チート一族になりたくて   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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照継達大内館へ行く

 石見の暴れる龍を倒した事と幕府を通して宝剣を天皇に納めたことで堕ちる一方であった幕府の権威が一時的にだが持ち直し、幕府、皇室からの褒美として毛利家のみが認めていた東源神社を官社とすることを認めること、恩賜品として家紋(の縫われた旗)が送られた

 

 戦国時代では武士や貴族、一部の神主や僧以外は家紋を持たなかった

 

 故に家紋を恩賜されるというのはとても名誉なことであり、それが天皇から贈られるというのは凄まじいことであった

 

 普通こういうのは幕府が絡まないと幕府が機嫌を損ねるのであるが、皇室が家紋を描き、実際に旗を用意したのは幕府という手順を踏んだことで幕府の権威を傷つけること無く、旗を貰えたという経緯がある

 

 与えられた家紋は黄色の円の中に青字の六芒星、中央に赤い丸が描かれたもので、黄色の円は富と和、末広がりを意味し、六芒星は魔除け、中央の赤い丸は活力、博愛を意味する

 

 農民出身ということで官位や役職を与えなかったのをケチと見る方も居そうであるが、この時代家紋が与えられるだけでも大変名誉なことで、農民ではなく幕府や朝廷が武士(神主)として認めるという意味合いも込められていた

 

「良かったな照継、これでお前を農民上がりと馬鹿にされることもなく、皇室と幕府に認められたことを意味するぞ」

 

「はい! 神社も官社として認められましたので厳島には劣りますがそれなりの格を得ることができました。ただ厳島神主家に悪いので『お友達料金』を支払うことに致しまする」

 

「それが良い。厳島は安芸国の宗教的権威、喧嘩すれば毛利家の存亡に関わってくるからな」

 

「は!」

 

「そうそう照継、大内義興様からお主に会いたいという書状と毛利領の品の関所通過時に大内領内での税免除を銀5000貫が贈られてきたぞ」

 

「だいぶ奮発しましたね」

 

「郡山城拡張の資金に費やしても余る額だな。どのようにするが良い?」

 

「色々ありますよ。川の整備や街道の整備、職人を雇うとか」

 

「ふむ……街道を整備しても防衛に不利にならないか?」

 

「それは城があれば十分でしょう。経済力が無ければ毛利家を強くすることはできませんよ」

 

「難しいなぁ」

 

「大内の強さは経済力ですからね。武士というより商人の才が必要なのですよ。まあ私が居なくても仕事は回りますので大内領に子供達を引き連れて行くことにしますわ。都会を見させてこう発展させるべき指標を見なくては」

 

「毛利領が田舎で悪かったな」

 

「海があればもっと豊かになれるのですがね……阿曽沼氏、野間氏、小早川氏のどれかさえ臣従できれば海に出れるのですがね……」

 

「どうせ海に出ても貿易のことで、頭がいっぱいなのだろう?」

 

「勿論。陸運と海運では海運の方が圧倒的に物資の運搬ができますし、堺と博多の中継地なのでそのお零れを狙うことができますし」

 

「……阿曽沼氏はいまだに尼子派だったな」

 

「ええ、整理しますと尼子派国人衆は武田家、高橋家、吉川家、阿曽沼家、多賀谷家そして毛利家、一方大内派国人衆は宍戸家、小早川家、平賀家、天野家、野間家……安芸西はいまだに尼子派が多く、東は大内派が多い感じですな」

 

「多賀谷家はこの前の龍退治に誘われなくて安芸で孤立しておるし、大内の東安芸侵攻(鏡山城無血開城の前哨戦)にて壊滅的被害を受けておったからな……今でも一昔の毛利のように家臣達が分裂しておるようだしなぁ」

 

「……元就様」

 

「あぁ、使えるな……照継、大内義興様に会った際に私の策を伝えよ。策は……」

 

「……なるほどわかりました。多少アレンジしてもよろしいでしょうか?」

 

「ああ、任せる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 大永6年(1526年)3月

 

 雪解けと共に照継は周防・長門の国境にある大内館へと10才以上の息子と娘15名を引き連れて旅に出ていた

 

「お父様大内の領はとても豊かと聞いているので楽しみです!」

 

「京は荒れ果てていたが、大内の領はとても豊かと聞くからな……まずは厳島に居る陶興房殿の嫡男陶興昌殿に挨拶をしようか」

 

 天野、平賀、野間領を通り、船で厳島へと移動した

 

 尼子派の武田領を通るわけにはいかないので遠回りだが、仕方がない

 

 厳島神社……平安時代から力はあったが、平清盛や平家の保護や武家の加護を受け勢力を拡大し、安芸一の神社の地位を揺るぎ無いものにしていた

 

 ただ戦国の世故に神主の一族でお家騒動で流血が相次いだり、それが各勢力の代理戦争の場になるなどやや衰退気味である

 

 それでも今は大内の宗教的支柱として機能しており、貿易の博多、資金源の石見銀山、宗教的権威の厳島神社、富の集まる場所の山口の町と大内の政治的基盤であった

 

