人形ノ詩 鴉ノ詩   作:白黒モンブラン

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──人間味溢れるAI──


chapter 00-34

 

『ねぇ、ワタリが言っていたおしゃべりな存在って?』

 

「…確証はない。が、予想が当たっているのであればそいつは恩人が作ったAIかも知れん」

 

ワタリからの報せを受けて機体をアサルトブーストを長距離移動モードに移行し基地へと飛ばしていると、こちらと同様にアサルトブーストを長距離移動モードで後ろに続くTENDERFOOTに乗る617からそんな事を尋ねてきた。

確証がある訳ではないので、あくまでも予想だと前置きした上で、ワタリがおしゃべりな存在と呼ばれる相手の事を伝えると不思議そうな声を617が上げた。

 

『珍しい。AIなの?』

 

「ああ。初めて会った時は無口な奴だと聞いていたんだが、いざ話した時はそんな事をなかった。(カーラ)の事を話していた時の声は何処か嬉しそうな感じだった』

 

AIだと言うのに何処か人間臭い所があって、何より何度も助けてくれた

アイスワームの時も、教育センターから脱出する時も、洋上都市ザイレムでの防衛戦でも、彼は助けてくれた。

だと言うのに企業勢力との戦いで彼を助ける事が出来なかった。

自分がもっと早く動けていれば、また違った未来はあったかもしれない。

だからこそ彼の機体を見つけた時は、密かに期待した。

あの時の様に、ビジターと呼んでくれるのではないかと。だけどそれは叶わなかった。

 

「会えないと思っていたのにな…」

 

それが、どういう訳か自分を指名して待っていると来た。

本当に彼なのか、とつい思ってしまう。

 

『レイヴン、基地が見えた。フィオナ達も出てきているみたい。ただ…見覚えのないACが居るわ』

 

「!…やはり、そうだったか」

 

617が言った通り、倉庫やトーチカが並び広場にフィオナと複数の人形らの姿があった。

そしてあの特徴的なカラーリングで彩った軽量タンク型ACの姿もそこにあった。

ワタリと共に第二セーフハウスの地下で見たAC。それがここに居るという事は、彼が居るという証拠だと言えた。

 

『人形の皆がこっちに気付いたみたい。私達も降りましょう、レイヴン』

 

「ああ」

 

アサルトブーストを解除し、ブースターは少しずつ吹かしながら機体をゆっくりと降下させる。

着地時の衝撃をフィオナ指揮官らに与えないようにして機体を着地させて、待機モードに移行してからコクピットを飛び出る。

すると向かいに立つ軽量タンクACの頭部が此方へと向けられた。

 

「…」

 

沈黙が生まれる。

つい先ほどまでのざわめきすら聞こえない程に静かだった。

緩やかな風が肌に触れる様に流れていく。

何故喋らない。どうしたのかと思った時──

 

『…久しぶりだな、ビジター。自力で立ち上がれるまで元気になって何よりだ』

 

平坦で、けれど何処か嬉しそうな声を聞かせてくれる"おしゃべりな"彼…チャティ・スティックが喋ってくれた。

あぁ…間違いなく彼の声だ。あの時、救えなかった彼の声だ。

嬉しい。だが言葉が出ない。高ぶる感情が抑えられずにいる。頬に冷たい何か伝う。

多分自分でも信じられない事が起きているのだろうと思う。

何かも失って、再手術を受けた直後に涙を流してから一度も流れる事のなかった涙が流れているのだから。

 

『ビジター、こういう時は笑うのが一番だ。ボスならそう言う筈だ』

 

「!…ああ、そうだな。こういう時は笑う方が良さそうだ…」

 

確かに今は笑うべきだろう。

涙を見せるよりかは、十分マシだと思えるだろうさ。

 

 

 

 

 

 

流れていた涙を何とか落ち着かせて、フィオナ指揮官にAC『サーカス』に居るチャティの事を紹介すると、彼女はチャティにある事を聞いていた。

 

「補佐を務めるAIであり、システム担当を務めていたって事は…ハッキングとかできるの?」

 

『可能だ。前にいた場所でそういった事をした事がある』

 

「成る程。……ねぇ、チャティさん。事情は話すから貴方の手を貸してほしい。それも急ぎで」

 

『請け負っても構わないが、その代わりにこの世界について聞かせてほしい』

 

チャティはここが別世界だと気づいている…?

