チート一族になりたくて   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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照継、天下を説く

 今回の尼子に大勝したことにより室町の名門赤松家が毛利の事をべた褒めし、この戦のことを各地で吹聴しまくった

 

 いきなりなんで関係無い家が毛利を褒めてるんだ? という疑問が出そうだが、この赤松家は尼子に播磨の地を掠め取られており、京や堺に亡命生活を余儀なくされていたため尼子をとにかく恨んでいた

 

 そんな尼子を寡兵でこてんぱんにした毛利を自身の名誉の為にも吹聴する必要があったのだ

 

 まあこれが結果として赤松家の没落に拍車をかけるのだが

 

(毛利ageをする→尼子ディスる→そんな尼子に負けた赤松って雑魚じゃね? てな感じ)

 

 まあ尼子が播磨の維持ができなくなったので赤松家も旧領を回復できたので恩を感じたからもあるが

 

 この吹聴で将軍や管領の細川晴元もこの事を絶賛

 

 ちなみにだがこの細川晴元は魔王と呼ぶに相応しい者であり、家臣を容赦なく殺す、宗教一揆を誘発し、事が済めば対立宗派の一揆をぶつけて弱体化させてから殲滅したり、親族を粛清しまくる、京の町を普通に燃やす、寺院を燃やすなど中国地方で謀聖と呼ばれる尼子経久や後々謀神と呼ばれる元就も確かに家臣や家族の粛清や敵を謀殺暗殺したことは多いが、細川晴元は次元が違う

 

 というかこいつのせいで戦国時代が30年長引いたと言っていいくらい禍根を残しまくっている

 

 まあ腐っても管領なのでその人から名指しで褒められたことと、武田家が今回の戦で所領を失い、更に当主や嫡男揃って尼子軍が壊滅した郡山城での一連の戦いで戦死、家臣団も軒並み戦死したことで滅亡、そのまま血筋的にも家の歴史的にも、勢力や献金を続けていた事からスライドで安芸守護代の地位を毛利家に譲られた

 

 これで今までは実質No.2だったのが本当に安芸でNo.2になることができたのだ

 

 尼子衰退で調子に乗った将軍は更に綸旨と呼ばれる完全に尼子を潰せという命令を大内義隆に送るが、送られた方の大内義隆は困った

 

 目的であった石見銀山の奪還に成功したし、安芸を防衛したことで備後の国衆も大内への寝返りが多発している

 

 大内にとってこれ以上の拡張はそれすわち将軍を本気で目指すことに繋がる為、幕府と敵対したくない大内義隆は尼子が完全に潰れることを望んでいなかった

 

「博多と石見銀山、日ノ本国内だけでなく海外の周辺諸国との貿易で大内は更に強くなれるし、下手に巨大化しても旨味の無い土地を抱え込んでも尼子の様に国が割れたり利益にならないから放っておいて欲しいんだが」

 

 と側近に呟いていたそうだ

 

 なお毛利家も大勝したとはいえ旧高橋領をほぼ尼子に蹂躙され、お膝元の吉田の町も燃やされた為に領地の復興支援をしなければならず、戦どころではなくなっていた

 

 この大変な毛利を救うために大内義隆は毛利の嫡子毛利隆元を安芸に帰して毛利家を立て直させようとする

 

「まずは書類からだ。復興に先立ち吉田の町を更に拡張する」

 

「石見の毛利領(旧高橋領)には鉱山が多く眠っている筈だ。山師を送り出して調べさせよ」

 

「組織改革を行い更に円滑に毛利を回す。宮永照継に頼りきった行政はいずれ破綻するだろうから先回りするぞ」

 

「大内の商人と渡りを付けた。更に貿易量を増やすべく毛利独自の水軍を創る」

 

 と超スーパーエリート官僚に成長していた毛利隆元は大内の良いところを積極的に取り入れると同時に宮永一族の若者を更に積極的に活用

 