 その厳島神主は今大内派であり、厳島を守るのは陶興房の長男陶興昌である

 

 まだ20代前半と若いが矢傷を受けてから体調が優れないとのこと

 

 照継が面会を求めると明らかに体調の悪そうな青年が出てきた

 

「ゴホゴホ、お初にお目にかかる。宮永殿、私が陶興昌だ」

 

「だ、大丈夫ですか」

 

「武田攻めの際に矢を受けてから体調が優れなくてな……右手が痺れて刀も持てなくなってしまった」

 

「矢を受けた場所を見ても」

 

「ああ、恥ずかしながら背中だ」

 

「撤退中に矢を受けたのですか。どれどれ」

 

 服を脱がすと右肩と首の付け根部分の矢傷の場所に瘤ができており、膿が溜まっていた

 

「この瘤に古血や膿が溜まり体を悪くしております。河童の秘薬もありますゆえに取り除けば熱も下がり体調も安定するかと」

 

「ゲホゲホ、ほ、本当か」

 

「私で良ければ切除しますが」

 

「宮永殿ならば心強い! 頼みまする」

 

 照継も前世で牛の瘤を除去したことや膀胱をメスで切除した経験がある程度だが、大きく溜まった膿を出してやらないと痛みと発熱を繰り返して衰弱していくだけであり、傷をみるみる治す河童の軟膏があるからこそ照継はやろうとした

 

 照継は針を貸してもらい、陶興昌に強い酒を飲ませて昏睡させ、家臣達や息子娘達が見守る中で陶興昌の手術を開始した

 

「まずこの河童の軟膏ですが」

 

 照継は家臣達に小刀で腕を斬り、そこに軟膏を塗ると傷口がみるみる治っていった

 

「小さき傷ならばこの様に治る。興昌殿の古血と膿を取り除き、それを溜めている袋を取り除く、興昌殿に針を入れることを許していただきたい。何かあったら某の命をもって償わせて貰う」

 

「そこまでの覚悟であるならば我らは何も言いません。興昌様の病状が良くなる方が大切です」

 

 家老の方が言ったので他の家臣達も同意する

 

 皆が見る中、針を入れた

 

 膿が飛び出し、指で押し出して取り除いていく

 

 黒く濁った血も出てくるが、指で押し出して全て出しきり、小刀で傷口を少し広げ、針を動かして袋を取り除き、軟膏を塗ると傷口が塞がっていった

 

 真っ赤に炎症していた瘤は取り除かれ、家臣達は取り出された袋を見る

 

「膿が溜まる袋ですな。これがあると再び膿が溜まるのですよ。溜まればまた熱病にうなされ衰弱し命に関わる。私も病に詳しいわけではないが、昔似たような病を持つ者を(映像で)見たのでな」

 

「では興昌様は治られるので!」

 

「ええ、恐らくは良い方向に向かうかと。後は厳島のご加護によるものかと……七草粥の様な胃に優しい物を食べさせてあげてくだされ。本人が食べられるようになったら徐々に食事量を増やしてくだされ」

 

「わかりました。宮永殿誠に興昌様を助けてくださりありがとうございます」

 

「なんのなんの、薬師に見せるのも忘れないでくだされ」

 

「は!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 数日厳島に留まり興昌の様子を見ていたが、右手に痺れは残ったものの、熱が下がり、痛みも引いたと喜んでいた

 

 食事も普通に食べていたので大丈夫そうだ

 

「父上は病に対しても博識なのですね!」

 

「いや、今回はたまたま知っている病だから良かったが、死病や治せない病も多くある。薬だけでは治せない病も多く、古血を抜きすぎて死ぬ場合もある。私も専門家ではないが、やらなければ興昌殿が死んでしまうと思ってな。興昌殿が死ねば武田が活気付き、やがて毛利の脅威となるからな。恩を売るは巡りめぐって身の為になるからな」

 

「なるほど、為になります」

 

 厳島を後にして歩くこと数日、山口の町に到着した

 

「「「わぁぁ!」」」

 

 そこは西の京と言えるくらい雅な場所であり……というか京が焼け野原になっているので山口の町は整備された綺麗な町並み、貴族や武家の屋敷が建ち並び、大商人達の競りが各地で行われ、戦国の世とは思えない平和な場所であった

 

「目指すべきはここだな」

 

 全ての水準が圧倒的に高く、茶器1つとっても唐物(中華からの輸入茶器)の見本が沢山あるのと貿易で職人を引っ張ることができるためか和物(日ノ本で作られた茶器)の質も高く、他にも多数の工芸品(扇子、刀剣、屏風、漆器)や織物等レベルも突出していた

 

 照継なりに綺麗な服を選んだのだが、ここではそれすらも安物に見えてしまい少し恥ずかしくなった

 

 大内の家来の案内で大内館の客間に通され、大内義興、大内義隆親子に陶興房も座る

 

「お初にお目にかかります大内義興様、大内義隆様、宮永照継と息子と娘達でございます。この度はお呼びいただき主である毛利元就に代わりではございますが感謝致しまする」

 