何時の間にその情報を知り得たんだ。

 

「チャティ、お前はここが俺達がいた世界ではないと気付いていたのか?」

 

『ああ。目覚めた俺は直ぐに情報収集に行い、そこで知った。ビジターも知っているだろうがザイレムでV.Ⅰにやられた筈の俺だ。それにボスが俺のバックアップを取っていない事も知っていたからな。目覚める筈の無い俺がどういう訳か目覚め、ここに居たという状況を疑問に思うのは当然のことだった』

 

そう…V.Ⅰに倒したあの後、カーラは言っていた。

チャティ・スティックというAIを作ったのは自分だが、バックアップを取る気にはならなかったそうだ。

理由は単純だった。生きるという事はそうものだろう?との事。

彼女はチャティをAIとして見ていた訳ではない。人間として、一つの命として、チャティを一人の息子として見ていたのだ。

 

「じゃあ何故世界の事を知ろうと?情報収集はしてきたんだろう?」

 

『途中まではそうだった。同時並行で基地のシステムを探っている際に数日前のビジターが基地内の監視システムに映っているのを偶然見つけてな。情報収集はビジターと合流してからの方が良いと判断した』

 

それで、ワタリと通信による接触を行った後にサーカスに乗り込んで此処に来たという訳か。

俺を見つけて、俺と合流してから情報収集をすると思った理由は何なのだろうな。

まさかとは思うが……寂しがっていたのだろうか。

 

「取り敢えず事情は分かった。話を遮って悪かったな」

 

『問題ない』

 

今はフィオナ指揮官とチャティの話を進ませてやるべきだ。

機体の四肢を伝い地上に降り立つ。そこに自分よりも先に地上に降りていた617と騒ぎを聞きつけたラスティがこちらに歩み寄って来た。

 

「まさか彼も来ていたとはな。正直信じられない気分だ」

 

「だが事実だ。変えようの無い、な」

 

「ああ、全くその通りだな」

 

肩を竦めて、隣に並び立つラスティ。

今思うとルビコンでは敵味方だった者達がこんな風に集まるとはな。

一度、同窓会も開くべきだろうか。

 

「チャティって言ったかしら…。彼の機体、武装構成を見る限り支援向けね」

 

「もっと言うのであれば、弾幕要員だな」

 

「そうなの?」

 

「ああ。ミサイル弾幕の配達はあいつの得意とする所だからな」

 

カーラのACも中々のミサイル弾幕だが、チャティのも負けないくらいの弾幕を張る。

二人が見せるミサイルパーティーと言うのも一度見てみたかったものだな。

まぁ、叶わない事を思っていても仕方がない。

今はこの基地が独自に展開するサイレントライン攻略作戦の準備を急がなくてはならない。

 

「戦力に加え、電子能力も得た。だが、これでも足りんな」

 

「何故そう思う?戦友」

 

「攻略だけなら問題ない。だが同時に救出作戦も展開しないといけないからだ。お前も見ただろう、上層部の連中が考えたあの作戦とは呼べない作戦で前線に放り込まれるのが誰かを」

 

「…成る程。そういう事か」

 

これだけの戦力を持っていたとしても、サイレントライン攻略は無理と考えられる。

以前遭遇したHC機体の事もある。あれのパイロットが何者かは知らんが、サイレントラインでの戦闘で姿を見せるかもしれない。

そうなれば前線に放り込まれた新人らを助ける時間もなければ、最悪助ける事も不可能と言える。

人手が必要だ。俺達の様な独立傭兵ではなく、グリフィン内で動ける連中が。

 

「もう一度、サイレントラインの戦力を把握しないと不味いかも知れん」

 

途轍もなく嫌な予感がする。

サイレントラインに現存する戦力が、ワタリが提供したデータ通りとは行かない気がしてならないのだ。

 

「そう言えば、他の基地からの応援は得られないの?」

 

