黒と赤で、その装甲と彩った中量二脚のAC『R.I.P/No.3』。
使用しているフレームと瞬発力を秀でたブースターを用いているのを察するに、機動力と火力に秀でた機体であるとヴォルタは最初の時点で気付いていた。
同時に彼は、相手のパイロットをどこぞの馬の骨と下していた数分前の考えを改めていた。
(分かっちゃいたが…こいつ、相当やれる…。寧ろルビコンで顔を見せなかったのが不思議なくれぇだ)
両手に装備されたマシンガンから弾幕が雨の様に降り注ぎ、装甲を削りACSに負荷をじわじわと与えてくる。
距離を取ろうにもキャノンヘッドは元より機動力の低い機体。少し離れただけでは直ぐに距離を詰められ、マシンガンの一斉射撃を浴びてしまい、警告音と同時に飛んでくる大型グレネード『EARSHOT』が高い防御力を誇るキャノンヘッドを削る。
が、これだけで機能停止するような機体ではない。しかし機体の損傷度合いはGHOSTとの戦闘を行っていた時よりも比べて明らかに酷くなっていた。
その要因の一つが、敵ACに装備された妙なミサイルだった。
(なにより…何だ、あのミサイルは…!?)
高火力兵器の運用を知らせる警告音と共に敵ACから放たれるミサイル。
連装式ではないのか飛来してくるの一発だけで、速度もまずまずと言った所。
ただ、糸の様なものを引きながら妙な機動を取っていた。まるで相手へと向かって回り込むような挙動。
そんな動きにヴォルタは双対ミサイルの様な回避方向を制限するようなミサイルと思い、クイックブーストを吹かして機体をミサイルから回避させようとした瞬間だった。
(連鎖爆発するミサイル…?ファーロンでもそんなもんを作っちゃいなかったぞ…!)
機体の周囲を囲う様にミサイルの親機を起点に連鎖爆発が起きたのだ。
EARSHOT程とは言わずともその威力はミサイルにしては高い方で、加えてACSにも高い負荷が蓄積された。
ルビコンに居た時には決して見たことの無い類の兵器。
どこが作ったかなど元企業所属のヴォルタには知りようがなかった。
『腕には自身がある方なんだが…お前、良い腕をしているな。あのミシガンの所で躾けられたのが良く分かる』
何も出来ずにただ的になっていた訳ではない。
目まぐるしく動き回るR.I.P/No.3にグレネードやショットガンが的確に当て、分裂ミサイルを小出しにして回避先にSONGBIRDの榴弾を二発とも直撃させACS負荷限界に追いやるなどしていた。
それでも相手はヴォルタの上を行く。
下手すればミシガンともやり合えるかもしれない、とそう思ってしまう程に。
「褒めてんのか、貶してんのか…どっちだ、てめぇ…!」
苦悶の表情を浮かべながらも相手に食らいつくヴォルタ。
エイムアシストを即座に解除して、マニュアルによるエイム操作を敢行。
動き回る相手に当てるのは至難の業。
が、この程度できなくてはレッドガンどころか、ルビコンですら生きていけない。
故にそれ程の実力は彼にあり、相手の回避先を読んだ上でトリガーを引いた。
右腕のグレネードから榴弾が吐き出され、吸い込まれる様にR.I.P/No.3に着弾し、同時に爆発の花が咲く。
相手もまさかマニュアル操作で当ててくるとは思わなかったのか思わず、ほう…と感嘆の声を漏らした。
『褒めてるさ。お陰で身体も温まってきたところだ。…いや、今や無い体だ、温まりもしないか』
「何を言って…ぐあっ!!」
R.I.P/No.3から放たれたEARSHOTの砲弾がキャノンヘッドのすぐそばで着弾。
広がった爆発に機体が飲み込まれ、コクピットに振動が奔る。
ACS負荷限界に陥ったのを知らせるアラート音とヴォルタは成す術も無くコクピット内でその強烈な振動に思い切り体を振り回されてしまう。
『G5…だったか?アレと組んでいた時が手強そうに思えたのだがな。ダムではあの男を相手に大した連携を見せていたじゃないか。…最も人望が厚いだけの、機体の性能もその特徴も理解していない奴じゃ相手にもならなかっただろうが』
「ダム?…てめぇ、解放戦線の人間か!?」
『……喋り過ぎたな。そろそろ終わりにしよう』
G5、ダム…そこで思い当たる事など一つしかない。
この敵はルビコンからこっちに流れてきた奴で、何より解放戦線の一人。
叫ぶように問うヴォルタに対し相手はこの戦いを終わりにしようと動き出した。
その証拠に敵ACがアサルトブーストを起動して突進。その様子は確実に止めを刺そうとしている様でもあった。
「くっ…そがぁ…!」
迫りくる敵を前に未だにACS負荷限界から回復しない愛機にヴォルタは悪態をつく。
操縦桿を動かそうにも機体は動いてくれない。
ここで終わり…薄っすらと過るそれを彼は無理矢理振り払う。
「ここでくたばる気なんざ…ねぇんだよぉッ!!!!」
『それでいい。ここで死のうものなら、
砲撃音。
その凄まじさは耳鳴りを起こしてしまう程で──
『遅れて済まない、G4』
その発信源から放たれたそれはキャノンヘッドを狙ったものではなかった。
『…さて』
淡々と、冷静な声が通信越しから伝わる。
仕事を始める為…
『仕事の時間だ』
戦場に舞い降りた。