人形ノ詩 鴉ノ詩   作:白黒モンブラン

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──空を求め、飛ぶことを求めた──

──それが狂気に成り代わろうとも──

──それは、空力を求めた──


chapter 00-56

 

「凄い数…これだけの数を何処から回収したというの?」

 

保管庫に置かれていたACパーツ群を見渡しながら、疑問を口にする617。

流れ着いてしまったと言えど、近場でこれだけの数を転がっていたとは考えられない。

617が駆るACをジャンクヤードで発見した様に、何処かでこれらの大量の武器を見つけて回収していたと考えられるだろう。

だが、それには疑問が残る。

 

「これだけの数…一度じゃ無理よ。グリフィンは見逃していたというの…?」

 

「一度に回収したのであれば、それなりの規模の部隊が行動していた事になる。鉄血の行動には随時目を光らせているグリフィンが幾らサイレントラインの攻略に時間を割いているとはいえ、そのような事を見逃すとは思えんが」

 

「上層部が秘匿していたという線は?」

 

「それは益々有り得んな。実益しか能がない連中と言えど、そこまで阿呆ではあるまい。それにその情報を秘匿していた所で何の意味もない。返って自分の命を脅かす状況を作ってしまうだけだからな。…で、あればやはり疑問が残るか」

 

「一体、どうやってこれだけの数を…でしょ?」

 

617の問いにナイルは頷いて肯定を示した。

一度では無理と言える程の数、これだけの数を運び出すだけの動員できる人形もそれなりの数がいる。

とは言え、グリフィンがそれを見逃す訳がない。

では一体、どうやって…?

そこにサイレントラインの内部にあるデータバンクの抜き取りを保管庫内にあった端末で行っていたエアが口を開いた。

 

「どうやら鉄血はこのサイレントラインを起点に各方々への遠征を小規模人数による部隊で行っていたらしいです。これらはその先で発見し、そして回収してきたとデータには残っています。部隊の行先も様々であり、中にはグリフィンへのけん制をも想定したダミー部隊も展開。回収を悟らない様に徹底していたみたいです」

 

「だがその先々でACの装備が見つかる筈があるまい。これだけの数を回収したとなれば、その先々で発見した事になるが」

 

「すみません、そこまで私にも…。ただ鉄血がこれらのパーツを回収し始めたには、これを発見し回収したのが切っ掛けみたいです」

 

「切っ掛け?」

 

首を傾げるナイルにエアははい、と頷き抜き取ったデータを手にしていた端末を移し替えて、それをナイルに見せた。

画面に映るソレはナイルにとっても、隣に立つ617にとっても、そしてエアにとっても見慣れたものだった。

 

「AC…それも大豊が外部アーキテクトに委託してアセンブルさせた、テスターACとはな」

 

「HCやLC機体を回収するよりも前、サイレントラインから離れた地点で発見されたらしく鉄血はそれを回収。ACという存在をしったのもそこからかと」

 

「パイロットは?」

 

「コクピットには誰も乗っておらず、既に無人だったらしいです」

 

「そうか…」

 

このACを見たからか、ナイルの様子が少し違う。

それを感じ取ったエアは思わず尋ねる。

 

「このAC、いえ…パイロットとはお知り合いで?」

 

「顔は知らん。ただ、そのテスターACをレッドガンに預ける輸送任務を大豊の若い訓練生がアサインしたというのを聞いている。だがその輸送任務は失敗に終わった」

 

「…」

 

「…どこぞの独立傭兵がアーキバスからの依頼を受け、テスターACを襲撃。善戦虚しく機体は破壊され、パイロットも死亡が確認された。…後の調査でテスターACの残骸に残されたデータに訓練生の今際の言葉が残っていた。その言葉を今でも覚えている」

 

──ああ…俺も…──

 

──コールサインが…欲しかったなぁ…──

 

何かが違えば、その訓練生とやらもコールサインが貸与されていたかもしれないが、それは今となっては過ぎた事でしかない。

加えて戦場は常に非情なのだ。誰かが殺し殺される世界。殺されたら運が悪かったとしか思うほかない。

一個人の感傷など不要なのだ。

だが彼が精鋭部隊『レッドガン』ナンバーツーと言えど、かつて優れた軍警と言えど──

 

「…見てみたかったとは思うがな。そいつがレッドガンとしてやっている姿を」

 

