「ありがとう!」
戦闘を繰り広げるRe:LOADER4の後方からヴァルキリー小隊の一人、レイシアから感謝の声が届く。
反応の一つしてやりたい所ではあるが、重四脚MTと戦闘を繰り広げるレイヴンにそんな余裕はない。
無事この場から脱する事が出来ただろうかと思っていた時、エアがレイヴンに伝える。
「戦術人形二名の撤退を確認。レイヴン…!」
「ああ。…これでやりやすくなる」
この閉所でスナイパーキャノンは意味を成さないと判断しているのか、右手のレーザーブレードと左手に装備したショットガンでRe:LOADER4に攻撃を続ける重四脚MT。
対するレイヴンにアサルトライフルとグレネード、そして右肩部のニードルミサイルで対応していた。
三連双対ミサイルを使用しないのは閉所という事もあるのだが相手との距離が近いという事もあって、あまり使用していなかった。
特に三連双対ミサイルは発射時は左右に広がりつつ斜め上へとミサイルが飛び出し、そこから敵へと向かって飛来していく。
その斜め上へと飛び上がる性質に加えて、相手との距離が近い閉所であるこの場所で使おうものならミサイルは相手の頭上を飛び越えてしまうので無駄弾にしかならない。
(だが、問題ない)
飛び道具を一つ使えなくされているにも関わらず、レイヴンの表情は変わらない。
Re:LOADER4を操縦する腕は衰える事はなく、それどころか動きは鋭さが増していた。
「…!」
重四脚MTのショットガンがリロードが訪れる。
攻撃する手段がレーザーブレードだけとなってしまった重四脚MTは下がる事はせず、大出力を活かした跳躍からRe:LOADER4へと向かってレーザーブレードにより振り下ろしを敢行。
距離を取ろうとして下がればレーザーブレードの餌食になる。それが分かっているからこそ、レイヴンはアサルトブーストを起動させ、機体を飛び上がった重四脚MTの真下を通り抜けて攻撃を回避。
そのままクイックターンで旋回と同時にニードルミサイルを発射した。
凄まじい弾速に、ある程度の誘導性を有した非爆発属性のミサイルが高い防御力を保有するMTの装甲をいとも簡単に穿ち、恐ろしいまでのACS負荷を与えると重四脚MTの動きが停止。
ACS負荷限界に陥った。無防備な状態を晒す重四脚MTにRe:LOADER4の左腕に装備したグレネードが発射され、着弾。
凄まじいまでの爆発と爆炎が巻き込むも、ACS負荷限界から回復した重四脚MTが飛び出してくる。
装甲の一部は拉げ、中身が剥き出しの状態。
左手に装備していたショットガンもグレネードによって最早使い物にならない状態になっていた。
残るはレーザーブレードのみ。最大出力で展開されたレーザーの刃が再びRe:LOADER4へと向けられる。
執念の攻撃と言うべきか。無人兵器にしては、らしくない動き。
だがその一撃もアサルトブーストによる強襲から慣性を利用したブーストキックを放ったRe:LOADER4によって止めの一撃を打たれ、何の意味も成す事なく終わりを告げる事となった。
鈍く響いた音と共に木端微塵に吹き飛ぶ装甲。
ACよりも大きな躰を持つ重四脚MTがまるでサッカーボールの様に後方へと転がっていき、二転三転した所で壁に激突。
元の形すら残さない程の爆発を引き起こすと四肢が吹き飛び、そのまま重四脚MTは沈黙した。
「重四脚MTの沈黙を確認。…この先はどうしますか、レイヴン」
「此処の統率を撃破する。そいつを始末さえすれば、このサイレントラインは陥落する。…エア、此処から先は──」
「貴方が何と言おうとも私は降りるつもりはありません」
レイヴンの台詞を遮る様に、エアは自らの思いを口にした。
彼女自身、彼が言おうとしていた台詞を察していた。
「エア…」
「どうか、私も戦わせて下さい」
エアは戦う事を選択する。レイヴンと共にある為に、共に歩む為に。
だから、その先の台詞は言ってほしくなかった。
安全な場所に隠れていろなんて台詞を。
「…」
赤い瞳が訴えかけてくる。
その理由を静かに知ったレイヴンは分かったと答え、Re:LOADER4を動かす。
「共に行こう、エア」
「はい…!」
ブースターを起動し、Re:LOADER4は内部を滑走していく。
そんな中、サイレントライン城塞外部で作戦指揮を執っていたフィオナから通信が入る。
『G13、聞こえますか。グリフィン・リーダー、フィオナです、今の状況を教えてください』
「グリフィン・リーダー、エアを保護した。今、一緒に居る」
『ッ!?…彼女を保護出来たんですか!?』
「ああ。今から代わる」
エアへと視線を送り、通信に答えてやれと促すレイヴン。
相手は見知らぬ相手ではない事はエアも知っており、レイヴンと交代する形で通信に答える。
「フィオナ、私の声が聞こえますか?」