「私もそれが気になってフィオナ指揮官に聞いたが、上層部の連中がサイレントライン攻略作戦に参加未定の基地に粉かけて回っているらしい。最悪、我々でどうにかするしかないかもな」

 

「グリフィンの上層部の人達は何でそんなに自分の首を絞めたがるの?例えサイレントライン攻略が成功したとしても、大量の犠牲を払ってたら立て直しなんて出来やしない。ワタリからのデータ提供があったからといって、全ての情報が入っていた訳じゃないのでしょうに…」

 

「欲に忠実な連中にとって人の命など二の次に過ぎない。欲しいのは名誉名声と金、そして自分の言う事を忠実に聞いてくれる奴隷さ」

 

「…嫌な連中ね」

 

「違いない」

 

どこに行っても、どの世界でも企業みたいな連中はごまんといる。

因みにだが、ラスティからの依頼とはいえ燃料基地襲撃で封鎖機構のエクドロモイ撃破分の金をアーキバスが払わなかったことに関しては今でも根に持っている。どうせスネイル辺りが支払いをケチったに違いない。

まぁ…過ぎた事を言っても仕方ないか。

 

「この部隊のメンバーも決して練度が低い訳じゃねぇんだがなぁ」

 

「お前も騒ぎを聞きつけたか、ヴォルタ」

 

「こんだけ賑わってたら、誰だって気付くだろうが。しっかし…フィオナのヤツ、どうすんだろうな。作戦を考えるつっても時間なんて無ぇに等しいんだぞ」

 

「だとしてもだろう。こんなバカげた作戦で死ぬなど…人の終わり方じゃない」

 

グリフィンというPMCに属し、人形らを指揮する立場になると決めた人間の胸の内の何処かでは普通の死を迎える事が出来なくなるかもしれないと覚悟はしているだろう。

だがこんなのは人の終わり方じゃない。馬鹿のせいで死ぬなど、犬死にでしかない。

 

「ACがありゃ、向こうの兵器はどうにかなるんだろうが…問題は歩兵か」

 

「そこは人形の手を借りるほか無いだろうな。ただ、戦場で誰かを守りながら大部隊を相手取る事が可能かと言った所だな」

 

「他の基地に手ぇ借りようにも、上の馬鹿どもが参加不明の基地にも参加するよう粉かけて回ってんだろ?…ったく、上ってのは一回死なねぇと馬鹿が治んねぇのか」

 

「馬鹿は死んでも治らん。それこそ十回死んでも治らんだろう」

 

「はっ…ちげぇねぇ」

 

こんな軽口を叩いていた所で何も始まらない。

取り敢えずは出来る事を進めるほかない。

戦力と電子能力はある。残りは人手だが…さて、本当にどうしたものか。

 

「…」

 

陽が沈み始める。

気付けば、この騒ぎも収束しつつある。

朝から移動し続けていたからか、疲れが出て来ている。

ACのコクピットに戻って、一休みするとしよう。




という訳で、AC6に登場する人間味溢れるAI…チャティの登場。
これで電子能力をゲット出来たな。後は人手じゃい…

さぁて、次回はどうしたものかねぇ…ではではノシ
















―通信が入っています―

『RaDのチャティ・スティックだ。ここで世話になる事になった。これからもよろしく頼む、ビジター』

「ああ、色々手を貸してくれると助かる。それと、上が考えた作戦については聞いたか?」

『聞いている。あの作戦は笑えない。それもあってフィオナ・A・レイナドからサイレントラインの現時点で確認できる戦力情報を出来る限り抜き取ってきて欲しいと頼まれている』

「手伝いはいるか?」

『ああ。情報を抜き取っている間は無防備になるからな。その間の護衛を頼みたい』

「了解した。…チャティ」

『何だ、ビジター』

「また会えて嬉しい」

『俺もだ。…ビジター、一つ聞きたい」

「…カーラの事か?」

『…そうだ。知っているなら教えてほしい」

「……仕事をしたさ。多分、死ぬ直前まで"笑っていた"だろうさ」

『……フッ…そうか。ボスらしいな』

「チャティ…今、笑ったか?」

『要件はそれだけだ、じゃあな』
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