人間と言う部分はどうしても切り離す事は出来る筈がなかった。

感傷に浸れるからこそ人間なのだ。そうではなくては只の機械と同じだ。

 

「…どこぞの独立傭兵って言ったけど、それってレイヴンの事よね」

 

「…ああ、そうだ。良く分かったな」

 

「独立傭兵って聞けば、ね」

 

沈黙が訪れる。

流石に問うべきではなかったかと反省しつつエアは別の話題へと切り替えようとする。

それは617も同じで、エアよりも早く別の話題へと切り替えた。

 

「そう言えばヴォルタは?」

 

「奴なら別の所へと行かせた。俺の目の前でポーカーでやっていた罰だ」

 

「…陥落したと言えど、ここは鉄血の拠点なのよ?」

 

「安心しろ。別の所とは言ってもこの保管庫内での話だ。…噂をすれば戻って来たみたいだな」

 

厚底のブーツが床に当たる音を響かせながら、別の部屋からヴォルタが戻ってくる。

世界が違ったとしても、指示に従っている辺りは実に彼らしいとも言える。

 

「どうだ、ヴォルタ。使えそうなものはあったか?」

 

「あるにはあったが一部って言った所だぜ、参謀。残りはぶっ壊れてたり、機関部がへそ曲がりしてるもんばっかりだ」

 

「そうか。その一部はどんなものだ」

 

うち(ベイラム)量産品(MELANDER)の頭と足、BAWS製の腕にブースター、バーストライフルとバーストマシンガン。それと大豊製のクソ親父のお気に入り(DF-GA-08 HU-BEN)に、他にも色々あったぜ。後は……あー…あれはどうなんだ…?」

 

後ろ髪を掻きながら、言葉を濁すヴォルタ。

そんな彼の様子に、ナイルは眉を顰めるもすぐにその理由が明らかになる。

 

「…シュナイダー製の四脚型。それもフレーム一式」

 

「シュナイダー製の四脚と言えば…まさか、あれか…?」

 

「ああ、そのまさかだ…」

 

シュナイダー製の四脚というものを知らない617は首を傾げる。

シュナイダーの機体特性がどういったかは何となく知っているものの、極端な作りをしていたであろうかと彼女は思った。

 

「はぁ…空力特化の紙装甲技術試験機(LAMMERGEIER)ですか」

 

「え…何それ。技術試験機?シュナイダーってそんなのを売りに出してたの?」

 

「まぁ、見てもらった方が早いかもですね」

 

「え、ええ…」

 

困惑する617に対してエアは先ほどまでヴォルタが居たであろう部屋へと向かって歩き出す。

その後をついていくように617も歩き出し、二人はその部屋へと向かった。

そこに鎮座する一機のAC。線を描く様な細身の四脚ACが、シュナイダー製の四脚だと617は察する。

一方で彼女はこの機体の装甲の少なさに違和感を覚えつつも、コア部分へと視線を向けた時、その目を見開いた。

 

「…ちょっと待って。何でコクピットブロックが剥き出しなの?」

 

「加えて言うのであれば、頭部はセンサーに整流板を取り付けただけのもの。腕部は計画段階では脚部前肢を前腕…つまり両翼とするプランも浮上していたらしいですがアーキバス本社により却下され設計変更された経緯があるとか」

 

「それはそうでしょうが…!」

 

「脚部に至っては、その独特な変形は空力だけに焦点を当てたものらしいです」

 

「…シュナイダーって、狂気の集団だったの?」

 

空力を求めるが故に人命を捨て、装甲を捨て、全てを捨て去ったと言っていい存在。

ある意味、シュナイダー社が見せた狂気の産物。

それが、LAMMERGEIERである。

 

「因みにレイヴンはこの機体を割かし気にいっていました」

 

「え…?」

 




色々言ってますが、LAMMERGEIERは好きです。
紙装甲だけど、良いよね…あのフレーム。

さぁて、次回はどうしたものか。ではノシノシ















「頭は半壊状態、腕は動くかどうかすら怪しい。FCSとジェネレータ、ブースターはまとも動いているが」

「頭と腕は取り換えだな、ラスティ。キサラギに頼んで換装してもらおう」

「それは名案だが…予備があると思うかね?」

「幾ら破損品ばかりと言えど、ここには腐るほどのパーツがある。使えるパーツも必ずあるさ」
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