人形ノ詩 鴉ノ詩   作:白黒モンブラン

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chapter 00-33

 

「なぁ…こりゃどういう事だ?」

 

基地に帰還して早々、自分とラスティ、ヴォルタ、617、ワタリはフィオナに呼び出されて神妙な面持ちで椅子に腰かける彼女が居る執務室に来ていた。

個人的には617の機体の内装を揃えたかったので適当な理由を付けて去ろうとしたのだが、どうしても耳に入れておきたい話らしく、仕方なく訪れたのだが…今になって思う。

話を聞きに訪れて正解だった、と。

ヴォルタが信じられないと言わんばかりの顔で中空ディスプレイに映し出された画面を見つめ、ラスティとワタリは剣呑な表情で見つめていた。

 

「ねぇ、これって…」

 

「ああ。俺達…いや、この基地を作戦に参加させないと言い切った割には見事に失敗する作戦を立案したものだ」

 

鉄血を離脱したワタリがこの情報を提供したとはいえ、その情報をグリフィン本部に齎したのはフィオナであり、当然ながら攻略作戦の参加権限はあると言っていい。

本部もそのつもりだったらしいが、何処でそれを聞きつけたのか上層部の連中がサイレントライン攻略作戦は自分達の主導の元で行うとほざき、それどころか連中はS09地区前線基地 第9支部にサイレントライン攻略作戦参加を認めないとぬかしたそうだ。

どうやら上層部の一部はグリフィンに資金援助を行ってくれている富裕層らしく、作戦に参加するのも所謂現場を知らないらしい。

フィオナが独自に得た上層部の連中が描く作戦を見せて貰った時は、言葉を失った。

前線に実戦経験が無いに等しい指揮官らとその部隊を放り込んで敵戦力を削らせる。

そして敵の抵抗が弱まった所を作戦立案者である連中が突撃、サイレントラインを制圧するといったもの。

質が悪い事に前線に放り込まれる指揮官らの中には、名誉名声などはどうでも良く本気で人の為に尽力しようとする新人指揮官も何人か放り込まれるらしい。

何故と思うかもだが、恐らく作戦が失敗した際に責任を擦り付ける為だろう。

前線が仕事しなかったから自分たちは多大な被害を被ったとか適当な理由をつけてな。

富裕育ちのボンボン指揮官らが指揮及び後方支援。前線に出るのは本職を全うしようとしている若輩者達。

俗人共が勝手に死ぬのは良いが、こんな理由で前線に放り込まれる彼らが死ぬのは余りにも馬鹿げている。

ご友人呼ばわりしてくる狂人(オーネスト・ブルートゥ)とはまた別の方向で狂っている。

コーラルをキメたRaDのドーザー共がまだマシと思えてくる程に。

 

「正直、ACを当てにしている様な気がするわ…。じゃなきゃ、こんなの…」

 

「それは俺も思ったぜ。そこんとこ、どうなんだ?フィオナ」

 

全員の視線がフィオナへと向けられる。

そしてヴォルタの問いに対してフィオナは静かに頷き、肯定の意を示した。

つまりこの作戦はACという兵器を操る独立傭兵らを当てにしたものという事だ。

 

「上はあなた達を当てにしたのは事実よ。そこに私が協力関係にある独立傭兵への協力申請を一切認めない事を向こうに突きつけてある。一応と言うべきか、あなた達を雇っているのは私。とは言っても形みたいなものだし、深く考える必要はないわ。あなた達を縛る権利なんて私にはないから」

 

「随分と思い切った事をするものだな。…確かに私たちは協力関係にあるだけでグリフィンという組織に属している訳じゃない。だが、それで向こうが納得するとは思えないが」

 

「それでさっきからの上の連中からのコールが引っ切り無しに響いていたから、回線ごと引っこ抜いたわ。修理費は向こうに払わせてやるつもりよ」

 

「成る程、既に行動を起こしていたか。上層部の連中といい、これでは企業と変わらんな」

 

何処に行ってもそういう連中は居るという事、か。

しかし作戦参加が認められない以上、どうする気なのだろうか。

 

「どうするつもりですか、フィオナ。このまま大人しくするつもりなど無いのでしょう?」

 

「当然よ。此方は此方で作戦を考える。人形達には後方支援に行って貰って必要な物資等の回収任務に当たらせているから、もし手が空くようであれば手伝ってあげて」

 

「了解です。取り敢えず私は後方支援の手伝いに。レイヴン、貴方はどうされるのです?」

 

この基地がサイレントラインの攻略作戦を独自に展開すると言えど実行日まではそう時間がないと見ていい。

それまでにやれることを全てこなさなければならないが、優先して行う事が一つある。

 

「617の機体をキサラギ社に持っていく。このまま戦場に出すわけにはいかないからな」

 

「けど武装や内装の予備なんてあるのかしら?……まさか、あのACを使うの?」

 

「そのまさかだ」

 

取り敢えずキサラギ社に連絡を入れて アセンブルを行えるかと頼んでみるとするか。

 

 

 

結果から話そう。

フレームの換装は難しいが内装とブースターの交換、肩部の武装の取り付けぐらいなら可能であるという答えが返って来た。

急ぎで換装作業をお願いしたい事を伝えると喜んでとのことらしいので、自分はRe:LOADER4に搭乗し617が操縦するTENDERFOOTと共にキサラギ社に訪れていた。

