一休みするついでに淹れたコーヒーを飲み終え、部屋を出る。
このまま探索を続けても構わないと思いつつも、目的も無しにふらつくのは如何なものかと思う。
さて、どうしたものか。
「今日一日はここで寝泊まりになるな」
そうであれば、外に置いてあるACをどうにかして隠す必要がある。
大型のシートの様なものがあればいいが…あの刺客が飛び出してきた格納庫らしき場所にあるだろうか。
そう思いながら、格納庫らしき場所へと歩き出す。
辺りを見渡せば、そこら中に弾痕や付着した血糊が見かける。
静観して見ていたあの戦闘は、如何やら内部にまで及んでいた様だ。
そう思うと戦術人形621は良く見つからず済んだものだ。
「自由を選んだ、か…」
鉄血工造という組織を捨て、自ら自由を選んだという戦術人形621。
一体何が、彼女をそうさせたのだろうか。
組織に嫌気がさした…どこにいてもそういう事はあるだろう。
独立傭兵だった身である為、そう言った苦労は知らないがヴェスパーの
最も再び奴に出会う事があれば、恐らくかけているであろう眼鏡を叩き割った後にその顔面にスタンニードルランチャーを
それは兎も角、あの刺客まで差し向けてくるを見るに、彼女は何か重要な立場に居たと考えられる。
そんな奴がこう簡単に前哨基地の制圧を許したとなれば、当然組織も黙ってはいない。
「だが…始末する程か?」
失敗は失敗。しかしそいつまで始末すれば、戦力低下に繋がる筈だ。
それとも死を以て償えと言うのだろうか。
わざわざ戦力を削る事をしてまで?そこまで愚かとは思えないが…。
「そもそもにして組織を抜ける事が死に繋がると?」
まるで自分達がいる組織に離反者など有り得ないと言わんばかりだ。
ますます鉄血工廠に対する謎が増える。
何を目的に行動しているのか、一切読めん上に気になった事がある。
「前哨基地だったと言え、何故人間の死体がない」
組織とは言え、それら全体を戦術人形で運営しているとは到底思えん。
当然ながら人間も存在し、こういった基地には武装した人間が配備されている筈。
だが基地内を探索してみれば見かけるのは同じ姿をした戦術人形の亡骸ばかりで、人間の死体…いや、この基地に人間が存在していたという気配すら感じなかった。
そこまで鉄血工造に属する戦術人形の思考回路が発達しているのか、或いは──
「人間が不必要になったと言うべきか」
AIが暴走し、人類の敵となった…。何処か聞いたような映画の内容の様だ。
だがそれが事実なのであれば何処か納得のいく自分がいる。
…戦術人形621が組織を離反した事に関しては全く分からないが。
「聞かなくてはならない事が増えたな」
考えに耽っていれば、目的地にたどり着く。
刺客が暴れて飛び出した事もあって荒れているが、幸いなことにAC一機分を覆い隠せそうなシートが直ぐに見つかった。
重量はあるが、強化人間である為か、この程度は問題にならない。
それを片手に外に置いてあるACの傍へと向かう。
「今思うとガレージの存在が有難く感じるな」
そんなことを口にしながら片膝をついた機体を見上げる。
風の音すらない静かな一時。そんな静けさが訪れる時は、何時だって"
だけど今はその声すら聞こえない。あの時からずっと、その声を聞いていない。
だからこそ、何故グリット135跡地で彼女の声が聞こえたのかが分からない。
「…急いで隠すとしよう」
考えた所で埒が明かないのは事実。
それに考えれば考えるほど、あの時の選択に対する感情が湧き出しそうになってしまう。
だから作業に集中する事で逃げる事にする。今はそういう気分だ。
「ふむ…こんな感じが」
時間はかかったが、上手くシートを被せる事が出来た。
とは言え最低限のカモフラージュ。大して期待は出来ないが無いよりかはマシと言える。
不備がない事を確認した後、空を見上げる。
「そろそろ夕暮れ時か」
時間帯的に昼過ぎ辺りから作業を始めた為、空は橙色から段々と暗くなりつつあった。
が、まだ基地内の探索にする分の時間はある。
特に格納庫辺りは探索しきれてはいない。
そこさえ終えたら、夜に備える準備をするとして、再び格納庫へ向かい内部へと足を踏み入れる。
一休みしている際に見つけたライトを点け、内部を照らしながら足を進める。
「やはりか」
刺客が居たであろう場所から更に奥。シートを見つけた際に見かけたソレへと向かう。
荒れ具合が比較的なマシでだったもう一つの格納庫。
クレーンで吊るされた物を見つめる。
「間違いない。これはACのパーツ…それにこれは」
長方形の筒が二つ並んだ武装。手持ち武器ではなく、肩部の武器。
これを装備していたのは、カーマンラインで──
「それはつい最近見つけたものですよ」
「!」
聞き覚えのある声が背後から届き、その方向へと向く。
奥から歩み寄ってくる姿は先ほど打って変わって傷一つなく、まさしく美女。
一日かかると思われた修復作業を予定よりも早く終えたのか、戦術人形621がこの場所に来ていた。
「早いな」
「思った以上に損傷は大きくなかったので。…ソレ、見覚えがあるのですね?」
「ああ。これはACのパーツだ」
忘れる筈がない。
あの場所で、あの戦いでの事など、どう忘れる事が出来ようか。
それにこのパーツがあの戦いを忘れる事を許さないと伝えてくる。
お前が撃ったから彼は死んだんだ、と。そう言っている気がしてならなかった。
「そして戦友が乗っていた機体に装備されていたものだ」
「そうなのですね。…それは前哨基地が襲撃を受ける一週間前に回収されたもの。あの刺客に装備させようしましたが、生憎と規格が合わない事からずっと放置されていたのですよ」
「…だろうな」
あの刺客がACの様な汎用性がある筈がない。
あるのであれば、今頃取り付けられていたに違いないだろう。
「そして、貴方がこれから言おうとしている質問に対して、先んじて答えましょう」
神妙な表情で彼女は此方を見つめる。
その口から飛び出ようとしている台詞は言わずとも分かる。
転移と言う超常現象に加えて認識の食い違いから、そう判断出来るのだから。
「この世界には──」
そう、この世界は──
「貴方の言うACやMTは存在しません。」
ACもMTも存在しない。
それだけに限らずアイビスの火もルビコンも存在しない。
「つまり──」
要は──
「異なる世界からの来訪者という事だ。そう言いたいのだろう?」
自分を知る人など居ない世界に来てしまったという事だ。
明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
さ、超常現象と認識の食い違いから薄々気付いていたから、大して驚かない621君。
んでもって、まるで隠しパーツみたくACパーツを発見。
まぁ…なんのパーツは分かるよね。
では次回ノシ