人形ノ詩 鴉ノ詩   作:白黒モンブラン

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──廃品回収──


chapter 00-55

サイレントライン陥落から一夜明けた。

残党狩り、救出した人形と新米指揮官の治療及び護送、社長への報告等は滞りなく完了。

残されたのはサイレントライン内部調査だけであった。

以前の再調査はサイレントラインに展開する敵の再調査であったが、今回は鉄血の動向や未確認の戦力を把握する為の調査という側面が大きい。

とは言え、そう言った仕事はフィオナ指揮官率いる人形部隊の仕事。

AC乗りである自分たちの出る幕など無いと思われていたが、フィオナから、とある依頼を受ける事になった。

 

「回収依頼?」

 

「ええ。とは言ってもこれは依頼と言えるかどうか怪しい所。使えそうなACパーツがあれば各自で回収してという話よ」

 

「使えそうなパーツがあるのであれば、それはそれで助かるが…あると思うか?」

 

鉄血が保有していた大規模補給拠点と言えど、そう易々とACパーツが見つかるとは思えない。

現に敵が戦力として導入したHC機体やLC高機動型は拾い物なのだから。

 

「それは分からない。このまま暇を持て余すのは嫌でしょ?」

 

「まぁ…その通りだな」

 

簡易テントの下で、端末を手にしながら椅子に腰かけるフィオナの視線が自分の後ろへと向けられる。

隣に立っていたナイルが呆れた様にため息を付きながら後ろへと振り向き、それに釣られて振り向けば、そこには思わず気が抜けそうな光景が広がっていた。

 

「おら!フルハウスだ!」

 

小さな机に集まる男二人。

その上にはトランプが散らばっている。

そしてヴォルタとナイルの会話から分かる通り、ポーカーに興じていた。

 

伊達男(ラスティ)、てめぇはどうだ?」

 

「悪いな、ロイヤルストレートフラッシュだ」

 

「はぁっ!?」

 

そしてラスティがロイヤルストレートフラッシュで全てをかっさらった。

金をかけている様ではないがポーカーをしている辺り、暇を持て余しているのが良く分かる。

調査部隊が準備している傍らで、自分達がこれでは周りも良い気もしないだろう。

ポーカーで暇を潰すくらいなら、回収依頼に同行させるべきだ。

この光景を見て、地獄の底からミシガンが蘇りレッドガン流教育指導(鉄拳制裁)をしに来る前にだ。

 

「G4!V.Ⅳ!俺の目の前でポーカーとは良い度胸だ。ミシガンだったら今頃、お前たちを殴り飛ばし地上から5メートル程、打ち上げていただろう。鳥になる機会を逃して残念だろうが、心配はいらん。お前たちには今から廃品回収の任についてもらうぞ」

 

激を飛ばすナイルの傍らで、ふと気になった事を問う。

 

「…ミシガン総長の拳の威力は人間を五メートルも打ち上げられる事が出来るのか」

 

「ばらつきはあるがな。因みに最高記録は10メートルだ」

 

「…誰が殴り飛ばされた?」

 

「イグアス」

 

「ああ…」

 

反骨心の塊だからか、そういう面はあるとは分かってはいたが…。

殴り飛ばされて10メートルも飛んでおきながら、それでも尚ミシガン総長に突っかかる点は純粋に尊敬できるかもしれない。

それはそうとミシガン総長が超人の枠に収まる気配がしないのは何故だろうか。

 

「どうせなら617も連れて行こう。あの子も暇をしている所だ」

 

「ではAC乗り全員で遠足だな。お前の連れ(エア)も呼んで来い、G13」

 

「了解した」

 

ナイルが呼称した廃品回収にAC乗りが全員招集され、調査人形部隊が行動を開始したと同時にこちらも動き出す。

エアを除く全員がACでサイレントライン内部に乗り込むという今まで見なかった光景が繰り広げられる中、チャティとエアのハッキングの元、内部に存在しているであろう物資保管庫へと機体を向けた。

揺れるコクピット。徒歩で移動するAC。元々敵の拠点だった為か、誰一人とて口を開かない。

そう思われた矢先で、自身の隣で歩いていたAC『TENDERFOOT』に乗っている617から通信が飛んできた。

 

『ここが堕ちた。…この後、どうなるのかしらね』

 

『ここが堕ちたとしても、鉄血が衰えるとは思えん』

 

流石は参謀というだけあって、ナイルの言及は納得がいくものを感じた。

それには617も同じ事を思っていたのか、軽くため息を付いた後に口を開いた。

 

『結局何も変わらないという事か。…今更だけど、厄介な世界に流れ着いてしまったわ』

 

『そうだな』

 

再び沈黙が訪れる。

それが十分程度続いただろうか、例の物資保管庫へと到達。

流石に全員はACで保管庫内部へと乗り込む訳にはいかないので、外をチャティに任せる事にして保管庫の扉の前に立つ。

 

「…保管庫を開放されないように権限を上級認証権限へと移行していますね。外部からのハッキングで習得されない為にも二重、三重…いえ、それ以上と言える程に複雑化しているみたいです」