 ただそれをし過ぎると家臣のパワーバランスが崩れるからと五奉行という役職を作り、その下に奉公衆を起き、奉公衆に宮永一族を多く入れることで家臣の摩擦を最小限に留めつつ、毛利家の次期当主としての支持基盤を短期間で作り上げた

 

 照継は元就から隆元を支えて欲しいと隆元の守役に任命し、経済的価値観が似ていた照継と隆元は五奉行に任命された赤川、桂、児玉、粟屋、国司、照継の後継者の迦具照と恭児(宮永家の調整役 内政官や事務能力に長ける)と3日間激論を繰り広げ、今後の毛利の内政方針と東源郷で適用されていた『宮永国法』を毛利領内でも細部を変えて適用させ、商人から粗利の4割を税とすること、半商半武の身分の明文化、毛利宗家の継承順位等宮永国法での宮永一族の事を削り、新たに毛利家と毛利領内で必要とした52ヶ条の『毛利分国法』がここで決まった

 

 

 

 

 

 

 毛利隆元の下で個人の才覚だけではなく組織として国が運用できるという江戸時代中期頃の藩政に似た組織改革を宮永照継が根回しをして家臣一同の賛成を持って取り組み始めたころ、大内はというと

 

「ここで尼子を潰すべきだ」

 

「いや殿の言う通り守りに徹するべきだ」

 

 家中が真っ二つに割れていた

 

 今回の尼子本陣への背面奇襲をもって陶興房の能力的な後継者と見られるようになった陶隆房

 

 陶と同じく武断派の内藤等は弱った尼子を叩き、中国地方を大内の庭にすることを提案

 

 しかし文治派と呼ばれる相良や冷泉達文官もできる武士達は出雲出兵に反対

 

 ちなみに今上げた内藤以外は皆大内義隆に寵愛され夜を共にした仲であり、各々全うな意見を言う裏で義隆に愛されたいという色欲を孕んでいた

 

 つまり今彼女、元彼女、元々彼女が義隆を巡って言い争いをしている状況である

 

 ハーレム(腐臭が漂う)である

 

 そんなBL漫画にできそうな大内家だが1人だけ完全中立で公平に仲裁ができる者がいた

 

 陶興昌である

 

 彼は武名、文官としての能力、外交手腕全ての能力が高く、血統的にも本当の意味で陶興房の後継者はこっちであり、大内義隆も彼を厳島に常に置いている理由は安芸国の連絡窓口という役割だけでなく瀬戸内海の海運と尼子等の東の勢力への監視の為であった

 

 そんな彼をもってしても今回の問題は決めかねており、時間をゆっくりかけても問題ない為しっかりと決着が付くまで話し合わせるつもりだった

 

 義隆がgdgdした会議に嫌気が差してきたころ、状況を動かすとんでもない情報が飛び込んできた

 

『尼子経久 病没』

 

 流石に歳で戦には出てなかったし、政治も尼子詮久に任せていたが、尼子とは経久のことであり、経久が居ない尼子などラーメンの麺が無いのと同じ

 

 最初は虚報を疑ったが、葬儀や亡骸を見た者、尼子国衆が次々に大内に寝返ったことで本当に尼子経久が死んだことがわかると

 

「皆兵を集めよ。尼子討伐に兵を出す。この度の戦国衆も集められるだけ集めよ。中国地方での覇者を決める戦いぞ」

 

 大内義隆は博打に出る

 

 中国地方の覇者となれば九州2ヵ国を含め14国の太守となる

 

 更に格で言えばもう足利将軍家の正3位を抜き従2位の地位に居る

 

 将軍になるべく、この時大内義隆は本気で動き出した

 

 

 

 

 

 

 

 

 大内義隆の号令に毛利はいち早く兵を集め、参戦した

 

 前回の防衛戦で領地にダメージが入っていたので出せる兵は3000程であるが、毛利元就、毛利隆元両名の揃っての出陣である

 

「うーん、思い出せん。何か引っ掛かる」

 

