人形ノ詩 鴉ノ詩   作:白黒モンブラン

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chapter 00-30

(分かってはいたが…これは骨が折れるな)

 

機体を巧みに操って飛来する攻撃を躱し、装備したニードルガンと実弾オービットで弾幕を張り接近戦へと持ち込むべく機体を突撃させたラスティは己の内で静かに呟いた。

多少程度の攻撃では傷一つ付かない堅牢な装甲に加えて履帯による高速移動、重武装のACと同格の火力を保有した技研の兵器。

四機いた内の二機はRe:LOADER4が駆るレイヴンが引きつけ、乱戦になるのを避ける為にな敢えてガラクタで入り組んだ場所で戦闘を繰り広げられており、ラスティは残った二機をその場で対処に当たっていた。

一瞬の隙を突くように一気に距離を詰めて、ニードルガンと実弾オービットによる射撃で一機にはダメージを与える事は出来たが撃破には至らず、もう一機はダメージすら負っていない。

封鎖機構が保有する兵器とはまた違う動きに、攻めあぐねている様子だった。

 

「!」

 

スティールヘイズ・オルトゥスのコア背部が変形し、内部パーツが露出。

ブースターからオレンジ色の炎が激しく噴き出し、機体はアサルトブーストによる強襲へと移行する。

突撃してくるスティールヘイズ・オルトゥスに反応してウィーヴィルはグレネードキャノンを発射。

迫る攻撃にスティールヘイズ・オルトゥスは肩部に内蔵されたブースターとメインブースターは同時に吹かし、攻撃を回避。そのままニードルガンと実弾オービットを連射し、一気に距離を詰めた。

アサルトブースト中かつ足の止まらない装備であれば衝撃力を上乗せできる。

連射を効かした弾幕を前に重装甲のウィーヴィルのACS負荷率は一瞬で半分以上に達していた。

このまま接近を許してしまう。システムがそう判断したのかウィーヴィルが動く。

接近してくるスティールヘイズ・オルトゥスに向かって突進し、そしてあろうことか相手目掛けて勢い良く片足を振り上げ、スティールヘイズ・オルトゥスを蹴り飛ばそうとしていた。

予想だにしていない動き。普通であれば反応出来ずに返り討ちにされるだろう。

しかし──

 

「分かっていたさ」

 

この男にそんなものは通用しない。

迎撃として繰り出された蹴りを容易く回避。彼の機体の前をウィーヴィルが通り過ぎ、着地と同時にその背後ががら空きになる。

即座に反転しようにも僅かなラグがある。そしてその僅かな時間ですら、ラスティという男は見逃さない。

 

「逃しはしない…!」

 

スティールヘイズ・オルトゥスの左腕部に装備された武器が起動する。

アーム展開。回転機構を備えた発生機から発せられたレーザーの双刃。

高速回転する音が唸り声の様に響き渡り、獲物を捉えたラスティはスティールヘイズ・オルトゥスを突進させる。

機体を一回転させ、それに合わせる様にレーザースライサー(Vvc-774LS)が高速回転。

独特な音と共にレーザーの双刃がウィーヴィルの装甲を切り刻み、振り向きざまに斬撃を浴びせるとブーストを僅かに吹かされ、スティールヘイズ・オルトゥスが左へと回転。

まるでその場で踊るような動きと共にレーザースライサーがウィーヴィルを更に切り刻んでいき火花とレーザーの粒子が飛び交いながらもダメージを蓄積、そして最後の一撃が見舞われた時、レーザーの刃はその重装甲を両断していた。

連続して繰り出された斬撃を全て受けたウィーヴィルは片足から崩れ落ちると、火花を撒き散らした直後内部から赤い爆発を引き起こし機体は一瞬にして真っ黒な残骸へと変貌した。

 

「これで一体…さて、もう一仕事だな」

 

