チート一族になりたくて   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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宮永軍VS織田軍 1

「継爺、あれでよかったんですか?」

 

「父上、マジで今の領地全部捨てるんですか? せっかく福山の地に拠点を作ったのに」

 

「マジだマジ」

 

「蝦夷なんて未開拓だし、父上の地図でもそう広くはない土地じゃないですか」

 

「あ、あれ嘘な」

 

「「え?」」

 

「実は九州全部と今の毛利領地と四国全部を足したくらいでかい」

 

「「はぁ!?」」

 

 照継は蝦夷こと北海道の地形がわからないことを理由に実際の面積の5分の1程度の地図を出していた

 

「寒いが米が育てられないわけでもない。東源郷と接続させれば寒い土地を好む作物や魚介類、広大な土地、未開発の大量の鉱山……それに東源郷の暖かい所でしか育たない作物を合わせればどうなるかな~」

 

「でも毛利とは距離が離れてしまいますよ継爺」

 

「それは仕方がないこと。毛利が巨大勢力のまま残すには生け贄が必ず必要。それは宮永家がなるしかないだろ」

 

「全く、振り回されるこっちの身にもなってくださいよ」

 

「悪いな」

 

「で、一族にはどうするので?」

 

「来たい奴は蝦夷に連れていくが、福山で商いをしたい奴もいるだろうし、東源郷の出入り口を多くしても悪用されるかもしれないから福山と蝦夷のみに限らせたい……宮永始まりの船山の東源神社との接続は切る」

 

「……民はどうしますか」

 

「宮永に忠誠を誓っている民を残しても織田に反発するだけだろうから土地を捨てられる奴は連れていく。なに、織田信長の器量は数百年に1人の逸材だ。戦国の世にこれ以上は現れない」

 

「でも継爺も偉人なのよー」

 

「照石、私は天下を動かす才能は無いよ。結局のところいくら広い視点を持っていても、産まれた立地も地位も悪く、低すぎた。まあそのお陰でこうして今生きていると思えば良いかもしれないけどな」

 

「……この事は伏せておきますか」

 

「そうだな。下手に話せば混乱するだろうし、宮永攻めをする意味を最大限利用できる時にするだろう……東源郷の施設の拡張をこっそりと進めろ、孤児や身分の低い者も東源郷に入れ、宮永の力にする」

 

「「はっ!」」

 

 家督は既に孫の照石が持っていても照継の決定は絶対であった

 

 彼が町や拠点を捨てると言えば捨てる

 

 その身軽さが宮永の強みである

 

 照継は次の準備に取り掛かるのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

「ご隠居ー、相変わらずお盛んですな」

 

「おお、原村(原村優 照継の私塾の教え子の孫 吸血鬼、鬼との混血)か、まだまだ下半身は現役よ」

 

「もうご隠居は76なんですから無理はしないでくださいよ。というかよくまだ子供を作れますね。毎年10人近く子供増えてますし、というかご子息やご息女達も子沢山ですよね」

 

「まーな、直子だけでも350人は超えたからな。名前考えるのも一苦労よ」

 

「いや、家臣を含め全員覚えている記憶力が凄いですよ」

 

「流石に全員は覚えてないぞ。あと最近は物忘れも酷くなってきたし……まぁまだ舌が劣化してないだけ良いかもしれないがな……昔みたいに大太刀振り回してもキツくなったからな」

 

「ご隠居……」

 

「悲しい顔をするな。人はいつか死ぬ。妖怪の血が入っていても人より長いがお前らも老けてしぬのだ。早いか遅いかの違いだけだ。お前達は末長く宮永家を導いてくれよ」

 

「わかっています」

 

 信長はこの頃第一次織田包囲網が敷かれていたが、それをなんとか乗り切り、態勢の立て直しを急いでいた

 

「原村、ただ私と喋りたいだけじゃないんだろ?」

 

「はい、宮永湧が南蛮船の複製に成功しました。その船の帆に木綿の布が多く必要なようで、東源郷にて量産を願っています」

 

「わかった。手配しておこう」

 

「また毛利ですが、残念ながら博多から追い出されてしまったようです」

 

「ふむ、戦上手の吉川元春様でも駄目だったのか?」

 

「いえ、吉川様は尼子残党の討伐に出ており、小早川様も大内残党討伐に力を入れていたので毛利両川が動けない隙を突いたのかと」

 

「元就様は?」

 

「流石に歳なのでもう戦場には出ていませんが、毛利輝元様の教育を行っていると聞きます」

 

「難航してそうだな」

 

「はい……」

 