 照継は勝ち戦ということで留守役に回され、領内の復興を指揮していたが、もう48年も戦国時代にどっぷり浸かっていたことと、信長の動きや三好の動きはある程度覚えていても毛利がどうやって中国地方の覇者になったかなど覚えていない

 

 というよりなぜこうも大内が磐石なのに戦国後期には大内の名が無くなっていたのか不思議でならない

 

「父上、何か悩み事ですか?」

 

「漫か、お前は輪廻転生を信じるか?」

 

「妖怪や神が居るのですから仏や魂といった物もあるでしょうに……そこらにふよふよしている人魂も元は人間ですからね」

 

「そりゃそうだ。俺も転生を経験してる」

 

「それでしたら私も何十回としているでしょう」

 

「いや、なんというかな……未来の様な世界から過去の様な現世に来ていてな。私が色々農業に詳しかったりするのはそこなのだよ」

 

「でも父上は幼い頃から多くの実験をしたと聞いていますが?」 

 

「勿論知識だけだったから知恵にするために色々したが……」

 

「何をそんなに狼狽えているのですか? 父上は?」

 

「未来に大内の家は無い。なぜ衰退したのかを思い出せないのだ」

 

「大内が無い? 父上、有り得ないでしょ。大内家は尼子を下したら次は天下を平定する大戦が始まるのですよ。我ら毛利家も大内の手伝いをし……ん? ちょっと待ってください。父上、大内がもし天下を握るとするじゃないですか」

 

「ああ」

 

「誰にその天下を継がせるのですか?」

 

「誰って……大内……晴持様?」

 

「義隆様に嫡子は居らず、晴持様は養子……もし嫡子が産まれたら養子の晴持様はどうなるのですか? 晴持様は奥方の一条家からの養子ですぞ」

 

「いやいや待て待て、それでも割れるまで時間がかかる。急速に衰える何かがあったと思うんだ」

 

「何かって?」

 

「義隆様が亡くなる……とか?」

 

「縁起でもない……そうなれば毛利も沈みますよ」

 

 バンと襖が開き、迦具照が顔を真っ青にして部屋に入ってきた

 

「父上、大内軍尼子に大敗、大内晴持様戦死、元就様と隆元様は大内軍の殿を担当しているとのこと!」

 

「な、何!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 天下の名城月山富田城

 

 それは巨大な山城であり、3ヶ所にある門以外城内に侵入不可能、裏口や隠し通路等も無く、守ることに特化した城である

 

 更に雲の上に城があるようにも見えることから天空の城とも言われ、尼子経久がこの城を奪う際に正月で人の出入りが激しい時に客を装った兵100名で首脳陣を殺害して奪ったという正攻法の城攻めでは歴史上1度も落ちてない……それが月山富田城である

 

 最初はそれでも3倍の兵力が居るため落とせるだろうと大内義隆は思っていたが、歴戦の大内軍の将達も、知略の毛利元就もどう考え、策を練っても城はびくともしなかった

 

 包囲して半年が過ぎると逆に大内側の補給線が尼子の扇動した一揆により脅かされ、物質が事欠く様になると兵の士気が下がっていった

 

 この頃の兵は兵農分離ができてないため長陣だと自分の畑が心配になってくる

 

 長期戦による疲労、打つ手無しの絶望感、次第に機嫌の悪くなる大内義隆

 

 とここで吉川が名乗りを上げた

 

「俺達鬼吉川が尼子の正面口を開けてやろう!」

 

 鬼吉川、吉川家は鬼と呼ばれるくらい兵達や吉川一族の家臣達が強く、本当の鬼である宮永鬼隊が前の郡山城の戦いで奇襲後に尼子本陣への突撃を防いた実績もある

 

 そんな彼らが猛然と突撃を開始し、門が開き、城の中に入っていった

 

 ……『門が開き』……

 

 陣抜け……裏切りである

 

 吉川だけでなく三刀屋、三沢、本城といった国衆も尼子に寝返り形勢が逆転

 

