人形ノ詩 鴉ノ詩   作:白黒モンブラン

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chapter 00-39

真っ黒な空。煌めく星。

誰も居ない基地の屋外に待機させてあったRe:LOADER4のコクピットに乗り込んでからというものの、只々沈黙を維持していた。

 

──レイヴン──

 

あの声が、彼女の声が響く。

否定して、殺して、手放して、焼き尽くした後でもふとした時にあの声が響く。

忘れる事など…出来る筈がなかった。

 

「…エア、あの時の声はこの時の為だったのか?」

 

この場には居ない、そしてサイレントラインで捕虜になっているであろう彼女に向かって問いかける。

灰となったあの惑星で、跡地と化したグリッド135で聞こえたあの声。

会いたいという言葉。その言葉の裏に隠されていたのは、寂しさだけではなく助けも含まれていたのではないのだろうか。

だから自分はこの世界に流れ着いた。その声を答えるかのように。

 

「…」

 

問いに答えてくれる声はない。ましてやこの声は遠くにいる彼女には届かない。

だが、迷う必要はない。

一度手放したもの。それがもう一度取り戻せるのであれば──

 

《通信が入っています》

 

「!」

 

機体を動かそうと操縦桿を手を伸ばした矢先、COMが通信を知らせてきた。

回線を開くと通信を寄越してきたのはフィオナだった。

 

『レイヴン、今良いかしら』

 

「…作戦が決まったか?」

 

『概ね。それと貴方に会わせたい人がいるの。悪いけど、こっちに来てくれる?』

 

「会わせたい人?」

 

『…うちの社長とI.O.P社技術研究部門の主席研究員よ。特に主席研究員の方はエアの件について一枚噛んでる』

 

「直ぐに向かおう」

 

コクピットハッチを開いて外へと飛び出る。

社長に主席研究員。その事を聞いて、単にサイレントラインの件で連絡してきたと思っていた。

一介の傭兵に大物二人が話をしたいと思うだけの理由は大方想像がつく。

傭兵に対して話す内容など、たった一つしかないのだから。

 

 

 

「来たわね」

 

自分を呼び出したフィオナがいたのはこの基地の通信室。

大型モニターと、そこに映し出されるクマの様な体格をした男とそれとは正反対に白衣を羽織った隈が酷い女がこちらを出迎えた。

 

「そこに映っているのはグリフィンの社長にI.O.Pという所の主席研究員か?」

 

『その通りだ、傭兵』

 

フィオナが答える前に社長が答えた。

如何にもといった声だ。レッドガンに所属しても何ら違和感のない声と雰囲気を出している。

ミシガン総長に会わせたら、どんな会話をするのか見てみたいものだ。

 

『顔を合わせるのは初めてだな、傭兵。民間軍事会社グリフィン&クルーガーの最高責任者ベレゾヴィッチ・クルーガーだ。フィオナ・A・レイナド指揮官が世話になっている様だな』

 

「独立傭兵レイヴンだ。お目にかかれて光栄だ、クルーガー社長」

 

ベレゾヴィッチ・クルーガー…。

グリフィンの社長と聞いて、上層部の連中みたいな男かと思ったが如何やらそれは違う様だ。

目を見れば分かる。

この男は上層部の連中とは違って阿保ではないのが良く分かる。

 

「それで、そっちは…」

 

『初めまして、独立傭兵レイヴン。I.O.P社技術研究部門主席研究員、ペルシカリアよ。呼びづらかったらペルシカで構わないから』

 

I.O.P社技術研究部門主席研究員、か。

I.O.P社に関しては詳しい方ではないが、人形の製造などに携わっていると聞く。

技術研究部門がどういったものかは知れないが主席研究員が出てくるとはな。

エアが見せた能力はこう言った連中までも引き付けたのだろう。

 

「グリフィンの社長、I.O.P社の主席研究員といった上役が一介の傭兵に何の用だろうか」

 

『…サイレントラインの件は知っているな?』

 

「バカが考えた作戦は知っている。フィオナが独自にサイレントライン攻略作戦を考えている事…そして、そのサイレントラインに、大事な友人であるエアが捕虜として囚われている事もな」

 

『成る程。鴉にしては耳が早い』

 

「情報も生きる為の餌にはなる。鴉でもなかろうと傭兵なら誰だってそうする。…それで、何を依頼したい。ベレゾヴィッチ・クルーガー社長にペルシカリア主席研究員」

 

建前など聞くつもりない。

傭兵として自分が呼ばれた以上は、そこで起きる会話も見えてくる。

 

「上役二人が一介の傭兵を指名するなど、秘密裏に頼みたいと見るが」

 

『…色々知っているみたいだし、話しても良いんじゃない?』

 

ほんの僅かな沈黙。

それを破る様にペルシカがクルーガーへとそう促す。

対する彼はうむ…と唸った後、じっとこちらを見つめてきた。

鋭い目つきだが、その目には此方を見定めている様にも見える。

 

『…サイレントラインの立案者及びI.O.P社所属の特殊人形『エア』を無許可で連れ出した指揮官及び此方をしてする指揮官らを作戦中に乗じて可能な限り捕縛して欲しい』

 

