人形ノ詩 鴉ノ詩   作:白黒モンブラン

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chapter 00-37

 

「こんなにも戦力が強化されていたなんて」

 

ブリーフィングルームにて、そこに映し出された情報を前にフィオナの表情は険しくなる。

いや、この場にいる全ての者達の顔が険しくなっている。

新たに設置された大量の砲台、配備された無数の部隊、そして鹵獲された大量のMTと数十機にも及ぶ重四脚MT。

ワタリとチャティが行ってくれたサイレントラインの再調査の結果は予想通りであり、同時に予想通りではあって欲しくなかったというべきだろう。

サイレントラインはそれなりの戦力を有した大規模補給拠点ではない。もはや難攻不落の武装要塞を化してしまっていた。

 

「…指揮官、今のうちにこの情報をヘリアン上級代行官とクルーガー社長に流して、上層部の作戦を止めさせるべきよ」

 

「分かっているわ、グローザ。情報は既に流してある」

 

「そう。…にしても、何なのこの戦力。ACの存在を知ったからと言って大げさにも程があるわ」

 

グローザの台詞に同調するように他の人形達もざわめく。

確かにそうかも知れない。過剰だと思えるかもしれない。

だが…

 

「だからこそ、だろうな。この部隊展開は確実に対ACを想定している」

 

「こんだけのMTを揃えるってなりゃあな…まぁ、そう考えんのが妥当か」

 

ラスティとヴォルタというAC乗り二人の台詞はざわめきを沈めるには十分な程の説得力があった。

この世界では確かに大げさかもしれない。だがルビコンではこの大袈裟な戦力が当たり前だ。

ACという機動兵器を相手取るのであれば、寧ろ納得のいく戦力とも言える。

 

「…ラスティとヴォルタでも厳しい?」

 

恐る恐るとスコーピオンが二人に問う。

これだけの戦力を相手にするのだ。腕の立つ二人でも、どうなのかと思ったのだろう。

逆を言えば、安心材料が欲しいのかも知れない。

心配ない、大丈夫だと…不安を僅かにでもかき消してくれるそんな言葉を求めている様に見えた。

 

「どうだろうな。私達だけなら、少し手間取るかもだろうが…」

 

(レイヴン)猟犬(617)、そこにおしゃべり(チャティ・スティック)がいるとなりゃ…まぁ何とかなんだろ」

 

二人の台詞に先ほどからずっと沈黙を貫いていた自分たちにへと人形達の視線が向けられる。

軽く何か言ってやるべきかと思うも、今はそんな気にすらなれない。

視線を無視し、ワタリたちが持ち帰ってくれた情報に目を通していると隣に座っていた617が口を開く。

 

「居住区画に入るにはガトリング砲台と城壁の狙撃兵を何とかしなくちゃいけないわね…。私達だけなら、サイレントラインの側面から侵入して背後から叩くという手があるけど」

 

「当然、防衛部隊は全力で潰しにかかるだろうな。となると後方から誰かが侵入して、四方向からの襲撃を行うべきか」

 

「そうなると後方を誰がやるか、ね…」

 

作戦はおろか、その内容すら決まっていないのに、意見を交わす自分と617。

張り切り過ぎると思われるかも知れないが、こればかりは性分というものだ。

目を丸くする人形達を他所に617と意見の交換を続けようとした時だった。

 

「フィオナ、少し良いでしょうか」

 

自分の左隣に座っていたワタリが手を上げて、考える素振りを維持し続けるフィオナへと声をかけていた。

 

「何かしら?」

 

「今回の再調査…不思議なくらい順調に進んだと思っています。今言ってもアレですが、不気味ともすら思える程に…」

 

「どうしてそう思ったの?」

 

「サイレントラインは鉄血にとって重要な補給拠点です。当然ながら外部からの侵入者があれば、即座に警戒態勢を取るなど然るべき対応を取る。それが全くと言っても良い程に無かった」

 

「運が良かった…そう思う事は?」

 

「それで片付けられるのであれば態々こんな事を口にはしません。…正直言って、あの場には私達以外の誰かが居たのではないかって思うんです。確証がある訳ではないですけど…」

 

サイレントラインの再調査。

それは不気味とも思えるほどに順調だったらしい。

その件については自分もワタリとチャティから聞かされており、どうやら数日経った今でも引っかかっているらしい。

とは言え、あの場所に二人の味方になってくれる誰かが居たとは思えないが…。

 

「フィオナ、戦術人形の中で敵味方に一切気付かれる事無く、かつサイレントラインの様な大規模拠点が保有するセキュリティシステムを単身で制御下における電子能力に特化した人形が居たりするのだろうか?」

 

流石に居る筈がないと思いつつ、あえて問う。

そんなのは居る筈がない。返ってくる答えも分かり切っている。

 

「…そんな人形など居る筈がないわ」

 

それは否定の台詞を言い切る前にフィオナの表情がほんの僅かにまさかと言った表情を浮かべたのを見逃さなかった。

どうやら心当たりがあるみたいだが…敢えて此処では聞かない。

何故かは分からないが、いま此処で答えてくれるとは思えないのだ。

彼女が一人になったタイミングで、聞くべきだろう。

 

「取り敢えず…敵にバレずにこれだけの情報を持ち帰れたのは本当に運が良かったという事よ」

 

「そう、ですか…」

 

何処か納得のいかないといった表情を浮かべるワタリだが、これ以上言及する様子はなかった。。

本来であれば起きても可笑しくない事が起きなかったのだ。そんな表情を浮かべるのは当然と言えば当然だろう。

 

「情報を精査、そこから判断して作戦を考えるわ。流石に直ぐにとは行かないから、一旦解散。大まか部分が決まったら再度招集かけるから、それまで待機してて」

 

そう言われてしまったら、此処に残る理由はない。

待機していろと言うのであれば、一旦ここを出ていくとしよう。




グダグダですが、何卒ご容赦を…

ではではノシ













「そう…じゃあ、"彼女"は…」

「……ええ、大丈夫よ。ただ今日に至るまで気づけなかったのが腹立たしいだけ」

「……うん、それじゃ。情報ありがとう」

「…」

「…何で」

「……何でこんなことにッ!!!!!」

「…なん、で…こ、んなことに……!」




「電子能力に特化した人形、心当たりがあるようだな。フィオナ」

「ッ!……レイヴン、どうしてここに?」

「聞きたい事があってな。一人になるのを待っていた」

「…」

「聞かせてもらおうか。そいつの事を黙っていた理由について」

「…その人物が貴方にとって関係のある人だとしても?」

「何だと?…それはどういう意味だ」

「その言葉通りよ。彼女は貴方と同じようにこの世界に流れ着いた身。何より──」

「最後の戦いで貴方の手によって殺された人物。…それでも聞きたいかしら」
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