人形ノ詩 鴉ノ詩   作:白黒モンブラン

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chapter 00-52 silentline Ⅸ

爆発にも似たソレが閃光の如く迸る。

Re:LOADER4を中心にして放たれたパルス波の爆発(アサルトアーマー)

その威力は重装甲を誇る筈のHC機体を軽々と吹き飛ばすだけの威力を有し、それを指し示す様にHC機体の四肢がいとも簡単に吹き飛んだ。

両手足を失い、吹き飛ばされた影響で壁上の外へと放り出されてしまうHC機体。

ブースターは破損し、吹かす事もままならない。

最早瀕死とも言える機体。そして同様に瀕死の番人と共々、鉄の塊は重力に引かれて落下していった。

黒煙を上げ、壁に打ち付けられる度に装甲が剥がれていく。

誰一人とてソレを止める事はしない。只々、壁に打ち付けられ転がり落ちる様を見届けるだけ。

やがて機体だったものが地面に激突し、小さな衝撃と共に周囲に土埃を巻き下げた。

衝撃を物語る土煙は数秒も経たない内に消え失せ、見るも無残な姿に成り果てたHC機体だったものが姿を現す。

僅かに残った壊れかけの頭部が見つめる先。

捥がれた四肢から火花が散ってスパークが奔る中、その視線はずっと、壁上で佇みながら自身を見下ろす灰色のACにへと向けられていた。

そしてそれは、番人も同じで──

 

「ば、け…もの……め…」

 

身体の半分を損失。頭部を七割程損失。

人であれば既に死亡しているであろう状態で、番人は微かにであるが機能していた。

が、それも時間の問題。

迫り来る機能停止()もすぐそこまで迫っていた。

 

「お、まえ、は……な、ん…なん…だ…?」

 

瞳に光が失われていく。

視界にノイズだけが奔り、闇が覆う。

僅かに、ほんの僅かに残った時間。

消え行く中で番人は思う。

あれは違う。何かが違う。存在しているだけでも、何かが狂い、何かが壊れ、何かが破滅する。

秩序なんてものが無いに等しいこの世界において、アレは危険すぎる。

アレは何かもを壊して、何もかも狂わせる不確定要素(イレギュラー)であり──

アレは塵一つ残さず、真っ黒に染め上げてしまう──

 

「いれ…ぎゅ………ら……ぁ……」

 

火、そのものであると。

 

 

 

「敵HC機体の沈黙を確認。あの様子だとあのハイエンドモデルも…」

 

時間の問題だと口ににせずともエアは胸の内でそう思った。

Re:LOADER4の頭部を介して映し出される光景は、これまで何度も見た光景だ。

だからこそ何も思う事はない。戦いというのは、いつだってそういうものなのだから。

 

「…これで、この戦いも終わるのでしょうか」

 

「いや…」

 

「?」

 

「…まだ終わっていない」

 

そう言うや否や、レイヴンは機体を反転させ再びサイレントライン城塞内部へと戻り始めた。

まだ内部に敵が居るというのだろうか。

途中で再会したとはいえ、ここにたどり着くまでの道中の敵はあらかた排除している。

どういう事だろうかと首を傾げるエアにレイヴンは、ある事を口にした。

 

「重四脚MTと戦っていた人形二名を覚えているか」

 

「ええ。しかし撤退した筈では?」

 

「…その撤退した筈の人形の反応が城塞内部に残っていると言えば、どうする?」

 

「え…!?」

 

壁上から下へと向かう隔壁を開錠。

そこに同じく壁上を目指していたスティールヘイズ・オルトゥスが姿を現し、コクピット内でラスティは既に戦いが終わっている事に察した。

 

『どうやら一足遅かったみたいだな、戦友。私の出番を残して置いて欲しかったものだが』

 

「そう言われてもな。素直に出番がなかったと受け止めてくれ」

 

『では、そういう事にしておくとしよう』

 

レイヴンの実力はラスティも良く知っている。

HC機体を乗りこなす実力を持っていたあのハイエンドモデルが彼と相対したとしても勝ち目がない事も理解していた。

味方であれば、本当に心強い存在。だが敵となれば──

 

(つくづく実感するよ。…君は恐ろしいな、戦友)

 

ラスティをもってしても、恐怖の存在でしかないのだから。

それを表に出す事はなく、ラスティは壁上から下へと向かう隔壁へと歩いていくRe:LOADER4を目で追いながら通信でレイヴンへと問いかける。

 

「戦友、何処へ行くんだい?」

 

『城塞内部で今も尚戦っている奴らの援護に向かう。暇なら手伝ってくれ、ラスティ。…出番が欲しいのだろう?』

 

「人助けできるなら喜んでさ」

 

Re:LOADER4とスティールヘイズ・オルトゥスのブースターに火が噴き出し、二機は滑走する。

物静かさが漂う城塞内部。

探している人物が何処にいるかさえ分からない状況。それでもスティールヘイズ・オルトゥスを先導する形で先を行くRe:LOADER4は分かっているかのように駆け抜ける。

その姿にラスティは首を傾げるが無理もない。

Re:LOADER4のコクピットにはレイヴンだけではなく、エアもいる。

こうして迷うことなく進めているのはエアのおかげでもあった。

 

「どうだ、エア。近いか?」

 

「あともう少しと言った所でしょうか。すいません、上手く探知できないみたいです…」

 

「いいさ。力を貸してくれているだけでも有り難い」

 

機体の速度を速める。

それにつられてラスティもまた機体の速度を速める。

戦いも敵も居ない通路をRe:LOADER4とスティールヘイズ・オルトゥスは走る。

その時、エアが反応した。

 

