人形ノ詩 鴉ノ詩   作:白黒モンブラン

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─硝煙と思惑の戦場─


chapter 00-43 silentline Ⅰ

 

「だー!もう!数が多いって!!」

 

絶えなく響く銃声に爆発音。

所々で聞こえるブースターの音と飛来するミサイルに砲弾の雨。

兵器の喧騒とも言える様なこの状況下でスコーピオンは両手に持った己と同じ名の銃を連射しながら叫ぶ。

一人、また一人と鉄血兵を倒してもどんどん湧いて出てくる。ブリーフィングで知っていたからか、その事は既に分かり切った事ではあるものの、彼女からすれば叫ばずにはいられなかった。

 

「叫んでいる暇があるなら撃ちなさい、スコーピオン!客はまだまだ居るのよ!」

 

ダミーと連携しつつ、凄まじいまでの弾幕展開で波の様に迫り来る鉄血兵を瞬く間にハチの巣に変えていきながら叫ぶネゲヴ。

居住区画手前に存在していた防壁の敵部隊はとガトリングガンを装備した移動砲台はキャノンヘッドとサーカスによる支援によって殲滅され、抵抗が弱まった隙をついてグリフィンの部隊は居住区画付近まで侵入していた。

此処まで順調。だが居住区画に来た時点で敵の強烈な迎撃を前に部隊の進軍は停滞してしまい、全部隊が防戦に出てしまう状況が出来上がっていた。

倒しても倒しても次々と出てくる敵。それだけならまだいい。

何故ならここは鉄血の超重要拠点であり補給拠点。ここを失うという事は痛手であるのだからこの反撃にも納得がいく。

ただネゲヴの表情には苛立ちが微かに浮かび上がっていた。

状況が進まない事に対する苛立ちではない。彼女が苛立っているもの。それは…

 

『通信に答えろ、フィオナ指揮官!貴様、何故ここに居る!作戦参加権限など無い筈だ!』

 

『安全地帯で怒鳴るだけの無能に話す理由などありません!理由が聞きたくば此処まで出張って来なさい!』

 

『貴様、上官を愚弄する気か!!』

 

ただでさえ命のやり取りをしているにも関わらず、お粗末な作戦を立案した上層部の一人がしつこく通信を寄越してくるのだ。

 

「ったく…五月蠅いったらありゃしないわねッ!!!!!」

 

無能が騒ぐ声など不快でしかない。

故にネゲヴは苛立っていたが、その動きはプロフェッショナルらしく冷静だった。

リロードによって生まれる隙をダミーでカバーし、即座に攻勢に出る。

周囲との連携を密にして敵を殲滅していく。その様は長らく戦場に身を置き、そして生き残って来た歴戦の戦士と変わらない。

 

「不味いですね…」

 

居住区画の一区画。

孤立してしまった人形を発見したX95は周囲の安全を取ろうとした矢先で、険しい表情を浮かべた。

周囲で響き渡る銃声と砲撃音。その中に混じる様に重たい物がゆっくりと迫ってくる。

壁に身を寄せ、そっと顔を出せばそこにはACとはまた違う二脚型の兵器の姿があった。

再調査でその存在が明らかになったMTと呼ばれる兵器。レイヴンらがいた世界、その世界に存在していたルビコンという惑星の地元企業『BAWS』で製造された兵器がX95と孤立した戦術人形らが身を隠している所に近づいてきていた。

 

(応援を呼んでも間に合わない。この銃ではあの装甲は貫けない…)

 

冷や汗が流れる。

その間にも敵が近づいてくる。

 

(引き付ける…?いえ、それでは僅かでしか持たない。それに、彼女らを置いてはいけない…)

 

ちらりと孤立した戦術人形らを見るX95。

とてもじゃないが戦えそうにはない。救援を要請しようとしても、敵がいる状況ではそれも出来ない。

 

