夕暮れ時の空の下を、二機のACが飛翔する。
片方はそのオレンジ色の炎を激しく吐き出しながら揺らめかせ、片方はその青い炎を激しく吐き出しながら鋭く迸らせていた。
その姿は、その光景はあの時を再現しているかのようで。
そして更なる再現を演出するかのように両機は肩部の
放たれたそれらはまるで広がる翼を思わせる様な軌道を描きながらRe:LOADER4とナイトフォールへと突撃していく。
『……』
「……」
迫りくるそれを前に、両機ともに避ける素振りを見せない。
当然ミサイルの着弾はACS負荷の蓄積にはなる。普通であれば回避行動を行うのが普通だろう。
だが両機は只々真っ直ぐと、真正面からミサイルの雨を受けた。
広がる爆炎と黒煙。ほんの僅かな停止に成り──
『…!』
「…!」
──得る訳がなかった。
広がった爆炎から僅かに傷付いた巨体がそれぞれの炎を吹かして飛び出して迫る。
そして更に迫る。互いの距離が更に、そして更に縮まっていく。
距離は150メートルを切った。それでも両機に動きはない。
このまま正面衝突を選ぶのか。或いはそれぞれが左腕に装備した近接装備を利用するのか。
どちらが先に、どの手段で動くのかが分からない。
動きがない戦場を遠くからその様子を戦術人形らは固唾を呑んで見守る。
距離が100メートルを切ろうかとしている。そして──
『…!』
ナイトフォールが動いた。
愚直にも正面から向かってくる。であれば、それをまたとないチャンスでしかない。
アサルトブースト解除と同時に左腕に装備したパイルバンカー『PB-033M ASHMEAD』を起動、左腕が引かれると機体は構えに入った。
唸りを上げる音を得物から響かせながら、ボディブローを放つかのように左腕で迫り来る鴉を騙るそれへと振り上げようとした瞬間──
『…ッ!?』
ナイトフォールがパイルバンカーを放つよりもコンマ一秒早く、Re:LOADER4の蹴りが炸裂した。
アサルトブースト解除後の慣性を乗せた強烈な蹴りに装甲の一部が拉げ、火花が散る。
あいさつ代わりにと放たれた蹴りにナイトフォールはよろめき、パイルバンカーによる一撃は失敗に終わる。
直後、二機の動きが僅かに止まる。とは言え、ほんの僅か程度の停滞。そしてそれは次の一手を考える時間。
「…ッ」
『…』
お互いに操縦桿を傾けてペダルを踏み、ブースターは噴射してそれぞれの方向へと動いて間合いを取る。
超近距離から近中距離。どちらが先にACS負荷限界へ、APをゼロに持っていけるか。
流れが変わったのを指し示すかのように、Re:LOADER4の持つ
そこから始まるは壮絶な撃ち合い。ミサイルと回避を織り交ぜた機動戦闘へと変貌した。
「…」
撃つ、撃つ、撃つ。躱す、躱す、躱す。駆ける、駆ける、駆ける。
銃声と爆発が木霊し、ブースターの炎が激しく灯る中で機体に攻撃が当たる度に振動がコクピットに伝播し、視界に僅かにノイズが走る。
手動と神経接続の双方を駆使して操縦桿を操作し、指にかけたトリガーを引き、ペダルを踏みぬき、ブースターの出力が生み出す急激なGが体に伸し掛かるそんな中で
「やはり…」
──強い──
そして、そう胸の内で呟いた。
あの時もそうであった。封鎖機構と企業の部隊を単機で殲滅する程の実力の持ち主。
それはこの世界に流れ着いた今も衰える事無く健在だった。
中近距離での撃ち合いを広げているものの、Re:LOADER4のACS負荷は現状二割程度。
このまま撃ち合っていれば、とは決して思わない。そんな程度で倒せるような相手でもない。
そもそもにしてC4-621も本物のレイヴンもそんな泥試合をするつもりなどない。
「…ふぅ…」
操縦桿を軽く握り直し、小さく息を吐く621。
ふと、胸の内から声が響いた。
──油断するな、621──
「…!」
もう居ない筈の、大切な人の声が聞こえた気がした。
単なる幻聴だろうか。にしては、それは余りにもはっきりしていた。
いや、幻聴でも過去に聞いた声の再生でも良い。
(ああ、分かっている…ウォルター)
その声に答えるC4-621。彼も、そしてオペレーターを務めているエアも、誰しもが気付かなかった。
鴉の名を持った彼の目が、気づかぬ内に猟犬の目を変わっていた事に。
Re:LOADER4から放たれる圧を機体越しから感じ取ったのか、或いは埒が明かないと判断し直ぐに決着をつけようとしたのかナイトフォールはミサイルを放つと同時にアサルトブーストを起動、強襲形態へと移行。
より一層激しくオレンジ色の炎が噴き出し、ミサイルをクイックブーストで躱しながら距離を取ってライフルを連射するRe:LOADER4へと迫った。
突撃しながらクイックブーストを吹かして機体を左右に揺らし、FCSの狙いをずらす軌道を見せつける。
その軌道にRe:LOADER4の攻撃は全て躱されていき、ナイトフォールは間合いを詰めてくる。
「そう来るなら…!」
間合いを詰めてくるナイトフォールに叫びながら621はフットペダルを壊れるかもしれない勢いで踏み込み、操縦桿を前へと思い切り傾けた。
ナイトフォールと同様にRe:LOADER4もアサルトブーストを起動、突撃開始。
青い炎がブースターから迸り、風を切る。
互いの距離が縮まり、そして間合いが至近距離まで迫った。
またもや蹴るのか、パイルバンカーを使うのか。遠くから見つめていた人形らがそう思った時。
『「ッ!!」』
まるで背後へと回り込むようにRe:LOADER4とナイトフォールがそれぞれの方向へとクイックブーストを吹かした。
すれ違い、一瞬だけ背中合わせになる両機。
ナイトフォールは地面に着地しつつ180度反転し、Re:LOADER4は上へと上昇しながら同じく180度反転。
そしてほぼ同時とも言えるタイミングで両機の右肩部に装備された小型二連装グレネード『SONGBIRD』が動いた。
危険を知らせる警告音がコクピット内で鳴り響くも両者はそれを無視。ターゲットサイトがお互いを捉えた時、夕暮れ時の空の下で『SONGBIRD』が囀る。
上下に備えられた砲身から交互に放たれる二発の砲弾。それと同時に二機共に回避行動に出る。
小型と言えども直撃を受ければACS負荷が蓄積される。それが分かっているからこその行動。
一発目はお互いの狙いを外れ、空を切る。
だが、続けて放たれた二発目がナイトフォールに直撃した。
(…仕掛ける!)
