人形ノ詩 鴉ノ詩   作:白黒モンブラン

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chapter 00-36

 

『残り時間、三十分だ。居住区画を抜け、城塞内部に侵入する事を勧める』

 

「了解です」

 

彼にそう言われ、屋上から飛び降りて城塞内部にへと走り出す。

ただでさえ冷たい雪がより一層冷たく感じる。

 

「…」

 

ルビコンと呼ばれる、この世にはない惑星からどういう訳か流れ着いてしまった兵器群。

レイヴンやチャティ達がいた世界に存在したそれらは鉄血の手によって捕獲され、このサイレントラインを守る尖兵として運用されている。

突き付けられた現実に、私はつい己に向かって問う。

レイヴンに会うよりも前、鉄血を離反する際にサイレントラインの情報を抜き取っている時にこの兵器群の情報を見落としていたのではないかと。

そんな訳がない。それはサイレントラインが戦力の全てに目を通した私が知っている。

彼らの世界から流れていた兵器らは私が離反した後に鉄血が発見し自軍の戦力として運用されていた事になる。

心配する必要など無い。そうだと分かっていると言うのに、そんな自責の念に駆られてしまう。

 

『…ワタリ、ビジターから伝言があった事を忘れていた。走りながらで良い、聞いてくれ』

 

「今ですか?」

 

『ああ。それが必要だと判断した』

 

レイヴンからの伝言とは一体…?

哨戒中の部隊に見つからないように心掛けながら走り抜けつつ、伝言とやらに耳を傾ける。

 

『俺もフィオナもお前が提供したデータが嘘ではないと信じている。恐らくだが、このサイレントラインにはお前が離反した後に出てきた兵器が存在しているのだろう。この隠密作戦はサイレントラインの戦力の再調査であり、お前が提供したデータと今回の情報を整合した上でグリフィンの上級代行官及び社長とやらに提供。上層部の連中が考えたあの作戦を止めるのがフィオナの狙いだ。知り得なかった兵器を見つけて、自分を責めてしまうだろうが、その必要はない。安心しろ。……これがビジターからの伝言だ』

 

「…まるで此処に、あの兵器らがあるというのを予想していた様な言い方ですね」

 

レイヴンからの伝言を聞き、思わずそんな事を口にしてしまう。

だが少し考えれば予想出来た事だ。

違法回収団体の親玉がACに乗っていたり、ジャンクヤードで発見され交戦したとされるHC機体と呼ばれる兵器。

そう言った兵器が鉄血といった勢力の手に渡っている可能性がある。懸念を抱くのは当然だ。

 

『その懸念はあったという事だ。以前ビジターとV.Ⅳラスティと交戦したHC機体の存在が、ここの再調査に繋がったと見ていい』

 

「あなた達が居た世界にあったものが鉄血、いや、このサイレントラインに流れているかも知れない。そしてもしそれが事実であれば…」

 

『それらを提供し、上層部の作戦を中止させる。そして新たな作戦を立案するといった所だ』

 

「責任重大ですね…」

 

『そうだな』

 

何ともまぁ…荷が重いを背負わせてくれるものだ。

だがフィオナは本気だろう。新たな作戦を立案すると同時に上層部の作戦を中止させる。

その成否は自分にかかっているのだ。

 

「城塞に接近、これより内部に侵入します。チャティ、内部区画へと通ずる扉のどれか一つをハッキングして開く事は出来ますか?」

 

『既に行っている。あと十秒くれ』

 

「流石」

 

良く出来たAIだと思う。

此方がしてほしい事を見越して、行動しているのだから。

 

『開錠を確認。ついでに内部にセキュリティシステムに細工を加えておいた。時間が来るまでは持つだろう』

 

「ハハッ…ホント、流石ですね、チャティ」

 

『そう言われて悪い気はしない』

 

チャティが開いてくれたシャッターから内部に侵入する。

さて、ここからは私の出番と言えるだろう。

サイレントラインの内部構造は既に頭に入っている。

そしてこのサイレントラインの戦力データ及び情報ログは一か所に集約して管理されている。

この中央情報管理システムルームと呼ばれる場所が向かわなくてはならない場所だ

問題があるとすれば…このサイレントラインを管理しているハイエンドモデルが誰かと言う事。

鉢合わせる事になれば、戦闘は避けられない。そして情報を抜き取っている際にも感付かれても不味い。

相手の陣地に忍び込んでいるのだ。閉じ込められて破壊されるのがオチである。

 

「さて…」

 

