人形ノ詩 鴉ノ詩   作:白黒モンブラン

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chapter 00-40

 

「全員、揃ってるみたいね。これよりサイレントライン攻略作戦のブリーフィングを始めるわね」

 

薄暗がりの一室。

大型モニターの灯りが部屋を僅かに照らす中、この基地を統べる人物であるフィオナの声が響く。

AC乗りであるレイヴン、ラスティ、ヴォルタ、617、そして元鉄血所属のハイエンドモデルであるワタリのみ。

大がかりな作戦のブリーフィングであると言うのにその場には何故か人形達の姿はない。

というものの、彼女らは人形である。

人間とは違い、電脳空間にその意識を移動させるなど平然とやってのける。

この場所には居ないものの、電脳空間には多くの人形達が勢揃いしており、彼女達の視界にはAC乗りである彼、彼女らを示すエンブレムが浮かんでおり、同時に指揮官であるフィオナが自ら選んだアバターが立っていた。

柴犬という一見可愛らしいアバターであるが、浮かべる顔が事の重大さを物語る。

これから話す内容は、和気藹々とかいったものなど欠片もないものだから。

 

「鉄血の超重要拠点かつ補給においても最も重要な要衝、通称『サイレントライン』を攻略します」

 

浮かび上がった中空ディスプレイに映し出されるサイレントライン。

上空から撮影したものであり、そこから見るだけでも相当な戦力が配備されているのが分かる。

 

「再調査を行う前は下級モデルと多数の砲台によって防衛ラインを形成していたけど、ACの存在を知ったのか鉄血は戦力の強化を実施。下級モデル及びマンティコアやニーマムと言った兵器群の大量投入。ガトリング砲装備移動砲台を居住区画へと繋がる橋に配備、スナイパーキャノン、グレネードキャノンといった砲台を居住区画に設置、そして…レイヴンらが居た世界、ルビコンと呼ばれる惑星にあったとされる兵器、汎用MTと重四脚MT数十機を鹵獲、無人を前提とした運用の元、それら全てを居住区画と城塞内部に投入し防衛ラインの強化を行った事が再調査にて発覚したわ」

 

切り替わった画面に映った過剰なまで投入された戦力で形成された防衛ライン。

それを見て人形達の表情が険しくなる。

これだけの戦力を相手に立ち向かわなくてはならないとという現実。

補給拠点という名を謳った要塞に突撃するなど無謀も良い所なのだ。

 

「これだけの戦力を前にして挑む…皆も分かっているとは思うけど、こんなのは無謀に等しい。けどしなくちゃいけない理由はある。ここを落とせばを鉄血に押され気味の現状を覆す事が出来る。それは以前からの目標でもあった。そしてもう一つ、再調査によって得た情報を元に上層部が立案した作戦の中止を打診したのけれど、結果…上層部は止まらなかった。虚偽の情報だと一方的に決めつけてね」

 

『お待ちになって、指揮官。それはつまり…』

 

RFの戦術人形『Kar98k』が恐る恐る尋ねる。

こんな事を尋ねた所で結果は分かっている。

それでも尋ねなければならなかった。既に分かり切った答えが出てくる可能性が99.9%の内、奇跡を起こるであろう可能性、その残り0.1%を信じて。

 

「…上層部はやらかしを始める。作戦とは言えない作戦を決行して自分たちは安全地帯で高みの見物。経験の浅い指揮官らや練度の低い人形達を前線に放り込んで、その屍を大量に重ねるつもりよ」

 

『ッ…なんてことを…』

 

絶句。

告げられた指揮官の言葉に人形達の反応は皆、それであった。

これだけの情報を提供したと言うのに、何故そこで止まろうとしないのか。

誰しもが上層部という狂人に恐怖を覚えた。

何を、どうすれば此処まで狂う事が出来るのかと。

 

「このまま見過ごす訳にはいかない。そこで我々は上層部の作戦に介入。前線に置き去りにされるであろう指揮官、人形達を助け出す。良い?目的は二つ」

 

フィオナの声が段々と剣呑なものへと切り替わっていく。

事の重大さを理解しているのは当然だが、より一層その重さを理解しているからであろう。

 

「上層部の作戦を止める為に戦闘に介入、前線に置き去りにされる新人たちの救出が一つ。そして基地を制圧。この二つをほぼ同時に行う。それには皆の協力がなければ成し得ないと判断してる」

 

『分かり切っている事だけど、ACも出るのよね?こうしてブリーフィングに参加している訳だし』

 

「当然よ、グローザ。今回の作戦にはRe:LOADER4、スティールヘイズ・オルトゥス、キャノンヘッド、TENDERFOOT、サーカス計五機のACが、またワタリもレイヴンらと同じく雇われとして前線に出ます。…それじゃあ、ここからは作戦の流れを説明します」

 