『よぉ、雑な仕事になるが文句言うんじゃねぇぞ』

 

「え?」

 

粗野のある野太い声。

驚きの束の間、轟音が近づいてきていることにX95は気づく。

もう一度壁越しから敵が迫る方を見たその瞬間だった。

 

『どきやがれッ!!!』

 

モスグリーンをメインに彩った装甲。

右肩と胴体の一部を赤く染めたタンク型ACがMTの真横から飛び出して、勢い良く蹴りを放った。

凄まじい音と共に火花を散らしながら木端微塵に吹き飛ぶMT。突然の攻撃に一瞬反応に遅れる無人MT。

ブーストキックから地面に着地するキャノンヘッド。上半身だけ敵へと旋回させて左手に持っていた重ショットガン『SG-027 ZIMMERMAN』を発射。

楕円形の特徴的な銃口から20発の弾丸が飛び出し、近くにいた二脚MTを破壊。

直後に残っていたMT三機がキャノンヘッドに対して攻撃を仕掛けようとするが、それよりも早くキャノンヘッドの左肩に装備した小型連装グレネードキャノン『SONGBIRDS』が囀る。

二連バースト射撃により二つの砲口から飛び出す二発のグレネード。それはMT三機にへと襲い掛かり、着弾。四肢すら残さない爆発と爆炎が空高くへと舞い上がっていく。

 

「…」

 

一瞬の出来事。

終始見ていたX95は驚きの余り、言葉が出ない。

ACの戦いはこれまでにも何度か見た事がある。

見た事もある筈のキャノンヘッドのパイロットであるG4ヴォルタの戦い方の凄まじさを改めて感じていた。

 

『ボケてる暇なんかねぇぞ。とっとそいつらを連れて下がりな』

 

「…助かりました、G4」

 

『別に構わねぇよ』

 

それを最後にキャノンヘッドは移動していき、X95も孤立していた戦術人形らを連れて後方へと下がる。

フェンリルが用意してくれた部隊に航空部隊、フェンリルのリーダーたるヒロが持ち出した兵器『セラフ』の活躍もあって、現状何とかなっている。

が、油断は出来ない。先ほど遭遇したMTや鉄血兵に見つかる前にこの場を離れなくてはならない。

 

「皆さん、行きましょう。大丈夫、私が先導します」

 

孤立した戦術人形らを連れて、白き花が戦場を駆ける。

この時、彼女は思う。敵の動きはどうにも単調であると。

物量を活かした戦術にしても、上手くいっていない気配がしてならない。

 

「…何かが動いている?」

 

悪いものとは思えない。

そしてこの感じに彼女は覚えがあった。

敵味方に気付かれる事無く、電子能力を発揮させる彼女の力に…。

 

「…エアさん、貴女が動いているですか?」

 

駆けながら城塞へと視線を向けるX95。

この問いかけが届くはずがない。大切な仲間を助けに行きたい。

だがその役目は自分ではない。彼…レイヴンなのだ。

 

「レイヴン…大事な友人を必ず助け出してくださいね」

 

城塞外部、その後方から攻め入っている鴉へと届かぬ言葉を口にしながらX95は後方へと下がっていくのだった。




遅くなってすまんな…。
居住区画でドンパチかます面々。さぁてお次はどうくるかな…
とは言え居住区画の脅威はあるので、そう簡単にはこの場を切り抜ける事は出来ないでしょう。

まぁ…何か動いているみたいですが。ではノシ






















「グリフィンの連中、ACなんぞ持ち出すなんて…!」

「さっきの奴らで突撃してくれたら楽だったものを…!」

『随分と焦っているみたいだな』

『なんなら、私とあのAIで出るが?』

「…聞いてたの」

『まぁな。…それに裏切り者も来ている。あのAIも遊びたがっているらしくてな』

「なら行ってきて。…こっちは裏から来てるヤツを仕留めるから」

『ああ、了解した』
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