人形ノ詩 鴉ノ詩   作:白黒モンブラン

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chapter 00-54 silentline Ⅺ

橙に染まった空がゆっくりと暗く染まり始める。

数時間もすれば夜の帳が下りるだろう。

戦いは終わり、残りは事後処理のみ。誰しもがそう思う中で、指揮車両にいたフィオナの顔は険しかった。

手にした端末。そこに映し出されるは匿名の情報提供であり、内容はこう記載されていた。

 

「…例の指揮官の所在地、汚職の数々にその他諸々。それらに関する情報とは、ね」

 

この匿名による情報提供があったのは、フィオナらがサイレントラインに殴り込みをかけて直ぐの事。

最初こそは半信半疑だったものの、情報の精度が高い事もあって一応信用していた。

 

「…後始末は任せた、といった所かしらね」

 

わざわざ匿名で送ってくる辺りを踏まえて、フィオナは静かにそう呟く。

体よく利用された感じもしなくもないが、元よりあの男をどうにかしなくてはいけないと思っていた所。

この情報を有難く使わせてもらおうと判断し機外へと出ると耳に着けたインカムからスコーピオンの声が届く。

 

『指揮官!指揮官!エア!エアが帰って来たよッ!ねぇ!?聞こえてる!?』

 

「大きな声を出さなくてもちゃんと聞こえてるわ、スコーピオン」

 

子供の様に、年相応のはしゃいだ声を聞かせるスコーピオンにフィオナはそっと微笑む。

まだまだやらなくてはならない事は沢山ある。

だが、今だけは──

 

「直ぐに行くから。少し待ってて」

 

大事な仲間を迎えに行っても問題ない筈だ。

夕暮れ時はまだ続く。だから今は、夜はまだ来なくていい。

辺りが暗くなってしまえば、無事に戻ってきた仲間の顔が見れなくなってしまうから。

 

 

 

サイレントライン居住区画。

第二の仮拠点として機能し始めたこの場所は待機する輸送ヘリや戦車、行き交う人形や職員という先ほどまでの戦闘は打って変わった光景を生み出していた。

戦いに身を投じた体を休める為にその場に座り込む人形がいれば、周囲の警戒に努める人形もいて、そして…

 

「皆、形が違いますね」

 

「だと言うのに規格は全て共通規格。…突き詰めた汎用性というのも恐ろしいものね」

 

「ええ…」

 

静かに佇む複数の巨大兵器の足元に集まり、興味津々と見つめる人形らがいた。

姿、形だけに留まらず武装、ブースター、FCS、ジェネレータといったインナーパーツまでも共通規格。

封鎖機構の兵器には無いものが、ACには確実に存在している。

戦場を選ばない。それ故の突き詰めた汎用性という恐ろしさ。

そう呟いたネゲヴにM82A1は頷きながら肯定した。

 

「そうなると…フェンリルが保有するセラフは一体?」

 

「ACじゃないのは事実ね。ワンオフ機の様な気もするけど…」

 

「それにしてはACに似た部分があるみたいですけど…」

 

「あの光の爆発(アサルトアーマー)ね?617から話は聞いてるわ。単なる偶然、とは言い切れないと言いたいけど、向こうの技術に関して根掘り葉掘り聞くつもりはない。そこら辺は不干渉が一番よ」

 

肩を竦めながらRe:LOADER4の手に乗ってゆっくりと降りてくる彼女の方へと向くネゲヴ。

その手に乗っているのは数か月間、サイレントラインで捕虜として捕まっていた大事な仲間。

特に大きな怪我をしている様子もなく、最後に見た姿と変わらぬ様相にネゲヴはそっと微笑む。

隣に立つM82A1も同様に笑みを浮かべており、そしてスコーピオンは興奮冷めやらぬ様子だった。

Re:LOADER4の手が地面ギリギリまで下ろされるとエアはゆっくりと降り立ち、一言。

 

「只今戻りました」

 

「エアぁっ!!!」

 

「えっ…きゃ!」

 

感極まったのか、今にも泣き出しそうな顔でエアに飛びつくスコーピオン。

自分達を守るために、自らを犠牲にした大事な仲間。

隠ぺいされていたとは言え、助けに行く事すら出来なかったという事実。

不甲斐なさを感じながら、こうして助ける為に戦った。

だからこそ、嬉しい。嬉しくて、嬉しくてたまらないのだ。

 