 元就は大内の遺領である北九州制圧を諦めきれず、度々九州に出兵しては大友と痛み分けを繰り返していた

 

 それだけ大友が強く、大友は南蛮貿易で火薬が手に入るのと、キリスト教の為に国を売る暴挙に出ていた(行き過ぎたキリスト教保護政策)為、比較的安く南蛮商人から購入できていた

 

 一方毛利は照継から火薬の製法を伝授されており、硝石丘を幾つも作り、自前で火薬を生産していた

 

 ただ宮永家が独立したことで東源郷からの税収が減ってしまい、貿易の商品も作物から大内が作っていた芸術品に切り替えたのだが、一度離散した技術者達を呼び戻すことはできず、かといって大内みたいに国を傾けるほど投資することもできず、劣化品を売るだけになってしまっていた

 

 それでもある程度は売れるのだが、大内の商品を取り扱っていた博多商人は落胆しており、更に商才は中国地方で一とされた毛利隆元が亡くなったこと、宮永が独立したことで徐々に商人の毛利離れが起こっていた

 

「まぁそれでも毛利は元就様と私が鍛えた家臣団がいる限り安泰だろう……あぁ、早く戦いたいなぁ織田と」

 

「それほどまでに強いので?」

 

「最強の軍隊は武田とか上杉だろうけども、織田は物量が段違い。負けても負けても学習して大きくなって全てを呑み込む」

 

「何の話をしているのですかお二人さん」

 

 そこに伊吹童子が大きくなったお腹を擦りながらやって来た

 

「相変わらず伊吹様はお腹が大きくなりますね。何人目ですか?」

 

「かれこれ47人。実にすばらですよ」

 

「ひえ、そんなに子供を産んだの神々以外に聞いたこと無いよ。神様でも自分の血肉から小神を産み出す方法だし」

 

「……照継様と交わるごとに私達は力を増してきた……いつの間にか平安時代の先代方に並ぶまでに成長できました……いままで鬼は人に害を与えて来ましたが、照継様が導いた共存の道……必ずや未来に繋げてみせますから」

 

「頼もしい限りだな……さて、私はあと何年生きられるのかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 天正4年(1576年)

 

 石山本願寺から再三の援軍要請が入り、照継は時が来たと家中に知らせた

 

 信長から3度の軍資金提供要求を受け入れ、総額1万貫(10億~15億円)を提供してきた宮永家であるが、4度目の資金提供を拒絶し、織田との敵対を表明した

 

 武田は衰退したものの、上杉、石山本願寺と戦闘状態であり、ここに宮永100万石が参加する

 

 信長は中国方面軍に羽柴秀吉を総大将に任命、総勢5万の大軍をもって戦を開始した

 

 

 

 

 

 

 

 羽柴秀吉の軍儀にて

 

「宮永のぉ、それほどまでに恐れるべき相手なのか? (竹中)半兵衛」

 

「北の軍神(謙信)、東の虎(信玄)、西の謀神(元就)……戦国三大神将と恐れられて来ましたが、宮永照継……彼はその毛利元就の右腕……毛利の飛龍と恐れられてきた人物です。朝倉宗滴(戦国中期の朝倉家を導いた凄い人物 故人)や三好長慶等そうそうたる面々が名指しで誉めています」

 

「ほう、それはそれは……でも今は毛利から独立しておるのだろ? 毛利を動かし挟撃はできんのか?」

 

「宮永家は2代前の当主である照継殿が、毛利も元就殿が生きている限り両家を引き裂くことは不可能かと」

 

「老いぼれどもめ……してどのような策を取る」

 

「さすればまずは地図にて」

 

 半兵衛が播磨の地図を広げる

 

「まず播磨は数年前まで国人一揆が多発しており、その勢力を潰すのに時間がかかり、更に多くの城を廃してしまっているので主要な城は5つ、三木城(播磨南東部)、神河城(播磨北部)、太子城(後の姫路城から15キロほど西にある海に面した城)、上月城(播磨東部)、赤穂城(播磨南東部)……山城は神河城のみで残りは平城となっているそうですが、どれも大きな城で二重堀、石垣で固められておりますが、兵糧攻めをすれば城下の民に優しいと聞く宮永家のことなので城内にいれましょう。そうすれば兵糧が尽きるのも早いかと」

 

「王道じゃな」

 

「変に邪道を通らずとも良いでしょう。落とした城は秀吉様が使う城、あまり傷つけずに奪えば力となるでしょうに」

 

「そうじゃな。よし、更に周りの農民達に相場の倍で米を買い集めよ。更に兵糧を早く枯渇させるのじゃ! 佐吉(石田三成)やれ!」

 