可能な限り…。

それも何が起きても可笑しくない戦場で捕縛しろと言うのか。

 

『対象のリストはフィオナ指揮官に送っておく。…やり方は問わん。お前のやりやすい方法でこなしてほしい』

 

「…一つ聞いていいか?」

 

『何だ』

 

「…本当に()()()()()で良いんだな」

 

『ああ…。()()()()()で構わない』

 

ここまで聞けたら、問題ない。

可能な限り、だ。その言葉の意味をあの社長が知らない訳がない。

こうして秘密裏で会合している時点で、その真意が言わずとも分かる。

であれば、依頼内容を見事に完遂するのが良いだろう。

 

『ペルシカ、お前の方は良いのか』

 

『言わずとも分かっている様な気がするけど…』

 

そう言えば、この女はエアの件に一枚噛んでいるのだったな。

大方稼働データが送られていない事に気付き、事態を把握した所であろう。

 

「エアの件は言われなくても、助け出す。…大事な友人なんでな」

 

『…友人、か。彼女も貴方の事を恩人って言っていたわ。孤独だった自分と出会ってくれた恩人って』

 

「恩人と言われる様な事はしていない。ただ、偶然が重なっただけだ」

 

何度も救われた。

様々な依頼で彼女は助けてくれた。

だと言うのに、その恩を仇で返した。だから恩人ではない、自分は恩知らずだ。

 

「報酬は払って貰うが、払う気が無いのであれば別段構わん」

 

『意外と無欲なのね?傭兵ってそう言った部分には強欲だと思っていたのだけど』

 

「依頼されなくても一人で行うつもりだったからな。丁度良い口実が出来たに過ぎない」

 

それだけだ、と言い終えると踵を返し通信室を出ていこうとするとフィオナに呼び止められる。

何だろうかと思いながらも足を止めて振り返る。

 

「後でサイレントライン攻略作戦の概要を説明するから、ブリーフィングルームに向かって。それとキサラギ社から貴方宛てに、プレゼントが来てるみたい。ブリーフィングが始まる前に受領エリアで受領して」

 

「分かった。…しかし何故キサラギ社が?」

 

「ちょっとしたお礼らしいわ。中身は分からないけど、信じていいと思う」

 

良く分かないが、早い内に取りに行くべきだろう。

一つ頷いて了承を示してから、今度こそ通信室を出ていく。

職員や夜警にへと向かう人形らの間を通り抜けながら、懐から端末を取り出し、ある人物へと繋ぐ。

数秒経って画面に映し出されるのは複数のミサイルが絡むエンブレム。

 

『RaDのチャティ・スティックだ。要件は何だ、ビジター』

 

「忙しい所に済まない、チャティ。至急でやってほしい事がある」

 

『聞こう』

 

チャティにやってほしい事を全て伝える。

事を言い終えるまでは相変わらず無口だが、これがチャティなので気にしない。

 

「…以上だ。頼めるか?」

 

『問題ない。作戦当日に実行できるように準備しておこう』

 

「助かる」

 

礼を伝えて通信を切る。

取り敢えず、依頼遂行の為の下準備は整えた。

さて、お次はキサラギ社からのプレゼントだったか。それを受け取る為に受領エリアへ向かう。

深夜にも関わらず、人の行き来が激しい廊下を抜けて、案内表示に従う様にそこへと向かう。

たどり着いた時には基地の職員がキサラギ社から送られてきたであろうプレゼントの荷解きを行っており、近場にいた職場が此方に気付き、声をかけてきた。

 

「お疲れ様です。キサラギ社からお荷物が届いていますよ」

 

「ああ、フィオナから聞いた。荷解きを済ませたら、中身を見せてほしい」

 

「かしこまりました。それとキサラギ社様から貴方宛てに手紙を預かっています」

 

「分かった、ありがとう」

 

職員が差し出した手紙を受け取り、開く。

色々書いているが、要約するとキサラギ社の職員らが仕事の帰り際に偶然にもAC用の武装を見つけたらしい。それを修理したものを送るので仕事に役立ててほしいとの事。

使用感などと言った感想は送ってほしいとは書いていないが、その礼として感想の一つは伝えるべきだろうと思っていると、荷解きを終えたのか露になった中身に職員らがざわめきだした事に気付く。

 

「何だこれ…大砲?」

 

職員の一人がそこにあったものを見て、素直な感想を口にしていた。

確かにそれは大砲とも言える程に大きいが、その外観には見覚えがあった。

 

「よりによってメリニットのDIZZYとはな…」

 

眩暈がする程の一品。

手持ち式のグレネードだと、最大の爆発範囲を誇る武器。

そんなものを送ってくるとは。

 

「だが…」

 

良いタイミングで送ってくれた。

そこに関しては感謝すべきだな。




と言う事でレイヴン、依頼を受けます。

可能な限りとのことです。はい、可能な限りです。
つまり…生存は絶対ではないという事です。
さぁて…どうなるか。

そしてキサラギ社が見つけ拾い修理したAC用の武器、メリニットのDIZZYが登場です。
レイヴンからすれば、良いタイミングで送ってくれたとのこと。

さてはて、これもどうなるか。

では次回ノシ
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