人形ノ詩 鴉ノ詩   作:白黒モンブラン

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chapter 00-62

上層部の連中が乗って来たヘリでサイレントラインから去っていくのをレイヴンは機体のカメラを通して見つめていた。

居られるだけで不愉快だったので理由も聞かず追い出した彼だが、その実のところ上層部の連中が何故此処に訪れたのかは僅かに気になってはいた。

チャティ辺りに探らせてみるかと思案するレイヴン。

そこにラスティの駆るスティールヘイズ・オルトゥスがレイヴンの機体に歩み寄った。

 

『大方、此処での調査を中止して自分たちに全て任せる様に脅しに来たといったところだろう。その脅しついでに私達をフィオナから引き離す為に勧誘と言った所だな、戦友』

 

「アレだけで良く分かったな、ラスティ」

 

『なに、上層部の連中の考えは単純だから手に取る様に分かるさ。アーキバスに居た時はこれの倍は酷かったが』

 

「あれ以上に酷いのが居たと言うのか。…今だけはあのいけ好かない男(V.Ⅱ スネイル)に同情してやるか」

 

アレだけでも不愉快だというのに、アーキバスの上層部の連中はこれ以上に酷い。

今さながらであるが、企業所属でなくて良かったと思うレイヴン。

 

『それよりもだ、先ほどの話は覚えているか?戦友』

 

「フィオナが言っていた…鉄血が出したであろうあの巨大兵器についてか?」

 

『ああ』

 

上層部の連中に出ていくように脅し、連中がトボトボが去っていく中で行われた情報共有。

フィオナの口から語られた内容はレイヴンが口にした巨大兵器についてに関する事であった。

突如として出現したその巨大兵器は見上げなければならない程に巨大であり、戦術人形など足元に群がるナニカでしかとないと思える程に巨大。

発見当時の報告では移動速度こそは遅いが、ゆっくりと進む姿はまるで『動く壁』の様であった。

戦術人形では到底太刀打ちできない兵器の出現に基づき、通常戦力では対応できない事もあってフィオナに雇われているAC乗り…つまりそれらを駆るレイヴンらにグリフィンからの協力申請が出ているという内容であった。

 

「巨大兵器、か……アイスワームを思い出すな」

 

『あれほど厄介ではないと思いたいな。…厄介ではあるが、度合いはアイスワームの上か』

 

「あの時は対応できる手段があったから、どうにかなった。この世界においては…どうだろうな」

 

IA-05 アイスワーム。バートラム旧宇宙港に現れた氷原の化け物であり、ACなど只の蚤と思えるほどの巨大兵器。

芋虫を彷彿とさせるソレは只々大きく、そして厄介な存在であった。

プライマリシールドとセカンダリシールドの二枚に連なる堅牢な防壁は如何なる攻撃を通さず、体側も強固な装甲で覆われている。

その当時はアーキバスが提供したスタンニードルランチャーによる顔部の攻撃及びRaD謹製『オーバードレールキャノン』、そして一射も外すことなく的確な狙撃を見せたラスティによってどうにかなった。

流石にアイスワームの様な特殊防壁は存在しないと思われるも、やはり厄介には変わりないのは事実である。

 

『例の巨大兵器は現在進行停止している。これを幸いと見るべきなのだろうが…さて、それを破壊出来るまでの準備が出来るかどうか』

 

「情報もこれだけでは足りん。そこもどうにかしないと不味いか」

 

『一難去ってまた一難…私たちはそういう星の元に生まれてきたのだろうか』

 

「今更何を…ルビコンでそういうのは散々体験してきただろう」

 

『そうだな』

 

互いに顔も見えてもいないと言うのに、奇しくも二人は釣られるように僅かに口角を吊り上げた。

とんでもなく遠い場所に来てしまったと言うのに、やることはルビコンに居た時と変わらない。

そしてこれだけは、はっきりしている。

レットガンの総長(G1 ミシガン)風に言うのであれば──

 

「愉快なお祭り騒ぎの始まりだ、と言った所か」

 

『お祭りか…射的の屋台があると嬉しいのだがね』

 

「お祭りなんだ、それぐらいはあるだろう」

 

そう答えながらコクピットに備えられたコンソールパネルに映し出された文面を見つめるレイヴン

今回の一件にキサラギ社も協力を惜しまないといったものが一件。

そしてそれに続くようにしてキサラギ社からレイヴン個人に宛てたであろう依頼が一件来ていた。

 

「巨大兵器の対抗策として、鉄血が有する砲台基地への襲撃及び占拠とは……何でしょうか、この様な流れを何処かで経験した気がするのですが。主にRaDからの依頼で」

 

「諦めろ、エア。あの屑で救いようの無い正直者(オーネスト・ブルートゥ)は忘れるようとしても忘れられんぞ」

 

「…言わないで下さい。あまり思い出したくないんです」

 

「……俺もだ」

 

余りにも印象が強すぎたのか。

ルビコンで出会った男は例えルビコンではなく、ルビコンすらない世界でも覚えている者には覚えられていた。

ねっとりと、背筋が凍る様な声。

死んだにも関わらず、地獄の底でステップを踏みながら踊るその男はたった一度にも関わらず、レイヴンとエアの頭の中には確実に存在していた。

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