画面が切り替わる。

グリッド線で描かれたサイレントラインの立体図。

敵の配置、砲台の配置など多くの敵の情報が記載されているが、まず初めにフィオナが示したのは居住区画に侵入する為の唯一の侵入経路である橋だった。

橋以外からの侵入を阻止する為か、大きな空堀が彫られているのが分かる。

 

「居住区画に侵入する為にはこの橋に配置されたガトリング砲装備移動砲台と居住区画前に存在する巨大防壁に設置されたスナイパーキャノンと大多数の敵狙撃部隊を撃滅、突破しないといけません。此処で部隊が足止めを喰らう可能性が多いにあります。そこでキャノンヘッド、サーカスの二機が保有する高火力を用いて後方支援を行い、居住区画へと突撃する部隊の支援を行います。敵の殲滅後、両機と突撃部隊は居住区画に侵入してください。また此処で上層部によって放り出された味方部隊を発見したら即座に後方への撤退及び戦線離脱を促してください。後方には此方が設営する陣地にて対象を保護します…此処で何か質問は?」

 

質疑応答を設けるも質問は今の所ない。

もう少し待つかと思うも、フィオナはそのまま話を続けた。

 

「前線部隊の排除及び突撃部隊の居住区画への進行を開始したと同時にサイレントライン左翼からスティールヘイズ・オルトゥスが、右翼からTENDERFOOTへとサイレントラインへと進行。二機は居住区画後方に存在する城壁に配備された砲台と敵MTと重四脚MTを優先的に排除。居住区画へと突撃した部隊と二機で挟撃、居住区画の安全を確保してください」

 

「安全の確保が取れたら私と617はどうすればいい?」

 

「617は突撃部隊と合流、その護衛及び敵の迎撃をお願いします。ラスティさんは城塞内部へ侵入し、内部に存在する敵、このサイレントラインの統括を一任されているハイエンドモデル及び搭乗機体であるHC機体の破壊をお願いします」

 

「了解した」

 

高らかに笑いながらHC機体を操る少女。

最初こそはその正体を見抜く事が出来なかったラスティ。

その少女がハイエンドモデルだと今知ったとしても表情に驚きはなかった。

自身と互角に渡り合うだけの腕。危険な相手である事は変わりない。

気を引き締めてかからなくてはならないと胸の内で呟くラスティ。その時、電脳空間にいたM82A1がある事に気付いて声を上げた。

 

『指揮官…レイヴンはどうされるのですか』

 

「安心して、M82A1。それについても話すから」

 

フィオナが端末を操作すると画面に城塞後方から城塞内部へと示す矢印が出現する。

城塞後方にも襲撃に備えているのか、それなりの戦力が配備されているのは誰の目からしても明らかであった。

 

「前面をキャノンヘッド、サーカス。左翼をスティールヘイズ・オルトゥス、右翼をTENDERFOOT。これだけでも十分とも言えますが、念には念を入れて後方からも襲撃を仕掛けます。その役を務めるのがRe:LOADER4…つまりレイヴンが担います。後方に控える部隊を排除した後、そのまま城塞内部に進行。敵を排除しつつ、スティールヘイズ・オルトゥスと合流した後、ハイエンドモデルが駆るHC機体を排除してください」

 

「奇跡的に城塞内部に侵入していた部隊がいたらどうする?」

 

「危険にさらす訳には行かないので、安全が確認できる所で隠れる様に伝えた後、その現在地を此方に送って下さい。急ぎで回収に向かいます」

 

「分かった」

 

前面、両側面、後面からACによる同時襲撃。

これだけの戦力を前にするのだ。寧ろこれ位した方が正しいとも言えるのも事実であった。

だが、問題はある。この様な作戦を立てたとして、それをこの基地のメンバーだけで行わなくてはならないのか。

そんな不安すらも見抜いていたのか、フィオナは告げた。

 

「この作戦に参加していない多くの基地に対して参加協力申請は飛ばしているわ。けど、参加してくれる基地が出てくることは限りなく低いと判断して」

 

依頼を飛ばすだけ飛ばしている。

その事実と同時に協力してくれる所が恐らく少ないであろう事実。

喜ぶべきか残念がるべきか分からない事実に人形達は言葉が出ない。

だがやらなくてはならない。それだけは揺るぎない事実でもあった。

 

「作戦決行日は今から二日後。それまで全員、メンタルデータのフィードバックを取っておく事。部隊編成などの相談は何時でも良いから、私に声をかけて」

 

それじゃあ、解散という言葉と共にブリーフィングが終わる。

二日後に作戦決行。

刻々と迫るそれにその場にいた者達は誰一人とて口を開く事はなかった。




内容の後半あたりに会った通り、他の基地に参加協力申請を飛ばしたとあった通り、コラボをやろうかと思います。

活動報告にて『人形ノ詩 鴉ノ詩』サイレントライン攻略作戦 参加協力申請』の題目にて投稿しますので、ご興味あればどうぞ

※2024/05/14追記しました。


ではノシ
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