人形ノ詩 鴉ノ詩   作:白黒モンブラン

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─一度生まれたものは、そう簡単には死なない─


chapter 00-29

ラスティが先に行ったレイヴンに追いついたのは数分も掛からぬ内の事であった。

迷路のような通り道を抜けた先、ジャンクヤードの中心部。

そこにレイヴンが乗るRe:LOADER4の姿があり、機体の頭部が辺りを見回す行動していた。

その様子を見て、彼は即座に警戒心を全開にまで引き上げた。

HC機体が居るであろう場所はこの中心部であり、あの画像では機体はまだ起動していない状態であった。

普通であればその場から一歩も動くことなく、突っ立ったままの状態で彼らを迎えただろう。

だが、そうである筈のHC機体の姿がいない。

そこから考えられる理由など一つしか存在していなかった。

 

『…気を付けろ、ラスティ。嫌な予感がする』

 

HC機体が何者かの手によって起動している。

そして誰がどう見ても居ないと思う状況だが、長らく戦場に身を置いていた二人は感じていた。

このジャンクヤードの何処かにHC機体が居ると。

 

「言われなくとも分かっているさ」

 

乗機を反転させ、Re:LOADER4と背中合わせの状態を作るラスティ。

ジャンクの山という隠れるにはうってつけの場所が自分たちを囲う様に存在しているのだ。

その何処かにHC機体が隠れ潜んでいるのだが、二人からすればその行動に疑問を感じていた。

 

『解せんな。HC機体を見つけて、わざわざ隠れる必要はないと思うが』

 

「…ああ。そうまでして此処に残ろうとする理由はなんだ?」

 

ラスティの台詞に同意しつつ、レイヴンはHC機体を起動させたであろう者の行動理由に疑問を口にする。

あれだけの高性能機を見つけ、起動に成功したのであればとっとと離れたらいい。

金を返さず、自身の金と他者の金も区別せず、それどころか信用の拡大だと嘯くどこぞの独立傭兵(借金王ノーザーク)みたく隠れる真似をする必要など全くない。

例え二人が此処に来るとは知らなくても残る理由はないだろう。

 

『普通であれば無い筈だ…。だがそうにも関わらず残っている。これではまるで…』

 

「俺たちが来るのを待って…ッ!!?」

 

それは起きるべくして起きた。

爆発にも似た凄まじいまでの破砕音と轟音は静寂を打ち破り、ガラクタを撒き散らしながら迫るソレの登場の瞬間は、レイヴンとラスティの目からしてスローモーションに見えた。

生まれた一瞬の隙。その間にもブースターから()()()を吹かしながら重装甲に覆われたMTの様な機体は装備したグレネードキャノンの砲口を二機へ差し向けようとしていた。

このままでは何も出来ずに撃たれてしまう。が、長らく戦場に身を置いていた傭兵の本能が二人の体を動かしてた。

常人を超える超反応。グレネードキャノンの砲口が火を吹く直前にRe:LOADER4とスティールヘイズ・オルトゥスはブースターを瞬間的に吹かしてその場から離脱。

直後、相手のグレネードキャノンから榴弾が発射。つい先ほど二機が居た場所を通り過ぎてジャンクで積み上がった小さな山に着弾。

爆音と共に爆炎と黒煙が空へと駆け抜ける様はその威力を物語っていた。

 

『HC機体ではない…何だ、こいつは』

 

難を逃れ、相手との距離を維持しつつ機体を着地させたラスティは襲って来た相手の機体を見つめる。

MTの様な外見をした二脚型の兵器。右側には連装砲、左側には先ほど撃って来たグレネードキャノン。

脚部には履帯の様なモノを備えており、重装甲かつ重武装でありながら高速移動も出来る機体である事はその外見から容易に読み取れる。

 

『これも封鎖機構の兵器か…?』

 

「違う」

 

はっきりとした口調で断言するレイヴン。

封鎖機構の兵器などではない。装備は少々異なるが、ブースターから噴き出していた赤い炎が二人の前に現れた存在の正体を示していた。

ルビコン調査技研が生み出したC兵器、機体名『IA-05 WEEVIL』。

その機体名こそ知らずとも技研都市で戦った事もある為か、レイヴンは相手の事を覚えており同時に信じられない気持ちでいた。

 