軽く電脳による探知モード起動させてみる。

案の定、内部には大量の鉄血兵と覚えのない兵器の反応がある。

だが…それでも行くしかない。

 

「…!」

 

駆け出す。

通路を通り過ぎ、第一区画へと侵入し近場にあった資材運搬のリフト用に敷かれたレールを伝って中央区へと目指す。

資材運搬の為のこのレールは様々な区画に繋がっており、道中に存在する切り替えポイントで各区へと向かう仕様となっている。

中央区に向かうのであれば何処で曲がることなく、ただ真っ直ぐと突き進めばいい。

薄暗く、誘導灯だけが灯るこの通路を走る。

遠くから聞こえる風の音が内部に入り込み、まるで怪物の様に低く唸って私の後ろで響く。

まるで自分を探しているかのようで、そんな圧を感じてしまう。

 

「見つけた…!」

 

切り替えポイントに到着すると迷うことなく真っ直ぐ走り抜ける。

ずっと奥へと続くレールを走っていく。中央区までもう少しだが、残り時間もある。

 

「チャティ!残り時間は!?」

 

『残り時間二十分だ』

 

「あんまりのんびりはしていられないですね…!!」

 

橋から居住区画に展開された戦力は確認しているが、肝心の部分が回収出来ていない。

このまま走っていても中央区に到達した時点で二十分が過ぎる。

不味い…どうするべきか。そう思っていた所に人一人が入れそうな通気口が視界の端に映る。

それを見た瞬間、自分でも信じらえない位に体が反応し気付けば通気口内へと飛び込んでいた。

レールに沿って目指すよりも、この通気口の方を通っていけば中央区に、それどころか情報管理ルームに一気に到達する。

あの僅かな瞬間で電脳が叩き出した答えが私をそうさせていた。

 

「着いた…!」

 

通気口内を駆け抜ける様な真似は出来なかったが、無事敵に気付かれる事無く目的地に到達。

降り立つ際に通気口のカバーを蹴破ってしまったが、幸い敵に気付かれていないので問題にはならない。

そしてやはりというべきか、大量に並んだ大型の端末が私たちを出迎えていた。

一部アナログなのは変わらずというべきだろう。まぁ今はそんな事よりも急いで端末を繋がなくては。

 

「残り時間十五分…。チャティ、どれくらいで情報を抜き取れますか?」

 

『相手の妨害さえなければ、七分で完了する』

 

「妨害がない事を祈っていて下さい…。私は周囲の警戒に当たりますので」

 

チャティを端末に接続させる。すると舌を巻くほどの速さで彼はシステムにハッキング開始。

セキュリティをあっという間に突破し、情報を抜き取り始めた。

七分間。その間、敵が来ない事を祈るほかない。

腰に提げた大太刀の柄に手を添え、軽く腰を落とす。

何度かに分けて低領域での探知を行ってはいるが、敵が近づいている様子は感じられない。

中枢まで接近されたのだ。何らかの反応は見せると思っていたが…どういう事だろうか。

この静けさが返って不安を煽る。何かが起きても可笑しくない筈の状況で何も起きていないのだから。

 

「…もしや外で何か起きているのでしょうか」

 

そう思うもここ全体が警戒態勢に移行していない辺り、外で何かが起きているという訳ではないのだろう。

一体何だというのだろうか、この静けさは。

 

『回収完了した。脱出の時間だ』

 

「え、ええ…」

 

長く感じる筈の七分間はあっという間に訪れた。

チャティを回収し、そのまま先ほどの通って来た通気口を通って外へと目指す。

何も反応しない態勢に不安感を覚える。本当に気づいていないのか…?

警戒心を最大にして、駆け出した。

 

 

その後、何事もなく城塞内部から外へと脱出。

そのままレイヴンと合流を果たしたのだが、やはり何も起きなかった事に不信感を抱かずにはいられなかった。

本当に気づかれる事がなかったのか…あるいは私達以外の誰かが居たのだろうか…?




侵入して情報を盗みに来たというのに、何も起きなかったという事実。
本当に気づかれなかっただけなのだろうか…

気付けば、黄色バーになってますねぇ。
まぁ…そういう事もありましょうさ。

ではではノシ。










「行ったみたいですね…」

「此処に囚われている以上、下手な事は出来ませんが…それでもお役に立てたと良いのですが」

「……片方は分かりませんでしたが、もう片方の反応…もしかしてRaDの?」

「…そうなると…彼もいるのでしょうか」















「レイヴン…」
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