「近い…。レイヴン、すぐそこまで来ています!」

 

「こっちも人形の反応を捉えた。…ハイエンドモデルを相手に二人でか」

 

反応は三つ。

その内の二つが、あの時助けた戦術人形『アヤメ』と『レイシア』。

そして最後の一つが鉄血のハイエンドモデル『狩人(ハンター)』。

状況こそは分からないものの、狩人の反応が確認できる点では現状戦闘中である事は明らかであった。

 

(さて…どうしたものか)

 

MTであれば自分たちの出番であるが、人形を相手には分が悪い。

援護に向かうと言ったのは良いもののどうすべきかと悩んだ矢先、コクピットに思いもよらぬ通信が割り込んできた。

 

『暇してましたので来ましたよ、レイヴン。…狩人の相手はお任せ下さい』

 

「その声…ワタリか?」

 

『ええ。フィオナ指揮官とフェンリルのヒロさんから状況を聞いて飛んできました。如何やらハイエンドモデルが悪さしているみたいですね?』

 

「…始末できるか?」

 

その声は冷たかった。

そして何処となく、レイヴンにとっての恩人…猟犬の主を彷彿とさせた。

傍で聞いていたエアはそう感じ、対するレイヴンはワタリからの返答を待った。

 

『でなきゃ此処には来ませんとも。…少しだけお手伝いしてもらっても?』

 

「構わん。必要であれば遠慮なく使え」

 

『ではそうさせて貰いましょうか』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは突然の出来事であった。

アヤメとレイシアの両名を相手にしていた狩人は、実に狩人の名に恥じない戦いっぷりで優位に立っていた。

番人はやられ、異端者もやられた。残されたハイエンドモデルは自身だけとなった状況。

このサイレントラインは陥落する。そう冷静に判断しながらも、せめて見つけた獲物を始末しようと未だ尚、この場に留まっていた。

時間は流れ、停滞した状況が続く。そして本格的に止めを刺す為に行動を起こそうとした所で──

 

「なっ…!?」

 

「え…!?」

 

何処からともなく響いた銃声と飛来した弾丸が三人がいた場所の照明を破壊。

驚くも束の間、室内は暗闇にへと包まれ、全員が相手の位置を把握できない状況に陥った。

誰が一体こんなことを思う三者。だが狩人は知っている。

例え照明を破壊されようとも、数秒足らずで予備の照明が起動するという事を。

この程度──

 

「無駄なこと──」

 

「いいえ、全くもって無駄じゃないですよ?」

 

「ッ!?……がっ…!」

 

奔る衝撃、奔る痛覚、奔る斬撃。

それら全てが狩人の背後から襲い掛かった。

静まる暗闇。その直後に予備の照明が起動し灯りは戻り、全てが露わとなる。

そしてアヤメとレイシアの目に映ったのは…

 

「き、さま…!」

 

切っ先から人工血液が滴る刀身。

胸から飛び出す様に背後から串刺しされた狩人の表情は苦しみながらも怒りを滲ませている。

そしてその目は背後に立つワタリへと向けられていた。

 

「狩人にしては随分とお些末な事で。この程度であれば気付けたでしょうに。…それとも勝ちを目の前にして気が緩みましたか?」

 

大太刀を握る手に力が籠り、ワタリはより深くその刀身を狩人の体へと突き刺した。

笑っている様で笑っていない。笑顔に対して、その声は余りにも冷たかった。

 

「…か、はっ…!」

 

鮮血が上がる。

地面を染める様に真っ赤なカーペットがじわじわと広がっていく。

人工血液であろうと何であろうと…串刺しされ鮮血を巻き上げる狩人の姿は見る者の目を逸らしたくなる程だった。

 

「私のことなど放っておけば良かったんです。であれば、こんな惨い姿になる事もなかったでしょうに」

 

「だ、まれ…!この、裏切り者が…!」

 

「やれやれ…どいつもこいつも、私の事を裏切り者としか言えないのですかねぇ…」

 

左手が柄を握る。

それは止めを与える瞬間。誰がどう見ても分かる光景と言えた。

 

「…ま、お前ら如きに教える名前と思えば、覚えやすい名前でしょうか」

 

一閃。

狩人の体を容易く両断する赤き横薙ぎ。

鮮血に交えるかのように切っ先に付着した血が弧を描き、泣き別れた上半身が宙を舞う。

鉄血のハイエンドモデルによるハイエンドモデルの破壊。

ワタリと言う元鉄血所属のハイエンドモデルの事情を知らぬアヤメとレイシアからすれば、異常とも言える様な光景。

だが、彼女の口から出たセリフによってワタリというハイエンドモデルが味方であると認識するのは直ぐの事であった。

 

「敵ハイエンドモデルの排除を確認。同時にフェンリルの戦術人形二名の生存を確認。…G13、V.Ⅳ、出てきても構いませんよ」

 

アヤメとレイシアを見下ろしながら、通信越しではあるがワタリは聞き覚えのあるコールサインを口にする。

それと同時に通路の奥からRe:LOADER4とスティールヘイズ・オルトゥスが姿を見せる。

何が何なのかといった表情を浮かべるアヤメとレイシアに、コクピットに座るレイヴンはモニター越しで二人を見つめながら外部スピーカーで声をかける。

 

「任務完了。…帰投しようか」




お久しぶりです。
ちょっち、お助けさせていただきますぞえ。

さぁて…次回はどうすっかな。

ではではノシ
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