 

「やれるか、エア?」

 

「お任せください。この程度は大した問題にはなりません」

 

あのハイエンドモデルによって複雑化した上級権限を前にして大した問題にはならないと言える辺り、エアらしいとも言える。

コンソールパネルを操作しながら、エアが持つ力でハッキング開始。

凄まじい速度でキーボードパネルを打ちながら、同時並行で仕掛けられた防壁を突破していく。

少しはかかるだろうか。そんな事を思っていた矢先──

 

「上級権限を取得。認証開始…認証完了。隔壁解放します」

 

「…」

 

数十秒も経たない内にやってのけたエアに言葉を失う。

そんな事を他所に隔壁が解放。

人間の数倍はあるであろう巨大な壁がゆっくりと、重々しく横へと動いていく。

やがて完全に開き切った保管庫に灯りが灯り、そしてそこにあったものが自分達を迎えた。

 

「これは…」

 

「…予想外というべきか。まさか鉄血は、これらも回収していたのか」

 

隣に立っていたラスティもそこにあったものを信じられないという表情をしていた。

無理もないと言える。

あるとしても部品程度ぐらいにしか思っていなかった。だがそこにあったのは…

 

「こりゃあ…全部ACのパーツか?」

 

「そう、みたい…。弾薬まで置いてあるわ…」

 

ヴォルタと617がそう口にしたように、サイレントラインの保管庫には所狭しと並んだACパーツと弾薬の姿があった。

封鎖機構の兵器を回収していただけではなく、ACのパーツまで回収していたのか。

しかし何故使用しなかったのかが良く分からないだが…。

 

「…ふむ」

 

「どうしたよ、参謀」

 

「…如何やら綺麗な状態で残されていた訳ではないらしい」

 

ナイルが指さす方向。

そこにあったのは、ベイラム製の速射型リニアライフル『Curtis』。

向こうではよく使っていた装備だが、よく見れば銃身は酷く歪んでおり錆が酷い。

成る程。美品ではなく…ジャンク品に破損品か。

 

「保管庫にしては適当に拾ったものを此処に集めただけにしか思えんな。ACを組み上げるにしても、ジャンク品では大して期待出来んと踏んだか」

 

「だから封鎖機構の兵器を多用してたって訳か?性能じゃあ向こうが上だが…」

 

「或いは整備するだけの設備がなかったか、だ」

 

「…ああ、なるほどな」

 

納得のいく話だ。

サイレントラインは鉄血の大規模補給拠点であり、その用途は人形の為にある。

ACを想定したものではないのは当然と言えば当然の話だ。

 

「む…?」

 

納得しながら周囲を見渡していると、ふと向こう側に繋がる入り口を見つける。

何があるのだろうかと気になり、入り口へと歩み寄りそのまま内部へと足を進める。

幸いにも照明が起動している。さて、何が置いてあるのだろうか。

少しだけワクワクするような感情を胸に、そこに置いてあったものを見つける。

そして目を見開いた。

 

「…どうやら鉄血は廃品回収だけを行っていた訳じゃなかったらしいな」

 

「戦友、何か見つけたのかい?」

 

「ああ。とびきり良いモノだ」

 

「…!これは」

 

シュナイダー製の軽量かつ機動力に優れたフレームは「NACHTREIHER」と言われ、ドイツ語で鳥類のゴイサギを意味する。

その形は特徴的で、何よりラスティにとっては忘れる事の出来ないもの。

口輪をはめた狼だった男は、幾度なくこの機体に乗って助けに来てくれた。

 

「オルトゥスも暫く整備に出していないんだろう?」

 

「それはそうだが…」

 

「なら予備に持っておけよ、戦友(ラスティ)。…こいつに乗っているお前とまた共闘したいんだ」

 

道は違ってしまったが、また彼と共に駆け抜けたいという思いは心の奥底に眠っている。

あの時の様に戻れと言いたい訳じゃない。

この「NACHTREIHER」フレームを駆る彼と機体を並べたいという思いは別世界を渡ったとしても残り続けていた。




サイレントライン陥落から一日経ったAC乗りの場面。
「NACHTREIHER」を出したのは私の趣味だ。文句は言わせん。
という事で次回も廃品回収編。
お次はどんなパーツを出すかなぁ…。
















「ヴォルタから聞いたぞ、G13。ミシガンを討ち、レッドガンを壊滅に追いやったらしいな」

「…恨んでも良いぞ、G2」

「そうしたい所だが…戦場で起きた事をどうこう言うつもりはない。戦場がそういうものであると良く知っている」

「……あの人(ミシガン)は今頃、何しているんだろうか」

「…さぁな。もしかしたら俺達みたいに何処かの世界で、何かやっているかも知れんな」

「…教師とか?」

「ふっ…。あのミシガンが教師か。案外あっているかも知れんな…」

「…きっとこの世界じゃ有り得ない程に透き通った世界で教師をやっているかもな」
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