直撃しACSに負荷が蓄積されたのを見て、仕掛けるタイミングと見た621は再びアサルトブーストを起動。
小型三連装双対ミサイルを放って、突撃しながらライフルを連射。
アサルトブースト中かつ、足の止まることない攻撃であればACS負荷の蓄積度合いは僅かに増す。
一気に畳みかける事を選択した621は後退しながらもライフルを連射して迎撃行動を取るナイトフォールへと迫った。
ACSに負荷が僅かに、更に僅かに蓄積されていく。
だがそれを知った事ではないと言わんばかりにRe:LOADER4は突撃していく。
間合いを詰める、そして更に詰めて、流れる様に蹴りを放って直撃させる。相手のACS負荷を与えたと同時にRe:LOADER4の左腕に装備されたパルスブレードが起動。
発生部からエメラルドグリーンの刃が発し、機体は構えたまま迫り、ナイトフォールへと目掛けて振り下ろそうとした瞬間であった。
「…!?」
ナイトフォールのコア部分。その背部に当たる部分の装甲が展開され、稲妻が迸った。
それが何を意味するのか。不味いと感じた621は操縦桿を引き、機体を後退させようとする。
だがそれも既に時遅しと言うべきか。ナイトフォールを中心に
伝わる強烈な振動。揺さぶられる体。その耳に伝わるACS負荷限界に陥った事を知らせる警告音。
揺らぐ視界の中、僅かに映るはアサルトアーマーの中から飛び出してモニター越しから
──死──
621がまず一番に感じたのはそれだった。
久しく感じていなかった感覚。それ故か対応が遅れかけていた。
視界がまだはっきりとしない中、反撃に出ようと動くも対応の遅れが仇となってナイトフォールの左腕は既に振り上げようとしている所まで来ていた。
このまま死ぬのか。殺してしまった友人や戦友、守れなかった恩人に出会ったと言うのに呆気なく死ぬのか。
──お前の選択が…──
(…ッ)
──お前自身の可能性を広げる事を祈る──
(そうだ…)
まだ選択を、まだ可能性を広げていない。
痛む体に鞭を打ち、歯を食いしばりながら操縦桿を手を伸ばそうとする。
だがそれを嘲笑うかのように、ナイトフォールの左腕は即死を与える得物は動けずにいるRe:LOADER4の目の前まで迫っていた。
「まだ…ッ!」
『レイヴンッ!!』
声が響く。体が動く。
握った操縦桿と共にまるで息を吹き返したかのようにRe:LOADER4が再起動する。
寸前まで迫る攻撃を前にコアを展開、唸り上げる様な音と共に光が収束し稲妻が奔る。
そして─反撃の狼煙を上げるかのように光の爆発がRe:LOADER4から発せられた。
その凄まじさを物語る爆発音。爆発と共に広がった渦がナイトフォールを巻き込む。
ACS負荷限界。防御力が低下し無防備になる僅か時間。そこを逃さんと言わんばかり、そして先ほどの動きを真似するかのように今度はRe:LOADER4が光の爆発の中から飛び出した。
その左腕に装備されたパルスブレードは、ついさっきまでは違って出力を大幅に引き上げ分厚く巨大な刃を発生させていた。
加えて装備したブースターのFLUEGEL/21Zが保有する近接時の接近推力も相まって迫る速度は恐ろしくあり、それはナイトフォールを逃がさないと意味も含まれていた。
「俺は…ッ!」
コクピットで叫ぶ621。
同時にRe:LOADER4の左腕、分厚く巨大な刃を発生させたパルスブレードが…
──けたたましい音を立てながらナイトフォールの左腕を斬り落とした。
何とか上手いこと表現したかったのですが、私の文章力ではこんな感じになりました。
何卒お許しを…。
AC6をやるたびに、旧宇宙港防衛はやりたくなります。
何か、あの一対一でやり合う感じが好きなんですよねぇ…bgmも含めて。
また初めて真レイヴンと相対した時、事前のブリーフィングを受けて、撃ち合いに重視したアセンブルで挑みました。
その時は何とか一発クリアできましたが…読者の皆様はどうでしたか?
では次回ノシ