無事一機破壊出来た事に安堵しつつも、ラスティの表情は変わらない。

まだもう一機いる。おまけに無傷。

最後まで油断は出来ない。破壊した一機目に目もくれず、ラスティは機体をもう一機へと向ける。

コクピットの内で響くアラート。それが装備されたグレネードキャノンの発射を知らせる音。

幸いにして距離がある。機体をクイックブーストによる横への回避へと移ろうとした時、ウィーヴィルの頭上に何かが降り注いだ。

 

「何だ…!?」

 

響き渡る轟音。周囲に広がる土埃。

その中でゆらりと浮かび上がる影と煌々と赤い目が光る。

独特な形状。大盾とも言える様な翡翠色に輝く盾を構え、大剣とも言える様な巨大な青い刃は先ほどまで無傷であった筈のウィーヴィルを頭上から串刺しにしていた。

ここまで来たら何が落ちてきたのか言うまでもない。

持ち去られていた筈のものが、どういう訳か戻って来た。更に付け加えるとしたら、この襲来は決して自分たちの味方をする為のものではない事も。

その双方をラスティは理解しており、操縦桿を握る手は心なしか強まっていた。

直ぐにでもクイックブーストへと移行できるようにフットペダルに足を軽く置いている辺り、この状況に対する警戒心の強さが良く分かると言えよう。

 

『はぁ~……この程度で満足しろって?無理無理、お楽しみをお預けにされて我慢出来るかって話よ』

 

通信回線をオープンにしているのか、ラスティの前に現れた第三者の声が響く。

その声の主は間違いなく女のもの。だがその声色は何処か呆れている様な感じだった。

そしてその台詞から察するに、ラスティがC兵器と交戦していたのを何処かで見ていたらしい。

 

(乗りこなせるだけのポテンシャルはある、か…)

 

広がっていた土埃は消え、そこに立つものが露わとなる。

そしてそこに立っていたのを見て、ラスティはやはりと言った顔を浮かべた。

バートラム旧宇宙港でも見た機体。ACよりも大型で、何よりその性能はACよりも遥かに高い性能を誇る。

封鎖機構が保有する兵器、HC執行機体がそこにいた。

 

『そっちもそう思わない?AC乗りさん』

 

「…」

 

問いかけてくるもラスティは沈黙を貫く。

レイヴンが相手ならラスティも愛嬌良く会話を広げていたであろうが相手は敵。

戦いの最中で会話に興じる気は、今の彼にはなかった。

 

『だんまりか…今から殺し合う奴とそんな気にはなれないってやつ?まぁ、それはそれで良いんだけどさぁ…』

 

(…来る!)

 

雰囲気が変わる。

何処かおどけたような台詞に滲ませた殺気に反応しラスティは表情を険しくし、スティールヘイズ・オルトゥスが身構える。

 

『AC乗りと殺り合うのは初めてだからさ……退屈させないでよね!』

 

スティールヘイズ・オルトゥスと謎の女が駆るHC執行機体が同時に動く。

HC機体が巨大なレーザーブレードを振るい、それを躱すスティールヘイズ・オルトゥス。

持ち得る全ての兵装を使って敵機にへと攻撃を仕掛けるラスティは、相手が口にした台詞にある男の事を思い出していた。

 

(こいつもフロイトの様にプレイヤーを演じるか…!)

 

V.Ⅰフロイト。

真人間であり、ACに乗って戦う事を好む首席隊長。

言うまでも無く、戦闘狂。戦いこそが全て。それ以外の興味など微塵もない。

性別が違えど、その片鱗をラスティを感じ取っていた。




一機倒してもう一機を倒そうとしたら、破壊目標が戻ってきてドンパチ開始。
しかも、どこぞの戦闘狂(フロイト)みたいな性格をしているおまけ付き。
そんな相手とラスティがぶつかるのを描かせていただきました。

次回はどうすっかなぁ…。

話によって長かったり短かったり、中には中途半端な所で切ったりする文才皆無な私ですが、そういうものだと理解してお付き合い頂けると幸いでございます。

ではでは次回ノシ
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