人形ノ詩 鴉ノ詩   作:白黒モンブラン

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──同じ番号を持つ者──


chapter 00-03

暫く静観を決め込み、戦いの行く末を見つめていた訳だが日が暮れる前に戦闘は終了した。

勝ったのは人らしい動きをしていた少女兵らで、何処かの組織のエンブレムが描かれたヘリに乗って、既に撤退している。今の前哨基地には、機械的な動きが特徴の少女兵らの亡骸とMTモドキだけが転がっている状況だ。

それと戦いを見ていた間、分かった事があった。

銃撃戦を繰り広げていた少女兵らだが、あれは義体ではなく…言うなればアンドロイドみたいな存在だ。

義体かと思っていたがACのセンサーに生体反応が検知されなかったのはそういう事なのだろう。

加えてあの重四脚MTモドキはBAWSの新型ではない。

長い間、ルビコンにいたせいか勘違いしていたが、BAWSはルビコン発祥の星内企業だ。

アーキバスやベイラムがBAWS製の重四脚MTを利用していたのは、ルビコン3に不法進駐をしているに加え星外から大量の戦力を持ち込む事が出来ない為だ。

調子こいて大規模補給をしようものなら封鎖機構が黙ってはいない。

一瞬で封鎖システムの衛星砲に撃ち落とされるのがオチ。星外企業とは言え、戦力は無限ではない。

だから地元企業であるBAWSから現地調達、補給といった意味合いを含めて購入していたのだろう。

レジスタンス組織であるルビコン解放戦線や星外企業であるアーキバス、ベイラムにも製品を売るスタンスは正しく「顧客を選ばない」といった所か。

 

「さて…」

 

片膝をついたACから降り立ち、必要最低限の武装をして静まり返った前哨基地へと向かって歩き出す。

あの少女兵らがアンドロイドであり、あの四脚がBAWSの新型ではないのは分かった。

だが、それ以外の事は全く知らない。

危険ではあるが、情報を得る為にも今の内に行動するのが良いだろう。

本音を言えば日が暮れる前に行動したかったが、こればかりは仕方がないとしか言えない。

より一層警戒するに越したことはない。木々の間をすり抜けて、前哨基地の傍まで近寄る。

戦闘そのものは既に終えているにも関わらず、戦いの後の臭いというものは未だ消えていない。

転がる残骸がACやMTではなくアンドロイドだろうが、MTモドキだろうが、ここに残る鉄と油と硝煙の臭い、そして微かに混じる血の臭いは変わらない。もう嗅ぎ慣れてしまった匂いが残っていた。

 

「これは……このアンドロイドらが属している組織のマークか?」

 

基地内に足を踏み入れ、大破した四脚MTモドキを調べていると胴体の部分にロゴマークが描かれていた。

地球発祥の企業だろうか。少なくとも自分が知る企業ではなさそうだ。

 

「前哨基地に来ていたヘリに描かれていたロゴマークとも違う。敵対関係にあるという事か」

 

アーキバスとベイラムの様に、あの戦闘も組織同士の戦闘なのだろう。

にしては少女兵らを模ったアンドロイドを使うとは。

それも人と遜色ない程に人間に近いアンドロイドを利用している。

どこぞの誰かが妄想で考えた大豊核心工業集団の架空のキャンペーンガール(大豊娘娘)みたいに、見目麗しい少女達にしているのは宣伝を兼ね備えているからだろうか。

しかしだ。この手のものは相当高額の筈だ。

両陣営ともに軍隊並みの人数を揃える事の出来るだけ資産があるのか、またはアンドロイドを製造及び提供している同盟企業がいるかのどちらかだろう。

 

「…たった一つの命しかない人間を揃えるよりも、替えの効くアンドロイドを揃えた方が良いと言う訳か」

 

まるで人形だ。文字の如く"人"の形"をした存在。

それも戦闘に特化…いや、あの動きは戦闘に特化したというよりかは…

 

「戦術か、あの動きは」

 

言うなれば戦術人形か。言い当て妙な気がしなくもないが。

何となくそう呼んだ方が良い気すると思いながら大破した四脚MTモドキから視線を基地の方へと向ける。

 

「…静か過ぎる」

 

この静けさを知っている。

BAWS第二工廠の時と同じだ。あの時と同じ静けさ…この嫌な静けさが前哨基地に漂っている。

ゆっくりと立ち上がり、腰のホルスターに収めた銃を引き抜く。

居る。確かに居るのだ。長い間、独立傭兵としてやってきた勘がそう告げる。

 

「…!」

 

遠くから音がする。正確には前哨基地の中からだ。

何かが音を立てながらこちらへとやってきている。

 

「おや…この距離で気付かれるとは。人間にしては鋭い」

 

先すら見えない暗闇に包まれた前哨基地の中から響く女の声。

素早く銃を声の方向へと向けながら、ゆっくりと後ろへと下がる。

 

「ああ…そう警戒しないで下さいませ。私から何かするつもりなど毛頭ありませんので」

 

どうやら向こうには此方を視認出来ているらしい。

加えて随分と丁寧な言い方をしてくるが、余計に信用ならない。

元RaDで虚言癖かつご友人と呼んでくるあの男(オーネスト・ブルートゥ)を思わせるからだ。

 

「…ふむ。その様子だとかなり警戒されている様子。であれば、此方も敵ではない事を示しましょう」

 

緩めることの無い警戒心を察したのだろう。

暗闇の奥から一人の女が姿を現す。

その身に不相応な武装と一つ、また一つとパージし、両手を上げながら歩み寄ってくる。

やがて自身を守るもの全てを手放し、その姿を晒した女はこの状況に似つかわしくない笑みを浮かべた。

 

「初めまして、人間。元鉄血工造所属、製造番号は…抹消されてしまいましたが、覚えているのは確か…621でしたか。名前は存在しませんので、私の事を621と呼んでください」

 

何処か極東の…日本を思わせる様な衣服を身に纏った女。

そんな女はアンドロイドらしく、自らを621と呼べと言って来た。

珍しい事もあったものだ。自分と同じく、その(621)を持つ奴が居るとは。




と言う訳で、オリジナルキャラの登場です。
展開的に本格的な戦闘はないですけど、追々来るのでどうかご容赦ください。
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