人形ノ詩 鴉ノ詩   作:白黒モンブラン

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──疑問、巨壁、戦闘狂──


chapter 00-58

 

「こいつは相当規模だな」

 

フィオナから聞かされたサイレントラインの地下空間の話を聞きエアとチャティを連れて訪れた訳ではあるが、前情報もあって身構える様な事はなかったものの迎えた現場の規模は自身の想像を遥かに上回る程だった。

薄暗い内部。その場から上を見上げればその先は闇が覆っている。

光すらも届かない程の高さ。それはこの地下空間の規模を静かに表していた。

 

「サイレントラインの地下にこれほどの空間が…これはまるで…」

 

「鉄血が封鎖機構の真似事をしているとはな。余程秘匿しておきたいものがあったとみるが」

 

「しかし…鉄血がこのサイレントラインを運用していた割にはこの地下空間の造りに疑問を覚えます。鉄血らしくないというのでしょうか…」

 

確かにその通りと言えた。

ここに到達した時、いの一番に感じたのは違和感であり、それがこの地下空間の造りに対するものであると感じたのは直ぐの事でもあった。

エアの言う鉄血らしくないというのも納得できる。

 

『ビジター、俺の方でもこの地下空間の情報を集めているが一つだけ分かった事がある』

 

「聞かせてくれ」

 

『ここに関する情報は全て紙媒体による情報管理を行うという職員に向けられたであろうメールがデータ上に残っていた。…ここの事を相当秘匿したかったのだろう』

 

「紙媒体での情報管理、余程ここの事を隠したかったらしい。…ますます鉄血らしくない」

 

この地下空間に加えて、このサイレントラインという施設。

最初こそは鉄血が建造したものだと思っていたが…。

 

「サイレントラインという巨大な補給拠点、その地下に存在している謎の空間、そして職員に向けられたであろうメール…。今更ながら思うが、このサイレントラインはただの補給拠点とは思えんな」

 

「まさかとは思いたいですが…私もそう思えてきました。補給拠点に偽装した何かというべきでしょうか」

 

「…ああ。ここまでとなれば、そう考えるのが妥当だろうな」

 

謎が謎を呼ぶとはこういう事なのだろうか。

その謎を明かす為にエアやチャティが呼ばれたのだろうが、紙媒体での情報管理を行っていたとなれば二人の能力は発揮しずらい。

 

「さて…どう調べたものか」

 

「取り敢えず、この地下空間で待機している人形との合流を目指しましょう、レイヴン。幸い連絡も取れましたから、合流も難なく行えるかと」

 

「早いな。それも人形の能力か?」

 

その問いにエアは指でその頭をトントンと叩きながら微笑む。

 

「ええ、その通りです。これまで以上に貴方を支える事が出来る…期待していて下さい、レイヴン」

 

「…期待もなにも」

 

あの時から。

出会ったあの時から、彼女は支え続けてきてくれた。

考えの相違から生まれたあの別れまでの、長い間。

死が自分と彼女を別れさせるものになってしまったが──

 

「…今も十分支えてもらっているさ」

 

この世界で、彼女との再会が。

流れ着いてしまった自分にとって最早掛け替えのない程に心の支えになっているのを知るのは、自分だけで良いだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻。

偶々偵察に出ていたある基地の人形部隊にとって、それは本当に偶然だった。

 

「な、なんなのあれ…」

 

「か、壁が…移動している…?」

 

土煙を巻き上げ、地面を揺らすような轟音が高らかに響き渡る。

見上げなければならない程の高さを誇るソレは正しく壁の様で。

何より人形などちっぽけな存在と思わせるほどに巨大だった。

そんな巨大な壁でとも言えるソレは、自身の足元付近で群がる人形部隊を見向きもせずに只々ゆっくりと進軍していく。

突然の事に呆けてしまった人形部隊が巨大な壁…またの名を『グレートウォール』に対しての報告を指揮官にへと送ったのはグレートウォールが向こう側で消えた後の事であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グレートウォールの進軍と同じ時。

基地とも言えるそこは何者かによって煌々と燃え上がる炎と黒煙に包まれていた。

散乱したコンテナに凭れ掛かる様にして沈黙する残骸から発せられる炎が誰も寄せ付けないと言わんばかりに激しさを増していく。

燃え盛る炎に残骸の、僅かに装甲とも思える部分が黒く染まるそんな様を前に10メートルはあるであろう巨大な人型兵器が佇んでいた。

暗い青で彩られた装甲。黄緑に輝くモノアイを通して、コクピットに座る彼にへとその景色を映し出す。

 

「動けよ」

 

炎に包まれた残骸を前に、その者は淡々と、そしてつまらないといった様子で言い放つ。

一度死した身。気付けば知らない世界での目覚めて二度目の人生を歩む事になった。

それでも尚、それを駆る事に、戦う事が冷める筈もない。

だからこそ、この程度で動かなくなってしまう軍の兵器は、この者にとっては興醒めでしかない。

 

「面白いのはこれからだろう」

 

──退屈させてくれるなよ──

 

あの時、楽しませてくれた()が居れば。

こんな風に興醒めする事も、退屈する事もないだろうに。

胸の内で呟いた台詞にはそんな感情が介在していた。




遅くなり申し訳ございません。
仕事で時間が取れなくて…。

今回はだいぶ短めでございますが、そろそろ動き出すかな。

さぁて、お次はどういう感じにするかねぇ

ではではノシ

※こちらの誤操作でSideStory1を削除してしまい、バックアップを取っていなかったので、一旦「Side Stories」そのものを削除致します。
新たに加筆及び修正したものを、何処かで投稿します。
何卒ご理解の程お願い致します。
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