「よがったよぉ…よがっだぁぁ…」

 

大事な仲間が怪我なく帰ってきてくれた事が堪らなく嬉しいのだ。

ボロボロと大粒の涙を流すスコーピオンを見て、エアは微笑みながら手を彼女の頭に置く。

 

「…助けに来てくれてありがとう、スコーピオン」

 

「うん…!うん…!」

 

流れる涙は止まらない。

けど、その浮かぶ表情は笑み。

自分達がしてきた事は無駄ではなかったという証拠。

スコーピオンに釣られて、つい涙を流してしまう人形らが居る中でコクピットでその様子を見ていたラスティが密かにレイヴンにへと通信を繋ぐ。

 

『微笑ましい光景だな、戦友』

 

『…』

 

『戦友?』

 

レイヴンからの返答がない。

その事に眉を顰めるラスティにチャティが駆るサーカスが寄ってくる。

どうしたのだろうかと視線をサーカスへと向けるとチャティから通信が入る。

 

『ビジターなら最後の仕事に向かった』

 

『最後の仕事…?』

 

首を傾げながら、チャティが口にした『最後の仕事』を言葉にするラスティ。

 

(最後の仕事とは一体…)

 

Re:LOADER4には誰も乗っていない。

こうして動いていたのも、オートでの操縦だろうと彼は判断する。

しかしそうまでしてまで成さなくてはならない仕事とは一体何なのか。

夜の帳が落ちたサイレントラインでラスティは忽然と姿を消した戦友の安否を気にかけるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…突入部隊の生存は確認出来ず。失敗したか…」

 

サイレントラインから程よく離れた場所。

周囲を木々に囲まれたその場所で、迷彩マントに身を包んだ男は火を点けた煙草を咥えながら静かに呟く。

その手には狙撃銃。覗き込んだスコープの先には一体の人形…エアの姿。

その状態が一体どういう意味を指しているかなど言わずとも分かる事であった。

 

「…」

 

咥えた煙草を傍に立てかけた愛用のケースに差し込む。

紫煙は上へ静かに揺れながら真上へと昇っていく。つまり風は吹いていないという証拠。

弾倉を差し込み、槓桿を操作して初弾を装填、引き金に指をかける。

 

「…これも仕事だ。恨むなよ」

 

そんな事を口にする男。

この男もまた、あの指揮官の飼い犬であり、幾度も無く不都合な存在を消してきた。

今回もいつもと変わらない。遠くから撃って、対象を始末する。

普段と変わらない。誰かを消して、また消して、消し続けるだけ。

 

「…ふぅ」

 

息を吐き、そして止める。

男の視界に映る全てが遅くなる。

対象に動く気配はない。今であれば確実に仕留められる。

今までと同じ様に、指をかけた引き金を引こうとした矢先──

 

「ッ…!?」

 

その指が止まった。

全身を襲うナニカ。静寂でありながらも、濃密かつ凄まじいまでの殺気が襲う。

ここまで濃密な殺気だというのに、すぐそこまで接近されるまで気付けなかった。

その事実に男は、思わず笑ってしまう。

 

「…俺も焼きが回ったみてぇだなぁ。ったくよぉ…」

 

「…許しは請わない。恨めよ」

 

「…誰が恨むかよ。寧ろ、ツケを払う時が来たって思ってたところだ…」

 

引き金にかけた指が離れる。

終わりがすぐそこまで来ていると言うのに、男は笑っていた。

そして、彼は静かに呟く。

 

「…一思いにやってくれよ。なぁ────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

独立傭兵(レイヴン)さんよぉ…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜の帳が落ちる。

男の意識が暗闇へと落ちる。

真っ白な雪をキャンパスにして、赤い液体がキャンパスを赤へと染め上げる様に緩やかに広がっていく。

微かに漂う硝煙と落ちる空薬莢。一つの死体と、何者かが歩き去っていく足跡のみがその場に残っていた。




これにてコラボ作戦は終幕でございます。

次回は後日談かつサイレントラインの内部調査へと乗り込みます。
折角なので、新しいパーツを出しますかねぇ。

ではでは次回ノシ















「サイレントラインが陥落したか」

「補給拠点の一つをグリフィン如きに取られたのは屈辱だが…問題ない。我々は戦える」

「…グレートウォールはインターネサインにへと向かった今、グリフィンに勝ち目はない」

「例え、ACとやらが出てきたとしてもな」
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