 兵数が逆転したことで兵達の士気が崩壊し、大内軍は撤退を余儀なくされるが、落武者狩りや土一揆が多発している地域を通過しなければならなくなった

 

 大内軍は超がつく金持ちであり、10人死んでも大内の兵1人殺せば元が取れるというくらい鎧や兜、武具に金がかかっていた

 

 その為落武者狩りが大量に湧き、大内の兵は次々に討ち取られていった

 

 殿の毛利元就と毛利隆元も尼子から徹底的な追撃を受けるが、渡辺通や数少ない宮永家から出陣していた憇(宮永憇 30歳で大内留学をしていた1人)の徹底的な防衛により何名もの家臣や鬼が討ち取られたが、毛利首脳陣は撤退に成功

 

 ただ宮永照継の息子……憇や迦具照の異母弟5名が戦死する大激戦であった

 

 照継は息子の弔いより大打撃を受けた毛利軍の収容を急ぎ、元就が無事に帰還すると今後の戦略の練り直しに迫られた

 

 

 

 

 

 

「大内義隆様が溺愛していた晴元様が亡くなられ、更に今回出兵に賛成していた武断派に失望し、政治への関心を失われて男色に溺れていると聞く……大内義隆様を天下人にする計画は不可能となった」

 

「尼子経久の自身の死をも利用した謀略ですか」

 

「あぁ、私はまだまだ尼子経久には及ばないということをまざまざと理解させられてしまったよ」

 

「しかし、父上、我ら毛利首脳部は欠ける事なく生き残りました。領内に残してきた多くの文官も失われた文官も昔とは違い人材は溢れています。時間をかければ今回の損害は回復可能です」

 

「……大内義隆様は今回の一件でダメになられてしまった……ならば我々がすべきは」

 

「「「独立」」」

 

「……毛利単独での舵取りか……」

 

「目指すからには天下を狙いましょう! 元就様!」

 

「……天下? なぜだ照継」

 

「乱戦を早急に終わらさなければ刻一刻と新たな時代が近づいております……漫! 入ってこい」

 

「は!」

 

 部屋の外で控えていた宮永漫が入る

 

 漫は巨大な紙を広げた

 

「これは……地図か?」

 

 照継が出したのは世界地図であった

 

「日ノ本はどこだと思いますか」

 

「どこって……どこなのだ?」

 

「ここです」

 

 照継の指差した島々が日本であると言われ元就、隆元は驚いている

 

「バカな、これ程小さな島々が日ノ本であると!」

 

「ここが中華、朝鮮がここ、天竺(インド)がここ」

 

「天竺でも世界の半分にも満たないではないか!」

 

「……20年前にここスペインという国から船で世界一周を達成した者が現れました。その国とポルトガルという国は世界の覇権を争い船で各地を貿易し、富を貯えております。大内の様に……それに対抗するには強い国が必要なのです。早急な統一政権……第二の元寇が来る前に」

 

「照継でなかったら信じられんが、照継が言うから本当なのだろうな」

 

「照継殿、毛利が天下を握るということは大内と争うことになりませんか」

 

「ああ、なる……が、元就様、隆元様、今まで毛利は尼子と大内に常に振り回され続けてきました。これで良いのですか? 大内義隆様には恩がある。が、遅かれ早かれあの家は没落する。大内の後継者になり大内を呑み込み、尼子をも呑み込み、中国地方の覇者になる。ここまでが毛利元就様がやること。後は隆元様がやることです」

 

「俺がか」

 

「ええ、天下を治める器は武力ではなく仁徳によるもの。10年……10年で安芸と備後を呑み込む算段を着けます。次の10年で尼子と大内を呑み込みます。そして次の10年で天下を握りましょうぞ」

 

「30年か……私も照継も最後の10年には居ないだろうな」

 

「天下の道筋を作りつつ、次世代へ繋げるのが老人の役目でしょう」

 

「ははは、そうだな」

 

 元就は照継に説得され毛利が中国地方の覇者になるために動き始める

 

 

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