人形ノ詩 鴉ノ詩   作:白黒モンブラン

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──fight or flight──


chapter 00-50 silentline Ⅶ

 

「ああ…もう…!クソ!…クソ!……クソ!!!」

 

サイレントライン城塞内部。

その通路に左腕を鉄血の技術で何とか復元したパルスシールドにへと換装したHC機体が駆け抜けていく。

そのコクピットに座るハイエンドモデル『番人(ストラージャ)』の表情は焦りと怒りがにじみ出ており、口調も普段の彼女らしからぬ言動へと変わっていた。

 

「たかだか一つの基地の戦力で…ACだって部品の寄せ集めの筈なのに…!」

 

ACの投入は想定外だった。しかし、それでもどうにかなると思っていた。

だが違った。

迎撃に向かった異端者とLC高機動型に搭載したAIの反応が消え、狩人(ハンター)も戦闘状態にある。

幾らかは道連れに出来るだろう。だがそれも時間の問題。

そうしない内に狩人もグリフィンの人形らに破壊されるだろう。

盤面をひっくり返された今、番人はサイレントラインの放棄し、サイレントラインの脱出を選んでいた。

このまま戦った所で勝ち目はない。それにAC複数を同時に相手にして生き残れる保証もない。

それどころか会敵して数秒足らずで袋叩きにされるのが目に見えている。

 

「戦力を立て直す必要がある…その為には此処から出ないと」

 

HC機体の速度を速める番人。

彼女しか知らない隠し通路を駆け抜けていき、壁上へと向かう為のエレベーターへと繋がる通路も瞬く間に駆け抜けていく。

壁上にもそれなりの戦力を配備してある。グリフィンの人形らでは対処するのも苦労するだろう。

例えACがそこに攻め込んだとしても、一筋縄ではいかない筈。

足止めしてくれている間に遠くに逃げる為の時間稼ぎはしてくれるに違いない。

壁上へと上がるエレベーターに乗り込み上昇していく機体のコクピットの中で番人はそれを信じて疑わない。

いや、そう信じ込まないと何かが可笑しくなる予感があった。

 

「なに…これ…」

 

壁上へと出ると扉の前へとエレベーターが到達。

そのまま壁上へと出るとHC機体と番人の前に夕暮れの空が迎えた。

橙色に染まった空。雲の間から差し込む陽の光。

そして──

 

「なんで…全部やられてんの…」

 

何者かによって、無残な姿と化した鉄血の機甲部隊とMTらの残骸が転がる光景が彼女を迎えた。

ACが攻め込んだとしても、苦戦させられる程の戦力は配置していた。

だが現実はどうだ。そんな戦力など塵も当然と言わんばかりに壊滅させられている。

一体誰がやった?

この状況を前にして、いの一番に思った感情はそれだった。

操縦桿をゆっくりと前に倒しHC機体を進ませる番人。

 

「…」

 

鉄くずと化した残骸らから空へと向かって昇る黒煙。

その間を抜けていく。

銃声も爆発音もない。そこに響くは駆け抜ける風と機体の駆動音のみ。

それ以外の音はない。この壁上に不気味な雰囲気だけが漂っていた。

壁上の真ん中辺りまで差し掛かった時、立ち上る黒煙の向こう側に薄っすらと何かが立っている事に気付く番人。

何処となく人型にも似たソレ。それがこの状況を生み出した存在である事は間違いない。

気付かれる前に立ち去るべきか。いや、この距離であればレーダーに捉えられても可笑しくない。

迎撃すべきか。それとも急速離脱すべきか。

判断しかねる最中、昇っていた黒煙は静かに消えていき向こう側に立っていた存在が明らかとなる。

 

「…ハハッ……最悪…」

 

破壊された残骸の上に佇む一機のAC。

灰色に彩られたソレは番人が駆るHC機体に対して背を向けて立っていた。

夕暮れ時の空の下で、それは静かに…ただただ静かに佇んでいた。

 

『…レイヴン、敵性機体を確認しました』

 

通信越しから声が聞こえる。

そして番人は悟る。今、この時をもって自分は捕捉されたのだと。

 

『あれが此処を統率するハイエンドモデル…そしてHC機体を駆る存在』

 

灰色のACがゆっくりと振り向く。

あの時に見た同じ武装構成。アサルトライフルにミサイル、そして()()()()()()()

その様相、その仕草、振り向く際に響く駆動音でさえ言いようの出来ない圧が存在していた。

 

『教えてあげましょう』

 

橙色に輝く隻眼がHC機体を見据えると頭部が変形。

側頭部に位置する装甲が展開、そこから後頭部に隠されたバイザーが稼働。

目を守る防盾として機体の顔に覆い被さった時、内蔵されたセンサーが発光。

灰色のAC…『Re:LOADER4』のコア後部が展開され、それと同時に機体は姿勢を低くした。

響き渡る駆動音。ブースターが唸り上げる様に音を立て、青い光が収束開始。

そして──

 

『その翼では…私たちに届かないという事を』

 

飛翔、そして戦闘開始。

青い光が炎と化し、Re:LOADER4…もといG13『レイヴン()』が番人に迫る。

借り物ではなくなったその翼で、決して侵してはいけない領域(サイレントライン)を羽ばたく。

鴉と番人が対峙する。

そして狼もまた──

 

「反応が二つ…。流石に早いな、戦友。私の出番は取っておいてくれると嬉しいのだが…!」

 

壁上へと目指して駆け抜けていく。

戦場の喧騒。全てを終わりを告げる静けさが訪れる時がすぐそこまで迫ろうとしていた。




短いですけど、許して…。
という訳で、サイレントラインを統率していたハイエンドモデル『番人』との会敵です。
あの時は『死』を当てらえて、撤退した彼女。
如何やらそれも叶う事はない。逃げる事は出来ない、戦うほか手はない…。

次回は戦闘開始。


因みにRe:LOADER4がゆっくり振り返る場面を書いていた時は、ずっとあの曲を聞いておりました。

初めてあの『本物』と出くわした時とあの曲が流れた時…ほんとヤバかったです。














「…始まりましたね」

「みたいだな、クレセント。何なら特等席で見ていくか?」

「そんな呑気な事を言っている場合じゃないでしょう、ナイトホロウ。…G13が預けてくれた武装をヘリで輸送してフィオナ指揮官の所に戻りますよ」

「はいはい。変わらず生真面目だな、全く…」

「…しかし戦場のど真ん中で武装変更を行うとは。ACの汎用性の高さが良く分かります」

「武装だけに限らず、やろうとも思えばフレームさえも換装出来ちまう。HC機体ってのも恐ろしいが、ACはACで恐ろしいもんだ。…前の職場じゃ、最後の仕事で死神に会いたくなったとか言った事もあるが、あれ(AC)とは敵対したくねぇな」

「全くです」
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