「は!」

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど、秀吉という将は金をかけてくるねぇ」

 

 報告を聞いた宮永扇(照継の孫 白狼天狗から大天狗へと成長した賢の系列)は愛用している扇子で扇ぎながら女装をしていた

 

「扇様、またその様な姿を」

 

「仕方がないだろ。私は女天狗なんだ。何の因果か男として産まれたが、妖怪としては女なの。容姿だってほら。髪を降ろせば女と変わらないだろ?」

 

「姫殿とまた馬鹿にされますよ」

 

「したい奴にはさせておけ。誰が言おうが私が播磨の最高司令官だ。まずそもそも播磨での防衛は不可能だから気持ちよく勝ってもらおう」

 

「よろしいので?」

 

「ああ、どうせ捨てる土地だし、この地は赤松氏が根付き過ぎた。……民も協力的なのは既に美作や備前に逃がしている……それにもう手は打っているからねぇ」

 

 扇は各城主達に兵糧の相場を上げたあとに高値で秀吉の軍に売りつけ、城に構わずに撤退するように命令した

 

 城主達も宮永一族の者達なので、扇の命令の意図を理解し、商人達に各村から米を買い占め、相場を上げ、更にそれを秀吉の軍に売れと命令、城内に蓄えられていた食料も売り払い、銭に変換して抵抗すること無く武器弾薬を輸送し撤退

 

 そうすると確かに城は早期かつ無傷で手に入ったが、大量の兵糧余りが発生

 

 更に相場が想像以上に高くなったことで予定よりも多くの出費が嵩んだし、戦が無かったことで今後の統治を見据えて米相場を安定させるため買った兵糧を三成は売ったのだが、商人達は空売りを多発させており、安定させるどころか各地で混乱が多発

 

 商人達は宮永水軍に守られながら備前や美作に撤収

 

 戦わずして秀吉軍の軍資金にダメージを与えた

 

 城を落としたといっても武功があったわけでもないので秀吉の部下達は手柄が立てられずに不満も溜まる

 

 更に播磨の税率が宮永が懐柔の為に3公7民にしていたのに対して秀吉は他の国と同じ5公5民に引き上げたところ農民達の不満が爆発

 

 また、どこからか流れてきた武器が農民達の手に渡り、一揆が多発

 

 宮永はキリスト教の対抗策として本願寺等を積極的に支援していた背景があり、本願寺と敵対している織田を苦しめるために散らばっていた一揆は本願寺の元に団結し、瞬く間に10万を超える大規模な一揆が発生

 

 秀吉はこの播磨一揆の対応をしなければならなくなり、更に自身が奪った5つの播磨の城に一揆が押し寄せたことで籠城を余儀なくされる

 

 平城ながら堅城なので一揆の攻撃では落ちそうに無いが、秀吉の軍は多大なストレスに晒される

 

 ここで宮永扇は内通していた荒木達摂津国人衆を寝返らせることで秀吉軍の補給路を遮断

 

 播磨という監獄に秀吉は5万の兵を抱えながら逆に兵糧攻めを受けることになる

 

 

 

 

 

 秀吉を播磨に封じ込める策が成功した宮永扇は役割りを備前美作司令官の宮永健(照継の孫 龍火の息子 首抜き[ろくろ首の一種だが首が無い]とのハーフ)に引き継ぎを行った

 

「そんじゃ健(すこ)ちゃん後はよろしくー」

 

「はぁ、全く扇ちゃんは相変わらず自由だね」

 

「妖怪は自由じゃないと~それが生きざまだし」

 

「そりゃそうか」

 

 コロンと頭を膝の上に置き

 

「さて次の手はどうしようか」

 

「まぁ播磨の混乱も荒木が討伐されたら終息する程度のものだし、本願寺に兵糧を届ければ?」

 

「大坂(昔の大阪はこっちの字)にはもう少し頑張ってもらわないといけないからそうしますかね」

 

 本願寺に兵糧弾薬武器の運搬を目的とした宮永水軍と村上水軍の連合艦隊が木津川口に突入、織田水軍を一方的に蹂躙して作戦は成功

 

 この時キャラック船も投入され、大量の食料を運搬している

 

 本願寺からは礼金を受け取り、本願寺援助を目的とした輸送作戦はこの後6回行われることとなる

 

 織田との戦争の序盤は播磨を失った代わりに織田の動きを封じ込めることに成功し、織田は上杉謙信にも大敗し、混乱状態に陥ってしまう

 

 

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