「こいつは…シュナイダーの」
「まさか、これが見つかるとはな。見た感じ、状態も良さそうだが」
ヴォルタ達に呼ばれ、シュナイダー製の四脚『LAMMERGEIER』を見てレイヴンは驚き、ラスティは冷静に機体の状態を観察していた。
現在進行形で617らの手で状態の確認をしているが、ラスティの予想とは大きく反する結果がコクピットに居る617から知らされた。
『装甲は問題ないけど、問題は中身よ。頭部以外、殆ど機能が落ちてる。コアの出力補正もガタ落ち、腕は内部パーツが悲鳴上げているのかさっきからアラートが鳴りっぱなしよ。脚に関しては変形すら出来ない位に中身が相当痛んでるわ』
「見つけたNACHTREIHERフレームと同じように、何処かが破損している状態か…FCSとジェネレータ、ブースターはどうだ?」
『使ってるのはVP-20SにBUERZEL/21D。FCSは…珍しいわ、アーキバス系列の企業なのにファーロンのFCS-G2/P05を使ってる。状態は良好、悲鳴を上げてないのが不思議な位だわ』
「ふむ…」
617から伝えられた情報にレイヴンは頷きながらもどうしたものかと言った顔を浮かべた。
それを隣で見ていたラスティは軽く笑みを浮かべながら、助け舟を出すことにした。
「フレーム一式を見つかっただけでも良しとしようじゃないか、戦友。どうするかは今後考えるとしよう」
「そうだな…。今は見つかっただけでもマシか」
ACというものが存在しない世界。
例え破損していようが見つかっただけでも幸運とも言えるのも事実であり、ラスティが言っている事もあながち間違ってはいなかった。
「…だが、容易に想像出来るな。状態に良いモノだけでアセンブルしたACは中々面白いモノになるぞ」
「…それは互換性の高さ故の事。姿形は目をつぶるしかないさ」
互換性の高さ、突き詰めた汎用性を有した兵器。
それがACであり、構成次第ではレイヴンが口にしたように面白い姿をしたACが出来上がる事が無い訳はない。
気にしないものはいるだろう。それが自身が見出した最適解であるのだから。
だが、レイヴンは覚えていた。ネストと呼ばれるあの場所で一度だけ遭遇したACの構成を。
「頭と腕、足をNACHTREIHERで揃えておきながらコアを大豊のTIAN-QIANGを乗せたACが居たと言ったら…どう思う、ラスティ」
「……」
返答がない。だがラスティは目を丸くしていた。
予想通りだと思うレイヴンに対して少々引き攣った笑みを浮かべつつラスティが口を開く。
「そ、それは随分と…笑えるアセンブルだな、戦友」
「成る程。確かにアレは"笑える"アセンブルだったな。…ふむ、カーラの言う『笑える』とはこういう事なのだろうか…今度試してみるとしよう」
「戦友、それは駄目だ。いくら君であろうと、私は止めなくてはならない。…そうなれば、私は君と話をしなくてはならない…」
「顔と目が怖いぞ、ラスティ。怖いのはどちらかだけにしろ」
ラスティらしからぬ表情に軽く冷や汗をかくレイヴン。
それ程までにその表情はラスティらしくなかったのだろう。
取り敢えず今は止めておこうと思いながらも…
(…ラスティが見てない所で試すか)
見られていなかったら問題ない。
機を見て『笑える』ACを組もうと意気込むレイヴン。
「エア、戦友がやらかしそうになったら君が止めてくれ」
「お任せ下さい」
(…!?)
エアによる監視の目が入ってしまう事となり、笑えるAC造りが当分先になってしまうのであった。
『歓談中の所、済まない。ビジター、フィオナから通信が入っている』
「分かった。繋いでくれ」
『了解した。…通信接続開始、モニタリングシステム展開…フィオナ・A・レイナドとの通信成功。ビジター、何時でも行ける」
「ありがとう」
格納庫の外で待機していたチャティを経由してレイヴンは手にしていた端末でフィオナとの通信を開く。
映し出された画面の向こう側では人形達と職員たちに書類を渡し仕事をこなしているフィオナの姿がそこにあった。
レイヴンが通信出た事に気付いたのか、すぐさま顔をそちらへと向けフィオナは口を開いた。
『廃品回収の状況はどう、レイヴン』
「格納庫らしき場所に大量のACパーツを見つけた。どうやら鉄血もまたACとやらに目を付けていたらしい」
『良い情報とは言えないわね。それでパーツの状態は?』
「パーツの九割が破損或いはジャンク品と化していた。この施設にパーツを直す設備がない辺り、鉄血はACの再現を断念して封鎖機構の兵器を運用していたと見ていい」
『そう…。取り敢えずパーツの修理はキサラギ社と話してみるわ。見つかったら是非自分の所で修理させてほしいって言ってたから』
「仕事熱心だな、あそこは」
『そういう職種の人達だからというのもあるわ。それにACの整備を請け負ってくれているのだから、向こうの要望には応えて上げないと』
確かにな、と頷くレイヴン。
その直後、彼の表情がスッと変わった。それを見たフィオナの表情も変わる。
言葉にせずとも分かっていた。
ここから本題であるという事を。
「何かあったな?」
『その通りよ。…つい先ほど、あなた達と同じようにサイレントラインの内部調査へと出ていた部隊から、妙な報告が上がったのよ』
「内容は?」
『サイレントライン地下にデータ上には存在しない空間有り。その規模はAC数機分入る程とされ、外部につながる大型線路が確認できた、と』
「…物質輸送の線路という点は?」
鉄血にとってサイレントラインは大規模補給拠点である。
ともすれば補給物資を何処からか調達する必要があるのは明白。
データ上になかったとはいえ、物資輸送の為に使われた路線と言う考えも間違いではない。
だがレイヴンの問いに対してフィオナは首を横に振り、その理由を告げた。
『それも考慮したけど、向こうからの報告だと鉄血が運用している既存線路ではないと判断しているみたい』
「その理由は?」
『軌間が人形の数十人分と言えば分かる?』
「…成る程な。そこまで来るとルビコンにあったものか、或いはそれに類似したものが鉄血側に流れ着いていたか」
『ええ。お宝探しの所、申し訳ないけど一旦それは切り上げてレイヴンはチャティと一緒に例の地下空間への調査をお願いしたい。現地にはHGの戦術人形を二人待機させているから一緒に調査を行ってくれると嬉しいわ』
「了解した。念のためにエアを連れていくが問題ないな?」
『問題ないわ。ナイルさんらには此方から説明しておくから、貴方は現地に向かって』
「分かった」
通信を切り、端末を羽織ったジャケットに収めるレイヴン。
そこに先ほどの通信を聞いていたラスティが歩み寄ってくる。
「後は此方に任せてもらおう、戦友。君はそちらに向かってくれ」
「ああ。…色々と済まないな、ラスティ」
「構わないさ。いつか借りは返してくれると嬉しいがね」
「借りたものは返さない…そんな独立傭兵の様にはなりたくないからな。早い内に返せる様に努力しよう」
──どうして分からない!?──
──借りた金をどうして返さなければならない!?──
いつかの事。
何処かで出会った
ナイル達はフィオナの指示の元、一度拠点に戻る事となり調査へと向かう事になったレイヴン、エア、チャティは例の空間で待機する二人の戦術人形と合流すべく現地へと向かうのであった。