chapter 01-01
その日、キサラギ社は類を見ない程に大忙しだった。
サイレントラインで発見されたジャンク品の数々、シュナイダー製の四脚型AC、二脚ACに加えて、先日占領した鉄血の砲台基地から接収した改良型ジュピター砲などが運ばれ、その仕分け作業と現場作業班の編成にフェリア・リンジー率いる機動兵器研究開発部門及びルルリア・リンジー率いる武装開発部門の職員が総出で対応。
それでも人手が足りないのか、他部署の職員まで駆り出されキサラギ社の全職員で行う事に。
お陰でキサラギ社の保有する格納庫はパーツやら人やらでごった返し、余りの数に保管容量に限界が訪れたのか外部に置かざる終えない事態にまで発展していた。
『これは…凄まじいな』
「そうね」
通信越しから目の前に広がる光景に対する言葉を零すにナイルに617は肯定を示した。
今回の運搬作業に『TENDER FOOT』を駆る617と『ディープダウン』を駆るG2 ナイルが応援として駆り出されていた。
本来であればヴォルタやラスティも訪れる予定であったが、流石にAC4機を格納庫に駐在させる程のスペースがない事から二人は基地の方で留守番が命じられていた。
レイヴンも二人と同じように訪れる予定ではあったが、エアがI.O.Pに出向する事が決まった為、ワタリとチャティ・スティックと共にその付き添いでI.O.Pへと向かっている。
対して比較的手が空いていることから二人が選出され、応援として此処に来ていたのだった。
「しかしこうも人が多いと…流石に機体を動かせないわ」
『指示があるまで待機していてほしいとの事だ。何かあれば対応するだけだな』
「そうね」
会話を広げている間にもパーツが次から次へと運ばれてくる。
作業員らがひっきりなしに動き回っていき、搬入と選別を受けて外部に置かれていくそれらを見つめていく中、ふと617は思った事を口にした。
「そろそろ装備を換装すべきかしら」
617の駆るTENDER FOOTに装備しているのはRaDの重機関銃に大豊の大容量マシンガン、ベイラムの軽ショットガン、そしてファーロンの小型四連装ミサイルである。
この装備でもやりようはある為、問題はないのだがキャノンと言った足は止まってしまうものの高火力を有する武装が欲しかったりもした。
こうして生きている為、生前と言うべきなのかは怪しい所ではあるが、最後の仕事では大豊のガトリングガンにベイラムの拡散バズーカを使っていたからか。
運搬されていく装備の中でそういったものがあれば良いなと思いながらシートに背を預ける617。
「にしても…」
視線を一番人だかりができている方へと向ける。
そこには接収した改良型ジュピター砲が鎮座しており、その傍には多くの職員たちによって検分及び改修作業が行われていた。
「どうする気なのかしらね、あれ」
運用できるように手を加えるとは聞いている。
だがあの砲台は鉄血の管理下にあったものであり、照準もオートで行うという運用を取っている。
加えて何時動くかも分からないあの違法建築物の件を前にして今から取り掛かろうと言うのだ。
人手は何とかなっていそうだが、それでも時間がどれだけあるのかが分からないのが現実だった。
「何処へ向かっているのか、その目的も分からない巨大兵器。突然止まったと思えば、今日に至るまで音沙汰無し。何を考えているのやらか…」
出てきた意味も、留まる意味も分からない。
しかし今出来る事は特にない為、その小さな頭で考える617。
ふとその時、彼女の視線が近くに立っているAC『ディープダウン』へと向けられる。
あれに乗るパイロットは誰か。あのレッドガンの二番手であり参謀だ。
手持ち無沙汰の今、喋り相手も欲しい所。多少会話が弾めば時間潰しになるだろうと思い617は思い切って声をかける。
「ねぇ、貴方はどう思っているの?あの動きもしない違法建築物について」
『いきなりなんだと言いたい所だったが…そうだな。何らかの狙いがあるのは事実だろう。だがそれが俺達AC乗りをおびき寄せる為だけとは到底思えん』
「それは…そうでしょうね。あからさま過ぎて考えなくても分かるけど…じゃあ何のために?」
『そもそもにしてこの騒動は正直鉄血らしくないと見ている。奴等にとって俺達人間は抹殺対象だ。あれだけのものを出したのであれば回りくどい事はせずに主要都市など襲撃すればいい筈だ。だが奴らはそれをしてない…いや、鉄血という組織そのものがあの巨大兵器の出現に困惑している可能性もある』
「組織全体による総意じゃなく、単独犯による仕業という事…?何でそんな事を」
『それが分かれば苦労はしない。が…そうだな、一つ言うとしたら──』
──この戦いを使って何かを知らしめようとしているかもな──
暗闇の空間。
周囲と鉄とモニターに覆われた魂の無い無機質な空間にその者はいた。
遠くから聞こえるエンジン音にも似た唸り声。
それを耳にしながら、彼女は沈黙を保ったまま椅子に腰かけていた。
今何を考えているのか、何を思っているのか。言葉を発しない以上、誰にも分からない。
分かるとすれば目を伏せて沈黙を保つ彼女だけだろう。
そんな時に部屋の扉が開き、誰かが室内へと入って来た。
「何時まで、そうなさるおつもりなのでしょうか」
呆れた様な口調で話すその者は、少々露出が多いメイド服を着ていた。
だがその肌は普通の人間と違って白く、四肢は戦闘用の義手義足へと置き換わっている。
言葉を介する辺り、鉄血の人形…それもハイエンドモデルである事が容易に伺えた。
「時が来るまでだ、
「その時が何時になるのかとお聞きしているのですが」
「言ったろう。時が来るまでだ」
またかと言わんばかりに家政婦と呼ばれたハイエンドモデルはため息をついた。
こんなやり取りを今日に至るまで腐る程してきた。
流石に動くだろうと思えば、先ほどの返答が返ってくる。
ため息を付くのも無理もないと言えた。
「だが安心しろ、そろそろ動く。だから暫くは休んでいろ」
「それも何度も聞いたのですが」
「そうか。なら追加命令だ。…適当に過ごしていろ」
「はぁ…。かしこまりました」
軽く一礼して家政婦はその場を去っていく。
再び訪れる静寂の中、目を伏せたまま動かない彼女はそっと口を開く。
「鉄血と人類だけの争いに留めてはならん…」
──人の目をこっちへと向けなくてはならない──
伏せていた目が開かれる。
そこに宿した目には覚悟が宿っており、険しいとも言える程に鋭かった。
遅ればせながら…明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
さて記念すべき今年初の投稿ですが、まぁこういう感じでやっていきます。
長くなる時もあれば短い時もある。何卒宜しくお願い致します。
さぁて次回はどうすっかなぁ…。
あ…高評価、お気に入り登録ありがとうございます。
ホント嬉しかったぞえ…