恨む権利も殺す権利もある。それなのに何故お前はそうしない」

 

操縦桿を手前に引き、機体を停止させるレイヴン。

彼が機体を停止させた事に気付き、ラスティもまた己の機体を停止させた。

互いの間で沈黙が生まれる。ジャンクの間を風が駆け抜け、何処からか軋む音が響く。

 

「…済まない。今のは忘れてくれ」

 

分かりもしない答えを求めた事に謝罪するレイヴン。

フットペダルを緩く踏み、機体のブースターを吹かすとスティールヘイズ・オルトゥスの横を過ぎ去りHC機体があるであろう場所へと向かった。

 

「…」

 

先行くRe:LOADER4の背をじっと見つめるラスティ。

 

「確かにそうだろうな。実際君に思う事が無いと言えば嘘になる。撃とうとも思えば撃てただろうさ」

 

遠くなっていくRe:LOADER4へと、レイヴンへと言葉を投げ掛ける様に呟くラスティ。

通信は繋いでいない。だからこれは、彼の独り言だ。

 

「…だが、それでも撃てんよ。私にとって君はかけがえのない戦友なのだから」

 

戦友と言っておきながら己の目的の為に利用していた事もある。

道は交わらず、それどころか殺し合う事になってしまった。

一度目は地下だったが決着はつかず。そしてあの空でラスティはレイヴンによって死んだ。

だが、それでも戦友なのだ。ラスティという男にとってレイヴンという男はそういう存在なのだ。

でなければ、落ち行く機体の中で彼を『戦友』とは呼びはしない。

 

「いつか君が私の事を戦友と呼んでくれる時が来るのだろうか…」

 

操縦桿を倒してフットペダルを踏み、機体のブースターを吹かすラスティ。

先に行ってしまったレイヴンの機体、Re:LOADER4の後を追いかけるのであった。

 

(しかしHC機体が…何故?)

 

機体が進めている中、ラスティはHC機体の出現に対して疑問を抱いていた。

これはレイヴンがこの世界に来てしまうよりも前の話。

ルビコンの存在する世界からこの世界に流れ着いてしまったのがラスティとヴォルタだった頃、ルビコンにあったであろう兵器がこの世界で発見されたなどの言う例は無いに等しかった。

それが今回になって発見された。どういう事なのか、と彼は思う。

 

「…戦友が来てから、この様な事が起き始めた?」

 

レイヴンが意図してこのような事を起こしているとは思えない。

そんな事を出来る筈ではないとラスティは思っている。

 

「HC機体だけが流れ着いたと思えないのは私の悪い癖か?」

 

フットペダルを深く踏み、機体の移動速度を上げるラスティ。

思っていた事が起きない事を願いながら、彼は機体を進ませる。

だが、彼…いや、二人は知らない。

このジャンクヤードに潜むのはたった一つではない事を。




何だか不穏な雰囲気になってきましたねぇ…。
さ、どうなるか…。

このあとがきでレイヴンのAC『Re:LOADER4』と彼が持っている銃に軽く紹介を。

:Re:LOADER4
レイヴンの愛機。探査用のフレームを使用したものであり、戦闘能力は高くはないが、EN負荷が低く扱い易い性能をしている。
元々はLOADER4という名を付けていたが、激化するルビコンでの戦いに対応すべく再構成を実施。
再構成…Reconstructionの最初の文字。『Re』を取って『Re:LOADER4』と名付けた。
頭部は戦闘用にカスタマイズされたものを使用。武装構成は異なるものの機体の外観は、とある傭兵の駆る機体を同じ姿となっている。

:レイヴンの銃
レイヴンが全てに火を点けるよりも前、満足に体が動かせないにも関わらず意味を与えてくれた飼い主を守ろうと購入した銃。
アメリカのカスタムメーカー・STIインターナショナル(現:STACCATO(スタカート))社が開発した自動拳銃、『STI 2011』シリーズのSTIエッジ5.1モデルを愛用している。
大事な主人を守ろうと買ったものの使う機会は無く、守る事も助け出す事も出来なかったことがレイヴンにとって大きく、ラスティに銃の事を問われた時は「誰も守る事を出来なかった今の俺には丁度良い戒めだ」と返している。

さて、次回はACでの戦闘かな?
ではではノシ
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