(一度生まれたものは、そう簡単には死なない…。これもそういう事なのか)

 

技研都市、コーラル集積地を目前にしてウォルターが語った昔話。

そしてその昔話から得られた教訓。その教訓をレイヴンは忘れる事など出来なかった。

 

「こいつは技研のC兵器だ」

 

『ッ!?…それは本当なのか』

 

「技研都市でやり合った事がある。ガタイの割りに動きは良いから厄介な敵だ」

 

操縦桿を握り直し、敵を見据えるレイヴン。

焼き尽くした筈のコーラルが、コーラルを動力源にした兵器がこの世界に流れ着いてしまった。

半永久的に安定稼働出来る程のポテンシャルを秘めたエネルギー源。

その事実をこの世界の誰かが知ってしまえば、誰かが嬉々として研究し始めたら、その危険性も知る事も無く独占始めたら…再びあの戦いが起き、そしてまた誰かが火を点けなくてはならない可能性が出てくる。

 

──私たちは…争いの火種にしかならないのでしょうか…──

 

あの時、友人が言った台詞。

それは余りにも悲しそうで、辛そうで。

その声を、その思いを耳にしながらも彼が選んだのは全てを焼き尽くす事だった。

 

「…火種になる前に消す。三度目の火などお断りだ」

 

『…どうやらその火を消すのはそう簡単にはさせてはくれなさそうだぞ、戦友』

 

ラスティが言った通り、いつ動き出したのか何処からともなく技研のC兵器が姿を見せる。

これもまた流れ着いてしまったもの。誰がどう見てもそう言えるだろう。

武装構成は連装砲にグレネードキャノンとジャンクの山から飛び出してきた一機目と同じ。

それが合計四機。Re:LOADER4とスティールヘイズ・オルトゥスの周囲を囲んでいた。

 

『この様子だと、HC機体は…』

 

「持っていかれたな。その代わりにこれを置いていたという事は…」

 

『時間稼ぎだろう。こいつらで私たちを足止めしている内に距離を取るつもりだ』

 

「或いは誰の仕業か、それを分かりにくくする為とも考えられる。どちらにせよ、相手はそこまで遠くに行ってない。手早く片付ける事が出来たら追いつけるだろうが…そう簡単な話ではないか」

 

無人C兵器ではあるが、その性能は侮れない。

高機動、高火力に加え重装甲。あまつさえはブーストキックみたいな事までやってくる。

そんな機体が四機も居るとなれば苦戦は必至と言えよう。

だがレイヴンの表情に焦りはなく、何時ぞやの光景を思い出しながらラスティにへと話しかける。

 

「ラスティ、準備は良いか」

 

『言われずとも出来ているさ、戦友』

 

「そうか。……久しぶりの共闘だ。助け合いの精神で行くぞ」

 

『!…ふふっ、確かにそうだな。背中は預けるぞ、戦友』

 

それと同時に二人は操縦桿を思い切り前へと押し込み、Re:LOADER4とスティールヘイズ・オルトゥスが二手に分かれる様にブーストを瞬間的に吹かして移動開始。

それに釣られるようにしてWEEVILらも行動開始、二機を破壊せんと履帯による高速移動を開始する。

速攻を意識しているのか、グレネードキャノンが火を吹きジャンクの山が榴弾で吹き飛んでいく。

降り注ぐ鉄の雨を掻い潜りつつレイヴンとラスティはC兵器の破壊へと移行する。

ルビコンでは二度起きた災禍。世界は違えど、三度目の災禍を、ルビコンでの戦いを再現しかねない火種を消す為、鴉と狼はWEEVILへと照準を定めるのであった。

だがこの時、二人は気付かなかった。戦いの場となっているジャンクヤードから数キロ離れた地点にある高台で、その戦いを静かに見つめる存在が居たことに。




HC機体の登場とACでの戦闘と言ったな?
騙して悪いが、あれは嘘だ。
さてはて、HC機体の代わりにC兵器 IA-05 WEEVILの登場です。
三週目で武装採掘艦防衛でその存在を知った方が多いでしょう。
うちのレイヴンは技研都市で眠っていたIA-05 WEEVILを叩き起こしたみたいですが。

あ、それと…感想と高評価して頂けると凄く嬉しいです。
それらがあるだけで、凄くモチベーション向上につながるので…

では次回ノシ
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