『無事で本当に良かった…!それと私は、貴女が捕虜になっていた事に気付けなくて…!』
「無理もないかと。私が捕虜になっていた事は秘匿されていたのだと思います。それに貴女は彼を…レイヴンを連れてきてくれた。それだけで十分な程に救われました」
『エア…』
「再会はこの作戦が終わった後に。終わるまではレイヴンに守ってもらいます。その代わりに私が彼のサポートをします」
『分かりました。…無理はしないでね』
「はい。無理はしませんとも」
その台詞にエアの表情は少しばかり柔らかかった。
少なからずフィオナの声が聞けたのが嬉しかったのだろうと思ったレイヴンはエアと交代する様にフィオナへと話しかける。
「サイレントラインの壁上で、"奴"を迎え撃つ」
『了解しました。壁上に到達したら、現在位置をこちらに送信してください。準備は既に整えています』
「了解した。通信を終了する」
通信を切り、Re:LOADER4をサイレントライン城塞の壁上へと向けるレイヴン。
真っ直ぐと続く通路を機体が駆け抜ける中、エアは不思議そうに彼へと問いかける。
「レイヴン、準備とは一体…?」
「大それたものではないが…強いて言えば、武装変更といった所だ」
サイレントライン城塞壁上。
そこがこの作戦の全ての結末を描く決戦の場。
レイヴンとエア。そしてRe:LOADER4が壁上へと向かう為、内部を駆け抜けていく。
一方、サイレントライン城塞外部にある居住区画の戦闘は粗方片付いていた。
だが、ワタリと異端者の二人の戦闘はAC乗りすらも注目する程に激化する一方だった。
『噂には聞いていたが…凄まじいな。だが、何故に鉄血のハイエンドモデル同士が戦っている?』
『でっけぇブレードみてぇのを持った奴は組織を抜けてグリフィンについてんだよ、参謀。向こうからすりゃ裏切り者ってやつだ』
『…成る程な』
ワタリの状況を知らないナイルの疑問にヴォルタが答えると、二人はその戦いへと目を向ける。
斬り結ぶ度にぶつかる刃と散る火花。
薙ぎ払いを受け流し、刺突を弾き返し、何度目かの鍔迫り合いへと持ち込む。
拮抗する力。一歩も退かない両者。一つの油断が命取りになる戦闘。
獲物を握る手は緩むことはなく、ワタリと異端者の間では会話が繰り広げられていた。
「随分と"体"を使いこなしていますね…!慣らしにはさぞかし苦労した事でしょう…!」
「その台詞、そっくりそのまま返すぞ…!」
合わせたかのように飛び退く両者。
距離を取ろうとしたワタリに対し、異端者は着地と同時に突進し槍斧を薙ぎ払いを見舞う。
凄まじい速度で迫る刃。手にした大太刀の刀身で受け流そうと防御態勢へと移行しようした時、ワタリは気付いた。
(腕を伝う…赤い光の脈…?)
まるで人間の体内に存在する動脈を彷彿とさせる赤く光る脈の様なもの。
それがいつ、どのタイミングで現れたのか槍斧を握る異端者の腕に現れていた。
(…まさか!?)
ワタリの表情に焦りが浮かぶ。
咄嗟の判断で大太刀を地面に突き刺して防御態勢を取った瞬間──
「…ッ!!!」
その防御態勢すらも崩しかねない強烈な一撃がワタリを襲った。
突き刺した大太刀が後方へと吹き飛ばされながら地面を切り裂きながら火花を散らし、ワタリは態勢を崩すまいと耐え忍ぶ。
それが数秒程度続いたであろうか。軽く五メートル程吹き飛ばされた辺りで停止。
突き刺した大太刀を引き抜いた後、彼女はゆっくりとへと周りを見渡す。
そこに映るは、半分から上がなくなった建物。
爆発で吹き飛んだ訳ではない。
まるで斬られた様に綺麗な断面図を残したまま半分から上が、ものの見事に消失しており灰色の空が二人を迎えていた。
「…防いだか」
「防いだと言っていいのかは分かりませんがねぇ。……
「お前を殺す為だ。…最もこの機能を使うのはもっと先を思っていたがな」
「試運転は丁度いいのでは?…まぁ、死ぬつもりはありませんが」
大太刀を腰に提げた鞘へと納めて、ワタリが独自に考えた居合の姿勢へと移行する。
構えを変更した事に身構える異端者。
そんな彼女に不敵な笑みを浮かべながらワタリは告げる。
「瞬きはしない事です。もっと言うと…瞬きしようものなら、即座に斬られると思いなさいな」
「…やってみせろ。出来るものならな」
「言われなくとも──」
消える。
音を立てる事無く、予備動作すらない瞬間移動とも言える様な速さで。
「今から──」
奔る。
ほぼ同時とも言える速さで赤く鋭い刃が、槍斧の柄と異端者の体に斬ると─
「やってみせますとも」
異端者の背後に立つワタリが大太刀の刀身を鞘へと納めた。
鯉口と鍔がかち合う音。
ほぼ一瞬とも言える出来事。響き渡ったその音に異端者の体はゆっくりと地面へと崩れ落ちた。
さぁて…そろそろ決着を付けねぇとな。
ではでは次回ノシ