「面を上げよ宮永殿、元就殿も興味はあるがこの度は龍を倒した宮永殿を呼んだのだ。へりくだる必要は無いぞ」

 

「は!」

 

「お♡おぉ!」

 

「いかがされた? 義隆様?」

 

「いや、好みの顔立ちだと思ってな。ただ惜しいのは歳が2回りも上なことだな」

 

「男も良いですが女を孕ませるは快感でございまするぞ」

 

「女は味を変える時に抱くがちょうど良い。男と男に挟み、その間に女を置くとまた違った味わいがするでな」

 

「いやはや、低い身分の私には無理ですな。私の男根ですと相手の尻が裂けてしまいまするゆえに」

 

「おお! 下の刀も大太刀なのか!?」

 

「これ、やめんか昼間から」

 

「若は本当に男色が好きですなぁ」

 

 話は龍退治に変わり、二股の龍の話になる

 

「見たぞ巨大な首であったな! 大樽に入れられて運ばれてきたが、大内領内でも大いに沸き立ったぞ。宮永殿の武勇も含めてな」

 

「お恥ずかしながらトドメを刺せなかったですからな」

 

「いやいや、一の太刀と片首を落としたのは事実、誠に天晴れぞ!」

 

「他には無いのか?」

 

「では黄泉帰りの話でもしましょうか」

 

 黄泉帰り、鬼との一騎打ち、河童との相撲、関東での様子を伝えると若い大内義隆は大興奮

 

 凄い凄いと語彙力を喪失して照継を誉める

 

「凄いのは大内様ですよ。私は個の武のみに優れておりますが、この町並み、更には銭を稼ぐ努力誠に恐れ入りました」

 

「ほう! 照継殿は銭の大切さがわかる口か?」

 

 宮永殿から次第に照継殿に呼び方が変わっていた

 

「ええ、銭が無ければ国は富ません。米の収穫量ばかりに執着する者が実に多いことに」

 

「そうなのだ。大内の力の源だというのに武士達は銭は汚いと言うからな」

 

「少し貿易の話をしたいと思います。明との貿易で毛利も売れる品を開発しておりまして」

 

「ほう! なんだ!」

 

「椎茸と蜂蜜の増産に取り組んで参りまして、ここ数年である程度の量が取れるようになりました」

 

「椎茸だと! 確かに毛利の山から多く産出すると商人が言っておったが」

 

「失敗もありますがある程度安定して栽培できるようにしました。貿易足りうる量を供給できるかと」

 

「おお! 蜂蜜も明が欲していた物、売れれば莫大な利益となろうぞ」

 

「元就様は大内様が通行税の免除をしてくれるなら毛利領でも関所の通行税を廃止し、大内商人を優遇するつもりと」

 

「真か! 元就殿も話がわかるな! 銭は回してこそよ!」

 

「ええ、ただ当家の間に邪魔な家があります」

 

「武田か?」

 

「いえ、多賀谷と阿曽沼です」

 

「……なるほど、海を押さえられておるな」

 

「大内臣従の際にこの国人衆を倒し、海路にて大内の経済圏と接続、他に堺と博多の中継地とすることで大内に富を流す手伝いをしようかと」

 

「ほうほう! 照継殿は誠に話がわかる者ぞ! あいわかった、今回の褒美として多賀谷と阿曽沼の領切り取り自由の書状を出そう。援軍は居るか?」

 

「いえ、毛利が使えることを示させてもらいます」

 

「ほほほ! 実に愉快……ん? 義隆どうした?」

 

「て、て、照継殿、もし……もしですぞここに居る照継殿の子供達を数年で良いので預からせては貰えぬか」

 

「これ、何を言い出すか」

 

「父上、こんな美男子達が居るのですぞ! 某の子育ての勉強として育ててみとうございます」

 

「しかし……それでは照継殿に悪いだろうが」

 

「いえいえ、是非ともお願いします。こやつらに経済のいろはを叩き込んでくだされ」

 

「ふむ、ではせめてもの礼として元服の烏帽子親をワシがやらせて貰おう」

 

「おお! それは実に妙案ですぞ殿!」

 

「ただ1つ願いが」

 

「なんだ?」

 

「我が主である毛利元就様の嫡男太郎の烏帽子親を大内義隆様にして貰いたい」

 

「私で良いのか!?」

 

「後継者である大内義隆殿だからです。さすれば毛利家は大内の為により一層戦いましょうぞ」

 

「私で良ければ是非ともやらせて貰おう」

 

「ありがとうございます」

 

 その後幾つか取り決めをした後に宴会となり翌日には照継の男子10名が元服の儀が大内義興を烏帽子親として行われた

 

 さすがに義の字は与えられなかったが、

 

 恭児(きょうじ)

 漫(すず)

 洋慧(ようけい)

 石龍(せきたつ)

 龍水(ぼうすい)

 龍火(もうか)

 浩世(ひろせ)

 憇(けい)

 那智(なち)

 明源(めいげん)

 

 の名を与えたのだった

 

 

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