 

「先程ぶりですね、独立傭兵レイヴン!お待ちしておりましたよ!」

 

「忙しいのに済まないな。料金はちゃんと払わせてもらう。今後の研究や開発に役立ててくれ」

 

「何でもかんでもタダというのはお互いの関係が歪になり兼ねませんからね、その料金は確りと受け取らせて貰いますとも!」

 

研究主任の視線が617が乗るTENDERFOOTへと向けられる。

どうやら気になって仕方ないみたいだが、そこは人としての礼節を欠く訳には行かないのだろう。

俺の傍に立つ617と同じ視線になる様に、身を屈めて手を差し出した。

 

「初めまして。私はここキサラギ社研究部門の主任を務めています。フェリア・リンジーです!どうぞよろしくお願いいたしますね、えっと…」

 

「617です。今は名前がなくて…その…」

 

「それはそれは…ええ、よろしくお願いします、617ちゃん。新しい名前が着いたら教えてくださいね!」

 

「!…こちらこそ」

 

名前が番号である理由を問わずに笑顔で対応している辺り、研究主任の性格が良く分かる。

617からしても悪い人ではないという認識に至ったのだろう。差し出された手を握り返し握手を交わしていた。

 

「さぁて!頼まれた仕事に移りましょうか!」

 

周囲を研究員たちによって囲まれたTENDERFOOTへと駆け出していく研究主任。

このまま見て待つというのは気が引けるので、617と共に歩き出す。

 

「あの人、良い人ね」

 

「研究者という身としては真面な方だろうな」

 

「ふふっ…確かにそうかも」

 

もしカーラがここに居たら、絶対に笑える事が起きそうだ。

それはそれで見てみたい気もするが、今は研究主任らの手伝いをするとしよう。

 

「このFCS…なんか古いなぁ」

 

「FCS-G1/P01か。負荷は低いが、性能がな…。そいつは変えてくれ」

 

TENDERFOOTに搭載されていたFCSをFCS-G1/P01から赤いACが積んでいたFCS-G2/P05に変更。

中距離射撃適性が高く、近距離適性もミサイルロック適性も悪くはない。

最初に積んでいたものと比べたらその性能の差は大きい。

さて、お次はジェネレーターか…。

 

「これってBAWSの旧型向けのジェネレーター…?さすがにこれは…」

 

「あのACはこいつ…DF-GN-06 MING-TANGを積んでいた。そいつに変えるか」

 

「性能はどんな感じかしら」

 

「バランスが取れた性能をしているに尽きる。こいつにはアーキバスが作ったVP-20Cと同じくらいに世話になった」

 

DF-GN-06 MING-TANGはバランスの取れた性能をしている。

扱いやすいと言えば扱い易い。これならば617も安心できると判断している。

FCS、ジェネレーターは変えた。次はブースターだな。

 

「BST-G1/P10か…。悪くはないんだが、流石にな」

 

「ブースターの予備と言えば、レイヴンさんが以前使っていたブースターがありますけど…」

 

「フリューゲルと交換する形で預けていたやつだな。そいつと交換してくれ」

 

BST-G1/P10からBST-G2/P04へ変更。

特筆すべき長所はないが、今のブースターよりかはマシと言える。

形状だけで言うのであればBST-G1/P10の方が好きだがな。

因みにRe:LOADER4に装備しているブースターは以前使っていたものからFLUEGEL/21Zにへと換装している。

TENDERFOOTに取り付けられようとしているBST-G2/P04は俺のお下がりという事になるという訳だが、このブースターは安定して使えるから問題はないだろう。

 

「最後は武装だけど…今あるので何とかするしかなさそうね」

 

「どうする、617ちゃん?」

 

「左手にはそのショットガンを持たせるわ。右肩部にはミサイルを装備させて。左肩部はウェポンハンガーにして、そのマシンガンを積むしかなさそうね」

 

内装と武装の換装。

研究主任らの手伝いもあって、意外と早い時間で完了。

これですべきこともなくなった訳だが、のんびりはしていられない。

金を払って、直ぐに617と共に基地にへと帰還する事にした。

その戻っている際にワタリから通信が入り、ある事を伝えてきた。

 

「客だと?」

 

『はい。最初は通信での接触だったんですが、後々に姿を見せてくれて』

 

「そいつの名は?」

 

『聞いたのですが詳しくは答えてくれなくて。ただ、自分はおしゃべりな存在だと言ってて…』

 

「おしゃべりな存在…?」

 

おしゃべりな客という事になる……おしゃべり、か。

 

「…まさかな」

 

確証はなかった。

だが、それでも…もしかしたらという感情が胸の中で渦巻いていた。




上の無能っぷりにボロクソな評価を下す感想に笑っていました作者です。
今回は筆が乗ったので、投稿でございます。

以前に倒した赤いACから内装やら武装をぶんどって617の機体に換装です。
細かい事はおってお知らせしますので、暫しお待ちを。

さぁて、最後の方でレイヴンにお客さんが来た模様。
ワタリ曰くおしゃべりな存在らしいが…?

では次回ノシ
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